20210330参議院法務委員会【確定稿】

令和三年三月三十日(火曜日)

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にも十五分、お時間いただきまして、ありがとうございます。
 私は、一貫して、親が離婚した後の子供の幸せを求めてということで、継続して質問させていただきます。
 先ほど、真山議員の質問の中にも、親の離婚を経験した子供さん、二百五十万人超えているだろうと。これ、地域にもよりますけれども、小学校、中学校、義務教育の中で五人に一人、あるいは四人に一人が親の離婚に直面している。これは決して少数ではございません。そのうち半分ほどが貧困の問題ということでございます。
 前回、実は、民法七百五十二条、これは夫婦の同居、協力、扶助の義務を定めているんですけれども、これについて質問させていただきまして、少し、二、三問題が残っておりましたので、そこをまず継続させていただきます。
 この扶助義務の内容、小出政府参考人さんにも、別居中もこの扶助義務はあるということを、前回、三月二十二日に回答をいただいておりますけれども、夫婦関係が破綻しても父母が協力して子供の養育を行える、この民法七百五十二条の規定を、より具体的に、問題に直面している夫婦に、あるいはそこで影響を受ける子供さんのために、規定を改めるというようなことは大臣はお考えになっているでしょうか。法務大臣にお願いいたします。


○国務大臣(上川陽子君) 委員の御指摘につきましては、婚姻中の父母が離婚を前提に別居している場合であっても、子育てにつきましては協力をする義務があるということを明示する規定を設けるべきとのお考えに基づくものというふうに理解をいたしております。
 御提案につきましては、父母が別居に至る経緯、あるいは別居期間中の状況として、DVや虐待の問題も含め様々な事情や問題があり得ることから、それらの実態を踏まえた十分な検討が必要と考えております。
 この点に関しまして、法務省の担当者も参加いたしました家族法研究会におきましては、父母の離婚に伴う問題に関連して父母の婚姻中の別居に関する問題も取り扱われ、また論点整理がなされたと承知をしております。
 本年二月に私から法制審議会に対しまして行いました諮問は、離婚及びこれに関連する制度に関する規定等に関するものでありまして、その具体的な検討の範囲につきましては法制審議会の議論に委ねられるところでございますが、父母の離婚や別居を経験した子の成長にとってどのような法制度が望ましいかという観点から幅広い検討がなされることを期待をしております。


○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
 先ほどの真山議員の例がかなり典型なんですけれども、子供の最善の利益を裁判で確定するときに、それこそ父親が不倫をしても、子供を三人連れ去って、そして母親に預けながら、全くそういう意味では別居中に父親が親としての義務を果たしていないのに、子供の最善の利益としては父親の方に子供を置いておくというような判断、なされております。また、諸外国の例、後から申し上げますけれども、子供の最善の利益といったら、その言葉だけで何でもありになってしまう。
 本当に子供さんにとって最善の利益とは何なのか、これを誰が判断するのか。私は常々、フレンドリーペアレントルール、より寛容な親、そして本当に子供の最善の暮らしを考えている、そのような親を配慮することが必要ではないかと思っているんですけれども、法務大臣、また繰り返しになりますが、子供の最善の利益、誰が判断することがこの最善の利益を図れるとお考えになられるでしょうか。


○国務大臣(上川陽子君) 子供の利益の確保、大変重要なことでございまして、父母の双方が適切な形で子供の生活やまた成長といった養育に関わることが非常に重要であるというふうに考えております。
 もっとも、婚姻関係にある父母であっても、感情的対立とか、また葛藤の高い状況にある場合、あるいはDV等によって支配、被支配の関係にある場合等につきましては、この子供の養育に関しまして父母による適切な合意形成を期待することができないところでございます。ゆえに、一律に父母が共に養育に関わるものとすることは、かえって子供にとって不利益になることも考えられるところでございます。
 この問題につきましては、この子供の利益を図るという観点から、子供の養育への父母の関わり方、またその在り方につきまして、実態を踏まえたファクトベースで具体的な議論をしていくということが重要であるというふうに考えております。
 この点も含めまして、離婚及びこれに関連する制度の見直しにつきましては、本年二月十日に私から法制審議会に対しまして諮問を行ったところでございまして、子供の利益の観点から、例えば子供の養育への父母の関与の在り方や、また適切な養育を可能とする方策などにつきまして、民事法上の幅広い課題につきまして充実した調査審議が行われることを期待をしているところでございます。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 今日は、次の課題として、先ほども真山議員の中に連れ去った者勝ちという見出しがありますけれども、刑法第二百二十四条に未成年者略取誘拐罪の適用対象というのがございます。今日、資料として出させていただきましたけれども、未成年者略取誘拐罪の検挙件数、二〇一一年が六十六件、これがだんだん増えていまして、二〇二〇年、二百二十四件。ただし、この検挙件数のカテゴリーにかなり限界がございます。
 具体的には、婚姻関係にある夫婦間において発生した子供連れ去り、一ですね、二つ目は、婚姻関係を解消した元夫婦間における子供の連れ去り、三つ目は、夫婦間又は元夫婦間で一方の親に連れ去られた未成年者をもう一方の親が連れ戻した場合、これがそれぞれこの先ほどの検挙件数の数値に含まれるのかどうか、法務省さんにお願いをします。

