梅雨末期のような豪雨に日々悩まされています。皆さんのところでは被害はありませんか?ちょうど4年前の2018年7月7日、西日本豪雨により各地で被害が出ました。その中でも愛媛県肱川(ひじかわ)の野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流で、8名の死者が出てしまいました。ダムによる治水は計画した通りの雨では効果があるが、それを外れると効果が少ないこと。逆に被害を増大することもあることを具体的に議論しました。7月16日の愛媛県大洲市で、「今なら止められる!山鳥坂ダム建設と野村ダム改造」というシンポジウムに参加、私自身は滋賀県での流域治水条例制定の経過と、気象予測が難しくなっている温暖化が進む今、ダム依存の治水対策の限界を住民自身も自覚しなければ、命が守れない時代になっていることを講演させていただきました。7月17日。(また長いです。すみません^_^。)
元愛媛大学学長で、地学の小松正幸さんによる、「地すべりの宿命にさらされるダム」の講演は大変説得的でした。「海溝付加体」と「火山岩層」による地すべりの仕組みを解説していただき、今肱川で計画されている山鳥坂ダムや愛知県の設楽ダムは、地すべりが起きやすい地質構造で、将来的にも危険性が高く、再考すべきという意見です。また過去の例では、奈良県の大滝ダムは地すべり対策で計画予算が16倍になっていること、2年前に完成した群馬県の八ッ場ダムも地すべり対策に大金が投じられたことなどが語られました。
熊本県立大学名誉教授の中島き八郎さんは、地域住民自身が過去の航空写真などで、地域の洪水特性を知り、備える重要性を肱川大洲地区を事例に指摘。また球磨川流域での川辺川ダムの河川整備計画に対するパブリックコメント439件を分析したところ、313件(71.3%)がダム反対であり、賛成の21件(4.8%)をはるかに上回ることもまとめて公表してくれました。7月16日の熊日新聞が取り上げています。
大阪公立大学の除本理史(よけもとまさふみ)教授は、「環境経済学からみたダムとまちづくり」として、費用便益分析は、何を守るべき価値と考えるかで大きく結果が異なること、特に治水については「生態系重視」「地域コミュニティの自治力の維持」についても配慮すべきという指摘でした。ダム建設による地域社会の破壊は、原発事故による「ふるさと喪失」被害と重なり留意すべきテーマであることを、石木ダム問題などへも敷衍できる問題提起でした。
私自身は、滋賀県と国の流域治水の経過報告と併せて、4年前の野村ダム緊急放流で5名の方が亡くなられた状況を詳しく聞き取りさせてもらった結果、「ダムがまさか緊急放流はあり得ない」と信じる住民が極めて多く、7月7日の早朝に消防団の人たちが、避難に応じない住民の方たちを無理やり消防自動車で高台に避難させ、その人数は119名にのぼったこと。つまり消防団の働きがなければ、もっともっと多くの方が溺死したかもしれないことを指摘し、具体的な避難行動が、まさかの水害には重要であることなども指摘させていただきました。
会合後、写真家の大西暢夫さんの紹介で、滋賀県米原市の近江真綿をつくっている北川さんの所に繭を供給している瀧本養蚕を訪問し、滋賀県への繭供給のお礼を申し上げました。27歳の孫の慎吾さんから95歳のおじいちゃんまでが協力して4世代9名で愛媛県下の繭生産の6割を担っている場を見せていただきました。埼玉県の養蚕農家だった我が家で使っていた「回転まぶし」など懐かしいです。
また4年前の肱川豪雨では、作業所も1.5mほど浸水し、上蔟前のお蚕さんが全滅してしまったことも伺いました。肱川の堤防から数メートル高い場所なのに、4年前の浸水は、急に水が上がってきて、人間が高台に逃げるのがやっとで、お蚕さまを避難させる時間的余裕がなかったこと、95歳のおじいちゃんもはじめての経験という。多分ダムの緊急放流だろうと瀧本さんも指摘していました。
これから、熊本県に移動して、2年間の球磨川水害の溺死者のお宅を再訪し、お悔やみさせていただきます。