2022年5月11日災害対策特別委員会 【確定稿】

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にもお時間を割り当てていただきまして、感謝申し上げます。
私の方も、河川政策、また災害対策についてお話、質問させていただきます。
日本はそもそも地震列島であると室井議員も言っていられました。また、今、武田議員も二〇一九年の災害についてですが。私、ずっとここ四、五十年、地域社会における水との関わりを研究してまいりまして、元々日本は急峻な土地で、それで、水田農耕というのがもう律令時代からのなりわいでしたので、水の恵みと災い、共に地域社会が責任を持って対応していくと、これはもう本当に律令の時代からそれぞれの地域社会でやってきております。
私どもは、滋賀県の知事時代に流域治水という、つまり、日本の河川政策、明治以降、どちらかというと、堤防を高くして連続堤防にして、川の中に水を閉じ込める。そうすると都市部の開発面積が増えるので、一旦は歓迎されました。川をどんどんどんどん狭くして、深くして、コンクリートにして、都市開発には都合は良かったんですけれども、結果的に都市化が進む中で洪水が増えるというようなことで、井上局長さんも始め皆様御苦労をいただいたと思います。ここには足立大先輩もおられます。そういう中で、明治以降の川の中に水を閉じ込めるというのは限界があるんじゃないかと、そのときに流域治水という発想が出てくるわけです。
つまり、川の中だけではなくて、まずは山で水を守り、治山、そして土地利用、危ないところには家を造らない、造るんだったら建物をかさ上げするというような形で、ためて、流して、とどめて、そして最後は命を失わない、備えるというのが流域治水でございます。幸い国の方も、滋賀県では二〇一四年に全国で初めて条例化したんですが、国の方も昨年、流域治水の法案を作っていただきました。
そういう背景の中で、流域治水の一つのポイントとしては、今日皆さんに資料をお出ししていますけれども、河川整備計画策定に向けてのスケジュールというものがございます。これは、公共事業に環境保全や住民参加を取り入れるという大変画期的な法案が平成九年に日本でできます。その法案を実現化する一つの手だてがこの河川整備計画でございます。
この河川法十六条には環境保全とそれから住民参加というところが入ったんですが、まず最初に、今、流域治水協議会を全国一級河川、百九水系で進めていただいているんですけれども、市町村長以外に住民代表が参加している協議会の数あるいは住民参画の事例など、国土交通省さん、お示しいただけますでしょうか。

「球磨川水系河川整備計画」意見書

参議院議員 前滋賀県知事 嘉田由紀子

(その1)・川辺川ダム建設で流域住民の命を守れるのか?
・「ダムで命を守る」はダム建設のための単なるスローガンではないのか?
・被災溺死者の検証なしに、ダム建設で命を守ると主張するのは溺死者 50 名の命を
冒涜しているのではないか?
・政治や行政上はもちろん、人間としても倫理的に許せない整備計画ではないか?
・まずは溺死者の状態を調査し、「何が生死をわけたのか」真摯に向き合ってから整
備計画の原案の書き直しを求めます。
全国 109 一級河川水系の中で、河川整備計画づくりが最も遅れていた球磨川水
系で、ようやく整備計画原案の提示となった。2020 年 7 月4日の水害被害を待ってい
たかのようなタイミングでもある。というのも 2008 年の蒲島知事の「球磨川は県民の
宝」「川辺川ダムは白紙撤回」との表明を受け「ダムに頼らない治水」を模索するとさ
れたが、国も県も実質的な治水整備を放置した結果、2020 年 7 月 4 日の被害が増
大してしまった。このことは日々、河川を現場で見続けている住民が証言している。ち
なみに同じ頃、滋賀県では「ダムだけに頼らない治水」を県庁あげて追及した結果、
2014 年には全国はじめての「流域治水推進条例」を制定し、流域治水の先進的政策
を進めてきた。当時の知事当時者が言うのは「我田引水」かもしれないが、県庁職員
の頑張りとふんばりで実現できた政策でもある。
そのような中で、7 月4日の水害被害直後に、樺島知事は「川辺川ダムの復活」を宣
言した。地域住民と一部の研究者は、まずは水害被害の現場検証が必要だ、特に球
磨川流域で 50 名もの溺死者が出てしまった、その要因を調べるべきだと主張した。
そして「何が生死を分けたのか?」と溺死者の自宅や避難中の死者についてはその
現場を訪問し、どこから来た水で何時頃に溺死が発生したのか緻密に検証した。検
証に協力・証言した住民は 200 名を超えた。
その結果わかったのは、人吉市内では 20 名の溺死者のうち 19 名は早朝7時から
8時までに、山田川や万江川、御溝川などの支流が溢れた水にまきこまれたと判断で
きた。1名は死亡時間も場所も不明だった。つまり人吉市内のほとんどの溺死者は球
磨川本流の水位上昇による溺死ではないという事だ。また高齢者施設で 14 名の溺
死者がでた球磨村渡地区では、すぐ横を流れる小川の氾濫が球磨川の氾濫よりも早
く、午前7時頃には施設での溺死が始まったとの証言も得た。
出典 嘉田由紀子「球磨川水系河川整備計画」に関する意見書
(2022 年 5 月 6 日)
令和 4 年 5 月 11 日 参議院災害対策特別委員会 碧水会 嘉田由紀子

