20210415参議院法務委員会【確定稿】

令和三年四月十五日(木曜日)


○委員長(山本香苗君) 民法等の一部を改正する法律案及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、日本司法書士会連合会会長今川嘉典君、日本土地家屋調査士会連合会会長國吉正和君、全国青年司法書士協議会会長阿部健太郎君及び公益財団法人東京財団政策研究所研究員・研究部門主任吉原祥子さんでございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
 四人の参考人の皆さん、それぞれ御専門の立場から丁寧な御意見ありがとうございます。
 まず、司法書士連合会会長様の今川様にお伺いをしたいんですが、今回、相続登記の義務化によりまして多くの関係者の負担が増えると思うんですが、折しも今、デジタル改革関連法案、衆議院を通過いたしまして、参議院でも審議が始まりました。
 このデジタル技術を活用することによりまして、国民あるいは関係者の負担が軽減されるような施策は考えられるでしょうか。今川参考人にお願いいたします。
○参考人(今川嘉典君) 相続登記においては、まず戸籍を集めていくという作業がどうしても必要であって、それ大きな負担になりますので、オンラインで取得することができる、オンラインで請求することができると国民や我々資格者の利便性は大幅に向上するというふうに思っておりますので、是非オンラインによる戸籍の請求、実現をしていただきたいなというふうに思っております。
 それから、マイナンバーカードが今徐々に普及してきておりますけれども、このマイナンバーカードが普及しますと、登記申請する際に印鑑証明書や住民票を添付する必要がなくなりますので、マイナンバーカードの普及も今希望しておるところではあります。
 ただ、マイナンバーカードの場合は、そのマイナンバーカードで電子署名された電子文書を受け取る側、つまり我々ですけれども、添付情報であるとか委任状に付された電子署名が有効かどうかの確認をしなければいけません。実は、当連合会では、マイナンバーカードの電子署名について、全国の司法書士がどこにいてもその有効性を検証することができるというシステムを自前でつくり上げました。二月十五日から稼働しております。これは、多分、士業界で初めてではなかろうかと思っております。
 今後も、デジタル化社会に対応することができるように当連合会で活動していきたいなというふうに思っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 これまで、印鑑証明という大変財産のベースになる、それを確保するのも結構手間掛かったんですけど、逆にマイナンバーカードで代理できるとなると、それはそれでかなり利便性は高まると思うんですが、ただ、そのまさに証明ですね、そのシステムを司法書士会でつくっていただいた。本来国がやらなきゃいけない仕事かと思うんですけど、先行的に投資いただいているということで、大変心強いです。ありがとうございます。
 同じく、私、ずっと女性の社会参画ということを考えて、また発言もしてきているんですけれども、専門職における女性の参画、身の回りにも随分優秀な司法書士の方がたくさんおられるんですけれども、この司法書士会における女性の参画状況、役員の割合とか、あるいは、現在、今後の取組など、どうお考えでしょうか。
○参考人(今川嘉典君) 今川です。
 現在、全国の司法書士会員は二万二千人おります。うち、女性会員は四千百人です。全会員に占める割合は一八%ほどになります。ただ、その女性会員の割合は増加傾向にあります。
 そして、日司連の役員ですけれども、あっ、連合会の役員は、現在、約女性の割合は一一%です。ただ、全国五十ある司法書士会の役員の女性構成比については、三〇%に達した会もあるというふうに聞いておりますが、まだまだ多いとは思えません。
 当連合会では、平成三十年九月に男女共同参画推進室を設置しまして、組織的、横断的、計画的に男女共同参画の推進に取り組む体制を整備しております。そして、男女共同参画基本計画を策定して、現在これに基づいて具体的な事業を行っております。
 女性会員を増やすために、女性司法書士のインタビューをユーチューブで流したりしておりますし、また、単位会によっては、司法書士会によっては、女性のための女性司法書士による無料相談会をして一日で九十二人の相談があるという実績もありますし、また、大阪の司法書士会においては女性とこどものための専門相談会というのを毎週行っております。
 こういうように、男女共同参画社会の形成というのは、我々の、国民の権利を擁護して、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与するという司法書士の使命にも通じるものでありますので、今後も、各団体との協力の下、取組をしていきたいというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 仕事と子育ての両立という面でも、比較的時間の自由があって、一種の自営業のようなものでございますので、もっともっと私も女性に入っていただき、クライアントもそれだけ身近になってきますので、壁が低くなるのかなと。是非、子供さんと教育のところも今後ともお願いいたします。ありがとうございます。
 國吉参考人にお伺いしたいんですが、土地所有権の国庫への帰属に関するこの法律案の中で、かなり国際化が進んでいる中で、所有権の登記名義人が国内に住所を有していないとき、その国内における連絡先となる者の氏名あるいは名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として、法務省令、七十三条の二第一項二号で新たな規定が定められると伺っているんですけれども、この規定が定められることによりまして具体的にどのような効果が期待されるでしょうか、お願いいたします。
