2022年5月10日法務委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。

 まず最初に、質問というよりは意見を述べさせていただきますが、先日の参考人質疑でも、この期間限定裁判、今までずっと議論になってきましたけれども、私は、その裁判を受ける国民の側からして選択肢が増えることはポジティブに評価してもいいのではないかということで参考人にお伺いしました。

特に当事者双方が合意した場合、私はずっと家族問題を扱っておりますので、夫と妻が高葛藤で、そして単独親権の場合に子供を奪い合う、こういうときに、子供の最善の利益を考えると長引かない方がいいんですね。でも、子供は声を上げられないということで、父母が合意をした高葛藤の離婚あるいはDV問題などは、早く結論出してあげることが子供の最善の利益につながるのではないのかと。
これについて参考人の国府弁護士さんは、そういうのはそれで選択肢としてはよろしいでしょうと。あわせて、例えば労働問題ですけれども、いつまでも賃金払われないとかいうことだと生活が成り立たない、それもある程度期間限定というのは意味があるだろうということで、子供あるいは労働者、国民の側の選択肢が増えることが、例えば先ほど来、高良議員が、どうしても裁判というのは長く掛かってしまうからちゅうちょするという、いろいろ考えると三分の一ぐらいはその辺あるかもしれませんので、そういうところで、これは意見として申し上げます。
今日御質問させていただきたいのは、ウエブの家事調停の問題でございます。
最高裁判所、昨年、東京、大阪、名古屋、福岡でウエブ家事調停、試行されておられます。最高裁判所にお聞きしたいんですが、現時点までの実施状況と、当事者、裁判官、調停委員などの利用者からの反応はどのようなものでしょうか。お願いします。

○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、令和三年十二月から、東京、大阪、名古屋、福岡の四つの家庭裁判所で順次家事調停手続のウエブ会議の試行を開始しております。

令和四年三月末までのウエブ会議の実施件数は、四つの家庭裁判所を合わせまして合計三百二十四件となってございます。
ウエブ会議を利用されました当事者の方、裁判官、調停委員などの反応としましては、例えば、いずれの立場からも、お互いの表情やうなずいている様子が見えることでコミュニケーションが取りやすいといった感想があるほか、当事者の方からの声としまして、実際の調停室で調停をしているような気持ちになったといった感想や、相手方当事者と同じ建物に行かなくてよいことで安心して調停の話合いに臨むことができたといった感想があったと聞いているところでございます。
おおむね好意的な反応をいただいているものと承知しております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
特にDVなどでもう近くにいることが怖いというようなケースも伺っておりますので、そういう安心感というのはあるだろうと今理解させていただきました。
今後、民事訴訟、人事訴訟、家事事件の手続の中で、ウエブ会議を活用することについてどのような課題が生じると想定なさっているでしょうか。また、その課題解決するためにどのような方向を考えておられるか、御説明いただけますか。
○最高裁判所長官代理者(門田友昌君) お答えいたします。

 現在も地方裁判所の争点整理手続ではウエブ会議を用いた手続が行われておりますけれども、これは基本的には弁護士が訴訟代理人に就いている場合に利用されているものでございます。

これに対し、本法案が成立しまして施行されますと、ウエブ会議を用いて実施可能な手続が拡大することとなりまして、弁護士以外の一般の方々がウエブ会議を利用する局面も増えることになると考えられますので、そのような局面で、ウエブ会議で手続に参加する方の本人確認をどのように行うのか、同席が許されない第三者がいないことをどうやって確認するのかといった点などが課題になり得るところかと存じます。
ウエブ会議に参加している当事者等が本人であることを確認する方法につきましては、各裁判官がそれぞれの事件に応じた適切な方法で行うことになると考えられますので一概には申し上げにくいところですけれども、例えばウエブ会議の画面上で写真付身分証明書と顔を照合するなどの方法で本人確認を行うといったことが考えられるところでございます。
また、周りに第三者が所在しないことの確認につきましては、現在の運用におきましても、ウエブ会議の冒頭で同席者の有無について確認をしまして、場合によってはカメラを動かして室内を撮影するよう指示するなどして、裁判所が傍聴を許可していない第三者が存在しないことを確認するといった対応をしているところでございまして、改正法の下でも同様の対応が考えられるところでございます。
このような形で、改正法の下でウエブ会議の利用局面が広がることとなった後も、引き続き適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
本人確認やあるいは第三者の存在、実はこれ、国会の方で委員会や本会議をウエブでというときにも出されているテーマだと思います。今御指摘いただきました課題については、法務省では更にどのような施策が必要だと御認識なさっておられるでしょうか。法務大臣、お願いいたします。

