令和三年三月二十二日(月曜日)
○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にも時間をいただきまして、ありがとうございます。
引き続きまして、私の方は、大臣の所信に関わるところで、親が離婚をしても子供は最大の幸せを求められるような、そういう日本社会になってほしいと思いまして、質問をさせていただきます。
まず、先回も取り上げました未成年時に親の別居、離婚を経験した子供に対する調査、一千人もの調査をしていただきました。そして、ここで幾つか特筆すべきところを紹介させていただきたいと思います。
まず、親が離婚をしたときの年齢ですけど、未就学児がほぼ三分の一、小学生時代がほぼ三分の一、中学生以上がほぼ三分の一ということで、意外と幼いときに離婚した、親が離婚したというのが多いと。また、父母の離婚を記憶しているのは千人の中で六百七十二名。また、その中で八割近くが薄々知っていた、知っていた。しかし、誰かに相談したという子供たちが九・四%。つまり、多くの子供は薄々親の不仲を知りながらも自分で抱え込んだ、大変ふびんな状態だと思います。
あわせて、父母が別居を開始する前にどのように感じていたか。三人に一人は仲直りしてほしい。四人に一人は家族がばらばらになってしまうと心配。そして、六人に一人は父母の仲が悪いのは自分のせいではないのか。今の生活環境が変わってしまうのも心配、これも六人に一人。複数選択を可能としている調査ですが、あわせて、父母が仲が悪い状態の中では早く離別、別居してほしいという子供さんも五人に一人おられたと。また、八人に一人は親の問題に関わりたくない。
本当に親の不仲は子供さんにとって大変大きな精神的負担になっていた、なっている、引き続き、というようなことも含めて今回の調査で分かったと思います。
また、離婚後、経済的に苦しくなった、若干苦しくなったという回答は四割ございます。あわせて、経済的に好転したという人も七%ほどあります。養育費の問題、これまでも随分議論されておりましたけれども、やはり経済的に苦しくなるという子供さんが四割ここで出てきているというのは大変深刻だろうと思います。
そして、今回の調査は個人別のデータがありますので、今後、例えば離婚時の子供の年齢による違いとか男女別の違いとか、クロス集計ができます。
そういうところで最初の質問ですけれども、先日、数項目に対してクロス集計お願いをしましたけれども、この結果、いつぐらいに出していただけるでしょうか。上川法務大臣にお伺いいたします。
○国務大臣(上川陽子君) 先日、委員会におきまして私が委員に申し上げた点でございますが、今回の実態調査を行うに当たりまして、私から担当者に対しましては、今まさに委員御指摘の、親の離婚を経験した時点における子の年齢あるいは性別に着目をし、その後の子の生活にどのような影響があったのかという点につきまして、子供の育ちのステージというか、ごとに比較しながら検討をする、また分析をするようにということを基本的なスタンスとして指示をしたところでございます。その意味におきましては、今委員おっしゃったような年齢とか性別等につきましては、クロス集計を単純クロスという形でさせていただいてきたところであります。
今回の調査では、この別居時の年齢を基準にいたしまして、三歳刻みでクロス分析を行わせていただきました。また、兄弟の有無にも着目したクロス集計、分析を行ったりしておりまして、その取りまとめた結果を含めまして、ちょっと分厚いレポートでありますが、公表をしている状況でございます。
その上ででございますが、今回の調査結果につきまして、そこで表れた結果を更に精査をするということを通して、専門家の方々からの意見、これも参考にさせていただきながら、回答者の属性に応じて更なるクロス分析、設問間のクロスをするとか、単純に属性別のクロスのみならずということでありますが、含めて検討するようにということで指示をしたところでございまして、今まさに皆さんに御覧いただいている状況でございますので、幅広い方々からのまた御意見も頂戴して、そして、今あるデータに基づきましての調査の成果をしっかりと施策に反映できるようにしてまいりたいというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
調査結果をどういうふうに政策に生かしていくのか、そこが次のポイントだろうと思います。
そういう中で、一つ、前回の調査、質問九で、父母が不仲になった原因として性格の不一致が三九・六%、つまり四〇%、ほぼ四割ございます。離婚がある意味で父母の都合だけで、夫婦間の協議によって簡単に認められる、これが今、日本の協議離婚の状態です。
子供の養育が置き去りにされ、子供の利益を害する結果を招く、こういう状態に対して大臣の御認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 今回の調査の結果の中で、私どもが大人の視点からはなかなか気付かなかった、子供さんが思っていることを表に出せないままに事が進んでいってしまうというようなことの結果も明確に出てきたところでございまして、この前から申し上げているところでありますが、定量的なこの調査の結果を踏まえて、また深掘りする形での検討もしていく必要があるなということを改めて感じたところでございますので、そういった調査も更に実施してまいりたいというふうに思っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
