『流域治水がひらく川と人との関係-2020年球磨川水害の経験から学ぶ』(2021年、嘉田由紀子編、農山漁村文化協会)が、熊本日日新聞出版文化賞をいただきました。受賞理由は「2020年熊本水害の被害を分析し、専門家の執筆のほか、球磨川流域の被災者自身も執筆しており、今後の治水のあり方を考える上で示唆に富む」と評価をいただきました。2月19日。
今回の受賞にあたって、8名の執筆者の皆さんと、図表などが多い困難な編集作業を短期間で担当いただきました農文教プロダクションの田口均さん、そして熊本日日新聞社さんに深く感謝申し上げます。そして何よりも今回の受賞は被災直後から、自ら被災しながらも、なぜ50名もの人たちが溺死をしてしまったのか、森林や山地、住宅地や街中水路、支川などの大水の出方を面的に、緻密に調査をし、大量のデータを取りまとめてくださったつる詳子さん、木本雅己さん、市花由紀子さんたち、住民研究者の皆さまに感謝です。
私のコメントは、新聞記事では、次のようにまとめていただきました。「被災者自らが書き手となり、専門家がサポートすることで、厚みのある本にできたとおもっている。今後も球磨川にかかわり、流域治水の重要性を伝える活動をつづけたい」としています。
また今回のような、溺死者ひとりずつの居住地を訪問し、親族や近隣の方がたの聴き取り調査が可能となったのは、7月4日直後の7月18日に、熊日新聞さんが溺死者の氏名など、個人情報を関係者の皆さんの了解を得て公開し、溺死者お一人ずつの生前の横顔などご紹介下さった熊日さんの英断があったから実現できた調査でした。深く感謝です。
実は今回、受賞した書籍の中で、私たちは、もし川辺川ダムが完成していても、今回の溺死者50名のうち48名の命は救えていないのではないかと結論を出しました。もし疑問があるなら、国土交通省なり熊本県当局が、溺死者原因調査をしてほしいと、地元住民団体の責任で申し入れました。熊本県からは「調査の必要はない」という返信、国土交通署からは今も回答はありません。(なお、新聞記事映像はつる詳子さんに提供いただきました)。