○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にも時間をいただき、ありがとうございます。
思い返してみますと、ちょうど十一年前、私は現職の滋賀県知事でして、発災をして直後、関西広域連合ですぐに三月十二日に集まりまして、兵庫県、大阪、京都、滋賀と、すぐにカウンターパート支援というのを決めさせていただきました。そして、もう三月十四日には、それぞれ担当する県を決めて応援をさせていただき、滋賀県は原発が若狭で近いということで福島を支援させていただきました。今も、滋賀県から土木関係の職員は派遣を続けさせていただいております。
改めて、十一年たっても、本当に、この亡くなられた方の御冥福、そして、福島県だけではなくて、日本中に避難をなさった方たちの生活の再建、お祈りさせていただきたいと思います。
まず、今日は、三月八日の大臣所信に対して、個別避難計画と防災教育について二之湯大臣にお伺いをしたいと思います。
この質問をさせていただく理由は、今日、資料一として出させていただきましたけれども、災害リスクを低減するアプローチ、ここは大きく三つあると私は理解をしております。一つはハード系、ソフト系、それともう一つ、このハートというのは私個人のかなり個別の表現なんですけど、と申しますのは、一九八〇年代から、特に関西地域、琵琶湖・淀川水系で、死亡者が出た水害四十か所の調査をしてまいりました。そして、そこで見えてきたことは、このソフトプラスハートというところが大変命を救うのに大切だということでございます。
それから、最も最新の調査ですと、二〇二〇年の球磨川の水害で六十五人亡くなられたんですけれども、そのうち五十人は溺死でした。この被災者の個人情報ということをよく言われるんですけれども、この球磨川の七月四日の水害では、熊本日日新聞それから熊本県が全ての被災者の個人情報を公開をしていただき、それを提供していただいたので、お一人ずつ訪問させていただいて、なぜ亡くなったのかということを調べて、地元の人と一緒にこの最新の本に、流域治水がひらく川と人の関係というところでまとめさせていただきました。
ここで分かったことは、もちろん河川の水位低下などは大事なんですけど、本川が水位低下をする前に支川があふれる、例えば、四メートル水がつかった集落で一人も死者がいないのに、たった五十センチのところで水路で亡くなっていたりというようなことがかなり分かってまいりました。ですから、このハートというところが大変大事だろうと、特に命を救うという意味では。
それで、この二点について二之湯大臣にお伺いしたいんですが、まず、個別避難計画の作成促進と言っておられますけれども、具体的に、住民が適切な避難行動を取れるように、あるいは関係機関と連携した取組、具体的にどのようなことをお考えか、御説明いただけますか。
○国務大臣(二之湯智君) 近年の災害におきましては、高齢者やとかあるいは障害者などの要配慮者が被害に遭われており、その要配慮者の避難の実効性確保は非常に重要な課題となってきているわけですね。このため、昨年、災害対策基本法を改正して、個別避難計画の作成を市町村の義務と、このようにしたわけでございます。
内閣府におきましては、市町村における取組を支援するために、個別避難計画の作成手順を明示した指針の提示、そして優良事例を全国展開するためのモデル事業の実施などに取り組むとともに、各種交付金制度の紹介、周知にも努めております。また、一般の住民の方につきましても、災害時に適切な避難行動が取れるように、地域や学校における防災教育や訓練、さらに地区防災計画の作成などによる住民の防災意識の向上に努めております。
引き続き、関係省庁や自治体とも連携しつつ、住民の避難の実効性を高める取組をしてまいりたいと思っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
防災教育についても二点目にお伺いしようとしたんですが、既に御回答いただいておりますので、是非とも、実は、十年、二十年前を考えますと、学校現場で災害の話をすると、先生方が、川は楽しくて環境保全として大事なところだから、逆に余り怖いことを言うてくれるなというようなところもございました。今、ようやく学校現場も河川やあるいは様々な災害対策について動き出しておりますので、是非ここも内閣府さんとしてお願いしたいと思います。
大きく二つ目の質問ですけれども、先ほど来、塩村あやかさんが原子力防災のところを質問してくださいました。更田委員長が、今回、今ウクライナで起きている問題、本当に、日本中にある四十五基の原発は潜在的に言わば武器になってしまうんだということの怖さを私たちは身にしみているわけです。それで、更田委員長が先ほど来言っておられましたけれども、そもそも、日本がミサイル攻撃を受けたら放射性物質がまき散らされることは懸念されると繰り返しあれほど何度も言っておられるので、本当に日本中がおちおちしていられないという状態でございます。
