○委員長(矢倉克夫君) 民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいている参考人は、一橋大学大学院法学研究科教授杉山悦子君、日本司法書士会連合会会長小澤吉徳君及び弁護士国府泰道君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
【略】
○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
それぞれの御専門の立場からの参考人御意見、ありがとうございました。大変参考になりました。
まず、杉山委員に二点お伺いしたいと思います。
一点は、かなり総論的なことなんですけど、私、アメリカに留学をし、またアメリカで特に環境裁判とかあるいは家事裁判などを勉強したことがありまして、どちらかというと、日本の司法制度と比べるとアメリカの裁判官はより独立的で、それで日本の裁判官が官僚制的なところで、前例踏襲、そして政府・与党の方針には反論しない、そういう司法の判断が多いと思うんですけれども、その辺り、アメリカの司法制度も研究、勉強していらして、裁判官の独立を前提とした場合、紛争解決処理機関として、裁判所は、日本の裁判所はどんな地位を占めている、あるいは改善方法があるかどうか、少し御意見をいただけたら有り難いです。
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
大変難しい問題でありますのですぐにお答えできるかどうか分かりませんけれども、一応日本の裁判官は官僚制であって、アメリカは選任方法が違うという点では違いますけれども、一応裁判官の独立という点は憲法上は保障されているわけでありまして、基本的には個々の裁判に当たって裁判官は自身が考えることに基づいて法律を適用しているというふうには理解をしているところではあります。したがって、官僚制でありますけれども、その点は保障がされているのではないかというふうには理解をしているところであります。これでよろしいですか。
○嘉田由紀子君 結構です、はい、そういう御理解で。ありがとうございます。
今のはかなり抽象的な総論なんですけど、二点目は、まさに今回のIT化とそれから期間限定裁判ということに関わって具体的にお伺いしたいんですが、期間限定裁判の問題は、私は、裁判の被告、原告なり、当事者の社会関係によって大きく違うんじゃないのかと。
例えば、消費者問題でしたら相手は大企業だったり、あるいは公害訴訟の問題でしたら、これも相手が大企業だったり、あるいは労働問題だったら、またこれも相手が大企業だったり、あるいは災害の被害とか、あるいは原発問題などですと相手が国家という、それこそ大きな組織だったり、そういうところでは期間限定というのはかなり問題で、多分そういう方向は選ばれないと思うんですけれども、私は専ら子供の幸せを実現するために日本の家族制度はどうあるべきかということを、ずっともうここ、三年目になるんですが、一貫して考えさせていただいております。
そうすると、夫と妻が離婚訴訟などのときには、どちらかというと子供はそこに声を上げられないので、夫と妻が、しかも日本の場合には離婚のとき、単独親権なので子供を奪い合ってしまうというような構造。そうすると、夫と妻の持っているリソースというのは、消費者と大企業と、あるいは国家と住民というほどアンバランスではないんですね。そういう場合には、できるだけ速やかに、しかも子供のためには、ちゃんとオンラインででも話ができて、そして期日が短縮できると。子供は日々成長しますので、両親がずっと長く争っていることは子供にとって良くない。まあ、両親が争うこと自身を子供の虐待というような判断もありますので、そういう状況の中で、杉山さんに、IT化なり、あるいは期間限定というのは、こういう家事事件、家族事件などには有利じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○参考人(杉山悦子君) 御質問ありがとうございます。
まず、この法定の期間制限というものは、基本的にはBツーBといいますか、企業間の紛争などを想定しているのではないかというふうに理解をしておりまして、つまり、裁判所に来る前にある程度当事者間で自主的に対等な立場で話合いなんかをして、何が争点で何が争点でないのかというのをきちんと理解できるような人たちが使う、もちろんそれ以外にも使うことはあると思いますけれども、特に経済界からのニーズというのはそういうところにあるかと思いまして、実際にも、当事者間でアンバランスがある場合にはこの制度を使うのは良くないということで、消費者契約に関する訴えとか労働紛争はきちんとこの手続の対象外であるということにはなっているところです。
家事事件、子供の幸せの問題に関しましては、家族法、民法の話として法制審議会でも今議論がされているところでありますし、手続という関係になりますと、家事事件手続、調停とか審判とかそちらになっていきますので、今回は、民事訴訟法といいまして、財産権に関する紛争に関する手続でIT化をまず進めるという話でありますが、その後引き続いて、その子供が関わるような紛争についてIT化はどこまで進めるのが適当であるのかということの審議が進んでいくことになりますので、基本的には今回の法律案をベースにいかに応用できるのか、修正する必要性があるのかというのを今後考えていくということになろうかと思います。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます、御丁寧に。
