20210413参議院法務委員会【確定稿】

令和三年四月十三日(火曜日)


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にもお時間をいただき、ありがとうございます。
 まず、この所有者不明土地についてお伺いいたしますが、ようやく国が動き出してくれたなというのが自治体の実務を担ってきた者の本心でございます。
 例えば、私も、滋賀県知事、二〇〇六年就任をいたしましたけれども、様々な事業、例えば西日本高速道路が名神高速道路を造るというときに、地図の上に線は引きますけれども、その用地買収は西日本高速ではできないと、県や市でお願いしたいというようなことで、私どもはチームをつくり、そして、実は、自治体の中で用地買収をする職員というのは法律が分かって忍耐力があってということで、かなり重要な経験が必要なんですね。そういう人たちをチームを寄せて、今、新名神高速道路の協力を地元としてさせていただいておりますけれども。二〇一一年の東日本大震災以降、国としても動き出していただいたんですけれども、自治体ではもう本当にここ三、四十年、大変、特に森林とか水辺とか自然度の高いところの利用と所有というのは苦しんでいたので、ここで一つ突破口をつくっていただけたらと思います。
 それから、これは余談になるかもしれませんが、私自身、環境社会学者として、自然は誰のものかと、森林や水辺や。となると、実は日本の場合には、先ほど来、高良議員も言っていらっしゃいますけれども、共有地で、それこそ森の利用だったら四点、立ち木は建物に使う、そして燃料はそれこそ日々の暮らしに使う、それから下草は肥料に使う、そして山菜は食料にというようなことで、本当に自然の利用をしながら、ですから、それは村落共同体として共有地として利用してきたんですけど、それが、木材は輸入し、そして燃料も輸入をし、場合によっては肥料も化学肥料ができて、そして食料ももう外から入ってくるということで、自給度が低くなった中で自然の利用度が低くなっております。そういうところが大きな時代背景の中にあり、こうして自然度の高いところが所有者不明土地になってしまっているということで、この制度そのものは大変タイムリーな求められていることだろうと思います。
 ただ、そういう中で、三点お伺いしたいんですけれども、特に相続土地国庫帰属法案についてですが、これが、相続などで取得した土地所有権を国庫に帰属させることのできる制度によって、土地が所有者不明化し管理不全化することを予防する効果、既に今までも何度か答弁していただいていますけれども、それをどのように高めようと考えておられるか、政府参考人の方にお願いをいたします。


○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 相続土地国庫帰属制度は、相続等により土地の所有権を取得した方が、その土地の利用や売却等の見込みがないなどの理由で、実際にはその土地の取得を望まず、また負担に感じているような場合に、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させ、国において適切に土地を管理することによって所有者不明土地の発生を抑制し、あわせて土地の管理不全化を防止しようとするものでございます。
 この所有者不明土地の発生あるいは土地の管理不全化、これらを防止する観点からは、この相続土地国庫帰属制度が広く利用されることが重要でございまして、制度の趣旨、内容について国民の皆様の幅広い理解を得る必要があると考えております。
 法務省といたしましては、この法律案が成立した場合には、関係機関と連携しつつ、しっかり広報周知活動に努めてまいりたいと考えております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 この制度を国民に向けて周知するためには、政府広報の活用、報道機関あるいは自治体に対する説明が、丁寧な説明が必要だと思いますけれども、今までも御答弁いただいておりますが、具体的にはどういうプロセスを経て国民の皆さんに周知をしていかれるでしょうか。


○政府参考人(小出邦夫君) この相続土地国庫帰属制度につきましては、国民に向けて幅広く周知することが重要であると考えております。
 具体的な周知方法につきましては、委員から御指摘いただきました政府広報の活用等も含めまして今後検討していくことになりますが、説明会の開催やパンフレットの配布、また、法務省、法務局のホームページを活用した広報など国民に法務省が直接周知する取組のほか、法律実務家や各種関係機関と連携して国民への周知を様々な方法によって図る取組などを想定しております。
 法務省としては、新たな制度が適切に施行されるよう、効果的な周知活動を検討し、行っていく所存でございます。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 実は、その際に、かつて村落共同体としてまさに共有資源を利用しながら暮らしを成り立たせてきた、それが、海外から木材も入り、肥料も化学肥料が入り、食料も外からということで大きく時代状況は変わっているんですが、逆に今の時代に新しいニーズができてきております。御存じのように、環境利用、SDGsの中でも、いかに身近な資源をうまく利用して、そして海外からの輸入物を減らすことによって環境の循環をつくるという、これ、環境省の方では地域循環型、地域循環共生圏などと言っております。
 それから、実は私のかなり専門に近い防災対策でも、川の中に水を閉じ込めるのではなく、森の水源保全機能、あるいは川そのものを広げて川べりの土地を元々の川に戻すというような形で、新しい時代の共有地の利用、これは環境保全と共有できるというようなことで出ております。
 先ほど、これも高良議員が聞いておられましたけれども、その相続土地国庫帰属法案の対象となる土地が、それぞれの地域で、今までの団体や個人ではない、新しく若い人たちが環境保全のために活用しようというような形で地域で有効活用される機会、どのようにつくっていかれるでしょうか。お願いいたします。


