20210406参議院法務委員会【確定稿】

令和三年四月六日(火曜日)


○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
 皆様から、いかに今の家庭裁判所が忙しくて、そして家事事件がなかなか当事者の納得できるような結果が出ていないということを、まさに真山議員が数字で示していただきました。
 お一人百九十件から二百五十件、大変な数字ですね。しかも、伊藤議員がおっしゃったように、調査員との調停、あるいは時間、同時に十件も起きていたら、それは裁判官が具体の事例に立ち会えない、聞けない、そして間接的に判断しなきゃいけないというときに、今まで私何度もこの離婚関係のことで申し上げていますけれども、継続性の原則とか、親権を決定するのに、もう既存のレールに乗って判断するしかないという、ある意味で家庭裁判所の出てくる結果がなぜなのかということを今日皆さんの議論で伺ったような気がいたします。
 これは社会的にも大変重要な問題ですので、今回、この裁判所の定員法でも特に家事事件についてより増強していただきたいということを申し上げながら、まず最初の御質問は、前回ちょっと取り残してしまったところ、特に子供の連れ去り、本当にこれは見えないところで起きております。
 実は、三月三十日に質問したときの後、大きな情報が入りました。四月の二日に将棋界で八段の橋本棋士が突然プロをやめると。その理由はというのをユーチューブで聞かせていただいたんですけど、生まれた直後の大事な長男を連れ去られたと。それで、御長男さんの写真から、お風呂に入れていたりということを切々と訴えておられます。自分は浮気もしていなければDVもしていないし、虐待もしていない。ある日、それこそ、家に帰ったら子供さんがいない、そして奥さんの姿も見えない。その後、裁判に入っているということですけれども、この配偶者あるいは夫と妻、それぞれの了解なり説明なしに突然子供が連れ去られる、このことについて前回聞かせていただきましたけれども、少し追加を、刑事局長を始め、皆さんにお伺いしたいと思います。
 また、橋本棋士の例などはもっともっと深く追求する必要があると思いますので、次回に回させていただきますけれども、まず前回の続きですね、三月三十日の続きで、子の連れ去りに対しては、英国では裁判所侮辱罪、児童略取罪、コモンロー上の誘拐罪、刑事的な制裁がなされている。また、フランスでも、未成年者の略取の罪や未成年者の不引渡しの罪が規定されております。それぞれ運用の在り方があるかと思いますけれども、単純な比較はできませんが、日本では子の連れ去りが放置されているという。子供を連れ去られ、子供に会うことができなくなった親の訴えが数多く主張されておられます。
 先ほどの橋本棋士の話でも、多分奥様の言い分、あるんだと思います。その辺がまだ社会的に出てこないので、余り一方的な判断するべきではないと思いますけれども、事実として、ある日突然子供がいなくなってしまったということは重く受け止めるべきだと思います。
 そこで、法務省さんにお伺いします。
 夫婦間あるいは元夫婦間における子の連れ去りや連れ戻しに対する刑法の罰則規定の適用についてどのようにお考えでしょうか。法務省さんにお願いいたします。


○政府参考人(川原隆司君) お答えを申し上げます。
 まず、具体的事案における犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄でありますので、お答えを差し控えさせていただきますという点をまず御理解賜りたいと思います。
 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、刑法二百二十四条の未成年者略取及び誘拐罪は、未成年者を略取し又は誘拐した場合に成立するものと承知しております。
 また、委員御指摘のような事例は、事案によりましては刑法二百二十六条の所在国外移送目的略取及び誘拐罪も問題になるところでございますが、この罪は、所在国外に移送する目的で人を略取し又は誘拐した場合に成立し得るものであると承知しております。
 これらの罪の関係でございますが、最高裁判所の判例の事案を御紹介申し上げますと、他の親権者が監護養育している子を略取し、又は誘拐する行為については、親権者によるものであっても略取又は誘拐罪が成立するとした最高裁の判例もあるものと承知しております。
 その上で、検察当局におきましては、それぞれの事案に応じて法と証拠に基づき適切に対処していくものと承知しております。


○嘉田由紀子君 今ほどのその最高裁の判例は、いつの時点、そして何件あるのか、その辺り具体的にお教えいただけますか。


○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
 私どもで今御紹介できる最高裁の判例として二つございます。一件は、最高裁判所の平成十五年三月十八日の決定でございます。もう一件は、最高裁判所の平成十七年十二月六日の決定でございます。
 以上でございます。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 もちろん、個別の事案について出せないところあると思うんですけど、もう少し詳しく具体的に平成十五年、十七年の事案を御説明いただけますか。可能な限りで結構です。


○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
 最初は、一件目、平成十五年の決定の事案でございます。これは、オランダ国籍、被告人がオランダ国籍で、このオランダ国籍の被告人が日本人の妻と婚姻していたというところ、別居中の妻が監護養育していた二人の間の子供をオランダに連れ去る目的で連れ去ったというものでございます。最高裁判所は、これにつきまして、被告人の行為は国外移送略取罪に当たることは明らかであるということで、国外移送略取罪の成立を認めた原判断は正当であるという判示をしております。
 もう一件が、平成十七年、二件目でございます。これは、子供の共同親権者の一人であるその実家で、その共同親権者の実家で監護養育されていた子供を連れ去ったというものでございまして、これにつきまして、最高裁判所は、未成年者略取罪の構成要件に該当することは明らかであるなど判示した上で、最終的に未成年者略取罪の成立を認めた原判断は正当であると判示しております。
 以上でございます。