○委員長(山本香苗君) 警察庁でよろしいですか。


○嘉田由紀子君 はい。じゃ、警察庁さんにお願いします。


○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
 未成年者略取誘拐罪につきましては、警察庁の犯罪統計におきまして、認知件数と検挙件数を集計をしております。
 ただいま委員御指摘のような統計はございませんが、未成年者略取誘拐罪におきまして、認知件数は、令和元年は百八十七件、令和二年は二百十九件、検挙件数は、令和元年は百六十七件、令和二年は二百二十四件、検挙件数のうち親が被疑者で子が被害者であったものは、令和元年は二十九件、令和二年は三十七件となっております。


○嘉田由紀子君 今の数値を出していただきましたけれども、実は、この未成年者略取誘拐罪の検挙件数の中で、婚姻関係にある夫婦間あるいは元夫婦間、それからこの一方の親が連れ戻した場合という、このそれぞれのところの統計が取れていないと思うんですけれども、警察庁さん、そこのところはいかがでしょうか。そのカテゴリー別の統計。


○政府参考人(猪原誠司君) 犯罪の統計につきましては、捜査の現場において作成に要する事務量等も勘案しながら、ソフトウエアの改修等の機会に見直しを行っているところであります。その際に、見直すことが適当な事項について引き続き検討してまいりたいと考えております。


○嘉田由紀子君 引き続き検討と前向きの答弁いただきましたけれども、実は、本当に日本だけが、言わば実子誘拐、婚姻中に相手に、配偶者に無断で子供を連れ去ったことが刑法の対象になっていないんですね。これは先ほどの、例えば真山議員の資料の中に、オーストラリアのキャサリンさんが知らずに夫に子供を連れ去られたと。それで、母国オーストラリアには連れ去りを防ぐ法律や仕組みがあるから、まさか日本でこんなことが起きるとは思わなかったと驚いております。
 実は、この子供の連れ去り、二十四か国調査の結果、一部紹介させていただきますけれども、英国では、裁判所侮辱罪、児童奪取、つまり奪い取る罪、コモンロー上の誘拐罪ということで、刑事的な制裁がなされております。また、フランスでも、未成年者の奪取、奪う罪、あるいは未成年者の不引渡し、例えばこれはハーグ条約などで引渡しをしろといいながら引渡しができていないという、それも罪として規定されております。
 各国によって適用の在り方、微妙な違いはあるんですけれども、単純な比較はできないんですが、日本では子供の連れ去りが放置されているんです、刑法の。夫婦が結婚している状態あるいは元夫婦の、そういう状態で相手の配偶者に無断で連れ去ったのは、これは刑法に値しない。しかし、一旦連れ去られた子供を取り返すときには刑法の検挙の対象になる。そして、その刑法の検挙の対象が、先ほどの資料で、二〇一九年が百六十七件、二〇二〇が二百二十四件。
 こんな件数じゃないんです、二桁か三桁違いますね。つまり、それくらい実は実子誘拐、婚姻中あるいは元夫婦の間の無断の連れ去りが起きている。それが実は子供にとっては大変な虐待になる。ある日突然、例えば母親が、あなたね、あしたからこっちへ行くのよと言って、一日で父親から離されて、学校から離されて、友達から離されて、そういうことが日本では当たり前に起きているということが、私は大変子供の利益にとって問題だと思っております。
 もう時間ですけれども、この事例というのは本当に枚挙にいとまがありません。それくらいたくさん起きておりますので、どうか上川大臣にお願いでございますけれども、今、刑法上は問題になっていないけれども、具体的にそこで日本で放置されているということ、法制審の方でもしっかりと議論していただきたいと思います。
 私の質問、ここで終わらせていただきます。ありがとうございました。

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