○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、相続土地国庫帰属制度の対象となる土地についても、その地域において有効活用される機会を確保することが重要であると考えております。
 相続土地国庫帰属制度の運用におきましては、承認申請者からの申請を受け付けた法務局はその旨を地方公共団体等の関係機関に情報提供する方向で検討しております。このような運用により、情報提供を受けた地方公共団体等が希望する場合には、承認申請者と交渉して土地の寄附を受けることにより、国庫に帰属させることなく、その地域で有効活用を図ることが可能となるものと考えられます。
 また、この相続土地国庫帰属制度によって国庫に帰属した土地につきましても、その土地の処分に当たりましては優先的に地方公共団体等からの利用要望を受け付けることとされているほか、個々の土地の特性に応じた手法を選択することにより、地域や社会のニーズに対応した有効活用の推進が図られることになるものと承知しております。
 法務省としては、相続土地国庫帰属制度の対象となる土地がその地域において有効に活用される機会が確保されるよう、関係省庁と連携して適切な運用を図ってまいりたいと考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 例えば農用地でしたら農水省がと。例えば農水省でしたら、今新しいニーズとしては農福連携、福祉団体の人たちが農業をやる場所欲しい、でも土地がないというようなときに、新しい時代のニーズ、農福連携であるとか、あるいは、川をもっとゆったりと生物多様性を保全したいというような団体もあります。そういう団体が自治体と組んで、人口減少時代、生物多様性なり自然をより豊かにできるような利用、そんなこともここから新しく展開していただけると大変有り難いと思います。事例をどんどん積み上げていただけたらと思います。
 少し時間が迫っているんですけど、実は先回通告させていただきながらできなかった問題、振り返らせていただきたいと思います。
 いつもお伺いしております離婚後の子供の幸せづくりということで、子の連れ去りの問題でございますけれども、前回通告させていただいております法務大臣の御見解をお伺いしたいんですが、子の連れ去りを犯罪とするような刑法の改正、これはまず法務大臣、どうお考えでしょうか。


○国務大臣(上川陽子君) 現行法上の対処ということについて申し上げたいと存じますが、我が国の刑法におきましては、未成年者を略取し、又は誘拐をした者は三月以上七年以下の懲役に処すると、これは刑法二百二十四条でございます。また、所在外国に移送するという目的で人を略取し、又は誘拐した者は二年以上の有期懲役に処する、刑法二百二十六条ということで規定をされております。
 最高裁判例におきましては、親権者による行為であっても、他の親権者が監護養育している子をその生活環境から引き離して自己の現実的支配下に置く行為は今申し上げた略取誘拐罪の構成要件に該当し得るとされておりまして、行為者が親権者であることは行為の違法性が阻却されるか否かの判断におきまして考慮されるべき事情とされているところでございます。
 このように、一方の親による子の連れ去りということにつきましては現行法の下でも処罰の対象となり得るところでございますが、経緯や、またこの態様等を一切問わず一律に違法性が阻却されないようにすることにつきましては、その場合の保護法益をどのように考えるのか、また民事法上の親権、監護権との関係をどのように考えるか、また現行の未成年者略取誘拐罪等による処罰範囲を超えて処罰することとすることの相当性につきましてどのように考えるかなどの点も含めまして慎重な検討を要するものというふうに考えられるところでございます。


○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
 現行法の刑法二百二十四条、未成年者略取誘拐罪でも、今の連れ去りについては刑法の対象とすることができると理解をさせていただきました。
 その中で、少し入り込ませていただきますが、この刑法二百二十四条の未成年者略取誘拐罪の保護法益はどう考えられるでしょうか、政府参考人さん、お願いいたします。


○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
 未成年者略取誘拐罪の保護法益につきましては、被拐取者、これはその誘拐されたり略取されたりする者ですが、被拐取者の自由とする見解、被拐取者に対する保護者の監護権とする見解、基本的には被拐取者の自由であるが監護権も保護法益であるとする見解など様々な考え方がございまして、一般に判例は最後の見解、すなわち基本的には被拐取者の自由であるが監護権も保護法益であるとする関係、見解を取っているとされているところでございます。


