令和三年五月十一日(火曜日)
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にも時間を割り当てていただき、ありがとうございます。
今回のこの少年法の改正の問題で、まず、本日、資料を出させていただきました。少年法で、言わば加害少年と、男女おりますけれども、加害少年の生育歴なり家族環境というところをまず最初に見ていただき、法務大臣に質問させていただきたいと思います。
資料一では、少年院入所者の保護者の状況と虐待を経験した入所者の比率が示されています。例えば、実の父母に育てられた少年院入所者の割合は男児で三三%、女子で二六・三%です。実は、離婚の問題の中で、四人に一人の子供が離婚を経験しているということで、そうすると、四人に三人は離婚を経験していないわけですから、実父母に育てられている子供さんは七五パーかというような数値になると思うんですけれども、ここで実父母に育てられている男児三三パー、女子二六パーというのはかなり乖離がございます。
私自身はこの法務委員会で一貫して日本の子供の幸せづくりと未来ということを考えておりますけれども、今、本当に日本は子供の数が少なく、少子化の問題で、法務大臣もチルドレンファーストと言っていただいております。こどもの日の新聞記事、皆さん見ていらっしゃったと思いますけど、昭和二十五年、私がちょうど生まれた年、三千万人子供さんおられました。今、千四百九十三万人、半減です。そういう中で、一人ずつの子供たちをいかに言わば愛情を持って丁寧に育ててあげるかというのは、これはもう国家的使命だと思います。
そういう中で、今回、この少年法の改正に対しては、私自身は基本的には、後からまた述べますけど、立法事実も少ないし、何よりも子供のニーズに寄り添っていない、今回の加害と言われる子供たちは生育歴あるいは環境などで被害者ではないかということを最初に申し上げたいと思います。
そして、身体的な虐待の問題ですけど、男児で二七パー、女子で三九・八パー、女子については更に二・三%が性的虐待を受けております。
これ、資料一にございますけれども、先日の参考人質疑で川村百合弁護士が、実はこれは申告制なので、自分が外から見たら虐待に相当するような加害をされていても自分でそう思わない子供たちが多い、川村弁護士によると、ほぼ一〇〇%の子供たちが何らかのネグレクトなり虐待を受けていたんじゃないのかということを現場の声として言っていただいております。
そういう中で、生育環境やあるいは様々な育てられた環境の中で、法務大臣に、少年事件の加害者の特徴について詳しく御説明をいただけましたら幸いでございます。
○国務大臣(上川陽子君) 少年事件加害者のうち少年院の在院者につきましては委員がお示しいただいたこの資料一のとおりでございますが、被虐待経験があると申告をする者が一定割合いらっしゃいます。特に、女子の少年につきましては入院者の半数以上が何らかの被虐待経験を有しているなど、それぞれ多様な課題を抱えているものと承知をしているところでございます。
一般的に、非行は資質上及び環境上の問題が複雑に関連をして生じておりまして、こうした特徴と個々の犯罪行為との関係、また評価のことにつきまして一概に申し上げることは困難でございますが、少年院の在院者のこの調査におきましての、申告ということではございますが、非常に厳しい状況の中で子供たちがいるということについては私自身は深刻に受け止めているところでございます。
少年院におきましてこうした個々の在院者の方々に対してどのように対応するかということが大変大事でありまして、この一人ずつ、お一人お一人の特徴に応じた対応をしていくということが非常に重要であると思っております。
例えば、在院者が他者への不信感などを有していることを踏まえまして、法務教官との間で深い信頼の関係を構築するということ、そしてその基盤の上に初めて個々の在院者が抱える課題にしっかりと応じた指導ができるということでありますので、そういった指導ができるような環境については計画的に実施をしている状況でございます。
また、再非行防止に当たりましては、何といっても家族関係の調整、改善が必要でございます。そういった在院者に対しましては、家族プログラム、またコミュニケーションスキルの向上に向けた指導も行っている状況でございます。特に女子の在院者におきましては、自傷とかあるいは摂食障害などの問題を抱えている女子在院者が多いということでございますので、こうした方々に対しましては、特別のプログラムを通じて、この自尊心を取り戻すための働きかけを重点的に行っている状況でございます。
どのような特徴を持つ在院者でありましても、再非行防止におきまして、特に少年院の出院後のサポート体制の構築、これは大変重要でありまして、引き続き、少年院在院中から更生保護官署やまた福祉関係機関と連携を図り、帰住先の確保、また円滑な社会復帰に向けました支援、こうしたことにつきましても計画的に進めていくことが重要と考えております。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