次に、小澤参考人にお伺いしたいんですが、本当に司法書士の皆さん、全国で活躍していただきまして、ありがとうございます。
今日も地図を出していただいていますけれども、このIT化が、それぞれの地域、本当に私は、自治体の経営を担っていた立場から、同じ県内でも本当に山間部と大都会と違うと、全国で大変地域差が大きいと思うんですが、こちらでこのオンライン利用率を高める努力をいろいろしていただいていますけれども、この地方による違い、あるいは男女による違い、年齢による違い、この三つで何か傾向が見えるでしょうか。それによってどう対策を立てたらいいかということの御意見いただけたら幸いです。
○参考人(小澤吉徳君) 御質問どうもありがとうございます。
資料を付けさせていただいたこの司法書士事務所の点在状況、御覧になっていただければお分かりになると思いますけれども、司法書士は全国に津々浦々に存在しているというところがございまして、むしろ私は、IT化が行われることによっていわゆる都市の一極集中から離れることができるというふうな、そんなメリットも私はあると思っていまして、一方、やはり依頼者側から考えますと、やはり顔が見える形での依頼を望む依頼人が多うございますので、ですので、そういう意味でいいますと、やはり地方にいる司法書士、弁護士さんもそうでしょうけれども、こそがこのIT化の、何というんですかね、恩恵をより享受できるのではないかなどというふうにも考えているところでございます。
回答になったでしょうか。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
本人訴訟の場合に、女性の参画は少ないかもしれないんですが、このIT利用で、現場で見ていらして、男女差というのはどうでしょう。
○参考人(小澤吉徳君) 御質問ありがとうございます。
私の、申し訳ございませんが、本人訴訟の当事者の男女比率までは存じ上げてはないのですけれども、私、地元静岡なので、静岡簡易裁判所に実際自分の事件として出廷することは間々あるわけでございますが、そこで傍聴している限りにおいて、男性ばかりとか女性ばかりということではなく、まあいずれの当事者もたくさんいらっしゃるなと、そういう印象ですね。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
これからますます財産関係なり女性が関わってくる領域でもございますので、また現場でのサポートをよろしくお願いいたします。
国府参考人に次にお伺いしたいんですが、本日の御主張、極めてよく分かりました。全国の弁護士会あるいは社説などでこの期間限定裁判への懸念を社会的にも示されているということの御主張はよく理解をできました。
その上で、先ほど杉山参考人にお伺いしたことの続きなんですが、それぞれ原告、被告なり、あるいは関係者が、社会的リソースなりあるいは法的リソースがアンバランスの場合には、もちろんこの期間限定というのは問題だろうと思いますが、家族法の問題は特に、それぞれそんなにアンバランスではない。また、家族の問題、御存じのように一ケースごとに本当に情念が関わってくるので、長引けば幾らでも長引かせることができる。しかし、例えば子供が関わる離婚などですと、あるいはDVなどが関わってくると、これは短期間で早く結論を出してあげる方が家族全体の福祉の向上になるだろうと私は思っておりまして、ですから、DVが絡む高葛藤の離婚問題などは、このIT化と短期の期間限定というのは、選択肢として、当人たちが選べば選択肢としてはメリットがあるんじゃないのかと思うんですが、その辺について、三十八年弁護士をやっていらしたという御経験から、いかがでしょうか。
○参考人(国府泰道君) 私の問題意識は、嘉田委員がおっしゃったのには同意できます。というのは、我々は、こういう期間限定訴訟を一般的な訴訟制度として盛り込むことが問題だというふうに申し上げています。ですから、個別事件類型ごとにそれに合った制度をつくっていくというのは御指摘のとおりだと思いますね。
例えば、労働審判についても、これは短期間で手続を終結するような仕組みがつくられております。労働審判については、問題があるという御意見もあるんだけど、労働者はいつまでも例えば未払給料が払われていないのは困る、生活がやっていけない、だから短期間でやってもらう制度は、完全に十分とは言えないけど、まあそこそここれは使い勝手がいいよねというのもあるわけですから、事案事案において適切な制度が組み立てられていくという意味で、嘉田委員がおっしゃったような家事事件について、こういう必要性があるからもっと簡易迅速な手続を考えようねというのは考え方です。
ですから、僕は、こういった手続については、今の民訴法改正の中で議論するんではなくて、別の場でしっかり議論をしていただきたいということで、私がこの手続に反対する立場と、嘉田委員が今おっしゃっている御意見とは矛盾するものではないというふうに理解しております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。大変端的な御意見いただきました。
もう時間ですので、以上で終わります。ありがとうございました。