20220308 参議院法務委員会【確定稿】

令和四年三月八日(火曜日)

〇嘉田由紀子君 ありがとうございます。
碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にもお時間をいただきまして、ありがとうございます。

先ほど来、高良議員が今日は国際女性デーと言われました。実はこのミモザ、今日会合がありまして、そこには本日のドレスコードはイエローということで、私もイエローのマフラーを巻いてきましたけれども、あわせて、森議員もイエローで、しかも水色とイエローはウクライナを思っております。
私、今日、主に、子供の幸せを生み出すにはどうしたらいいかということで、家族法の問題議論させていただきたいと思います。
先ほど来、安江議員が公明党さんとして離婚後の養育費の問題をずっと積み上げてきていただきました。私も、ちょうど二〇一九年に参議院に来させていただいてから、振り返ってみますと、この子供の養育費、家族法に関わること、三十一回質問しておりました。そのうち半分ほどが森法務大臣のときでした。そういうところで、いろいろ無所属ながら、組織はないんですが、特に、現場で知事をやっていた時代、あるいは私自身も子産み、子育てしながら、今の日本の子供たちが置かれている状況は、見えないところで家族法とかあるいはかなり法的構造に規定されているのじゃないのかと思って、この問題ずっと議論させていただいております。
今、ウクライナの子供たちを見ますと、本当に子供は生まれる親が選べないだけではなくて、国も、それから、もちろん地域も選べません。地下ごうで泣いている子供さんの姿を見ると胸が張り裂ける思いでございます。
実は、ユニセフが調査をしておりますけれども、先進国三十八か国中、日本の子供たちの満足度、健康あるいは教育は比較的高いんですが、精神的満足度が三十八か国のうち三十七位、これはかなり深刻でございます。それから、自殺率も、これは世界で、特に去年など、コロナの中で一番高いということで、その中でも特に私が気にしているのは、離婚の後、今日もずっと養育費の問題がありましたけれども、面会交流もありますけど、離婚の後、経済的、精神的、社会的に、言わば片親放棄というか、そういう状態になる子供が大変多い。大体、毎年二十万組ほどの離婚の中で、十五万人から十八万人くらいが片親と会えない、あるいは養育費もらえていないというようなところでございます。このことは、直接、法制度と子供の福祉と関係ないじゃないかという意見も一方でありますが、私自身は、本当に精神的な問題あるいは社会的な問題考えると大きな課題だろうと思っております。
その根本は、日本が単独親権制度を取っているということです。民法八百十九条、これはもうそれこそ明治民法から、子供は家の跡取りということで単独親権。それが、男性が子供の親権を取る、その後、昭和三十六年以降は女性が親権取る方が多くなっているんですけど、いずれにしろ、親が離婚しても子供にとって父子、母子の関係は変わらないはずなんですけれども、ここが法的に切られてしまう。
子供自身はそのことを知りません、意識していません。日本がそうだから世界中がそうだろうと思っている。あるいは、大人もそうなんですけど、実は、法務省関係のところで調べていただきましたら、本当に先進国で片親親権制度を取っているところは日本だけと。もうアジア圏でも韓国、中国、台湾、共同親権制度、それからヨーロッパ、アメリカの国ですね、その辺のところが背景にございます。
ちょっとおさらいでしたけれども、そういう中で古川大臣に、まず、最近、あるお父さんから、ちょっと長いんですが、相談を受けました。紹介させていただきたいと思います。北陸地方に住むAさんという方です。
私は、昨年七月にコロナ感冒予防のために、妻と子供二人、四歳とゼロ歳を妻の実家に行かせていました。その際に私が妻や妻の義父の悪口などをLINEで送ったことから、現在、妻から離婚調停と婚姻費用の調停を申し立てられています。
妻には代理人弁護士がいますが、私はまだ弁護士を代理人にできていません。複数の弁護士に相談をしましたが、弁護士によってはいわゆる実子誘拐ビジネスに前向きな方もいると聞いて、なかなか代理人弁護士を選べずにいる状況です。
今のところ、月一回の面会交流は実施されていますが、先日は、ゼロ歳の長女については少し顔を見るだけで触れさせてももらえず、妻の義父母が出てきて、どなられ、追い返されてしまいました。
私の妻への悪口というのは、常態化したものではなく、妻が離婚を決めるきっかけにはなりましたが、本質的には反りが合わなかった義父母との私との関係が離婚の大きな要因だと思っております。妻は結婚まで一度も実家を出たことがなく、義父母の言いなりのような状態で、親害と呼ばれる問題も含んでいるものと思います。義父母は感情的になりやすい性格で、面会交流の際にどなり散らした録音データもあります。
子にとって今不健全な環境ですが、義父母、妻も自分たちが不健全な状態であることに気付けずにいるのだと感じています。この後どうしたらいいか、議員としての意見を聞かせてくださいという相談を受けました。
実は、私が今、もちろん養育費の支払も大事なんですけれども、父も母も離婚しても親子関係は切れないだろうという共同養育、共同親権を表向き法務委員会でもずっと聞かせていただいておりますので、全国から今までに、そうですね、百を超える人からこういう相談を受けております。このことが意外と隠れているところだろうと思っております。
今、もちろん個別の事情で、また表現も少し厳しいところがあるんですけれども、こういう子供と会えない父親あるいは子供と会えない母親、それも片親親権、民法八百十九条が隠れた構造になっているわけですけれども、こういうことに対して、大変生々しい事例で申し訳ないんですが、古川大臣、どのような感想を持たれるでしょうか。