前回の委員会でも申し上げましたけれども、子供の最善の利益、これはいつも誰もが子供の最善の利益と言うんですけど、その中身についてはどういうことになっているのか、もっと具体的に議論するべきだろうと思います。
国際的に、例の二十四か国調査の中で、子供の養育計画なしに、まさに形式的に判こ一つで離婚ができるというのは日本だけだということも明らかになってまいりました。
そういう中で、協議離婚を認める要件として共同養育計画の策定を義務付ける、これは超党派の共同養育議連の中でも出てきている意見でございますけれども、そこについて、大臣の御見解いかがでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 子供の利益を確保するためには、父母の離婚後でありましても、父母の双方が適切な形で子供の養育に関わるということが非常に重要と考えております。その上で、父母が離婚した後の子供の生活、また成長という観点からは、子供のための養育費や面会交流といった養育計画につきまして、それぞれの家庭の事情に応じて、協議離婚に際して父母間で必要な取決めが適切になされる必要があるというふうに考えております。
この点につきましては、現行の協議離婚制度を改めまして、未成年の子がいる父母は原則として養育計画を作成しなければ協議離婚をできないものとする見直しの意見があるところでもございますが、その一方で、このようにすると協議離婚の手続が過度に重くなり、家庭内にDV等があって早期に離婚を成立させることが望ましい場合に協議離婚が困難になるといった指摘もなされているところでございます。
離婚及びこれに関連する法制度の見直しにつきましては、これまでの実態、さらに、子供を中心としてものを考えたときに更にどうした対応をすることができるのか、いろいろ考えた上で、二月の十日、私から法制審議会に対しまして諮問を行ったところでございます。検討の具体的な内容につきましては法制審議会におきましての議論の展開に委ねられるところでございますが、協議離婚の制度につきましても、子供の目線に立って実態に即した具体的な検討をしていただきたいというふうに大きな期待を寄せているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
私がこういう質問をしますのは、今いろいろなネットの上でとか、あるいは知り合いに、あなた、離婚もしするとしたら、子供をどっちかに決めなきゃいけないのよ、日本は単独親権なのよと言うと、えっ、知らなかったという人が十人に九人ぐらいなんですね。つまり、いざその場になって、それであたふたとするということなので、この辺りはもっともっと言わば家族法なりあるいは家族の在り方のリテラシーを高める必要があるんだろうと思います。私は、アメリカに留学しているときに、高校の教科書とか、もちろん大学でも、社会学でしたらこういう家族の在り方とかあるいは男女の在り方みたいのがきちんと国民的議論なされていたなということで、しつこくこの問題を聞かせていただいております。
そして、今既にある民法の中で、例えば民法七百五十二条には夫婦の協力、扶養義務が子育てについても適用されるのか。夫婦の協力、扶養義務が七百五十二条にありますけれども、これは子育てについても適用されるのか、あるいは別居中の夫婦間での子育てについてはどうでしょうか。法務省さんにお伺いしたいと思います。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
御指摘の民法七百五十二条は、夫婦の同居、協力、扶助の義務を定めるものでございます。このうち、協力義務につきましては、夫婦は子供の養育についても協力をする義務があると解されているものと承知しております。また、扶助義務についても、夫婦は互いに未成熟子を含む夫婦の共同生活に必要な負担をする必要があると解されているものと承知しております。したがいまして、委員御指摘のこの民法の条文七百五十二条の規定は、夫婦の子育てについても適用されるものと考えております。
それから、この条文、婚姻の効果を定める規定でございますので、夫婦である以上は、婚姻関係にあるものが別居していたとしても適用されるものでございます。もっとも、民法七百五十二条の協力、扶助義務によって具体的にどのような義務を負うこととなるのかは、当該夫婦が置かれている具体的な状況等によって定まるものと考えられておるところでございます。
○嘉田由紀子君 実は、この質問をさせていただいたのは、本当に今、親子がある意味で分断をされて、そしてどうにか今の、民法改正の前に今の状態の中で親子が会いたいというようなかなり切実な声が現場からも聞こえてきておりますので、質問させていただきました。