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国土交通省データによると、もし川辺川ダムができていたら人吉市で水位低下効
果が発揮されるのは午前 10 時過ぎである。また渡地区での川辺川ダム水位低下効
果が発揮されるのは 10 時30分以降である。球磨村の神瀬や一勝地また八代の坂
本では川辺川ダムの水位低下効果は11時から12時頃なるだろう。しかし、溺死は
午前 7 時―8 時頃からはじまっている。この地域は、1000 メートル級の急峻な山にあ
たった線状降水が一気に降って、森林伐採が進んだ山頂部から渓流へと大量の土砂
を流し、まさに地元からの豪雨が球磨川本流に流れこんだようだ。支流や支川の上
流部の森林破壊や土砂崩壊こそ、まさにすぐに手をつけるべき「流域治水政策」では
ないだろうか。
しかし、これら支川や支流の水位が高かったのは球磨川本流からのバックウオータ
ーという記述ばかりが目立つ(32 頁、42 頁)。かろうじて26頁に令和2年の被害も、
「熊本県内の犠牲者は65名にのぼり」とあるが、流域での溺死者は 50 名、1名不
明、残り14名は球磨川水系以外の地域での土砂災害という記述もない。その上、42
頁の水害被害の記述の中には「溺死者」について一言もふれず、鉄橋や道路の被害
など物的被害の記述と、河川流量の多さとバックウオーターという記述ばかりが目立
つ。溺死者について一言も触れないのは何とも不自然だ。
私たちは「何が生死を分けたのか」という調査結果を、熊本県や国土交通省に提示
して、「溺死者の検証調査を行ってほしい」と何度も申し入れたが、県も国も動いてい
ない。それどころか、河川整備計画の水害被害記述から溺死者の項目を全く無視し
ている。ここにはどんな力が働いているのだろうか。
「ダムで命を守る」(103 頁)という記述はダム建設のための単なるスローガンではな
いのか?被災溺死者の検証なしに、ダム建設で命を守ると主張するのは溺死者 50
名の命を冒涜しているのではないか。政治や行政上はもちろん、人間としても、倫理
的に許せない河川整備計画ではないか?まずは溺死者の状態を調査し「何が生死を
わけたのか」真摯に向き合ってから整備計画の原案の書き直しを強く求めます。
なお住民の皆さんとすすめた「何が生死をわけたのか」の調査結果は、『流域治水
がひらく川と人との関係―2020 年球磨川水害の経験から学ぶ』(嘉田由紀子編、農
山漁村文化協会、2021 年)として社会的に公表し、2022 年2月には熊本日日新聞の
「熊日出版文化賞」を受賞していることを申し添えます。

出典 嘉田由紀子「球磨川水系河川整備計画」に関する意見書
(2022 年 5 月 6 日)
令和 4 年 5 月 11 日 参議院災害対策特別委員会 碧水会 嘉田由紀子