〇国務大臣(古川禎久君)今委員からメッセージを御紹介いただきまして、私の身近にも様々なそういう事例がございますので、よくふだんから聞くことも多うございます。ですので、そういうものを思い出しながら、連想しながらお聞きをしておりました。
やはり、この人生の中で、なかなか夫婦の不和とか、いろんなことがやっぱり現実問題として様々あるなということと同時に、やはり子供に罪はないということでございます。子供にとって、決してこの将来のために、何か将来の可能性をそぐような、傷を残すようなことにならないように、制度の見直し、あるいは運用の、運用上の対応、こういうものが必要だなということを感じております。

〇嘉田由紀子君 ありがとうございます。
子供にとってということですよね、本当に。子供は親も選べないし、社会も選べない。
そういうところで、先ほど安江議員が、離婚届のところに養育費と面会交流のチェック欄のこと、御説明いただきました。これ、ようやくここ、民法七百六十六条が二〇一一年に改定されてからこれが入るようになって、先ほど六割がチェックをしている、ということは残り四割ができていないということと、あわせて、私自身は、その養育費と面会交流のチェックだけではなく、共同養育計画、つまり、これ、アメリカ、ヨーロッパでは当然なんですけれども、父母が離婚するときには子供の共同養育計画、経済的にはどうするんだ、それから、それこそ一年の、お正月一日から十二月三十一日まで一年間どういうふうに親子がペアレンティング、親子が一緒に過ごすか、誕生日はどうする、そのときのプレゼントはどうする、かなり細やかに、三、四ページにわたって共同養育計画を作り、そこに弁護士さんなりがサインをして、それを履行すると。今、養育費の方はそこが始まっているんですけど、全体、子供の暮らしにとって全体の共同養育計画という方向になればいいですねということをこの離婚届のところにも提案もさせていただいております。
そういう中で、国際的な問題なんですが、実は、国際的な子の連れ去り問題、連れ去りという言葉はちょっときついんですけれども、婚姻中に、父あるいは母が知らない間に、配偶者が子供を連れ去ってしまうと。あと、置き去りにされてしまう。父か母、父が多いんですけど、母が置き去りにされることもあります。
去る一月二十三日ですが、新たに米国駐日大使が着任されました。ラーム・エマニュエルさんという方です。このエマニュエル大使は、米国の議会上院での承認前の昨年十月二十日の上院外交委員会のヒアリングで、ボブ・メネンデス議員が、四百七十五人以上の合衆国の子供たちが日本に連れ去られている、合衆国は日本を国際的な子の連れ去りを犯すワーストスリーに挙げていると言っております。このワーストスリーのほかは、インドとブラジルです。つまり、日本、インド、ブラジルが子の連れ去りのワーストスリーと言われているわけです。
そして、このボブ・メネンデス議員は、日本政府に条約を遵守しなければならないことを理解させる、これハーグ条約ですね、ことを大使の優先事項の一つとするように求めたのに対して、その点を強調すると答弁されています。
国際的な子の連れ去り問題は日米間だけの問題ではありません。これまで日本政府の対応に対しては、従来から、EUの議会、あるいはEU諸国の大使からも強い懸念が表明されております。
そこで、世界の中の日本という視点の大切さを強調され、共生社会の理想の追求を掲げる古川法務大臣にお聞きしますが、国際的な子の連れ去り問題の解決、どのような御決意をお持ちでしょうか。また、日本に対する国際的な批判を高めていることについてどのように認識なさっておられるでしょうか。お願いいたします。

