20210408参議院法務委員会【確定稿】

令和三年四月八日(木曜日)


○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
 これまでから引き続いております親の離婚後の子供の幸せの問題について質問させていただきます。本日も真山議員の御質問にもございました。
 実は、先日も申し上げましたけれども、将棋の橋本崇載八段、四月二日に突然プロ棋士の引退を表明し、その理由が、ある日突然、妻に子供を連れ去られたことということでした。
 実は昨日、直接に橋本さんとお会いをいたしました。そして、橋本さんに、この本日資料一として出させていただいておりますこのカラーの資料、これは子育て改革のための共同親権プロジェクトの皆さんが自分たちで作ったもので、三百四十六名の方の賛同を、顔を出しておりますけれども、これを橋本さんにお見せしたら、あっ、本当にこういう、自分が直接被害者になるまで子供の連れ去りなんてあるのを知らなかったと、でもこんなにたくさんの方が被害を受けているんですねということで、橋本さん自身もこれから生きる力をいただきましたと言っておられました。
 上川大臣、橋本棋士のように突然子供を連れ去られた事案を聞いてどのようにお感じになられるでしょうか。

○国務大臣(上川陽子君) ただいま、橋本崇載元棋士によりまして、御指摘いただきました資料も含めて、先回もそのようなお話をいただきました。
 御指摘された公表及び発信の状況については承知をしているところでございます。個人の公表や、また発信につきまして、法務大臣としてこの所感を述べるということについてはなかなか難しいところでございまして、差し控えさせていただきたいと思います。
 父母が婚姻している場合はもちろんでございますが、離婚した場合でありましても、父母が子供の養育について共同して関わり、それぞれが適切にその役割と責任を果たすということ、子供の利益を図るという観点から極めて重要であるというふうに考えております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 今の大臣の立場としてはそれ以上踏み込めないとは思いますが、もういつも申し上げておりますように、日本の民法八百十九条では、離婚をしたらどちらかの親を親権者として決めなければいけない単独親権、これはもう明治民法から、それこそ百二十年も前に決められ、そして、その親子分断の民法が橋本八段のような悲劇を起こしている構造的背景でもございます。
 そこで、今回、二月十日に法制審議会が始まり、三月三十日には法制審議会の家族法制部会が始まりました。その委員名簿を資料二として本日お出ししております。
 委員及び幹事の選定手続とその根拠についてお教えいただけますか。

○政府参考人(金子修君) お答えします。
 法制審議会の委員は法制審議会令第二条第一項によりまして、また法制審議会の幹事は法制審議会令第五条第二項によりまして、いずれも学識経験のある者のうちから法務大臣が任命することとされています。また、部会に属すべき委員及び幹事は、法制審議会令第六条第二項により、審議会の承認を経て会長が指名することとされております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 法制審議会や法制審議会の各部会の名簿をお一人ずつ見ていただきますと、例えば法制審議会では一名、政府職員が入っております。それから、審議会の家族法制部会では、部会長も入れて全体二十四名のうち四名が国の職員でございます。例えば、具体的には内閣府の岸本室長、あるいは法務省の小出民事局長、最高裁の手嶋家庭局長、法務省の堂薗審議官と、二十四分の四、幹事の方では十二分の六が言わば国の行政機関の職員でございます。
 法務大臣の下で働く行政職員を委員として、しかも、この法制、家族法制の方の委員はここに議決権まで与えているんですね。そういうことで、第三者性を欠いているという批判があるかもしれません、お手盛りと言われないかと。この辺りについて、御見識はいかがでしょうか。


○政府参考人(金子修君) 質問の御趣旨は、諮問した法務大臣の下で働く職員が委員、幹事になっているという御趣旨かと理解しますので、法務省の職員について御説明します。
 法制審議会は、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項について調査審議することを目的としております。これらの基本的法律の制定、改正等に関する事項は主として国民生活の基本的秩序に関するものであり、各種法律問題の細部にわたる検討と、これに基づく綿密、周到な答申要綱の作成が必要とされます。法務省職員は、このような検討等を行うために必要な民事法、刑事法といった基本的法律の立案や運用等に関する属人的な専門的知識及び経験を有することから、委員又は幹事に任命されるものでございます。
 このように、法務省職員を法制審議会及び部会の委員又は幹事に任命することは、法制審議会の目的に照らし必要であり、また専門的知識及び経験に着目して任命されるものであることから、お手盛りであるとは考えておりません。


