2022年3月16日法務委員会【確定稿】

 

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。

本日は、法務行政における児童虐待防止に係る取組について幾つか質問させていただきます。
先回、三月八日でございますけれども、日本のそれこそ明治民法以来、単独親権、子供は家の跡取りということを規定されて、先ほど山添議員もおっしゃっておられましたけれども、明治民法がいまだに残っているのが離婚後の単独親権、八百十九条です。
その中で、子供が、親子引き離されるということが実態としてございます。そのことにつきまして、先回、法務大臣は、子供には何の罪もない、子供の将来にとって、可能性をそぐような、傷を残すようなことにならないよう、制度の見直しをしていくとおっしゃっていただきました。ここのところは大変重要だと思っております。
今日、実は新聞記事を二つお出しさせていただきました。一つは、昨年の八月一日に大津市で、私、ふだんから行き来しているところなので地名を見たらすぐ分かるんですけど、学校もすぐ分かる、そこで十七歳の兄が妹の面倒を見ていて、実際家で虐待をして百か所ほど傷を付けたんだけれども、公園に運んで遊具から落ちたと、一旦偽装をしたんですね。お母さんはずっと帰ってないと。だから、お母さんはお兄ちゃんに妹を預けて何日もということ、これ、後から、今滋賀県の方でいろいろ委員会もつくって調べさせていただいておりますけれども、五人子供さんがいて、京都、大阪、滋賀、それぞれの養護施設、お父さんの姿が全く見えてきません。それぞれが別のお父さんだというようなところで、本当にある意味でお母さんも苦しみながらこういう状態だと。
それからもう一つ、裏に、これはつい最近ですけれども、十月の、いえいえ、三月ですね、埼玉県の本庄市で、こちらも母、息子一人の母子家庭ですけど、五歳の男の子を言わば一月に殺して床下に埋めていたということで、実は本庄市というのは私の出身地で、市長もよく存じ上げているんです。吉田信解市長、ここにもコメントしていますけど、本当に子育て政策しっかりやっている市でもこういうことが起きてしまうということで、この二つの事案を取り上げさせていただきましたけれども、私の尊敬する元厚労省の官僚さんで、増田雅暢さんという方が、これでいいのか少子化対策と、厚労省の政策をずっとやってこられて、三つの問題を挙げています。
一つは、特定の要援護者に対する対策として発展してきた福祉というところが不十分だ、サービスの問題。それから二つ目は、十分な予算を入れていない、もう子育ては親の責任だから、親が面倒見なさい。三つ目、これが大変大事なんですけど、戦前の家族制度と戦後の家族観との対立。ですから、先ほどの山添議員のお話にもあります、それから今の夫婦別氏制度もそうですね、明治民法がそのまま残っている。子供の片親親権も明治民法がそのまま残っている。ただ、社会的様相は、逆に今、子供の片親親権は、かつては母親が親権取れなくて男性だけだったのが、今は逆に男性が排除されているという状態になっております。
そういうところで、具体的に、無力な子供が犠牲となってしまう痛ましい事件が本当に多いんですけれども、古川法務大臣の児童虐待防止に向けた御決意をお聞かせいただけたらと思います。
また同時に、児童虐待を実効的に防止するために、子供の人権擁護の取組、更に強化するお考えはあるでしょうか。例えば、児童相談所、警察、学校など、国及び自治体の関係機関、地域社会との間での相互理解を深めるために、子供の人権擁護を任務とする法務省、どのようなリーダーシップを発揮できるとお考えでしょうか。古川法務大臣の御見解をお願いいたします。
○国務大臣(古川禎久君) 今、大変大きなテーマについて御質問いただいたというふうに思います。