そういう中で、子供の甲状腺の被害についてお伺いをしたいんですが、この一月二十七日に欧州委員会議長に宛てた五人の元首相の書簡、「EUタクソノミーから原発の除外を」という意見書なんですけれども、ここに、書簡のちょうど最初の一行目に多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみと書かれているんですが、このことに対して環境大臣から抗議がなされました。また、福島県の知事からも抗議がなされました。
この場は災害対策の場で、健康そのものではないんですけれども、質問させていただきたいんですが、そもそも、平常時は百万人に一人あるいは二人しか発病しないとされている甲状腺がんですが、福島で事故から十年、十八歳以下だった三十八万人を対象とした場合に、悪性ないし悪性の疑いであったとされた方が二百六十六名とされております。そのうち二百二十二名が甲状腺摘出手術を受けております。
これ、確率でいきますと、百万人に一人の場合でしたら七十倍、百万人に二人の場合としても三十五倍、この比率というのは大変良識的にも、また常識的にも高いものではないかと考えております。しかも、手術の症状が悪化して再手術を受けた人、ほかの部位に移転した人、本当に過酷な放射線治療を受けた方たち、子供だった方が今二十代、成年になっておられますけれども、それにもかかわらず、政府として多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみという事実を否定するのでしょうか。環境省のお答えとその理由をお聞かせいただけるでしょうか。
○副大臣(務台俊介君) 甲状腺のがんに苦しんでおられる方には心からお見舞い申し上げたいと思います。
一方で、元総理五名が欧州委員会委員長に宛てた書簡では、福島第一原発事故による福島での未曽有の悲劇と汚染の例示として、多くの子供たちが甲状腺がんに苦しむと記載されております。
それに対して、この二月一日に山口環境大臣が書簡を発しまして、福島第一原発の事故と関連付けて多くの子供たちが甲状腺がんに苦しむと記載することが差別や偏見につながるおそれがあると指摘したところでございます。
先生がおっしゃったように、福島県の県民健康調査では、甲状腺検査の機会を希望する方全てに提供して、二〇二一年六月時点で御指摘の二百六十六名が悪性ないし悪性疑いとして報告されているということで承知しております。
この数値の評価についてでございますが、昨年の三月に公表された原子放射線の影響に関する国連科学委員会、UNSCEARの報告書では、被曝した子供たちの間で甲状腺がんの検出数が大きく増加している原因は放射線被曝ではなく、非常に感度が高い若しくは精度のいいスクリーニング技法がもたらした結果であるというふうに報告されております。そういう結果、誤解を生むことのないように環境大臣の書簡が出されたということだというふうに承知しております。
環境省では、放射線の健康影響に関する差別、偏見の払拭に取り組むとともに、甲状腺検査の対象者や御家族の不安に応えるために、二次検査を受ける方への心のサポートの実施体制を強化する事業なども行っております。
引き続き、福島県の子供たちの気持ちに寄り添いながら、これらの取組を進めてまいりたいということでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
環境省さんの公式見解は既に伺ったとおりでございますけれども、そもそもこの福島原発の影響ではないという、この甲状腺がんの被害ですね、UNSCEARさん、UNSCEARという国連の科学委員会、この委員会そのものの中立性を疑う研究者もおられます。
私も研究者崩れですから、その研究者の中にいろいろな見解があります、データをどう解釈するかというところで、必ずしも客観的に言えるものではない、そういう中で、ここまで被曝の結果ではないと言うこと自身が中立性を欠くのではないのかという意見もあります。
そのことを別に置いておいたとしても、じゃ、なぜ、この二百六十六人もの小児甲状腺がんの方が発がんしてしまったのかというこの原因は何とお考えでしょうか、環境庁さんは。
○副大臣(務台俊介君) 先ほど嘉田先生がおっしゃった百万人に一人という数値は、百万人検査して一人ということではなくて、甲状腺がんの検査結果が出た人、それが人口に対して何人かという数字だと思います。一方で、福島県の調査は、対象者が三十八万人、基本的にその多くの方を実際に検査して、それで出てきた数字が二百六十六だということでございまして、恐らく比率でいうとそんなに変わらないということになってくるのではないかということでございます。
