Facebook 2021年9月20日 『河川の歴史と未来』一気によみあげました

『河川の歴史と未来』、「人と生態系のダイナミクス」の第5巻として出版。今日届いた、その場で読み始めて、他の仕事をほっぽりだして、一気によみあげました(微笑)。すばらしい!私のようなテーマをもつ人間には待望の書です。著者の皆さんのご尽力、特に編集の西廣さん、宮下さんに感謝です。9月20日。
1980年代初頭、「湖と人のかかわりを研究しています」というと、「何学ですか?」ときかれる。「環境と人間社会の関係学」ですと応えるしかなかった。自然の仕組みを掘り下げながら、そこに人間社会がどうかかわってきたのか?そんな自然科学と社会・人文科学をつなぐ文理連携の相互作用の仕組みを解き明かし、社会に伝え、生き物と人が仲良くできるような現場政策に活かしていく。そんな方にはぴったりの入門書です。
私なりのおすすめ理由は3点です。
まず一点目、140頁ほどのコンパクトな書でありながら、①「河川生態学入門」、②古代から現代までの「河川と人の関係史」、③「河川と人の新しい関係」という、まさに文理連携の幅広い領域を、『古事記』に出てくる斐伊川から、イギリス生態学の最新の学問成果まで、さらに現場の政策実装までふくめて、欲張りテーマでありながら、わかりやすい。
二点目、なぜわかりやすいのか?多彩な学問的背景をもつ複数の著者の編集本だと、どうしてもそれぞれの分野が細切れになりがちです。この書は、各章や各節やコラムの著者名さえ記されず、全員が全体に責任をもっているようです。いくつもの本を編集してきた経験から、本書は、著者同志の事前の相互理解が深く、また全体編集に一本筋が通されているので、わかりやすいのだと思います。
三点目、川と陸地の接点など、これまでの細分化された研究では見えにくかった論理で、新しい領域に果敢に挑戦。ウナギは陸のミミズをたくさん餌にしてきた。それゆえ河川がコンクリートになるとウナギが栄養失調に!などこれまで知られていなかった新データもありがたいです。私のようなくいしんぼには、ウナギから鮒ずしからザザムシ、食と生物をつないでいただいているのもうれしいです。
西廣淳・瀧健太郎・原田守啓・宮崎佑介・川口洋一・宮下直の6名の主に1970年代生まれの方たちが中心となった著作です。滋賀県が挑戦してきた流域治水や霞堤については、瀧健太郎さんが(多分)コンパクトに紹介してくれています。
こういう教科書で学べる今の学生さん、うらやましい。1990年代の琵琶湖博物館準備室で「水田総合研究」に生態系分野を入れようとした時、当時の生態学の大御所に「水田は人間活動のノイズが大きく生態学の研究対象にはならない」と予算をつけてもらえなかったことをなつかしく思いおこしています。時代の変化を感じます。
春先にたんぼに産卵のために「のっこむ」霞が浦のコイやフナの習性は琵琶湖も同じです。バシャバシャと大きなコイが琵琶湖から、ヨシ帯、田んぼにのっこんでくる姿には、今も心がわきたたされます(微笑)。
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