2022年5月17日法務委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。

今回提出されております民事訴訟法の一部を改正する法律案につきましては、過去二回ほど、私自身は、家族の問題、特に離婚訴訟とか、あるいはそこで声を上げられない子供さんたちの立場から、裁判の選択肢が増えることはいいことだろうということを申し上げました。今回も、清水議員、そして東議員が御指摘のとおりでございます。
ただ一方で、法務大臣が言われるように、家事裁判というのは今回の直接対象にはなっていないということですけれども、やはり声を上げられない子供のためにこの辺の方向を持っていただくことには私は賛成をしております。
と申しますのは、毎回申し上げますが、日本は毎年二十万人もの子供が父母の離婚に直面をしております。今回も、国民の裁判を受ける権利、法律的に守られる権利というのはありますが、本当にこの子供たちは、自分たちが権利を持っていることも自覚されませんし、それから声を上げる場所もない。親の都合だけで経済的、精神的、社会的に大変困難な状況に追い込まれております。
そういうことで、今回、実は、少し異例かもしれませんが、私の方で、今進んでおります法制審議会で、離婚後の子供の養育の在り方という審議会を進めております。昨年の二月に上川法務大臣が諮問をしたものです。
その諮問については、もちろん法制審議会の独立性というところがあるんでしょうが、私どもは立法府として、あるいは私自身は、本当にこの離婚に直面して苦しむ父母、子供さんから随分直接、駆け込み寺のように声が届いておりますので、その声を踏まえながら、まず最初に資料一として出させていただきました。
法制審、この夏に示す予定の中間報告のための部会資料が三月二十九日の資料十二、十三として出されております。これを読み込みまして、私自身、大変驚きました。日本の家族制度と親子関係を根底から破壊するおそれがあるのではないのかということで、ちょっと十項目、ポイントだけを指摘させていただきます。全体としては、この資料十二、十三は百ページ近くあるんですけれども。

20220517【配付資料①】法務委員会

まず、離婚後共同親権を導入といいながら、見せかけの共同親権。父母の合意を前提とする選択的共同親権。
二点目は、親権の中から日常的な監護権を分離をし、婚姻中も片親状態を強化する。監護権の付与は、出生から現在までの生活等、産む性としての女性を優先する。
三点目は、離婚後共同監護の禁止。ということは、親権要素から監護権を除外して離婚後単独親権制に代わる離婚後単独監護制を創設する。となると、今子供の片親ロスが問題なんですが、余計にこの片親ロスの状態を固定化するのではないか。
監護権を剥奪した親、別居親から親権を剥奪する現行の裁判運用の制度化。継続性の原則を制度化する。
五点目です。婚姻中の実子誘拐を合法化。ここは、親権要素から居所指定権、つまり子供の暮らす場所の指定権を除外をしますので、表向き共同親権といっても、言わば実子を移動させるのは自由になる。
第三者による親子関係制限、親子断絶を合法化する。子の代理人制度創設。現在の単独親権制度の夫婦分離影響をより強化するのではないか。
七点目ですけど、親権、監護権を剥奪された親から養育費を強制徴収するための未成年子扶養請求権を創設、その代理者を監護者に付与し、細部までの執行手続を明文化。つまり、監護者を排除しながら扶養義務だけは強化する。
八点目です。婚姻中の単独親権制。明治民法は父だけが親権だったわけですけど、それを復活をして、親権の最重要要素である監護権を婚姻中から単独で父母の一方が排他的に獲得できることを制度化。
九点目。現に関係が断絶、分離されている親子の救済措置が欠如。本当に、子供を連れ去られて自殺をしてしまったお父さんとかその寸前の方たちの声も、私、大変、直接伺っております。そういう方たちの救済措置がない。
全体として、真に子供の利益になる制度かどうか大変疑わしい。離婚後の子供の福祉の維持向上などの記述は養育費以外ほとんどありません。
となると、もちろん今審議中です。審議中のものに対して、また、本当に持って回った表現なので、私がここで十項目挙げたことが不適切なところもあるかもしれませんが、こういう資料が出され、そして提案されているということは、私たち、大変この分野に関心を持つ者としては学ばせていただく必要があるだろうと。
この原案を法制度化した場合、四つの社会的影響が懸念されます。
一つは、性別による役割分業制を固定化する。女性は子育て、男性は言わば経済、政治。男女共同参画という時代のニーズに逆行するのではないか。
二点目は、別居、離婚後の夫婦間の対立をむしろ激しくさせる制度設計で、EU議会始め、海外からの非難決議がございます。国際的潮流にも逆行し、海外の調査、二十四か国調査による結果の反映もされていない。
三点目は、日本も一九九四年に批准しました子どもの権利条約違反。この九条には、親が別居したり離婚しても、子供は父と母両方の愛情を受けて育つべきであるという原則的な理念がございますが、それに反しているのではないか。
そして、四点目ですが、日本国憲法二十四条に規定された、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚するという規定に違反するおそれがあるのではないかと思います。
このようなことで、法務大臣としては、もちろん立場上、また今の段階で意見は言いにくいと思いますが、御感想をお願いできますでしょうか。
○国務大臣(古川禎久君) 父母の離婚後の子の養育の在り方は、子供の生活の安定や心身の成長に直結する問題であり、子供の利益の観点から重要な課題だと認識しております。