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(その2)・流水型という川辺川ダムで環境は守れるのか?
第5章「実施」の 116 頁に「川辺川における流水型ダムの環境保全の取組」「人と河
川との豊かな触れ合い活動の場の保全」との記述があります。また「緑の流域治水の
基本理念」が 88 頁にあります。関連して、以下3点の疑問をださせていただきます。
(1)「地域の宝である清流を積極的に保全する」「環境への影響を最小化する」
(116 頁)とありますが、これまで日本国内での流水型ダムは5ダムしか完成しておら
ず、またいずれも貯水容量 700 万トン以下の小型ダムです。これらのダム建設による
水質影響や、動植物への影響については信頼できるデータがいまだにありません。
よしんばあったとしても、川辺川ダムはこれら小型ダムとくらべて1億 3000 万トンの計
画で既存小型流水型ダムの 20 倍以上です。
日本の河川生態系は専門家によると、大変繊細で、多様性に富んでいます。もし、
穴あきダムだからアユや渓流魚が上流に上ると主張しても、アユや渓流魚は、川底
のコケや水生昆虫を餌にしています。水だけ川底に流れても、水生昆虫は、巨大なコ
ンクリート壁にぶつかって上流へ移動できません。一般的に水生昆虫の幼虫は下流
に流されますが、親は上流にむかって飛ぶことで、上流部にも水生昆虫が毎年生息
できるのです。水だけ流したら、たとえ、河川の空間をコンクリート壁でふさいでも河川
環境が保全できる、という主張は、「木だけ見て森を見ず」という、単一要素還元的な
近視眼であり、河川生態系の本質理解から大きくはずれています。
さらに 1 億 3000 万トンの巨大ダムとなると、水底の流れは 100 メートルを超えると
思われます。そのダム底の真っ暗な水路をアユが果たして遡上するでしょうか?アユ
は明るい河川で、エサを求めて移動します。真っ暗な水路に、まさか電気をつけるか
らアユが移動するとでも主張なさるのでしょうか。そういえば、球磨川中流部の瀬戸石
ダムの横にあった魚道の効果を広報する「川のとっとっと館」では、アユが頭にカンテ
ラをつけている絵がありました。洪水後どうなっているのかわかりませんが、まだ確認
していません。ただ、生き物それぞれの命をつなぐための生息条件を全体として理解
する覚悟をもたずに「環境保全」と軽々しく言うべきではないでしょう。政治も行政も環
境保全を安易に考えすぎています。
(2)流水型ダムで「景観及び人と河川との豊かな触れあい活動の場の保全」(116
頁)とありますが、五木村の人たちも貯水型ダムであったから、そこに水上レジャーの
場をつくり、観光客を呼び込めるとの期待をもって最後に受けいれたのではないでし
ょうか。普段は水を貯めず、川水を流すといいますが、洪水時に1億 3000 万トンをフ
ルに貯水したら、相良村から五木村の川沿いが水没します。五木村中心部の頭地地
域も水没予定地になります。洪水がたまった後、どれほどの泥や砂や石や流木が残
されるか、景観の悪化はふせげません。その洪水残渣物の処理にどれほどの予算が
必要となるでしょう。またそのような川沿いに、人びとが「河川との豊かな触れ合い活
動」ができるでしょうか。言葉の上だけでの「触れあい活動」とは、真に河川を愛し、河
川を美しく次世代のつなぎたいと願う、流域住民に説明がつくでしょうか。
出典 嘉田由紀子「球磨川水系河川整備計画」に関する意見書(2022 年 5 月 6 日)
令和 4 年 5 月 11 日 参議院災害対策特別委員会 碧水会 嘉田由紀子

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(3)「緑の流域治水」の基本理念が 88 頁にあります。その三点目には「流域関係者
が守り受け継いできた地域の宝である清流球磨川を中心とした、かけがえのない球
磨川流域の尊さを理解し、自然環境と共生する社会」を実現とあります。緑豊かな相
良村の山あいに、巨大なコンクリート壁ができ、川底に穴をあけて、アユの生息や清
流が守れると豪語する国や県の見通しを示すべきです。政治家や行政技術者の責務
です。
基本理念の四点目には「球磨川とともに生きる住民の生活・文化・賑わいや、球磨
川への感謝・親しみの想いを次世代にわたって繋いでいく社会」の実現を約束してい
ます。2020 年 7 月4日の水害以降、県や国は、住民参加による「緑の流域治水」とい
いながら、流域治水協議会には、流域の市町村長以外の参加を求めていませんでし
た。河川法 16 条にいう「住民参加」を無視しています。また今回の整備計画づくりの
途中の意見募集でも、時間は短く、公聴会の仕組みも人口が多い人吉市や八代市で
も、人口が少ない水上村などと同じ人数しかわりあてず、住民参加のアリバイづくりに
徹しているように思えてなりません。
次世代にわたって繋いでいく社会の実現のために、本来の住民参画を期待してい
ます。

