3月29日、参議院法務委員会で、「子ども虐待や配偶者からの暴力と離婚後の共同養育・共同親権の関係」について、古川法務大臣などに質問しました。確定稿はまだですが、ポイントだけ紹介します。また当日の動画は、下記のアドレスで、法務委員会3月29日、嘉田由紀子で検索していただけたら全容がつかめます。ポイントは2点です。「ひとり親の子ども虐待比率が高い中で一般に子ども虐待防止に省庁間の情報共有をどうするか」「民法の単独親権制度の立法趣旨に配偶者からの暴力防止の意図があったかどうか」という二点です。3月30日。(また長いです、すみません、1700文字)。
子ども虐待で最も悲惨な虐待死亡事件ですが、2003年から2019年の15年間に心中を除いて770名の子どもが命を落としてしいました。年平均50名です。世帯状況をみると、「父母世帯」が47.4%、「ひとり親」(離婚、未婚、死別、別居)が27%です。国民生活基本調査で児童のいる世帯総数は1122万世帯で、ひとり親世帯は72万世帯であり、比率は約6%です。この数値からみると、ひとり親世帯での虐待死比率が高いといわざるをえません。もちろんひとり親を差別するわけではなく、それだけひとり親がハイリスクで苦しい子育て環境に追い込まれているということだと理解できます。
別統計ですがひとり親世帯の2世帯に1世帯が貧困という経済的問題もあります。日本では民法819条で離婚後の単独親権が決められていることがひとり親の子育て環境の困難を招いているではないかと想像します。この直接の関係はまた次回おたずねしますが、子どもの虐待死亡を防ぐために、厚生労働省、警察庁、文部科学省が各関係機関とどのような情報共有をしているのか、その現状と課題について認識をお尋ねしました。
ここについては、「要保護児童対策地域協議会」をつくり連携している、と三機関同じような答弁でした。私の方からは、知事時代の現場経験から、厚労省系の児童相談所は滋賀県では3ヶ所しかない。それに比べて警察の派出所はほぼ小学校区単位にある。小学校区は約230、それゆえそれぞれの小学校区などで派出所とつながりながら、困難をかかえる子どもや家族の情報共有をできるようにするべきではないかと提案。アメリカのある州では学校がすべての子どもの「ファミリーカルテ」をつくり、子どもの家族状況なども把握して子どもの安全見守りなどをしている。現場レベルでの情報共有をもっともっと工夫してほしい、と提案しました。
このあと、「配偶者からの暴力」に関するデータを提示しました。近年配偶者暴力の相談件数は大幅に増えているが一方で、婦人相談者(シェルター)における一時保護件数は減っていること、また配偶者間の暴力といえば、男性から女性というイメージが強い。確かに警察庁調べで、傷害や暴行では9割以上が男性から女性だが、殺人では女性55.6%に対して男性44.4%であり、世間のイメージと異なり、男性(夫)が妻側から殺される事案は決して少なくないこと。また内閣府のアンケートによる被害経験は女性の3割、男性の2割が相手配偶者からの被害を受けているというデータがあることを紹介しました。
その上で「民法の単独親権制度の立法趣旨に配偶者からの暴力防止の意図があったかどうか」については、古川大臣は「離婚後の単独親権を採用した理由は、詳細は明らかではないが、当時(昭和20年代はじめ)の社会情勢や生活状況を踏まえて、共同生活を営まない父母が共同で親権を行使することは現実的ではない」と考えられのではないかという。さらに「単独親権制度の立法趣旨には配偶者からの暴力を防止するという意図があったのか」尋ねたところ、古川大臣は「そのような趣旨ではないと思います・・・(単独親権と)暴力というのはちょっと結びつかないという印象です」と答弁されました。
民事局長(金子修さん)も、「少なくとも現行の単独親権制度を導入した当時の文献等に今ご指摘のような趣旨(配偶者からの暴力を防止する)は見当たらなかった」と答弁しました。
嘉田は確認しました。「古川法務大臣も民事局長も、配偶者からの暴力と単独親権は直接立法趣旨にかかわるものではないという答弁とご理解させていただきます」と最後にまとめました。