○嘉田由紀子君 まだハーグ条約が締結される前ですよね、平成十五年というと。もう海外との事例でいろいろあると思いますが、今日のところはここまでで終わらせていただきますけれども、本当にこの子供の連れ去り、きつい言い方ですと実子誘拐というのは日本で隠れた事案でございます。その辺りは、この後いかに、まさに民事に刑法が入るのか、これは日本の法制度のかなり根本的な問題になってくると思いますけれども、ここは、例えばDVを刑事罰にできるかどうかというような話も含めて、かなり本質的な問題が隠れていると思いますので、また次にさせていただきます。
 今日は、裁判所の定員法に関わりまして、先ほど来、高良議員始め皆さん質問しておられますけれども、大きく二点、一つは司法分野での女性活躍でございます。
 先ほど来、数値も出していただいておりますけれども、資料の一に司法修習の終了時、裁判官、検察官に採用される割合は増えておりますけれども、今回、当委員会の附帯決議では法曹志望者の増加に向けて取組一層進めることと決議されておりますけれども、司法の分野で活躍を目指す女性を増やすために法務省としてどのような取組をなさっておられるか、またどのような課題があると考えておられるか、法務大臣にお願いをいたします。


○国務大臣(上川陽子君) 司法を含みますあらゆる分野におきまして、女性も男性も幅広く活躍をできる男女共同参画社会を築くことにつきましては、大変重要というふうに認識をしております。
 法曹三者に占める女性の割合につきましては年々上昇しているものの、現状におきましても、法曹志望者について、男性と比較して女性が少ないという課題があるものと認識をしております。
 その上で、より多くの女性に法曹を志していただくためには、この将来の進路、これを考えている女子学生の皆さんに、法曹の仕事の内容の魅力あるいは働き方につきましても十分に知っていただきまして、関心を持っていただくということが重要であるというふうに考えております。
 そこで、法務省におきましては、例えば大学生等を対象に、検事の仕事に関する説明会、これを実施しております。その中で、出産、育児休業を経て子育てをしながら活躍している女性検事等にロールモデルとして自身の経験を具体的に語っていただくと。また、法務省ホームページの「検事を志す皆さんへ」というところがございまして、検察庁のみならず様々な分野で活躍をする女性検事が自らが担当する業務の魅力につきまして紹介をするなどの取組を実施しております。さらに、日弁連等が法曹人材の裾野拡大のため女子中高生やその保護者の方々を対象に実施していますシンポジウム「来たれ、リーガル女子!」にパネリスト等を務める女性検事を派遣するなどして、より多くの女性に法曹を志してもらえるよう努めているところでございます。
 司法分野を目指す女性を増やすためにも、今後とも、法務大臣といたしましても必要な取組をしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 資料一、一ページには、単年度の例えば検察官の割合とかあるいは裁判官の割合、二〇一九などはもう四五%まで女性の割合高いので、法務大臣、皆さんの御努力が出ているんだろうと思います。また、次のページは、一九九一年以降、ほぼ二十年間の年次別変化、ここも検察官二五%、この裁判官の数は先ほどのちょっと基準が違うと思いますので、高良議員への答弁とは少し数値がずれますけれども、こんな形で女性が確実に増えているのは有り難いことですが。
 ただ、憲法問題含めて一番トップにおられる最高裁判所判事、これも高良議員がおっしゃっておられました、七十五年間で百八十三名のうち女性はたった七名です。僅か三・八%です。一方、最近、数十年、裁判官も先ほどのように採用人数に占める女性割合、平均三四%程度に増えていますけれども。
 そこで、法務大臣にお聞きしますが、今後、最高裁判所裁判官の任命数について、女性の裁判官が果たすことのできる役割、どのようなものがあるとお考えでしょうか。

○国務大臣(上川陽子君) 最高裁判所の裁判官の任命につきましてでございますが、これは、内閣におきまして、裁判所法第四十一条第一項で定めます任命資格のある者の中で、それまでのキャリアや人格、識見等に照らしてふさわしい者を、最高裁判所長官の意見を聞いた上で総合的に勘案し、適切に任命しているものというふうに承知をしているところでございます。
 最高裁判所の裁判官は、その重要な職責を踏まえた総合的な判断によりまして内閣において個別に任命されるものであるということでございまして、最高裁判所の裁判官の男女構成比の在り方を含めます任命に関わる事項につきまして、法務大臣という立場から意見を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
 また、最高裁判所裁判官は、司法権の最終審、これを構成する裁判官として、性別を問わず重要な役割を果たしているものと認識をしております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 かなり時間が迫っておりますので、女性だけではなくて多様性の確保という意味で今お答えをいただきました。
 昭和五十九年に当時の菊池司法法制調査部長が、裁判官については健全な社会的感覚を失わないようにということで、裁判所法の四十一条には少なくとも十人は法曹関係、ということは、残り五人は法曹関係以外でも採用できるということになっておりますので、健全な社会的感覚を失わないというようなところでの、これは最終、国民審査も入るわけですけれども、より多様な方が最高裁の判事として御活躍いただけますように、これは答弁、もうお時間ございませんので、お願いでございます。
 以上、私の方は終わらせていただきます。ありがとうございました。

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