令和三年五月二十日(木曜日)
○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。少数会派にもお時間いただき、ありがとうございます。
また本日、スリランカの亡くなられたウィシュマさんの妹さんお二人お越しでございますけれども、日本人としても本当に心からお悔やみを申し上げたいと思います。
まず最初に、そもそも外国人の人権問題、これがかねてからずっと問題になっておりました。その法的支配のことについて、上川法務大臣にお伺いしたいと思います。
現在の入管当局によって広く行われている処遇そのものが、国内的にも、また国際的にも非人道的であると非難されております。これは、日本人として人権保障の水準が国際的な水準に達していないのではないのかということの批判と思います。SDGsアクションプラン二〇二一というのがございますけれども、ここには、全ての人が能力を伸ばし発揮でき、誰一人取り残されることなく生きがいを感じることのできる包摂的な社会、まさに国連が求めている法の支配を推進するとともに、地球規模の課題に対して、国際協調、連帯の構築、強化を主導し、国際社会からの信用と尊敬を集め、不可欠とされる国を目指すとされております。上川法務大臣も、令和二年の就任のときの記者会見で、法治国家である我が国においては憲法を始めとする法体系の下で法の支配を貫徹することが重要ですとおっしゃられております。
そういう中で、先ほど来問題になっております現在の入管行政の運用の改善、特に仮放免者の判断あるいは医療制度へのアクセスなど、さらに仮放免を受けた子供の教育を受ける権利、今回特には問題になっておりませんけれども、私自身、子供の教育というところずっと気にしながら、知事の時代から外国人の子供の教育についても心を砕いてまいりました。
そういう中で、我が国の外国人の人権の保障水準に向けた大臣の御決意を聞かせていただけたらと思います。
○国務大臣(上川陽子君) まさに、二〇一五年に国連で採択されましたSDGsの大きな十七のゴールの中のゴール十六、十七が大変大事であると認識しておりますが、法の支配を貫徹させるということ、また、他の施策につきましてもそうした視点でしっかりと取り組むということが、基本的な法の支配のインフラをあらゆる分野におきまして浸透させることが大事であると、こういう認識の下で、誰一人取り残さない社会の実現ということで、私も所信をもう三回やっておりますが、必ずそのことについて触れさせていただきながら、私自身のしっかりとした方針として、この推進に当たってきたところでございます。
まさに入管行政におきましてもそのことは例外ではもちろんございません。その意味で、命を預かる入管施設におきましての今回の事案につきましては本当に大変重いものと受け止めさせていただき、そして、そのことの、二度と起きてはいけないということで、真相解明、事実解明をしっかりとするということを通してこれが実現できる体制にしていく必要があると、こういう認識の下で、今、最終報告に向けましての鋭意の努力をさせていただいているところでございます。
この間、人権という形で様々な視点がございますが、私どもは出入国在留管理庁のほかにも人権問題を専門に扱っている局もございまして、こうしたところについては、特に外国人の方に対しましてのこの人権問題は、強調の事項の一つに掲げさせていただきまして、言葉もなかなか難しい、そして地域社会の中で孤立しがちであるという状況の中で多くの外国人の方々が日本の中に来日されるところでありますので、在留資格で区切るのではなく、お一人の外国人としてこの日本の中でいらっしゃるということを前提に、地域社会あるいは国としての取組、いろんなレベルでの取組については、やはり何といっても多文化共生という観点の中でしっかりとした政策を打ち出していき、また国民の皆さんからの理解と御協力もいただきながら、誰一人取り残さないと、このことも徹底していくべきことであると心得ているところでございます。
そうした姿勢を持ってこれからも臨みたいと思いますし、日本がその意味での、しっかりとした取組をしっかりと実行しているんだということも併せて先般の京都コングレスの中でもそうした方針を打ち出してきたところでございますので、取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
今の大臣の所信を実現するためにも、本日お越しのワヨミさん、ポールニマさんが、祖国でお待ちのお母さんにきっちりと真実の報告ができるように、報告書の開示、お願いをしたいと思います。
次に、今回採決になるという少年法についてですが、先ほど来、高良議員が家庭裁判所の設置の理念、独立、民主、科学、教育、そして社会と、宇田川潤四郎さんの決意を御紹介くださいましたけれども、私自身、特に非行を犯した少年たちの立ち直りあるいは再犯防止、ここに裁判所の大きな目的があると思います。しかも、それは特に加害者として、被害者の大きな苦しみを受け止めながら、加害者としての心からの謝罪や感謝、こういうことの気持ちをどうやって持っていけるようにするのか、その辺りの関係のことを、いろいろ研究成果あるいは実績があると思いますけれども、お答えいただけるでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 少年院に在院している皆さんの特性とか発達段階等には様々な状況がございます。中には、表面的な被害者理解にとどまりまして、自らの加害事実に対しての反省の気持ちや、また被害者に対しましての謝罪の気持ちが十分に涵養されていないと、こういう場合もあるというふうに伺っております。