先ほど来、家庭裁判所の役割、また少年院の役割、本当にある意味で、山添議員も言っていらっしゃいましたけれども、ここのところ少年犯罪が少ない、これは逆に皆さんの御努力のおかげだろうと思いますけれども、検挙数は平成十五年以降急激に減少しているわけです。つまり、少年犯罪の件数減っている。それなのに、今回のように少年法を厳罰化あるいは刑罰化という形で厳しくしているわけですけれども。
そもそも、そして国民の間には、いや、少年犯罪は増えていると、イメージとしてはそう思われている。そうしたら、まず法務省としてやるべきことは、国民の間に事実を事実として正確に伝えることではないでしょうか。そして、法制審議会でもきちんと結論が出なかった、三年やって結論が出なかった、そのことをもっともっと国民に呼びかけて、実は刑法犯の検挙人数減っているんですよ、それでも皆さんが増えていると思っているのは、今のネットワーク社会とか情報の問題があるんですよということを、例えばせめて二、三年、国民の間に広げていただいて、同時に、今、日本社会にとって一人一人の子供がとっても大事なんだと、その大事な子供を社会全体で育てていくという、そういう姿勢が必要なんではないでしょうか。
先ほど高良議員も言っていらっしゃいました、法というのはまさに水を去るというところで、社会の中で一番弱い立場の人たちを守っていただくという意味では、この立法事実がそもそも今回の刑罰化、厳罰化にはないのではないかと。法務省さんの御認識をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(川原隆司君) お答え申し上げます。
今回の少年法改正の立法事実についてでございますが、御指摘のとおり、少年による刑法犯の検挙人員数は全体として減少傾向にありまして、少年法に基づく現行制度は、十八歳及び十九歳の者を含め、少年の再非行の防止と立ち直りに一定の機能を果たしているものと認識しております。
本法律案は、十八歳及び十九歳を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、これらの者について少年法においてもその立場に応じた取扱いをするためのものであり、現行制度に問題があることを理由とするものでもなく、また、お尋ねのように、厳罰化を図ってより重い処分、処罰の実現を追求しようとするものでもございません。
本法律案の立法事実について改めて御説明申し上げますと、そもそも少年法の適用年齢につきましては、選挙権年齢を十八歳に引き下げる公職選挙法等の一部改正法の附則により、国会の御意思として、民法の成年年齢とともにこれを引き下げるかどうかの検討が求められたものでございます。
そして、公職選挙法及び民法の改正等により、十八歳及び十九歳の者は国政に参加する権利や経済取引の自由等の重要な権利、自由を認められ、責任ある立場で社会に参加し、様々な分野で積極的な役割を果たすことが期待される立場となり、また、親権者の監護権の対象から外れ、基本的な法制度において一般的に自律的な判断能力を有する主体として位置付けられたことからいたしますと、刑事司法制度においてもその立場に応じた取扱いをすることが必要であり、かつ、刑事司法に対する国民の理解、信頼の確保という観点からも適当であると考えられるところでございます。
そこで、本法律案は、少年法を改正し、十八歳及び十九歳の少年の特例等を定めることとしたものでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実は、この立法事実がないということの一つの傍証ですけれども、先ほど清水議員も言っていらっしゃいましたが、審議会で議論してきたところの方向と違うものが与党PTで出て、その与党PTのところで、六か月で急ぎ厳罰化に行ってしまったと。私は、これは一貫して家族法のところでもお伺いしておりますけれども、審議会の中が、言わば行政職の皆様が、判検交流の、その権限を持った行政職の皆さんが人事交流の中で、どちらかというと法務省が先走ってやってしまわれたということはないのでしょうか。
この辺りを何としても、国民の皆さんの利害としては、子供を一人ずつ大事にしてほしいということの結果が今回の立法には入っていないということを、もう答弁は結構です、御指摘をさせていただきます。
そして、この間も、参考人の中で大山さんという方が、少年院でいかに自らが立ち直ったかということ、本当に勇気をいただく御発言いただきました。また、今日、資料二として、戦慄かなのさんの新聞記事を出させていただきました。収容二年間、少年院で自分が変わることができたと。小学校一年で両親が離婚して、母と子、母子家庭になり、まさにお母さんから殴る蹴るの暴力、食事がないとか、そういうことで、大変厳しい子供時代、万引きをしてしまい、そしていわゆるJKビジネスなどに入ってというところで少年院に収容された。そこでいかに温かい雰囲気で自分自身を見詰めることができたかと。教務の教官の皆さんの言葉は一つずつ心に刺さってきて、そして内省の時間、自ら振り返ることができたということを切々と訴えておられます。
