Facebook 2021年11月4日 夕焼けに染まる比良山と比叡山そして小雑誌『K002 特集 琵琶湖 400万年のいとなみ』

11月4日の夕焼けに染まる比良山と比叡山。比良浜の自宅での原稿書き中、一瞬の夕焼けの輝きを窓からみて、急ぎ浜に走り出して、間に合いました!!比良の山の隆起に込められた数百万年の大地の歴史。比叡山に秘められた千年の仏教信仰の願い。そして今、一枚の橋板がつなぐ、生活用水を湖水に頼っていた昭和30年代と水道導入後の今の暮らしの変化。一枚の風景にも400万年の歴史、1000年の歴史、数十年の近代化の歴史を読み込むことができます。11月4日。また長いです(1100文字)。
西岡圭司さんが編集して届けてくれた『K002 特集 琵琶湖 400万年のいとなみ』の小雑誌。表紙は辻村耕司さんの近江舞子浜に群れるコアユ。産卵直前とはいえ、足音が近づくと逃げだすコアユたちの群れをよくぞ写された!辻村さん、ありがとう!一枚めくるとこれも湖西の木戸の琵琶湖畔の緑のじゅうたんの田んぼ。琵琶湖に最も近い田んぼだ。浜のメタセコイヤの枝が昨年切り落とされてしまったが、これはこれで絵になる!
全63頁の小雑誌に込められた400万年の琵琶湖の営み。岡村喜明さんのゾウやワニの足跡化石に見る大地の地殻変動と生き物400万年の追跡記録。飛田哲男さんは琵琶湖西岸断層帯の地震リスクが琵琶湖疏水に忍び寄っているリスクを教えてくれる。中井克樹さんは生物進化の展覧会場ともいえる琵琶湖の外来種問題を魚類と水生植物の両面から詳しく解説する。渡辺勝敏さんは淡水魚に関心をもつ人たちにとって「聖地」である琵琶湖の外来魚を食の面から危機感を吐露する。
大塚泰介さんは、琵琶湖博物館の水田総合研究からヒントを得て始まった琵琶湖の在来魚の産卵場としての水田の価値を解説する。矢野健一さんは、琵琶湖畔に遺されている縄文時代以降の水中遺跡の秘密が漁師の発見により始まったことなどを紹介。杉江進さんによる江戸時代の湖上水運の役割とその現在の歴史的遺構案内は琵琶湖辺の町歩きのガイドブックにもなる。鎌谷かおるさんは古文書を資料とする歴史家だが、地元のものを地元で味わう意味と価値をたとえばハスずしのような食文化の面から紹介する。
市川秀之さんは、琵琶湖辺の水田の水利用を「逆水灌漑」の民俗技術と生き物の移動との関係で「近いウミ」が開発による湖と陸との切断で「遠いウミ」に変わってきたプロセスを描く。最後には佐藤祐一さんが、「行政が自然を管理できる」という発想で始まった琵琶湖総合開発の影響が、今や地球温暖化もふくめて琵琶湖の有様を複雑に差配している中で、いかに多様な意見をもつ人たちの「合意形成」が重要であるかを琵琶湖版SDGsとして問題提起をする。
1980年代に琵琶湖博物館の企画を多様な専門家や住民の皆さんと話あって、博物館という形にして以来30年近くを経て、琵琶湖に対する私たちの知識が広がり、深まったことを改めて感じいっています。琵琶湖研究所から琵琶湖環境科学研究センターの存在も大きいです。西岡圭司さんの編集力に感謝です。雑誌入手は、Knit-Kに申し込んでください。
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