○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
今課題となっております刑法の改正問題に入ります前に、最新情報ですが、私ずっと一貫して日本の家族法制改革について質問申し上げております。ちょうど今、この瞬間に、アメリカのジャック・ストーンさんというお父さんが、子供と引き離されて、日比谷公園でハンガーストライキをやっております。ちょうど昨年の七月にも、フランス人のヴィンセント・フィショさんが、オリンピック前でしたけれども、やはり子供と引き離されて、三週間ほどハンガーストライキで訴えました。
引き離されているこの二人の事例に対して、この間、アメリカ人のエンリケ・グティエレスさんという方が私の会館の部屋に来てくれまして、実は、引き離されていたんだけど、本当に今うまく共同養育できているという事例もお話しくださいました。子供さんが、三年間会えなかったんだけど、子供さんの方が、何でお父さんに会えないのということで、母親が連れ去っていたんですけれども、親子会わせるようにして、今は仲よく共同養育をしているということで、このグティエレスさんがおっしゃるのは、日本の法律は父母にとって重要な分断をしていくんだと、弁護士が、裁判所も調停委員も紛争を解決できずに、逆に両当事者の間に摩擦を生み出していると、解決策を見出す代わりに問題を悪化させているという状況について大変強く訴えておりました。日本の監護法制改革、ここは、子供を連れ去って、子供自身に連れ去りの後遺症を何年も持ち続ける、場合によってはその子供がある意味で不幸になってしまう、そういう状態というのを自分は改善したいと言って、今NPOグループもつくっておられます。
法務大臣、今法制審で議論をしているのでこれ以上のコメントは無理という御回答かもしれませんが、この親子の引き離し、日本国内だけではなくて海外の国際結婚でも生じております。海外では、もうコペアレンティング、共同養育は当たり前なんですね。そのようなことで、今の日本のこの状態、どうお考えでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) 御紹介をいただいたような個別的な取組についてコメントをすることは差し控えたいと思いますが、父母の離婚後の子の養育の在り方は、子供の生活の安定や心身の成長に直結する問題であり、子供の利益の観点から大変重要な課題と認識をしております。
父母の離婚後の子の養育の在り方やそれに関連する諸課題につきましては、法制審議会におきまして、様々な方からのヒアリングも踏まえて幅広く調査審議中であります。例えば、ヒアリングの対象としては、親の離婚を経験した子の立場、離婚を経験した監護親又は非監護親の立場、家庭問題に関する支援の現場、紛争解決を行う立場など様々なお立場から、お立場の方から実情をお伺いしているものと承知をしております。また、法制審議会の調査審議の過程では、韓国、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツなど諸外国の法制度が紹介された上で、それを踏まえた調査審議が行われていると承知をいたしております。
引き続き、父母の離婚後の子の養育の実情や海外法制等をしっかりと踏まえた上で、子の最善の利益の確保の観点から充実した調査審議が行われることを期待しております。
○嘉田由紀子君 実は日本のマスコミさんはこのことをほとんど取り上げてくださらないんですね。去年も、ヴィンセント・フィショさんのハンガーストライキのときにフランスからは大変な取材があり、私自身もフランスのテレビから取材を受けました。日本はどうなっているんだ、国会議員として改善できないのかというようなことで。それから、今のジャック・ストーンさんのこともほとんどニュースになっておりません。
ただ、つい最近、法制審が一年以上議論していて、ほとんど、中間試案が出るということなんですけれども、右往左往しているところで、民間団体が、離婚後の共同監護をということで独自試案を取りまとめたようでございます。今日の産経新聞に取材が出ておりましたので、これはもうあらかじめ質問出しておりませんので、法務大臣、産経新聞を御覧いただけたら幸いでございます。
二点目ですけど、罪を犯した者の施設内の処遇について、刑法の今回の改正に伴って質問させていただきたいと思います。
今日、資料をお出ししました。入国者収容室、居室というものですけど、デンマークのストーストレム刑務所内の様子と、それから日本の資料と両方をお出しさせていただきましたけれども、デンマークと日本の言わば受刑者に対する扱い方が違うなということがこの施設の違いで分かると思います。
デンマークでは、受刑者に対してできるだけ自由が認められるような住環境を提供することによって社会復帰に向けたリハビリテーションを行い、再犯率の低下に結び付けています。再犯率定義するには様々な留意事項がありまして、単純に国際比較はできませんが、例えばある統計では、米国の再犯率の範囲は約四九から八〇%に対してデンマークでは二七%とされております。再犯率が低いということです。
デンマークのように懲罰よりも更生支援を重視する政策判断の背景には、私も、デンマーク、世界でも最も幸せな国と言われておりますので、いろいろこれまでも勉強させていただきましたけれども、感情的に抑圧されることなく、穏やかな団らんの中に、ふと幸せ感、満足感を感じるヒュッゲという思想があるとも指摘されております。これ、日本ではゆったりとした心の満足とかそういう言葉、英語ではコージーという雰囲気だろうと思いますけれども、このヒュッゲに基づいて、犯罪を犯した人たちの施設もゆったりと造られていると。
一方、日本では、本日午後、当委員会が視察に伺います川越少年刑務所に対する刑事施設視察委員会の意見がございますが、その意見を見ておりますと、大変厳密な措置がなされております。例えば受刑者の少年のノートの冊数まで制限している、二冊までしか駄目だと。で、書きたい少年はそれ以上書けないというようなことで、通常の刑務所では更に厳格な管理が行われているということです。