出典 嘉田由紀子「球磨川水系河川整備計画」に関する意見書
(2022 年 5 月 6 日)
令和 4 年 5 月 11 日 参議院災害対策特別委員会 碧水会 嘉田由紀子

○政府参考人(井上智夫君) まず、委員御指摘の流域治水協議会、これは、昨年の流域治水関連法で基づいている協議会、法定協議会ではなくて、とにかく私ども流域治水を早く進めたいということで、任意の流域治水協議会ということを昨年、一昨年からつくっておりまして、百九の一級水系でも進めてきているところでございます。
その中で、その中にはいろいろ減災協議会とか水防法に基づく協議会とかでの議論とかも全部含めてやってきておるところでございます。令和二年の七月の豪雨で甚大な被害が生じた八代市の中でもこの減災協議会というのを開いて、地域の方々に参加していただいて、市、村の区長、住民代表、消防団員など参加いただきながら、校区単位のコミュニティータイムラインを取組を推進するなど、地域住民が主体的に参加する防災・減災を推進している、そういう取組を進めております。
また、遊水地の整備などを進めていく場合でも、先ほど武田議員の方からもありましたけれども、この地域の方々同士がお話ができるような、地域の住民が意見を交わすような、できるようなワークショップを開催したり、そういうようなものを流域治水協議会の中で共有していく、そういうような多様ないろんな方法を取り組んでいるところでございます。
具体の取組としては、島根県の江の川の下流域においては、堤防等の整備による浸水対策を行うのか、安全な地区、地域への移転をするのか、これ地域住民が意見交換を行っています。
それから、高知県の仁淀川流域においては、避難体制の強化に向けて地域の緊急避難場所について自主防災組織が意見交換を行っており、これらの取組について、その取組の結果について流域治水協議会において共有を図っております。
このように、住民参加の方法は地域ごとに様々なやり方があることから、地域の実情に応じて工夫しながら取組の拡大を行っております。
なお、議員お尋ねの流域治水協議会に限って申しますと、住民が参加している流域治水協議会は五つでございまして、具体には、町内会長、自治会長や防災士会、河川環境団体に参加いただいているところでございます。
○嘉田由紀子君 お詳しくありがとうございます。
住民組織というのは本当に地域地域にそれぞれ歴史的経緯もあり、また、そのときの組織のリーダーシップとか、いろいろありますので、それはより対話性を深めていただけたらと思います。
この後は球磨川の河川整備計画についてお伺いをしたいんですが、二年前の七月四日、球磨川では五十名もの方が溺死をしてしまいました。七月四日です。本当に、私もずうっと二十年以上球磨川に関わってきまして、昭和二十年に六名、あっ、昭和四十年に六名亡くなったということがあったんですけど、今回は五十名と、大変な溺死者が出てしまったんですね。
そういう背景の中で、整備計画がこの四月に原案が示されたんですが、国の方と県の方と全体で三百ページ近くあるんですけど、それを全て見させていただいたんですが、いわゆる費用便益計算、BバイCというのが入っていないんですが、これはどの段階で行う予定なんでしょうか。