〇国務大臣(古川禎久君)お答えいたします。
ただいま委員から御指摘もありましたけれども、エマニュエル駐日大使が米国議会の上院外交委員会公聴会において発言されたこと、あるいは、二〇二〇年七月、欧州議会において子供の連れ去り事案に関する決議が採択されたこと、これは承知をいたしております。ただ、この米国国務省の二〇一九年以降の年次報告書におきましては、我が国、日本は現在、不履行のパターンを示す国には分類されていない、二〇一九年以降は、二〇一九年以降はですね、そのように分類されていないものと承知をいたしております。
我が国はハーグ条約を誠実に遵守しておりまして、ハーグ条約締結国から我が国に不法に子が連れ去られた場合についても現在適切に対応しているものと承知をいたしております。
今後も、この条約の対象となる事案の適切な解決に向けて、中央当局を務めております外務省などの関係省庁と適切に連携をしながら向き合っていきたいというふうに思っております。

〇嘉田由紀子君 今まで中央当局からは適切に対応という答弁はいただいております。ただ、それに合わないものもたくさんございますので、今日はもうこれ以上この点は申し上げませんが、ハーグ条約、これは本当に国際法上の大事な履行すべき条約ですので、海外から言わば後ろ指を指されないようにお願いをしたいと思います。
全体として、実は先ほど来いろいろ言及されておりますけれども、この離婚後の子の養育の在り方、制度の見直しが今進められております。さきの大臣所信のところ、三月三日でも、制度の見直し、運用上の対応を取り組んでいるということですけど、この制度の見直しはいつくらいまでに、どのような内容で見直すことを検討なさっておられるでしょうか。また、運用上の対応とは何を想定していらっしゃるでしょうか。

〇国務大臣(古川禎久君)お答え申し上げます。
この離婚等に伴う子の養育の在り方の見直しにつきましては、現在、法制審議会家族法制部会において様々な角度から調査審議がなされているものと認識しております。今後、今年の夏頃に中間試案を取りまとめることを目指しているというふうにお聞きしているところです。
これは、制度面の見直しについては法制審にこうして今議論していただいておりまして、それを見守りたいということでございますが、もう一つ、この運用上の取組についてのお尋ね、今ございましたけれども、この運用上の取組としては、養育費の不払解消に向けて地方自治体と連携したモデル事業による調査研究を実施しております。実証的な調査研究を実施しております。それから、安全、安心な面会交流の実現に向けて、民間の面会交流支援団体の皆さんおられますけれども、この支援団体の皆さん向けの参考指針の作成をいたしましたり、あるいはこの面会交流支援団体の周知、世の中に対してですね、そういうこの面会交流支援団体の周知を行ったりという形で取組をいたしておるところです。
先ほども申しましたとおり、子供の利益を図ると、これは一番大事な観点だと思います。制度の見直し、今後進められていくことになります。あるいは運用上の取組、こういうものを通じて、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