先日の大山参考人のお話と共通ですけれども、やはり子供たちを大事に一人ずつ育てていくには、例えば離婚家庭で片親で苦しんでいる、あるいは様々な障害を持ちながら、発達障害など持ちながら社会的支援がない、そういうところで犯罪を犯してしまった子供たちは、社会全体としてサポートする方向に行かなきゃいけない。それが社会を代表する言わば法務行政への一つの期待だろうと思うんですが、今回の場合にはやはり逆方向に行っていると私も思わざるを得ません。
そういうところで、法務大臣に、十八歳、十九歳を大人並みに扱って罰する必要どこにあるのか、確認をさせていただきたいと思います。
○国務大臣(上川陽子君) 今般の本改正案について提出した背景におきましては、まさに公職選挙法の改正によりまして、十八歳及び十九歳の者は選挙権を与えられる、また国政に参画をする権利を得るとともに、国会議員の選挙という公務に参画をする義務を負うことになったところでございます。また、これらの者は、民法上の成年として経済取引の自由を認められるとともに、親権者の監護権から外れ、自律的な法的主体となるに至ったところでございます。
これらによりまして、十八歳及び十九歳の者は、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場として位置付けられたと言えるところでございます。
そこで、これらの者については、少年法の適用においてもその立場に応じた取扱いをすることが適当というふうに考えたところでございます。その上で、本法律案につきましては、十八歳及び十九歳の者が成長途上にあり、可塑性を有するということを踏まえまして、少年法の適用対象とする、しかし、十七歳以下の者とは異なる特例規定を設けつつも、全事件、全事件を家庭裁判所に送致をする、そして原則として保護処分を行うと、この少年法の基本的な枠組み、これは維持をするということでございます。
このように、本法律案におきましては、委員御指摘の大人並みに扱って罰するということを目的としたものではございませんで、家庭裁判所におきまして、個々の少年が抱える様々な事情を含め十分な調査を行った上で、個々の事案に応じた適切な処分選択が行われるというものと考えております。
○嘉田由紀子君 御丁寧に答弁いただきましたけれども、これはまさに社会の判断でございます。飲酒やあるいは喫煙は二十歳、そして、先ほど来、離婚の後の養育費については経済的必要ということで十八歳という年齢を区切らないと、今民事局長が答弁をくださいました。ですから、これはまさに社会の判断、そういうところで、私自身は、繰り返しになりますけれども、教育をして支えていかなきゃいけない子供たちを厳罰化するのは大変賛成しかねるということは申し上げさせていただきます。
そして最後に、推知報道の解禁の問題でございます。
本日、自民党の山下議員も言っていらっしゃいました。また、先回の参考人の中で大山さんが、もし、自分が小さい町で少年院から帰って、そして名前が知れてしまっていたので、その自分の町では仕事できなかった、でも、隣の町だったら名前を知られていなかったので仕事ができた、立ち直れたと言っていらっしゃいました。それが今の時代のようにネットで自分の名前出されたら、もうどこにも立ち直るチャンスがなかった、これは経験者として大変重要な御指摘だろうと思います。
少年の社会復帰の障害となってしまう推知報道の解禁について、事務方で結構でございます、答弁いただきたいと思います。
○政府参考人(川原隆司君) お答えを申し上げます。
一般論として、犯罪に関する報道により、報道された者の社会復帰に影響が生ずる場合があり得ることは必ずしも否定できないところであろうと思います。しかしながら、それは犯罪報道一般に妥当する事柄でありまして、少年事件特有のものではないと認識をしております。
そして、十八歳及び十九歳の者に係る推知報道を禁止するかどうかにつきましては様々な御意見があるものと承知しておりますが、推知報道の禁止は、少年の更生に資するものである一方で、憲法で保障された表現の自由や報道の自由を直接制約する例外規定であることなどからいたしますと、十八歳以上の少年について一律に推知報道を禁止するのは、委員の御質問の中にも御指摘がありましたインターネットといったものの現状を踏まえましても、責任ある主体としての立場等に照らして適当ではないと考えられるところでございます。
そこで、本法律案では、少年の更生と報道の自由等との調整の観点から、十八歳以上の少年については、一般的に推知報道を禁止した上で、公開の法廷で刑事責任を追及する立場となる公判請求の時点から禁止を解除することとしたものでございます。
その上で、推知報道の一部解禁によって健全育成、更生が不当に妨げられることがないよう、関係機関において事件広報に当たって適切に対応することが必要であると考えているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
御答弁いただきましたけれども、あくまでも、子供たち一人ずつがいかにこの日本社会で、言わば一旦犯罪を犯してしまってもそこから立ち直りそして社会人として成長していくという、それを法務省も、また私たち国会議員も支えていきたいと思っておりますので、そういう原則からいたしますと今回の法案には大変大きな疑問がございます。
時間来ましたので、以上で終わらせていただきます。
嘉田由紀子でございました。ありがとうございます。