令和三年五月十三日(木曜日)
○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にも十分なお時間いただきまして、ありがとうございます。
少年法の議論が進んでおりますけれども、私自身は、子供たちが、日本の子供たちが置かれている社会の構造、特に親族構造について一貫して質問させていただきます。
五月五日、こどもの日でした。大変つらいんですけど、日本の子供の自殺人数は、二〇二〇年、過去最大となってしまいました。子供の自殺率は世界的に見ても最大と言われ、特に精神的幸福度はユニセフ調査で三十八か国中三十七位というデータさえあります。
少し長くなりますけれども、なぜいつまでも日本の子供は、特に離婚後放置されているのか、そういう中で、なぜ実子誘拐のような悲劇が起きるのか、日本の法制度、裁判制度と関わらせて問題提起を私自身フェイスブックで上げさせていただきました。多くの関係の皆さんの意見がフェイスブック上に寄せられました。
そういう中で、人数的にも、日本の子供約千五百万人、親の離婚を経験している子供は毎年二十一万人から、十年ほど前は三十万人ほどございました。全体として見ると、子供の四人から五人に一人が親の離婚を経験しているという高い率です。ただ、正確な数字、これは担当部署に取っていただけたらと思います。
そういう中で、日本の民法八百十九条ですけど、離婚後は片親親権あるいは片親監護権を規定しておりまして、離婚後の親子交流ができない離婚家庭が増えております。五月七日のNHKの番組でもございました。七割の離婚家庭が親子交流ができていないということで、一方で、離婚後の養育費の支払、母子世帯でも二四・三%、一人親家庭の貧困の一つの要因となっております。この委員会でも一貫して問題提起してきたところです。
そういう中で、新しい親子交流を求めるグループがコロナ禍において親子交流がどう進んでいるかというので調査をいたしました。その結果を本日皆さんに資料一としてお出しをしておりますけれども、別居親の六割が面会交流ができていないと。回答者百八十九人のうち約四割の七十四人が子供に会えていない。
このようなコロナ禍における頻度の低い子供との面会交流、このようなことを法務省としてはどう対応を取っていったらよろしいでしょうか。法務大臣にまずお伺いいたします。
○国務大臣(上川陽子君) 今委員がお示しいただいたこの民間団体におきましてのアンケート調査の、アンケート結果でございますが、公表について承知をしているところでございます。
コロナ禍の状況下におきまして、面会交流の実施状況、またその在り方については、地域地域で感染状況、また感染の流行状況も異なるものでございまして、個別具体的な事案に応じてきめ細かな対応が必要となるというふうに考えているところでございます。
もっとも、子の利益にかなうものとして面会交流の取決めがされている以上は、基本的には、新型コロナウイルス感染症が流行している状況下でありましても、適切な感染対策を施した上で、安全に、そして面会交流を実施することができるのであればこれを継続すること、このことが子の利益にかなうものであるというふうに考えているところでございます。
他方で、個別の事案におきましては、子供の安全の確保や感染拡大防止の観点から、事前に取り決められていた条件での面会交流を実施することが困難になることもあると考えられるところでございます。そのような場合におきましては、ビデオ電話によりましての交流でありますとか、また、ICT技術を活用した代替的な手段での交流等が実施されている例もあると承知をしているところでございます。
具体的な方法等につきましては、まさに子供の利益を図るという観点から、その事情、状況に応じまして、父母の協議等によって定められるべきものであると考えておりますが、そうした趣旨につきまして、私どもの法務省のホームページにおきましても周知を行っている状況でございます。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
もちろん、感染を防止、そして安全を確保してですけれども、やはり子供たちは愛着形成を育んでいくというのが大変大事でございますので、この少年法の問題の根底にあるところでございます。できるだけ親子交流を直接にできるような、そういう支援がしていただけたらと思います。
先月の四月二日に将棋界を突然引退され、子供の連れ去り問題について精力的に周知活動をしております橋本崇載元棋士八段、四月末に出版されました池田良子さんの「実子誘拐ビジネスの闇」、ちょっとタイトルがセンセーショナルですが、内容を読ませていただきますと、社会的事実として重く、データも信頼が置ける書籍と判断をいたしました。その橋本棋士が、この本に私の遭った境遇と私と同様の実子誘拐の怒りが込められていますと帯で紹介してあります。実は、はすみとしこさんという方も「実子誘拐」という本を、それから、二、三日後だと思いますけれども、高橋孝和さんという方が、タイトルは「共同親権が日本を救う~離婚後単独親権と実子誘拐の闇~」という本を準備しているようです。私、まだ読ませていただいておりませんが。つまり、こういう問題はやはり今増えているから、ここまで書籍も、そして社会的に関心が高まっているんだろうと思います。五月五日のこどもの日には、橋本棋士と、それからミツカン親子分離事件当事者の中埜大輔さんたち、オンラインシンポが開催されました。
