「私たちは気づくのが遅すぎたのよ!原発を動かすということは、人の住む町をなくしてしまう、暮らしを根こそぎ奪ってしまう、ということをもっとみんな早く気づくべきだった。避難計画というのが<帰り道のない切符>だということを!」「人間は一時的に避難できても、琵琶湖そのもの、琵琶湖にすむアユやビワマスやホンモロコは避難できない!」
2月18日。滋賀県近江兄弟社高校演劇部の皆さんと、兄弟社の大会議室で演劇公演をしました。保護者の皆さんなど200名ほどの方達に、公演をお聴きいただきました。緊張しました!演劇には全くシロウトのワタクシ、しかも練習時間なしの当日ぶっつけ本番!高校生の皆さんのお力に支えていただく公演になりました。ご協力いただきました皆さま、ありがとうございました!(また長いです)^_^。
メリル・ヴォーリスさんの自由と博愛精神に根ざした「本物の教育」「リベラルアーツ教育」を理念とする近江兄弟社高校さんとは、これまでにもびわこ成蹊スポーツ大学は「高大連携高校」として、学生の学びの連携や保護者の大学訪問などで深く・強いつながりを持ってきました。
そんなつながりの延長で、近江兄弟社高校の教育顧問をなさっておられる永島鉄雄さんが、2011年3月の福島第一原発事故以降、福島からの避難者の皆さんの苦しみに寄り添いながら構想してきた脚本が<帰り道のない切符>でした。近江兄弟社高校演劇部顧問の長谷川友彦先生と相談しながら脚本が完成しました。今年の1月でした。
場面想定は今から10年後。真冬の雪深い夜に若狭湾岸に大地震がおきて、「弥勒原発」が爆発した音を聴いたという若狭の地元住民からの情報。滋賀県知事は文部科学省にspeediの風向きデータの提供を依頼。しかし国の担当者は「情報提供は住民に混乱をもたらす」と提供拒否。総理大臣も海外出張中。避難指示は自治体で判断してという国からの指示。
知事は、滋賀県の研究機関、琵琶湖環境科学研究センターに直近の風向き情報の提供を頼む。示されたデータでは北西の風が琵琶湖・滋賀県方面にふいている最悪の事態。そこで弥勒原発から「50キロ圏内」の湖北・湖西の住民に避難指示を出すにはどうするか。知事には避難指示の権限はない。「地域防災計画」では市町村長の権限だ。
市町村長に風向きの情報を提供して協力して住民避難に当たるように副知事に指示。副知事は「知事が指示するのは法律違反です」と進言。知事は「法律違反を問われるならその時は責任は全部自分がもつ。大事な事はひとりでも多く着実に避難できるような体制を作ること!」と指示を出す。
具体的な避難状況はどうするか。真冬の雪深い夜。自家用車での避難は時間がかかる。バス避難が想定されている。ただ、放射能汚染地域にバス運転手を送る権限はだれにもない。「労働安全衛生法」という法律で労働者の健康安全が保障されているからだ。放射能汚染地域に運転手を送る特別配慮措置の法令変更をして欲しいと全国知事会で要望してきたが国はこれまで動かなかった。今となっては、「運転者の善意」にすがるしかない。福島事故の教訓は今だに生かされていない。
という知事の悩みに並行して、夫が原発部品提供会社に勤める渚家の家族。父母と二人の子どもの避難者となった苦しみがリアルに表現される。小学生の娘が大事にしているネコは避難バスには乗れない。娘が泣き叫ぶ。父親は、原発部品提供会社員としてのプライドが根こそぎ崩される。
そこで知事の気づきの叫び!「電源の代わりはあっても命の水源、琵琶湖の代わりはない。人間は一時的に避難できても、琵琶湖にすまう生き物、アユもビワマスもホンモロコも避難できない。そして琵琶湖そのものも避難できない!」
演劇部の高校生の迫真の演技は見事でした!20名の部員が、直接出演者としての役をこなしながら、照明や音響効果、全体監督など、見事な役割を果たしてくれました。
今回は「初演」です。今後も要望があれば、「出張公演」もできるということです。皆さんのところでご希望がありましたら、近江兄弟社高校の長谷川先生にご相談ください!
長文にお付き合いいただきましてありがとうございました!