国会でゼレンスキー大統領のオンライン演説を聞きました。これまでのアメリカ合衆国、ドイツ、イタリア、イギリスではそれぞれの国の歴史や外交への共感をこめながら批判も埋め込まれていましたが、今日の演説は穏健で、日本的な遠回しの表現に徹していたように思います。その中でも私自身が感じたポイントは次の4点です。①「原発リスク」、②「平和維持に機能する国連機関の必要性」、③「避難民がふるさとに帰れるように」、④「日本の環境と文化はウクライナと共通」。特に「ふるさと」という表現や「日本の環境と文化はウクライナと共通」というゼレンスキー大統領の感想は、もしかしたら、近代化以前の村落共同体(ロシアでは「ミール共同体」と言われていた)のコミュニティ意識が強い感性を引きづっているのかもしれません。想像でしかありませんが・・・・。3月23日。(演説中の撮影は禁止だったのでTV画面をお借りします)。
① 「原発リスク」、チェルノブイリ原発の事故の核物質処理場を、ロシアが戦場に変えた。4ケ所の原子力発電所も非常に危険な状況にある。ヨーロッパ最大のザポロジェ原発もロシア軍の攻撃をうけて危険な状態である。(福島事故を意識しての発言だったのではないでしょうか。)
② 「平和維持に機能する国連機関を」 1,000発以上のミサイルが空爆で落とされ、数十の町が破壊・全焼している。数千人が殺され、そのうち121人は子ども。国連の安保理のような国際機関が機能しなかった。責任のある国家が一緒になって平和を守るために努力しなければならない。
③ 「住み慣れたふるさとに戻りたい気持ち」 避難した人たちがそれぞれのふるさとに戻れるように、日本のみなさんにはその気持ちがおわかりだと思います。戦争の後の復興を支援してほしい。
④ 「日本の環境と文化はウクライナと共通」 日本の発展の歴史は、調和を作り、その調和を維持する能力、また環境を守り文化を守るというのがすばらしい。ウクライナ人は日本の文化が大好き。私の妻が、日本の昔話をウクライナ語でオーディオブックにした。日本の文化はウクライナ人にとって興味深い。距離があっても価値観がとても共通で心は同じように温かい。
ロシア革命以前、ウクライナを含めてロシアには「ミール共同体」という、村落生活の基盤となる農地や森林、牧草地、河川や池などの共同利用を基盤とする村落共同体が、人びとの生活維持には欠かせないものでした。水田農村を基盤とする日本農村では、土地や森林などに加えて、川や池など、水の共有が村落生活の基盤構造となり、まさにそれが「ふるさと」をつくりだしていました。晩年のマルクスが、資本主義による成長では環境破壊の恐れがあると警鐘を鳴らしていたようですが、気候危機をのり超える社会のヒントのひとつが、土地や水を共有する共同体の仕組みかもしれないと今、私自身は考えています。ウクライナの農村を訪問したいという思いを強くもちました。