そういう中で、世界の先進国、日本だけが明治民法以来のこの単独親権制度が墨守され、残っているわけです。離婚をしてもパパとママに両方に会いたいという子供の願いを実現する共同養育、共同親権をめぐり、私自身、二〇一九年、参議院議員にならせていただいてから二十五回ほど質問をしてまいりました。しかし、壁は高い、そのことを最近改めて感じております。
実は、私の事務所にも、本当に多くの方が悩みを、あるいは苦しみを打ち明けてくださいます。電話だったり、ファクスだったり、メールだったり。それで、今日のこの委員会の質問も日本中で多くの方がオンラインで見てくれていると思います。それほど、ある意味で隠れているけれども数は増えているという中で、二〇二一年二月十日、上川法務大臣が法制審議会で、離婚後の子供の養育の在り方、諮問され、具体的には三月三十日から家族法部会が開始されました。親子分断された方たち、本当に期待をしていると思います、この審議会に。ただ、この「実子誘拐ビジネスの闇」という本を読んで、本当にこの審議会、期待できるんだろうかということを私自身も少し疑問を持つようになってしまいました。
そういう中で、まず法制審議会のメンバーですが、民事局長、官房審議官など行政職を担う幹部、裁判官が、議決権を持つ委員二十四名のうち四名入っております。これも以前から指摘しておりますように、私自身も幾つも国の委員にならせていただいたことありますけれども、直接行政職の幹部が議決権を持つ委員になっている事例は見たことありません。そういう意味で、広く国民、専門家の意見を聞くために、公平公正に構成されているんだろうかという疑問が湧いてしまいます。
特に、この行政職、法務省幹部の皆さんは、裁判官から検事の身分に、行政職に転官しておられる判検交流という人事交流と伺っております。これもこれまで詳しく質問させていただいております。これは、特に個人的にどうこうではなくて、まさにそういう組織が人事交流の中で判検交流裁判官で占められているということです。法務省だけではなくて、霞が関のほとんどの省庁の法務系職員百五十九名が今年度配置されているということでございます。
四月二十日の参議院の法務委員会では、内閣法制局は、判検交流については、それ自体について定める法律の規定というのは特にないという答弁でございました。上川大臣は、この法務省行政に法務実務の経験を有する法律専門家を任用することは合理性があると四月二十日の委員会で答弁をくださっております。さらに、法務省職員であって専門的知識を持っておられるその方たちの、言わば指揮系統ですけれども、法務大臣の指揮系統ではなく、裁判官としての専門性で判断してよろしいということも上川大臣が答弁をなさっておられます。
こういうところで、実はこの判検交流で裁判官が法務行政職の幹部を占め、そして、単独親権という親子分断の前例に従って、父母両方が子供とのつながりを持ちたいというそのような離婚夫婦、どちらかに親権を与える基本方針は裁判官の判断次第となります。このときに、これまでも私自身、問題提起させていただいております継続性の原則ということが、法的には明記がないんですが、慣習としてなされているようです。つまり、それまでできるだけ一緒にいた人を選ぶということで、この出口が分かると、言わば単独親権、どちらかに親権や監護権を与えるという出口が見えてくるわけです。
それで、相手配偶者に無断で子供を連れ出し、また、しばらく身を隠したりして時間を稼ぐと。そこに、まあ連れ出した理由いろいろあると思うんですけれども、本当のDVあるいは様々な理由があったりすると思いますけれども、こういうところでDVがいつも大きな理由にされております。
DV自身、今の日本では、警察が加害者、被害者双方から調書を取るという厳格な対応は少なく、訴えるだけで認められる傾向にあります。この実子誘拐の書物の中に出てくる卒田さんという仮名の方ですけど、松戸の千葉家裁松戸支部の一審で、妻が娘さんを連れ出した事案で、DVと認めるに足る証拠はないということで裁判官がDVの主張を否定しました。でも、このような例は大変少ないということも伺っております。
そういうところで、内閣府と法務大臣にお伺いしたいんですが、今の日本のDV防止法の実効性についてどのように御認識なさっておられるでしょうか。また、DV対策が不十分であることが面会交流の実現を阻害しているという意見に対して、法務大臣、どのようにお考えでしょうか。お願いいたします。
○政府参考人(伊藤信君) お答えいたします。
