「軽トラ水族館」って皆さん、聞いたことありますか。それぞれの地域にどんな生物がいるか、水辺の観察会を経験した方は多いと思います。30年ほど前の琵琶湖博物館時代から、私もちょくちょく「お魚探検隊」などに参加してきました。ただ、捕獲した魚たちをその場で皆で見られません。そこで、今回、関慎太郎さんという生物写真家の仲間の皆さんが工夫をした「軽トラ水族館」を実践しました。見事です。紹介します。10月9日。(1500文字です)
私の琵琶湖岸の住まいの近くに近江舞子があります。その内湖沿いにこの4月にエバーグレイズというグランピングが完成し連日にぎわっています。この場所は元々50年ほど前まで水田だったところで、水生生物が豊富です。所有は京阪電鉄さんです。今日は、京都の総合地球環境研究所のプロジェクトの一環として、京大の深町加津枝さんをリーダとして、エバーグレイズ内の水路の観察会を行い、貝類3種、魚類14種、甲殻類3種、水生昆虫12種、両生類2種と、合計34種類もの生き物を記録しました。
朝いちばん、まず南小松の地元の平出さんと小村さんが普段農作業に使っている軽トラをもってきてくださる。その二台をならべて、棚とヨシズでつないで水槽を配置する。近所の水道水から塩素除去のフィルターをとおして水をいれる。酸素ばっ気装置も即席でつなぐ。何よりも本日のウリはその看板。「みんなで水族館」の文字は関さんの友人のたけだかえでさんが書いてくれた。よくみると文字要素すべてが琵琶湖の生き物。「で」の黄色い文字は弁天ナマズとよばれるビワコオオナマズ!見事です。ハロウインシーズンなのでその飾り物もつける。
エバーグレイズの水路内を、網やショウケという昔の水切りでガサガサ。ショウケは私が持ち込んだのですが、「ドジョウガよくはいる!」と人気。関さんが投網でオオクチバスなども捕獲。エババーグレイズの水路には意外と魚種、両生類が多かったです。要因はふたつありそうです。比良山から流れ出る小水路は湧き水が水源で一年中水が枯れることがありません。安定した水量です。それとグリーンインフラづくりで有名な稲田純一さんの指導で、地元の比良山の石をふんだんにつかい水路はコンクリートではなく石積みにしたことです。これだと石と石の間に幼生など逃げ込みやすいです。夏場はホタルもたくさん出るということ。
あるお子さんの質問、「なんでこんなにたくさんの生き物がいるの?」本質的でぐさっときました(微笑)。堅田住まいの中学二年生の「琵琶湖おさかな博士」といわれる黒川琉伊ちゃんが「水路や池や山や湖、地形が多様なので生物もたくさんいるんだよ!」と解説!見事です。黒川琉伊ちゃんは二歳の時から琵琶湖博物館に通いつめて、徹底的に琵琶湖の魚にくわしく知識をため、また受け答えもわかりやすく、子どもたちの人気者でした!
そうそ、軽トラ水槽。みんな自分たちが捕獲してきた生物を水槽にいれて、そこに黒川琉伊ちゃんが絵をかいて、皆でまずは名前づけをしました。図鑑で名前をしらべるという方法もありますが、それは最後です。生き物は自分の目でしっかり観察して、形や色、動きなどを観察する力を子どもたちがまず育ててほしいと私たちは思っています。民俗学者の柳田国男は「子どもは名づけの名手」と言っています。たとえば図鑑でヨシノボリといわれるハゼの仲間はあまり泳がず石にはりついているので「はねっこ」「いしんこ」など。今日はドジョウを「ほっそー」と、マツモムシを「チビすけ」と名付けた子どもさんもいました。
軽トラならどこでもあります。地元の農家の皆さんに参加してもらい、ふだん農作業に使っている軽トラが水族館に化けるというその「転用」は、何とも刺激的で創発的で、愉快です。今日の軽トラ提供の平出さん、小村さんもずっと一日つきあってくださって、楽しんでくださいました。水道がなければ水はどこからでももってこられます。立場の異なる人たちが、魚や両生類、生き物を介して 出会う「みんなで水族館」という活動、今後も広げていきたいです。