○参考人(國吉正和君) 先ほどの意見陳述でも述べさせていただきましたとおり、私どものその土地の調査を行う、当然ですけれども、隣接地の中にはやっぱり外国籍の所有者さんもおりますし、また、日本ではなく外国に住所を移していらっしゃる方がいる、多くなっているというのはもう目に見えております。
 そのときにやっぱり一番大変なのは、やっぱり外国に住所がありますとなかなか連絡が取れない。そしてまた、今ちょっとコロナの時期ですので、どちらかといいますと、日本にいらっしゃった外国の方が本国へ帰りまして、もうこっちへ来れないというような形で、もう立会い自体がなかなかできないという形が多く見られます。
 そのときに、やっぱりこれは、日本国内にそういった方との連絡が取れる方をきちっと決めていただければ、その方を通じて連絡を取れるということで、そういった土地の境界問題についても促進できるのではないかなというふうには思っているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 運用面が大変だと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 それから、阿部参考人様に、実は私、司法書士の皆さんの世界をよく知らないので全く素人の質問なんですが、全国青年司法書士協議会という方と、それと日本司法書士連合会と、何かすみ分けというか、年齢か何かの違いがあるのか。例えば、JCでしたら四十歳までと、その後、様々な商工会の活動に入ったりするんですけど、そこを少し、初歩的なところですが教えていただけますか。
○参考人(阿部健太郎君) 御質問ありがとうございます。
 当協議会は、パンフレットでも配らせていただいているところですが、まず日本司法書士会連合会と全国青年司法書士協議会の違いというところではありますが、日本司法書士会連合会という形になっておりまして、日本司法書士会連合会は、各全国の五十の単位会を、司法書士会員が各地の司法書士会に登録をし、その各地の司法書士会の総体としての組織が日本司法書士会連合会という形になっておりまして、一つの強制会という形になっております。
 同じ全国組織ではありますが、全国青年司法書士協議会という当会は、完全なる任意の団体になりますので、この当会の考え方に志を同じくする仲間たちが集っているというような形で、全国に同じような青年会が各地にありまして、その青年会のメンバーが全国で集ってきているのが当団体というような形。
 特段、そういった意味ではすみ分けというようなものがあるわけではなく、完全なる別団体というところにはなってくるのかなというふうに考えているところです。
○嘉田由紀子君 そうすると、例えば、阿部さんも日本司法書士会に入って、ある意味で義務的にそちらに入る、弁護士さんが日弁連に入らないといけない。そして、その上に青年司法書士協議会というのがあると理解をしてよろしいでしょうか。上というか、別組織で、任意団体として。
○参考人(阿部健太郎君) まず、私の場合ですと、私は神奈川県横浜市で事務所を構えておりますので、司法書士の登録をする場合は神奈川県司法書士会に登録をします。神奈川県司法書士会を通じて日本司法書士会連合会の名簿に登載をされるんですが、登録は神奈川県司法書士会です。神奈川県司法書士会が日本司法書士会連合会の構成団体というような形になっているというところ。そして、日本司法書士会連合会と我々全国青年司法書士協議会とは完全なる別団体という形になりますので、特段、上下関係とか何か関係性があるということにはならないということになると思います。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 クライアントとしてどちらに相談したらいいかなというようなこともあるかもしれませんので、またいろいろと勉強させてください。申し訳ありません、立ち入った質問でしたら。
 もう時間が迫っているんですけれども、最後に吉原参考人様に、私は、これからの温暖化が進み、環境破壊が進み、そして日本の国土の土地利用というのは今まで余り意識的に進んでいなかったところが必要だと思うんですね。例えば、災害ですと、水の問題ですと、より川の面積を増やしてグリーンインフラという形、そうすると生物多様性なり、魚たちも喜んでくれるだろうと、そんなところで研究もしてきているんですが。
 それから、グリーンインフラだけではなくて、本当に生き物がすみやすい国土、そのときに、今回、不明土地の国庫帰属、国に寄附できるというような制度ができているんですけど、こういう土地を新しく社会のニーズに合わせるような形で転換するモデルプロジェクトなりができたらいいなと思うんですけど、土地利用の御研究している立場からどうでしょうか、そんなことは可能となるかどうか、ちょっとアドバイスをいただけたら有り難いです。
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 是非そうした方向に進んでいければというふうに思います。今回のキーワードの中の一つに権利の分散化という言葉がありましたけれども、日本の場合は物理的にも権利的にも細分化されているという現状がありまして、そうしたグリーンインフラのような大きな面積で活用していくというところにもそうした所有者不明土地問題の課題が現れてしまっているのかなと思います。
 この問題が、遺産分割協議の早期の合意、それから登記に反映されていくこと、それから共有制度が解消されていきやすくなるといった今回の法制度が活用されることで、大きな面積の土地活用というものの道が開けていって、今先生がおっしゃったような生物多様性を生かしていくようなグリーンインフラの活用などにも多面的につながっていくことがまさに望まれるものだと思っております。
 ありがとうございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。これで終わります。

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