 

 

 こういった様々な意見を含め、父母の離婚後の子の養育の在り方やそれに関連する諸課題については、法制審議会において様々な角度から幅広く調査審議中であります。
委員の御指摘されますこの多数の論点項目につきましては、現在、法制審議会におきまして調査審議が行われているところであります。法制審に諮問をした法務大臣としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、引き続き、子の最善の利益の確保等の観点から、充実した調査審議が行われることを期待しております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。

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当然の御回答だと思います。夏以降示される中間試案を待たせていただくことになると思いますが、今審議途中のことも、私ども、この問題に深く関わる立法府の議員としては勉強させていただいているということでございます。
今日、実は資料二として、かなり長いんですが、一般国民の方が書かれた論文を出させていただきました。実は、婚姻中共同親権と民法八百十八条に規定されているんですが、この婚姻中の共同親権は形式にすぎず幻だったのではないかということを、専門家ではない方が、戦後の、特に昭和二十二年、憲法改正され民法改正された当時の奥野、当時の司法庁のお役人さんです、それから我妻さんたちの議論を発掘しながら、元々、父母の婚姻中、父母が共同して親権を行使することとなっているけどそれができていなかった、そのことを日本では全く規定をしてこなかった、ですから放置状態になっているということを調べております。

20220517【配付資料②】法務委員会(出典松村直人)

 この問題については、どちらかというと明治以降、親権は男性一人だった、それが共同親権になるといろいろ不都合がある。特に、先ほど大臣も言っていましたけど、共同親権になると適時適切に子供の利益に即した判断ができない、判断が遅れてしまうということを当時、大変力があった我妻先生が何度も何度も繰り返しておられます。それがいまだにそう思われているということなんですけれども、いろいろな現場を見せていただきますと、そもそもが父母分断をして、そして男女対立的な構造を埋め込んでいる日本社会においてここをどう乗り越えたらいいかというのが私は本来の男女共同参画のあるべき方向だろうと思います。
ということで、今、この資料二、もしお読みいただいておりましたら法務大臣に、子供の養育に関して婚姻中の父母の意見が対立して合意形成が得られない場合、民法上の調整規定設ける必要性あるでしょうか。法務大臣の御意見をお願いします。
○国務大臣(古川禎久君) 先ほども申し上げましたとおり、この法制審議会におきましては、今現在、様々な角度から幅広く議論がなされている最中でございます。そして、その中で、婚姻中の父母の意見が対立した場合における親権行為の在り方についても議論がなされているものと承知をいたしております。
法務大臣としては、引き続き、子の最善の利益を確保する観点から、充実した調査審議が行われることを期待しているということでございます。
○嘉田由紀子君 次の質問も少し言葉を換えているだけなんですけれども、子供の養育に関する家庭内における父母間の意見の対立について、どの程度まで父母の自律的な選択を尊重し、どの程度から当事者の自律救済を禁止して父母の意見調整を国が支援をすること、特に家庭という私的領域に国家が介入することが子供の最善の利益を確保するために妥当だと思われるでしょうか。法務大臣に、繰り返しで申し訳ないですが、お願いいたします。
○国務大臣(古川禎久君) お答え申し上げます。
繰り返し申し上げておりますとおり、法制審議会におきましては、様々な角度から今幅広く議論がなされているところでございます。

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婚姻中も含め、父母間の意見の対立が生じた際の対応策につきましては、どのような場合に父母間の協議による解決を期待し、どのような場合に家庭裁判所の関与が求められるのかなど非常に難しい問題を含んでおりまして、様々な意見があり得ると考えられますが、いずれにしましても、子の最善の利益を確保する観点から議論されることが重要であるというふうに認識をいたしております。
現在、繰り返しになりますけれども、現在行われております、法制審において行われておりますこの調査審議に、引き続きこれが充実したものになるよう期待をいたしているところでございます。
○委員長(矢倉克夫君) 時間になりましたので、質疑をまとめてください。
○嘉田由紀子君 はい。
ありがとうございます。
来週は子供の声というのを取り上げさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。以上です。

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