○大臣政務官(加藤鮎子君) 球磨川水系におきましては、今後おおむね三十年間の河道掘削、遊水地、流水型ダムなどの具体的な河川整備等の内容をお示しする河川整備計画の原案について、関係住民の皆様からちょうど御意見をお聞きしたところでございます。
今後は、いただいた御意見を踏まえまして河川整備の内容を検討した上で、河川整備計画の案に基づくBバイC、これを算定し公表をする予定でございます。BバイCは、そこで公表する予定でございます。
○嘉田由紀子君 そうすると、今日示した資料の中で、BバイCは、今原案を作り住民意見を聴取している段階ですが、この原案、公表してからBバイCということで、理解でよろしいですか。
○政府参考人(井上智夫君) 嘉田委員の方から配付されている資料のこの原案というようなことを公表して、今住民の意見をいただいているところです。いただいている内容、これまた実際の整備計画に反映すべく、内容を変更したり付け加えたりする必要があります。
その上で、全体としてBバイCがどれくらいになっているのかということを、この整備計画の案の公表の時点でBバイCとともに発表したいというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
この整備計画原案に対して、関係住民意見聴取が五月六日締切りでした。私も一住民として二つ意見を出させていただいた、それが今日の資料の中にあります。一つは、川辺川ダム建設で流域住民の命を守れるのか、二点目は、流水型という川辺川ダムで環境は守れるのかという意見でございます。
この意見をどう国が対応を取っていただけるのか、県が対応を取っていただけるのか、これからの議論だと思いますが、特に私どもが気にしておりますのは、この整備計画原案の中に、過去の治水の経過、鉄橋がどれだけ壊れたとか道路がどれだけ壊れたということがあるんですけど、溺死者の情報が全くないんですね。
先ほど来いろいろ出ていますけれども、やはり死者というのは一番の被害者だと思います。その溺死者の情報が全く整備計画の中にないんですが、国土交通省さんとしては、被災者の状況調査、国として行う必要性はどうお考えでしょうか。
○政府参考人(井上智夫君) 先生を含め御意見いただいておりますし、住民の団体の方とかからも同様なことをいただいておりますが、この溺死者のことについてどう考えるか。
私ども、この令和二年の七月豪雨で亡くなられた方の、どういう原因なのか、私どもも非常に関心があるところですし、嘉田委員の出された報告書というのを読ませていただいているところでございます。実際、私ども、ダムがなかった令和二年のときどうだったのか、それから、もしダムを造ったとしたらどれくらいこの浸水というのは防げるのかどうかということ、それを調査してきているところでございます。
それで見ていると、委員の御指摘のとおり、支川からあふれて、山田川とかからあふれてですね、その七月四日の午前六時台に氾濫が発生して、その後、球磨川からの氾濫が加わったということが再現の確認あるいは画像からも確認できているところでございます。
これらの氾濫要因について、山田川と球磨川本川の合流点付近の水位を分析したところ、本川、球磨川本川の水位上昇に伴うバックウオーター、この本川が高いことで支川からの水が流れ切れないということが分かってまいりました。この水面勾配がほとんどない状態で、球磨川の水位と同じような高さになっているということです。ダムを一方で整備すると、この本川の水位を低下させることで、このバックウオーターによる山田川からの支川の氾濫を防止又は減少させることができるというふうに考えられます。
例えば、この四月に公表した河川整備計画の原案の中にも、この整備計画を実施した場合の効果を試算して、球磨川本川の水位が低下することによって、令和二年七月豪雨と同様の洪水が発生した場合には、山田川からの氾濫は発生しないという結果を得ているところでございます。
溺死時間についても、先生の方からの御指摘が報告書の中にございました。午前七時から八時頃から溺死が始まっているんではないか、浸水が始まっているんではないかというふうなことの御指摘もありましたけれども、ダムをもし整備したとしたならば、ダムの効果は午前五時頃から発揮されて、午前八時頃には山田川からの堤防よりも一メートルから二メーター低い水位まで低下するという結果となりました。
このようなことも踏まえて、この山田川の堤防、あるいは掘削ということも考えていきますし、流域全体の治水安全度の向上を図ってまいりたいと考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
今の山田川のデータについては、今日はシミュレーション結果もありませんので、是非見せていただいて、そして、住民の方が去年の五月三十一日に国土交通省に溺死者調査をしてほしいという申入れもしておりますので、その辺り、住民の方が現場で二百人ほどの聞き取りをしておりますので、その住民の方自身が目の前で見ていた、その方たちが納得できるような説明を今のところでしていただけますか。あわせて、はい、これはこれで結構です。