いわゆるDV防止法は、配偶者からの暴力の被害者に対する救済が必ずしも十分に行われてこなかったことなどに鑑みまして、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護、自立支援を図るため、平成十三年四月、超党派の議員による議員立法で全会一致により制定されたものでございます。そして、その後も、配偶者の定義の拡大や保護命令制度の拡充、適用対象の拡大など、三回にわたる大きな改正もございまして、これらは議員立法で全会一致により成立してきた経緯がございます。
このような制定、改正の経緯があるDV防止法に基づきまして、現在、関係省庁を始めとする関係機関におきまして適切な対応がなされているものというふうに考えてございます。
○国務大臣(上川陽子君) この面会交流の点も含めまして、父母の離婚に伴いまして子供の養育をどうするのかというこの在り方の検討、これにおきまして、DVに関わる問題、これと正面から向き合う必要があるものと考えているところでございます。
父母の離婚をめぐる子の養育の在り方について調査審議を行っている法制審議会の家族法制部会におきましても、このDV問題に深い知見を有する研究者の方や、また内閣府のDV問題の担当者が参加しているほか、また、四月二十七日に開催されました同部会の第二回会合におきましては、DV被害者の支援をしている専門家の方からのヒアリングも実施されたと承知をしているところでございます。同部会におきましても、このDV問題には十分に配慮した充実した調査審議が行われることを期待してまいりたいというふうに思っております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
四月二十七日のヒアリングの結果をまた公表していただけたらと思います。
そういう中で、実は、最終的に継続性の原則で言わば親権なり監護権の帰属が決まってきますと、ここのところ、裁判実務を知っている人たちが、やはり一旦は連れ出してそしてキープしておくのが有利だよということになり、それで示唆される事例がたくさんあるようでございます。様々な事例を、私も訴えを聞いております。
そういう中で、この共同親権に反対する皆さん、二〇二〇年一月、特に法務省に提出をした赤石千衣子さん、今回の法制審議会家族法制部会の正式委員でおられますけれども、本年二月十日に掲載されたヤフーニュースの記事で、安全、安心な面会交流の実施についてインフラ整備を行うべき、現在、調停、裁判で面会交流が決まった後に安全に面会交流を行う支援機関が余りに少ないと二月の十日に表明しておられます。
その前、二週間ほど前、一月二十七日に超党派国会議員による共同養育支援議員連盟、ここでもやはり安全、安心な面会交流の実現に向けた国による民間の面会交流支援機関の育成、公的支援の拡充及び制度化に直ちに取りかかることと要望する緊急提言を三原じゅん子厚労副大臣に提出しております。実は、私もこの超党派国会議員連盟に参加をしておりまして、この文面は見せていただいておりましたが、この後、この赤石千衣子さんが出された安全、安心な面会交流の実施、しかも、そこに基準を作り、国が基準を作り、そして民間が運営をするという、これが妙に符合するので誰かがつないでいるように見えてなりません。それ以上申し上げられませんけれども。
それで、一方でまた、法制審議会家族部会の委員であるある大学教授や家族法の専門研究者たちが、監視付き面会交流、監視付き面会交流の認証制度を作ろうというような情報もいただいております。海外でこのような監視付き面会交流の仕組みがあるのかどうか、実は五月五日のシンポジウムで、ミツカン親子分離訴訟の当事者である、イギリスに住まいをしていらした中埜大輔さん、あるいはフランス人の当事者、イタリア人の当事者に尋ねました。親子交流は自主的になされるもので、行政機関等による支援はあるが、犯罪者のように監視などあり得ないという回答でした。
この監視付き面会交流という言葉、私も大変違和感を感じるんですが、もちろんDVやあるいは虐待の危険性があるという場合は、きちんと言わば管理しなければいけませんけれども、日本の親たち、そこまで皆、高葛藤で、そして自己管理ができないのかということを私は逆に疑ってしまいます。
法務大臣、チルドレンファーストで民間の意見を公平公正に聞くために設置したこの法制審議会、学識経験者の意見、当事者の意見、それを法務省職員が差配しているというようなことはないと思いますが、そもそも内閣の一員である法務大臣の役割とは何なのでしょうか。お教えいただけたら幸いでございます。
○国務大臣(上川陽子君) この父母の離婚時、離婚等に伴いまして、お子さんの養育の在り方につきまして、本年二月に法制審議会に諮問をしたところでございます。現在、法制審議会の家族法制部会におきまして、民事法の観点から審議が継続されている状況でございます。
この離婚後の子の養育に関する様々な課題でございますが、これは、お子さんの生活の安定や、また心身の成長に直結する問題であると考えております。子供の利益の観点から大変重要な課題であると認識をしているところでございます。