実は、この七百五十二条に関わる審判あるいは調停が本当に処理件数に占める言わば認定あるいは成立という比率が少ないんですね。今日皆さんにこの資料をお配りしておりますけれども、審判の方は認容されたのは五・六%、それで調停の方は一一・六%しかないというようなことで、それこそわらをもすがる思いで今ある七百五十二条にすがりたいと思う方たちの成果もなかなか得られないというのが実態のようでございます。
これを最高裁判所さんなり、あるいは法務省さん、どう評価なさるでしょうか。お願いします。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
委員御指摘の夫婦の同居、協力扶助に関する調停、審判は、民法七百五十二条に基づいて、夫婦の一方が他方の者に対して同居自体や生活費の支払等を求めるものが考えられるところでございます。もっとも、このような内容は、実務上、夫婦関係調整調停、いわゆる円満調停でございますが、や婚姻費用の分担に関する処分の調停又は審判などとして申し立てられるものが多いものと認識しております。
このうち、円満調停につきましては、令和元年の既済総数二千四百七十件のうち三五%に当たる八百六十四件で調停成立、また、婚姻費用分担調停事件につきましては、令和元年の既済総数二万五百三十三件のうち五六・五%に当たる一万一千五百九十四件で調停が成立しております。また、婚姻費用分担審判事件につきましては、令和元年の既済総数二千九百十二件のうち六五・一%に当たる千八百九十五件において申立てを認容する判断がされているところでございます。
このように、委員御指摘の紛争解決を目的とします事件類型を総じて見ますと、個々の裁判体又は調停委員会において個別の事案に応じて適切な解決が図られているものと承知しております。
○政府参考人(小出邦夫君) ただいま最高裁からも答弁がありましたように、裁判所においては、それぞれの裁判体又は調停委員会によりまして、父母が別居中のケースも含め、個別の具体的事案に応じて子の利益を実現する観点から適切な事件処理が図られているものと承知しております。
その上で申し上げますと、離婚に先立つ別居の問題も含め、父母の離婚後の子の養育の在り方に関する民事制度上の課題につきましては、近時、様々な議論があるところでございまして、離婚及びこれに関連する制度の見直しにつきましては、本年二月十日、法務大臣から法制審議会に諮問がされたところでございます。
法務省といたしましても、この別居中の子の養育についての課題も含めまして、法制審議会において充実した調査審議が行われるよう、必要な対応に努めてまいりたいと考えております。
○嘉田由紀子君 時間がちょっと迫っておりますのでまとめさせていただきますけれども、先ほど来、協議離婚に対して共同養育計画が必要ではないかと提案させていただきましたけれども、夫婦間の葛藤が高まる前に、ある意味で、共同養育に関するガイダンスなど、自治体で、日本中、市区町村の自治体でサポートすることが大事ではないかと思います。
先ほど、厚労省さんの方で、今まで補助金が百七十万から千五百万円と少しプラスすると言っていただいておりましたけれども、ある意味で、離婚の前の予防効果ということで、もう具体的に例えば明石市などは弁護士を十一人雇って、そして子供と家族のサポートしておりますので、ここは予算と人的サポートで予防的措置ができると思うんですけれども、この辺り、大臣の御認識、いかがでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘の共同養育に関するガイダンスでございますが、一部の自治体におきまして、離婚を検討している父母を対象にし、離婚後の子供の養育に関する情報提供等を行うものと承知をしております。必要な情報が父母に届けられることは、離婚後の子供にとりましても大変望ましい生活や成長の確保につながるものというふうに考えております。
この点に関しまして、家族法研究会におきまして、離婚を検討している父母が離婚後の子の養育に関する適切な取決めを図る方策として、父母が協議離婚をする場合に子の養育に関する講習を受講するための規律を設けることなどが取り上げられたと承知をしております。
本年二月に私から諮問を行いました法制審議会におきましては、離婚及びこれに関連する制度につきまして検討が進められることになるところでございますが、その中では父母に対する離婚前の情報提供等も含めまして幅広い課題が取り上げられ、検討されることを期待しているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
この共同養育の問題については、DVがあったらどうする、それから、そもそも面会交流で殺人があったじゃないか、先ほど山添さんが指摘しておられました。もちろんそういう問題はありますが、できない理由ばかりを、つまり、後ろ向きの理由ばかりを言って、世界各国では既に、高葛藤であるのは当然です、離婚に直面するんですから。それでも、子供のためを思って、フレンドリーペアレントルール、大人の対応ができる、私は日本人にはそれだけのリテラシーと精神があると思うので、できない理由ばかりで法制審など進まないでいただきたいということを最後に希望として持たせていただきます。
時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。