〇嘉田由紀子君 御答弁ありがとうございます。
運用上の対応のところで、先ほど来出ております養育費の問題あるいは面会交流の問題、その頭のところに付いている安全、安心な面会交流というのは、面会交流というのは危険なものだというような前提があるように思われますね。もちろん面会交流で、かなり関係が悪くてお父さんが子供さんをあやめてしまったというような事例もあります。
しかし、本来、親子というのはもっと、共同養育計画と申し上げましたけれども、全体として、父母が別れても父子、母子の関係をよりフレンドリーに、そして全体として安心の仕組みをつくる、これが子供にとって一番大切だと思います。ですから、共同養育計画と。
そして、部分的ではなくて全体的に、お父さん、お母さん離婚しても、あなたの暮らしは不安はないのよということを自治体でもモデル的に進めていただけたらと。
先ほど来、宝塚なり五地域でなさっているということを、私もいろいろ現場で聞かせていただいておりますけれども、もっともっと全体としての、離婚をしても子供にとってはフレンドリーな共同養育計画が作れる、これ海外で皆やっています。日本人だけが、日本人の父と母だけがそんなに精神が狭いのかということにもなりかねませんので、私は、法制度、そして全体として共同養育は日本の文化にするんだと。離婚したらどっちかの片親を選ばなきゃいけないという民法八百十九条を変えることで、その辺の精神的な、社会的な意識は変わると思います。これは一種の文化的改変だと思っております。
そういうところで、是非、古川大臣、今日初めてですけれども、大変、言い方はおかしいんですが、御自分の思いを持っておられるので、是非、子供さん、日本の子供にとって未来開けるような法制審の方向をリーダーシップ取っていただけたらと期待をしております。
最後に一点だけ、これ司法修習生の問題なんですけれども、いわゆる谷間世代というのがございます。修習専念義務があるにもかかわらず、給付金の支給を受けられなかった新六十五期から七十期のいわゆる谷間世代の法曹の皆さんの中には、修習期間中の貸与金の返済に苦しみ、現在の業務、公益的な活動に影響があると訴えておられる方がたくさんおられます。
このような不平等な状況を解消するために、貸与金の返済免除など、事務的な救済措置を内容とする谷間世代の法曹に関する一律給付措置を一刻も早く講じることが必要だと考えております。現場の弁護士の皆さんの日常の活動に敬意を表しながら、こういう問題もあるということを大臣どのようにお考えでしょうか、お願いいたします。

〇国務大臣(古川禎久君)お答えいたします。

この件につきましては、これまでも国会において度々いろいろ御要望といいますか、御意見というものが出されているというふうに承知しておりますけれども、この件につきましてはこのように考えております。
つまり、この従前の貸与制下で司法修習を終えたいわゆる谷間世代の司法修習生に対して貸与金の返済免除などの事後的な救済措置を講ずるということについては、これは既に法曹となっている者に対して国による相当の財政負担を伴う金銭的な給付等を意味することとなりますから、これは国民的理解を得ることは非常に難しいというふうに考えております。仮に、何らかの救済措置を講ずるとしましても、従前の貸与制下において貸与を受けていない者などの扱いをどうするかといった制度設計上の困難な問題もございます。
また、現在、これまでも、この従前の貸与制下の司法修習生が経済的な事情によって法曹として活動に支障を来すことがないよう、そのための措置として貸与金の返還期限の猶予も制度上認められております。
このような理由から、いわゆる谷間世代の司法修習生に対して立法措置による抜本的な救済策を講ずることは困難であると、救済策を講ずるということは考えておりません。

〇嘉田由紀子君 法務大臣の公式見解受けさせていただきました。また関係の皆さんといろいろ意見を聞かせていただきたいと思います。
私の方、ちょうど時間ですので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

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