そこで、法務大臣、どのような理念や思想に基づいて法務省の任務を遂行しようとお考えでしょうか。この理念、思想、日本人だけではなくて、日本と縁を持っている外国人の方も含めて、法の支配が単なる法律用語の政治的なアナウンスではなく、お一人お一人の人権を確実に保障する基盤となることを願いながら、法務大臣に確認をさせていただきます。
○国務大臣(古川禎久君) お答えいたします。
どのような理念、思想に基づいてこの法務行政に向かっていくのかというお尋ねでございました。私は、所信におきましても、このようにこの委員会で申し上げております。
人類社会は、人の尊厳が重視され、尊重される社会へと、一歩ずつではありますが、着実に歩んできたと認識しており、自由、基本的人権の尊重、法の支配、そして民主主義は、そうした社会を実現するために、人類があまたの困苦を乗り越えながら獲得してきた原理だと考えております。法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護等を任務とし、我が国の法制度の基盤を担っており、このような大局観を常に念頭に置きつつ、諸課題に取り組むことが大切だと考えておりますと、このように私は本委員会でも申し上げたところでございます。
この法の支配の理念を法務行政のあらゆる場面で具体化していくことが大事だというふうに考えておりますが、刑事施設におきましては、被収容者等の人権を尊重しつつ、個々の受刑者の資質及び環境に応じた処遇を通じて、改善更生の意欲の喚起及び社会適応力の育成を図っていくことが重要だというふうに考えております。
また、入管行政におきましても、ウィシュマさんが亡くなった名古屋の事案のこの強烈な反省を踏まえた上で策定をいたしました使命と心得の下で職員の意識改革を進め、また、有識者会議の御提言を受けて、収容施設内の医療体制を強化していくなど、被収容者等の人権を尊重しつつ、適正な処遇を行っていくことが必要であるというふうに認識をしております。
今後も、冒頭に申し上げた理念に基づきまして、そして、この理念をあらゆる場面で具体化していく努力、それを怠ることなく、適正な法務行政の遂行に取り組んでいきたいというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 法務大臣、ありがとうございます。
本当に一人一人の人権が根本から尊重されないとなかなか犯罪からも立ち直りできないということを共有の価値観にしていただいていると思います。
そういう中で、先ほど来から議論になっていたんですけれども、罪を犯した方が、施設内の処遇ですけど、刑の執行段階で、被害者等の心情を伝達することが受刑者の立ち直りにどのような効果を及ぼすと評価しているでしょうか。
既に先ほど清水議員のときにもございましたけれども、法務省さん、お願いいたします。
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
受刑者に対しまして、自らの犯罪に対する反省や悔悟の情を深めさせるためには、被害者及びその親族等の被害に関する心情やその置かれている状況等について正しく理解させることが極めて重要であると認識しておりまして、現行の法の下におきましても、被害者の方やその支援団体等による講話であったり、被害者等の命を奪う罪を犯した者など一定の人に対しまして、被害者の視点に、被害者の視点を取り入れた教育を行うなどの働きかけをしておるところでございます。
今回、法制審議会における議論におきましても、これまでは被害者等の心情を直接私どもが受け入れるような形のものはしてございませんでしたが、法制審議会の部会におきましても、例えば、加害者にとっても被害者の心情等を早い段階から知ることが更生の出発点であるといった御意見などが寄せられたものと承知してございまして、こういったことを含めた法改正でございますので、この法改正の趣旨を踏まえまして、受刑者の反省や悔悟の情を深めさせ、その改善更生などを効果的に図るための処遇を引き続き推進してまいりたいと考えてございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
これまでも被害者の心情を加害者に伝えるというのは、社会的には言われていたんですけど、なかなか施設内でできていなかったということで、今回の法改正でここはより徹底して効果を出していただきたいと思います。
時間も迫っておりますので、最近、高齢者が受刑者の中で増えておりますけど、この受刑者の高齢化に関する課題と対応はどうなっているでしょうか。法務省さん、お願いします。
○政府参考人(佐伯紀男君) お答えいたします。
令和二年度の、令和二年の新受刑者のうち六十五歳以上の高齢者の割合につきましては約一三%ということで、十年前の平成二十二年に比べまして約一・七倍に増加してございます。
高齢受刑者の中には、認知機能や身体機能などの低下に伴う疾病、あるいは出所後に適当な帰住先がないなどの問題を抱える者も少なくないというのが実情でございます。高齢受刑者の特性に応じた処遇を行う必要がございますが、出所後に速やかに福祉サービスを受けることができるよう環境を、生活環境を調整することが課題となっております。
こういった点も踏まえまして、今回の法改正によりまして、受刑者には、刑事施設の長の責務として明記されました社会復帰支援の取組でございますが、福祉施設等の関係機関と連携した社会復帰支援を一層充実させる、こういったことを含めまして、あるいは拘禁刑の柔軟な処遇が可能ということがございますので、社会適応に必要な知識、能力を付与させる改善指導であったり、認知機能や身体機能を維持向上させるための措置を柔軟に実施して、高齢受刑者が円滑に社会復帰できるよう努めてまいりたいと考えてございます。
○委員長(矢倉克夫君) お時間になりました。
○嘉田由紀子君 日本語が不自由な外国人の方の教育のことをお伺いしたかったんですが、もう時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。