児童虐待というものは、今委員からもこの新聞報道を二例ほど御紹介いただきましたけれども、毎日のように報道されるこの児童虐待の事例を聞くにつけ、もう本当にもう胸が痛むといいますか、聞くに堪えないというのがもう率直なところです。いかなる事情があるにせよ、小さな子供を、どんな理由があるにせよ虐待をするということは、もうこれは、何と申しますか、これはもうあってはならないことでありまして、やはり社会全体からこういうものは根絶をしていかなきゃならぬのだと、そういう大きな重大な課題だというふうに受け止めております。
法務省としては、これまでも様々な取組をいたしておるわけです。例えば、児童虐待の発生防止、早期発見でありますとか、児童虐待発生時の迅速、的確な対応、こういうことは一つのポイントだと思います。例えば、人権擁護機関における相談等を通じた児童虐待の早期発見、早期対応、これは小中学校でSOSミニレターというようなものを通じて、子供から直接SOSの声を酌み取ろうという試みなわけですけれども、あるいは法務少年支援センターにおける心理学等の専門的、科学的知見を活用した地域の子供やその保護者等への支援、こういったことを実施しております。
この今御紹介しました法務少年支援センターの取組については、実は私、昨年、就任後、三重県の津のセンターを視察をいたしました。職員や地域の方々からの生の声を聞くと同時に、本当に大変熱心に取り組んでおられる姿を見るにつけ、大変試みの重要性というものを身をもって感じてきたところであります。
こうした取組を進めるに当たりまして、関係機関との連携は非常に重要だというふうに考えております。政府の方針におきましても、児童虐待に中心的に対応する児童相談所、それと他の関係機関との連携強化が掲げられております。
そこで、法務省では、この児童相談所等との連携を更に強化するために、令和二年の二月に法務省児童虐待防止対策強化プランを策定しまして、各地の法務省関係機関に児童虐待担当窓口を置いて、それを児童相談所等に通知する、あるいは法務省関係機関が提供し得る資源、ノウハウを充実させ、それを児童相談所等に提示するなどの取組を行っています。先ほど法務少年支援センターの取組について触れさせていただいたわけですけれども、ここでは、法務省が様々な、先ほど心理学などの科学的な知見を持っているというふうに御紹介しましたけれども、そのような資源やノウハウというものをできるだけ活用する。
その三重の津のセンターに行ったときに、私、様々お声を聞いたんですけれども、非行に走っている子供あるいはそれに苦しむ御家族、もうそういう方々が早くこの法務少年支援センターにもっと早く何か出会っていて、そして、ここで科学的な知見やノウハウを借りて問題の所在にもう少し迫ることができればもっと早く解決のために何かができたかもしれないのにという切実なお声もいっぱい聞いたところです。つまり、その暗闇の中で苦しんでいる若者や御家族、少年や御家族、こういう人たちにやっぱり光を届ける、法務少年支援センターにはそういう光を届ける力があるんだということを実感したわけです。
ですから、このような持てる資源、持てるノウハウを生かして、そして関係機関との連携ですね、これをより緻密に連携を取ることによって、本当にこの暗闇の中にいる、あるいは児童虐待、そういう苦しんでいるところにちゃんと手が差し伸べられていくように、この緻密なですね、神は細部に宿ると申しますけれども、そういう取組が一層これは大事だなということを身をもって感じているところです。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。法務大臣の大変心強い決意を聞かせていただきました。
現場で本当に一人ずつ、児童相談所、そして警察の方、それから自治体、苦労していただいておりますけど、実は、ちょっと私自身知事になってすぐに児童相談所とかいろいろ見させていただいたんですけど、お父さんがナイフを持って入ってくるとか、かなり厳しい現場があったので、警察を出向してもらうような手続、配慮をしたんですが、結構現場に、福祉の現場にも警察は入ってくれるなという声が当時ありました。二〇〇八年、九年です。それが今でも。ですから、意外とこの警察の連携とそれから福祉あるいは学校も含めて、壁があるんですね。ここのところは是非法務省の方で、今の御決意に従って、また自治体が、都道府県知事また市区町村長、それぞれの現場の皆さんの命預かっているわけですから、首長さんが動きやすいように、法務省も検察庁と併せて支援をいただけたらと思います。
具体的に、では検察における警察及び児童相談所との連携ですけど、二〇一五年、平成二十七年の十月二十八日に、最高検察庁刑事部長通知では、各地方検察庁に児童が被害者又は参考人である事件についての相談窓口を設置し、日頃から警察や児童相談所の各担当者との緊密な情報交換を行うとされております。また、二〇一八年、平成三十年の七月二十四日には、最高検察庁刑事部長、公判部長通知で、警察及び児童相談所との情報共有が重要であるとされております。
そこで、法務省さんにお聞きしたいんですが、各地方検察庁に設置された相談窓口の活動ですが、児童虐待が発生してから虐待者の送致、立件までの対応を円滑化することを目指しているものと考えられますが、虐待の防止、予防についてですね、どの程度の効果が上がっていると評価なさっておられるでしょうか。警察及び児童相談所との情報共有はどの程度行われ、どんな課題があるか、どのように認識なさっておられるか、教えていただけますか。
○政府参考人(川原隆司君) お答えをいたします。