あわせて、山田川と万江川、万江川というのはかなりもう、ちょうど人吉市の最上流ですけれども、あそこから江戸時代の相良藩が農業用水を引いて、それが御溝川というので、人吉市内をずっとくまなく水路があります。その御溝川でも何人も亡くなっております。その万江川から御溝川についても、川辺川ができたら水位低下できるということを説明することは可能なんでしょうか。
○政府参考人(井上智夫君) 先ほど申しました山田川のその支川の水位の変化につきましては、昨年の十一月のときの検証の中でも公表はしておりますが、先生御指摘のとおり、まだそれが住民の方々に十分伝わっていないというようなことかもしれませんので、そういうことについては積極的に情報を提示して、御理解いただけるようにしていきたいと思いますし、また、今おっしゃいました万江川といった支川、そこから分派している御溝川のことについても、これはまた別な形での農業用水路からあふれた内水の停滞ということがあります。これについては、しっかり内水の氾濫解析も行いながら、課題や改善点、考えていきたいというふうに考えているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
そういう機会をまた是非住民の方とつくっていただけたらと思います。
特に、万江川も山田川も、それからその下の球磨村も山崩れが大変ひどいんです。そのところも見ていただいているとは思うんですけれども、河川整備計画に、山のことは数行しか書いていない。しかも、流域治水、言うまでもなく、山の水源の一滴から治めるというのが流域治水の原点でございますので、この辺りも是非、近い段階で住民の皆さんとそういう場をつくっていただけたらと思います。時間もございませんので、是非次の対話の時間をつくっていただきたいと。
それで、この河川整備計画、五月三日に熊本日日新聞が、公聴会で聞いた意見書も全部日日新聞の一面でまとめております。そういうところを見ていただくと、まだまだ納得できないと、説明が足らないという意見が圧倒的に多いです。
しかも、川辺川ダムというのは、川辺川、球磨川は掘り込み河川ですから、本流の影響が町に入るというよりも、どちらかというと、山から支川の影響、これは地元の人がよくよくもう昔から知っておりますので、その辺をできるだけ、まさに流域治水のモデルになるような球磨川ですから、そういう場をつくっていただけたらと思います。
もうお時間迫っておりますので、最後に防災におけるソフト対策の必要性について、実はその五十名の溺死者を調べましたら、四点問題が出てきました。避難の判断。それから住宅事情、平家で亡くなっている方がとっても多いです。それから、足腰が移動できるかどうかということ。二階家であっても、二階に逃げられなくて亡くなった方も五名おられました、五十名のうち。それから、隣近所との社会関係。避難を呼びかけてもらえるか。この四点は、まさにソフト対策なんですね。
防災大臣、命を守るためのソフト対策の必要性、重要性についてお話しいただけますか。
○国務大臣(二之湯智君) 委員御指摘のように、防災はハードだけでは十分ではございません。ソフト対策が非常に重要であると、このように私も思っております。私は、防災教育を通じて住民の意識を高めていくことが極めて重要であると認識をいたしております。
昨年の十一月に、私は岩手県の釜石市を訪問いたしまして、そこで、東日本大震災の当時、小学校の校長先生をしている方からお話を伺いました。その小学校では日頃からいわゆる防災教育というものを熱心にされておりまして、あの当時、地震が来て、すぐさま日頃の防災教育の成果を発揮して皆さんが高いところに逃れて全員が助かったというお話を伺いまして、大変感銘を受けたわけでございます。
そういうことで、防災教育を通じて防災意識を醸成して、そして、そういう災害が起きたときに、自らの命は自ら守る、そしてまた、隣近所の人もお互いに助け合って災害から逃れるということも非常に重要だと、私自身も防災担当大臣としてあちこちでお話をしているわけでございます。
委員御指摘のソフト対策は非常に重要だと改めて思っておる次第でございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
釜石は、鵜住居小学校を中心に釜石の奇跡と言われておりましたけど、あれは奇跡でも何でもなくて、備えていたと、群馬大学の片田先生が過去十年間びっちりと入って、その辺り結果が出たんだろうと思います。
もうお時間ですので、防災大臣、また国土交通省の皆さん、ありがとうございました。
以上で終わります。ありがとうございます。

 

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