○嘉田由紀子君 ただいまの御答弁の中に、基本的法制であるから行政職員が必要だと。例えば、私自身は国土交通省の委員をしたり環境省の委員をしたりしておりましたけれども、例えば河川法は、じゃ基本的な法制ではないのか、環境、水質保全法はというようなことで。基本的法制度だから行政職員が必要だという説明には私は納得をしておりません。
 参議院の法制局のホームページでは、審議会の目的がはっきり書かれております。行政への国民参加、二点目、専門知識の導入、三点目、公正中立性の確保、四点目が利害の調整でございます。
 今回の法制審議会の幹事及び家族法制部会の委員や幹事として法務省職員が任命されていることが、国民の目から見て、果たして公正中立性の確保が維持され、利害の調整がなされていると言えるのでしょうか。特に今回の家族法制の方は、離婚後の子供の親権の問題など、かなり国民的にも利害の対立する、あるいは様々、これによってまさに生殺与奪の権、生きる力を失ってしまうような、そういう大きな影響のある法制審議会でございます。
 果たして公正中立性の確保が維持され、利害の調整がなされると言えるのでしょうか。法務大臣、お願いいたします。


○国務大臣(上川陽子君) 法制審議会及び部会は、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項につきまして調査審議をすることを目的とするものでございます。先ほど答弁をしたところで、のとおりでございまして、このような調査審議を行うためには、そうした基本的な法律の立案、とりわけ運用等に関しまして専門的な知識また経験、こうしたものを有する委員又は幹事が私は不可欠であるというふうに考えております。
 したがいまして、法務省職員を法制審議会及び部会の委員又は幹事に任命することは法制審議会の目的に合致するものというふうに考えております。


○嘉田由紀子君 ここは国民的な広い議論が必要だと思いますけれども、資料三、時間がありませんので、ちょっと急がせていただきます。
 資料三に、最近出版されました「実子誘拐ビジネスの闇」というノンフィクションライターの池田良子さんの書の終わりの三ページ分を添付いたしました。これを見ていただくと、今回の法制審議会に期待してはいけないとあります。この本は、出版社によりますと、関係国会議員ほか法制審議会の委員にも見本が送られているということでございますけれども。

 判検交流による法務省職員、つまり、裁判官の身分を有している方が裁判官のまま法務省に入りますとこれは三権分立に反することになるので、検事の身分に変わる。判検交流により法務省職員として行政を担い、そして、これ自身は最高裁判所との三権分立が不明瞭になります。あわせて、共同親権に反対する人たちがある意味で専門職として入り、そして裁判所の裁判官、この辺りの裏の見えない利害の輪っかというのが私はあるのではないのかと思っております。今日はもう時間がありませんので、これ以上申し上げません。
 そして、個別の委員が例えばこの委員に入っていらっしゃること、これ、個人の問題ではありません、組織の構造の問題です。昭和二十年代以降、この判検交流というのは、言わば法務省の職員、人的に不足するということで、最高裁判所から裁判官の方が検事になられる。個人的にどうこうではなく、七十年以上もそういう構図をつくっていることに私自身はかなり驚いております。
 今日も、高橋元知事おられますけれども、トップに立つ者はいつも言わば国民、県民の皆さんの理解を得ながら公正中立な審議会というのを言わば運営しなければいけないと私自身は思っておりましたけれども、国の中で行政職員が直接議決権のある委員に入っているところ、今ほかの省庁も調べさせていただいております。三千ほど審議会があるということで、到底調べ切っていないんですけれども、私はまだこの法務省のこの事例しか、法務省の事案しか出会っておりませんが、ここは今日問題提起させていただいて、この後続けさせていただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。

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