刑事事件の捜査、公判を担っている検察当局におきましては、児童虐待事案が発生した場合の対応といたしまして、委員御指摘のとおり、平成二十七年の最高検察庁による通知におきまして、児童の負担軽減及び供述の信用性確保の観点から、各地方検察庁において、児童が被害者又は参考人である事件について、相談窓口をつくり緊密な情報交換を行うこと、警察や児童相談所から情報提供を受け次第、速やかに警察や児童相談所の担当者と協議を行い、検察、警察、児童相談所の三機関のうちの代表者が児童から聴取する代表者聴取の実施も含め、対応方針を検討することなどとしております。
また、これも委員御指摘の平成三十年の最高検察庁による通知におきましては、児童が被害者又は参考人である事件において、代表者聴取を実施した後においても、刑罰権を適切に行使するとともに、再犯により児童が繰り返し被害を受けることがないようにするとの観点から、例えば、事件の処分の際などに警察及び児童相談所の間で行う打合せなど、適宜の機会を通じ、必要な情報共有を行うことなどとされたものと承知しております。
実際に関係機関との緊密な連携が進み、適切な情報共有がなされた一つの成果といたしまして、例えば、児童を対象とする代表者聴取は、法務省で把握している限りの数字では、平成二十七年の最高検察庁による通知以降、その実施件数は年々増えており、令和二年度末までの間の実施件数は累計で六千八百件を超え、検察の現場に着実に定着しており、児童虐待事案に対する適切な対処に一定の成果を上げているものと理解しております。
引き続き、検察当局におきましては、これらの通知の趣旨に基づき、警察及び児童相談所等の関係機関と緊密に連携し、児童虐待事案に厳正かつ適切に対処していくものと承知しています。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。既に六千八百件把握していただいているということでございます。
実は、先ほどの大津の事案も、七月二十一日にコンビニで万引きをする、お金がないと言っているときに警察さんが関わってくださったんですけど、その後、八月四日までちょっと延びてしまったんですね。それから、この本庄の事案は、実は警察さんが市の連絡で入ってくださって、で、家に埋められていたことが発見されている。
ですから、事後的、予防を含めてもっともっと、警察はそもそも元々、犯罪者をつくるところだという抵抗が現場にあるんですけど、命を救うのが警察の役割ですよね。そこの本来の警察の役割を皆さんに知っていただいて、予防的なところで御活躍いただけたらと思います。
その予防的なところで、法務省の人権擁護局では子供の人権に関する取組、様々していただいておりますけれども、具体的に児童虐待の防止に向けてどの程度の効果が上がっていると評価をなさっておられるでしょうか。また、この間接的働きかけ、直接的、この国民の御期待、どのようになっているか、教えていただけたら有り難いです。
○政府参考人(松下裕子君) お答えいたします。

法務省の人権擁護機関におきましては、子どものSOSミニレターなどを端緒といたしまして具体的な虐待事案を認知し、児童相談所等と連携して一時保護につなげた事案、事例も幾つかございまして、私どもの取組により一定の効果は上げているものと考えております。
また、乳幼児など自分から相談ができないような子供に対する虐待事案を早期に発見するためには、その周囲にいる方々の協力を広げていくことが大切だと考えております。
その意味で、大人の方々の目にも止まるような人権啓発活動といたしまして、インターネットを利用する際に表示されるテキスト広告を通じて私どものホームページに誘導する、あるいは、動画配信サイトを利用する際に自動的に再生されるインストリーム広告というのがございまして、これによって啓発動画を自動的に再生していますが、それは、近隣の児童虐待に気が付いた周囲の大人が通報するというような内容のものを配信したりしております。また、関係機関との連携を意識して、厚労省が所管されている児童相談所虐待対応ダイヤル一八九を周知するといったことも行っております。
また、児童虐待の加害者に対しましては、その人たちが抱える様々な悩みに対処するために関係機関とより連携していくことも重要だと考えておりまして、その悩みに適した相談窓口に御相談できるように、一八九のほか、法律相談援助、あるいは法務少年支援センター等の相談窓口等の周知に努めておりまして、今後ともこうした取組を推進してまいりたいと考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
「189」の映画、私、見せていただきましたけれども、あそこでも警察関係の方が児童相談所に入っていて、それで現場を押さえて命を救ったというような物語にもなっております。
古川大臣、「189」見ておられるでしょうか。まだでしたら是非、ちょっと二時間近く掛かりますけれども、とってもよくできた児童虐待防止のための映画で、あれはもっともっと国民目線で見ていけたらと思っております。
どうも御丁寧にありがとうございました。

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