私はかねてから申し上げてきたところでございますが、この問題につきましては、何といってもチルドレンファーストの観点から取り組むべきことというふうに一貫して主張してまいりました。そして、そのためにはファクトベースで議論をされること、これが大変重要であるというふうに考えておりまして、法制審議会におきましての調査審議、これが充実したものとなるように、様々な調査もしっかりと新しい切り口で実施するようにということも指示してきたところでございます。この間、未成年期に父母の離婚を経験したお子さんの実態調査、また協議離婚制度に関するまた実態調査、こういったものを実施するなどしてきたところでございます。
法制審議会におきましては、それぞれ多様な分野で様々な関わりを持ってこの問題にも取り組んできた方々、また専門家の方々、たくさんの方々の知見というものが何よりも問題を真っ正面から見詰め、そしてこれからの子供を大事にした制度にしていくために極めて重要であるというふうに思っているところでございます。
今申し上げたような調査も含めまして、子供の目線、また子供の心情、こういったことにも大きな影響が及ぶわけでございますので、十分にそうしたものにやはり気配りをしながら充実した検討が進められることを期待をしているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
ファクトベースでと、それで、特にDVの問題などはファクトベースでと。私は滋賀県の知事時代に、児童相談所に警察官を常駐していただき、そして、そこで確実に調書も取ってというようなこともさせていただきました。特にこの親の監護権、親権を決めるときには、ファクトベースでどちらの親に言わば親権、監護権を判断するのが本当に子供にとって望ましいのかということを裁判の現場で決めていただきたいと思います。
そのときに、例えばイギリスなどでは継続性の原則というのはないと。いかにフレンドリーペアレント、相手のことを思いやれる、そのフレンドリーペアレントルールというのが一つの大事な原則と伺っております。二〇一一年の民法七百六十六条改正のときに当時の江田法務大臣も、継続性の原則を使ってはいけない、フレンドリーペアレントルールが子供の最善の利益にとって必要だと明言をしておられます。
日本だけが子供の願いに実は配慮できていない、相手、配偶者をおとしめるような親ばかりとは思いたくありません。そういう中で協議離婚が九割ほどございます。その協議離婚はまさに判こ一つで、子供の養育費なりあるいは親子交流、面会交流のチェック欄は今度作っていただきました、公正証書のことも。しかし、それぞれの市区町村役場では必ずしもそこがきちんと伝えられてない、指導できていないということで、親子交流が自然と子供と時間を過ごすような、そういう愛着関係が結べるような親子交流など含めて、離婚時の共同養育計画を市区町村役場の、あるいは離婚を考えるときの相談に乗る地道な自治体によるサポートが何としても必要だと思っております。
そういう中で、離婚時共同養育計画、市区町村役場、戸籍窓口、離婚を考える親の相談に乗る地道な自治体によるサポート、法務省としてどのような方法があるでしょうか、あるいは法務省以外の省庁とはどのような連携が必要でしょうか。法務大臣に伺います。
○国務大臣(上川陽子君) 父母が離婚した後の子供の生活の安定や成長という観点からは、父母が協議離婚をする場合には、それぞれの家庭の事情に応じまして養育費や面会交流といったその後の養育計画が適切に取り決められることが重要と考えております。
法務省といたしましては、養育費や面会交流の取決めの重要性等を解説したパンフレットを作成をいたしまして、自治体の戸籍担当部署におきましてこの離婚届出、届用紙との同時交付、これを実施するなどしているところでございます。
また、厚生労働省と連携をいたしまして、戸籍担当部署と一人親支援担当部署の更なる連携強化の推進を求める事務連絡、これを発出をいたしまして、一人親支援担当部署におきましても、養育費や面会交流に関する相談支援に法務省の作成いたしましたパンフレットを役立てていただくよう要請するなど、自治体向けの周知にも取り組んできたところでございます。
引き続き関係省庁としっかりと連携をしながら、離婚時における父母間の必要な取決めの確保促進に向けまして、自治体における支援の充実にしっかりと取り組んでいくよう支援してまいりたいというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
時間が参りましたのでここで終わりにしますけれども、自治体の経営の経験者として、日本全国千七百二十四市区町村、そこに年間十五万組ほど離婚の届けが出るわけでございますので、もちろん一部は裁判、調停だったり審判だったりするわけですけれども、家庭裁判所が関わらないものが圧倒的に多いということは、まさに自治体でこの部分をフォローするような、それが今の日本の子供たちの幸せづくりに大きな貢献していくと思います。
どうも、以上で終わります。ありがとうございました。