○嘉田由紀子君 思わず笑ってしまったんですけれども、検査し過ぎたからがんが発見された、じゃ、検査漏れだった人は、その後がんを知らずにどんどん悪化をしていくのを放置するんでしょうか。それはそれで、近代的な国民国家として許されないと思います。
もうこれ以上、水掛け論ですから、あとは一月二十七日に始まった東京地裁での公訴を見させていただきたいんですけど、私、この小児甲状腺がんの方たちのお話を聞くと、例えば大変な勇気を持って二百六十六人のうち六人がようやく十年たって提訴できたんです。その提訴も、国あるいは東電さん。福島の方にとって、私、福島に行ってびっくりしたんですけど、地元の方が皆、東電様と言われるんです。もう東電城下町ですから、大変に偉い、大きな、自分たちの雇用と地域社会を支えている、それだけのところに反旗を翻すというのは本当に大変なことだったと思います。
例えば、今二十六歳になったM子さんですが、十七歳で甲状腺がん告知され、大学に入ったけれども、肺への転移が分かって、大学も退学して、今治療に専念している。今後、結婚、出産、先のことが考えられない。三か月に一回通院しているが、待合室に幼い子供がいると胸が痛む。原発事故が関係ないなら、なぜこれほど多くの子供が甲状腺がんになっているのか。単にオーバースクリーニング、検査し過ぎたから発見されたんだでは当事者が納得をしません。同じく二十六歳、東京都内で事務の仕事をするB子さん。甲状腺がんになったと言えば差別されると、家族全員で十年間も誰にも言えなかった。そして、中には、先ほど来、風評被害、甲状腺がんになったと言うと風評加害者だと言われて逆に差別をされる。日々苦しみながら、一生薬を飲まなきゃならない、そういう状態になって、原因も分からない、検査し過ぎたからあなたは発見されたんだと言われて、当事者として納得できますか。私は、自分の子供や孫がそういう状態になったら、訴えましょうと言うと思います。
今回の甲状腺がんの被害者の気持ち、社会状況を見ながら、私自身は、環境社会学者として四十年間、様々な被害の現場を聞き取りをして見てまいりました。水俣病の被害者の姿と重なるんですね。水俣病の原因物質がチッソ水俣工場からの排水に含まれていた有機水銀だ、それが水俣湾の魚に取り込まれて、それを食した漁師、その家族に神経系の病が広がった。昭和三十一年の五月に最初に発見されますけれども、原因究明に十年も掛かっているんです。熊本大学の研究者がこれは有機水銀じゃないかと言っても、当時、東京大学とか日本国政府が否定をしていくわけです。
多くの知り合いの方がおられますけれども、杉本栄子さん、今、亡くなっておられますけど、元々網元でした。だから、たくさん魚を食べているので最初に被害が出てくるんですね。子供さんが四人おられるんですけれども、子供の運動会におにぎり握ってやれなかった、本当につらかった。自分の体を疎ましく思った。近所からは、し尿を投げ付けられるほど差別された。でも、だんだん近所の人も同じ病気になっていくということを知りながら、チッソ城下町です、まさに東電城下町と一緒。水俣市内では、社会的力が弱かった漁業者、自分たちを苦しめる病からの救済を求めて国と熊本県、チッソを加害者として裁判に立ち上がったのは、五一年の公式発見から十八年、一九六九年です。その間に何百人もの方が理由も分からず亡くなりました。
社会的立場の弱い災害被害者、公害被害者の声、これを閉じ込めるのは、国民国家として、あるいは大企業として許されるんでしょうか。私は、先ほど、ハード、ソフト、ハートと申し上げました。備えるということ、死者を出さないということはハートなんです。ハートのこもった政策が日本国には必要だと思います。
二之湯大臣、通告しておりませんので、水俣病を思い起こさせる今回の原発の、関わると私たちは思っておりますこの甲状腺がんの皆さんの裁判なさった方たちに対してお声を掛けていただけないでしょうか。通告しておりませんので、心のこもった御意見いただけたら有り難いです。
○国務大臣(二之湯智君) 突然の指名で戸惑っておりますけれども、福島原発の事故と甲状腺との因果関係、私よく分かりませんけれども、とにかくそういう病気になった方の気持ちというのは、水俣も同じようでございますけれども、本当にお気の毒といいますか、やるせない気持ちがあると思います。できるだけ早く、因果関係というか、原因究明をしていただきまして、そういう方たちが一日も早く回復することを願っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
社会的な支援あるいは医療の支援、本当にこれから必要だと思いますので、その辺り、裁判の行方を見守りたいと思います。
私の方、時間来ましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。