○嘉田由紀子君 繰り返させていただきますけれども、学説、通説幾つかあるけれども、基本的には被誘拐者の自由、安全、それから監護権も保護法益、つまり連れ去られた子供の自由や安全、そして、そのときに引き離された親の監護権というものも保護法益の対象になるという御理解、理解をさせていただきたいと思います。
 そういう中で、子の連れ去りに対する未成年者略取誘拐罪の適用範囲、それを先ほどいろいろな事例があるとおっしゃっておられたんですが、例えば離婚係争中とか別居中の夫婦、あるいは離婚、別居の話もない、もう日常的な、普通の日常の中で子供が平穏な中に連れ去られたり、あるいは連れ戻されたりした場合、こういうときでも未成年者略取誘拐罪に問われる可能性があると考えてよろしいでしょうか。


○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
 犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
 あくまで一般論として申し上げれば、刑法二百二十四条は、未成年者を略取し又は誘拐した場合に成立するものとされております。そして、ここに言う誘拐とは、一般に欺罔又は誘惑を手段として人を保護されている状態から引き離して自己又は第三者の事実的支配の下に置くことをいうものと理解されているところでございます。
 なお、最高裁の判例におきましては、親権者による行為であっても刑法二百二十四条の構成要件に該当し得るとされており、行為者が親権者であることなどは行為の違法性が阻却されるか否かの判断において考慮されるべき事情とされているものと承知しております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 ちょっとここはしつこく聞かせていただきますけれども、一方で、この子供を平穏に連れ去ったケースなどで、一方の親の監護権など法的利益が侵害されている場合でも、原則として刑事罰の対象にするとか、あるいは家庭内の紛争に対する国家の介入はできるだけ抑制するという、そういう意見も様々法曹界にもございます。
 家庭裁判所の紛争解決機能を充実させることのバランス、家庭内に、先ほど保護法益、子供の自由や安全あるいは監護者の監護権というものが侵されているような場合、どうやってこの刑法の家庭内への介入とそれから家庭の自立というところ、どうバランスを取られるでしょうか。お考えを聞かせていただけたら有り難いです。


○政府参考人(川原隆司君) お答えいたします。
 子をめぐる家庭内の紛争の解決という観点からは、一般に家庭裁判所の紛争解決機能が重要であると認識しているところでございますが、御指摘のその刑事罰の対象とすることと、家庭裁判所の紛争を解決する機能を充実させることのバランスという趣旨が必ずしも明確ではないように受け取れるところでございまして、一概にお答えすることは困難でございます。
 ただ、いずれにしましても、先ほど大臣から答弁がございましたように、一方の親による子の連れ去りにつきましては、現行法の下でも処罰の対象となり得るところであり、経緯や態様等を一切問わず一律に違法性が阻却されないようにするということについては慎重な検討を要するものと考えております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 今日、刑事局長と民事局長さんがお二人おられて、まさにバランスを取っていただけるんだろうと思いますが。
 ただ、実際に、平穏な家族生活の中で突然子供が連れ去られ、そのとき置いてきぼりになるのは七、八割、八、九割がお父さん。最近は女性、お母さんも置いてきぼり食うことが多いんですけれども、いわゆる連れ去りと連れ去られというようなことの中で、多くの方が家庭裁判所のバランスある判断を当てにしているんですけど、ここが実態はなかなか期待どおりにならない。
 もちろん、今の単独親権の下ですとどっちかに決めなきゃいけないから、もう単独親権制度そのものが親子の分断、父母の分断を構造的に決めている、私はこのことが大変問題だと最初から申し上げているんですけれども。
 ただ、そういうところにあって、最後に法務大臣にお伺いしたいんですが、子の連れ去りによって子供や子を連れ去られた親の法的利益が侵害されることを防ぐために、家庭内の紛争解決に刑事司法、どこまで委ねることが、あるいは国家が介入することが適切とお考えでしょうか。法務大臣の御見解をお願いいたします。


○国務大臣(上川陽子君) 先ほど申し上げたとおりでございますが、一方の親による子の連れ去りにつきまして、経緯やまた態様等を一切問わず一律に違法性が阻却されないようにすることにつきましては、慎重な検討を要するものと考えております。
 刑法は法益保護のために用いられるところでございますが、一般に刑法の補充性や謙抑性といたしまして、法益保護の手段は刑罰だけではなく、刑罰という保護手段は法的制裁の中でも最も峻厳なものであり、避けることができるのであれば避けるべきものとの考え方があるものと承知をしているところでございます。
 もっとも、御質問いただきました家庭内の紛争解決に関しまして具体的に刑事司法がどの程度介入すべきかにつきましては、一概にお答えすることはなかなか困難であるというふうに考えております。


○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 またこの後、家庭裁判所の役割、あるいは様々な現場の皆さんの声を聞きながら、次回に続けさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 これで終わらせていただきます。

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