○国務大臣(古川禎久君) 今後、ウエブ会議の活用例というものが増えていくものと考えられますが、その運用の積み重ねの中でウエブ会議が有効な事案や場面などのノウハウを蓄積をしていって、また、今御指摘もありました本人確認などのそういう工夫についても、この情報を共有するなどの取組が有益であるというふうに考えております。
 そのような観点から、この改正法が成立をしてウエブ会議が更に広がることになった場合においても、この活用の状況等を注視をしながら見ていきたいというふうに考えています。
○嘉田由紀子君 済みません、ちょっと技術的なことを大臣に伺ってしまいまして、失礼いたしました。
 今回の民事訴訟法の改正によるIT化に関連しまして、実際の裁判手続の中でウエブ会議を行う際に、機器の整備状況、あるいはITスキルの向上などについて技術的な支援はあるでしょうか。最高裁判所さんにお願いします。
○最高裁判所長官代理者(門田友昌君) お答えいたします。
 現在も全国の地方裁判所において、必要な関連機器等を整備した上でウエブ会議を用いた手続が行われておりますが、これはマイクロソフト社のチームズという一般的なソフトを利用しているものでございまして、利用するのに高度な専門的なITスキルを要するといった複雑なものではございませんで、裁判所の職員においてもそれほどの困難もなくこれを利用することができておるという状況でございます。そのことは当事者の側においても同様と思われるところでございまして、実際、ウエブ会議の実施件数は、月ごとの増減はありますけれども、全体としては着実に増加しているところでございます。
 いずれにしましても、改正法下においても手続が円滑に実施されるよう適切に対応してまいりたいと考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 先ほども山下委員から、どうしても支部とか遠隔地が遅くなるということを御指摘くださいましたけれども、逆に遠隔地こそ先にやってほしいということですよね。そういう要望も出させていただきます。
 それから、次ですが、家事事件の手続のウエブ会議のメリット、先ほど来もありましたけれども、期日の設定が容易となる。実は、本当に今、コロナの問題もあり、家族で問題抱えながら、期日が入らないんだと、その間にどんどん子供さんは成長する、あるいはお互いの不信感が高まるというようなことも、悪影響が出ておりますので、一刻も早く紛争を解決したいと考えている当事者の利益になると思いますので、ここはできるだけ遠隔地も優先的にしながら、スキルとそれから技術の方を進めていただけたらと思います。
 その一方で、特に子供の監護権、親権に関わる紛争が含まれる場合には、調停委員や裁判官が当事者と実際に対面することによって子供の養育に向けた当事者間の関係をどう構築したら子供の最善の利益につながるのかと、より丁寧に評価する機会が失われてしまうということもあるのではないのかと懸念もされます。
 そこで、最高裁判所さんにお聞きしますけれども、裁判の迅速化と、例えば共同養育計画策定などに向けた当事者の合意形成に向けた丁寧なプロセスとの両立、どのように図るべきだとお考えでしょうか。お願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 家事調停手続におけるウエブ会議の導入のメリットの一つとして、当事者の期日への出頭負担の軽減が図られるという点がございまして、その結果として、期日調整も容易となり、期日間隔が短縮するなど、迅速な解決という当事者のニーズにもかなうものと考えているところでございます。
 同時に、委員御指摘のとおり、特に子供の監護権や親権に関わる紛争などでは、子の利益に十分に配慮した当事者間の合意形成に向けて丁寧なプロセスが求められるものと考えられますところ、調停手続においてウエブ会議を利用する場合でありましても、当事者間の合意形成に向け丁寧な調停運営を行うべきことに変わりはないものと承知しております。
 個々の事件におきまして、ウエブ会議を利用するか否かを含め、具体的な手続選択につきましては各調停委員会が判断するところでございますが、子供の監護権や親権が争いとなっているかなど、事案の内容や協議の進捗状況、ウエブ会議の利用に関する当事者の御意向、出頭が困難な事情など、様々な事情を考慮いたしましてウエブ会議を利用するか否かを判断することになるものと考えております。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
 いつも申し上げることでございますけれども、本当に子供は日々成長していきます。そういう中で、家族の問題は長引けば長引くほどお互いの不信、そして反発も高まってくるというようなことがたくさん私も現場で出会っております。どうかこの辺り、子供の最善の利益が実現できますように、今のIT化を活用しながら、また裁判の期間限定というような新しい選択肢も活用しながら進めていただけたらと思います。
 ありがとうございました。以上で終わります。
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