少年院におきましては、被害者の視点を取り入れた教育を通じまして、被害者やその御家族の立場に立った事件の振り返りをする、また自己責任と被害者及びその家族が置かれている状況に対しましての深い理解ができるようにする、また具体的な償いに向けた保護者等との話合いをするなどを進めておりまして、在院者が謝罪に向けた決意を固めるように自発的な内省を高めていく、そのことをそばで専門家の方々が支えていくと、こういう状況で粘り強く向き合っているということであろうかと思っております。
また、NPO法人等の協力も得まして、ゲストスピーカーとして被害者の方々に講話の機会をお願いをしているところでございます。自らの被害に遭われたそのお気持ちを伝えること、これなかなか難しいことであるわけでありますが、そうした件が起きないように、二度と被害者を生み出さないようにという、こういう必死の思いで、こうした機会で講話をしていただいているところでございまして、償いにつきましては、在院中のみならず、出院後も含めまして長い間向き合っていくべきものであるということ、このこともしっかりと指導をしている状況でございます。
在院者が、被害者及びその家族の方々に対しまして心からの謝罪の気持ちを持って、誠意を持って対応していくということ、この方策を考えていくことは、この被害者及びその御家族のお気持ちにお応えするとともに、在院者の立ち直り、再犯防止において極めて重要な課題であるというふうに考えておりますので、支援団体の皆様の御意見も伺いながら、指導の一層の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 内面的なところも支えていただくというところで、御丁寧にありがとうございます。
そのような少年法の本来の目的、狙いに照らして、今回の改正によって非行を犯した少年の内省が一層促進され、そして被害者の感情が和らぐとお考えでしょうか。その辺りも御意見お願いします。
○国務大臣(上川陽子君) 本法律案でございますが、十八歳及び十九歳の者につきましても、成長途上にあり、また可塑性を有するということを踏まえまして、少年法の適用対象とした上で、十七歳以下の者とは異なる特例規定を設けつつも、全事件を家庭裁判所に送致をし、原則として保護処分を行う、こうした少年法の基本的な枠組みを維持をしております。改正後におきましても、この十八歳以上の少年に対しましては、内省を深めさせ、被害者等に対する慰謝の措置を講じさせるために必要な処遇を行うことができる、こうした仕組みとなっているものというふうに考えております。
罪を犯した者の内省を深めさせる、また、被害者に対しての慰謝の措置に関するこの指導の更なる充実を図ることが大変重要であると考えておりまして、これは、少年の改善更生、再犯防止のみならず、被害者の立ち直り、また被害回復のためにも重要であるというふうに認識しているところでございます。
法制審議会の答申におきましても、今委員から御指摘いただいたような観点から、刑事司法におきまして、少年院における矯正教育の手法、ノウハウ等を活用した処遇を行うということ、また、保護観察におきましては、被害者等に対しまして慰謝の措置を講ずることについて、生活行動指針に設定して指導を行うことなどが盛り込まれたところでございます。
法務省といたしましては、これらの施策につきまして可能なものから速やかに実施してまいりたいというふうに考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
また後ほど討議させていただきますけれども、とはいえ、少年犯罪は絶対的にも比率的にも減っておりますので、今回の改正については私自身は反対をさせていただきたいと思っております。
法務委員会、今回で終わりということでございますので……(発言する者あり)はい、あっ、はいはい、済みません、ちょっと訂正いたします。
家族の問題について、先ほど来から家庭裁判所も科学的ということを重要な要素と言っていただいておりますけれども、私は、この家族問題に関して、やはり子育てをより科学的に考えるという視点が大事だろうと。昨日も、実は議連で、京都大学大学院教育学研究科の明和政子教授が、科学の視点から人の育ちに必要な条件を考える、親子は共に社会で育てるべき対象であるというレクチャーをしてくださいました。元々私自身も明和教授の研究、注目をしておりました。脳科学者でおられて、そして、子育てをしているその行動の中で脳がどのように反応しているかということをデータをつくり、そして、人類は元々共同養育が基本であって、今の日本のように母親一人が孤立しがちな子育ては極めていびつな近代的な社会問題であると、男女共同の子育て環境づくりの重要性を説いてこられました。
そういう中で、大変重要な実験結果がございます。父親が育児活動を担う動機を向上させる、あるいは虐待リスクを予防する、そのときに、父親の頭の中に親になる能力、親性脳という要素があるということです。この親性脳を男性の側で調べてみますと、関わっている要素は就労時間と赤ちゃんとの接触経験、つまり就労時間が長いと、赤ちゃんとの接触経験が少ないと父親の親性脳が発達せず、そして、そこのところで虐待リスクあるいは子育てへの参加の動機が付けられないということになるということです。
こういう中で、今、法制審議会の方で家族法制部会を進めておりますけれども、五月十三日にも申し上げましたが、親子交流の大切さということ、ここを強調するべきだろうと思っております。例えば、安全、安心な面会交流のための監視付き面会施設の認証制度づくりなどが議論されているということも伺っておりますが、本来、親子交流の意味と意義を考えますと、もっともっと自然な形で、まさに愛着関係を育てられるような自然な形での親子交流を離婚の後も子供たちに保障する、これが大変大事な社会としての任務だろうと思っております。もちろん、DVやあるいは虐待のときには、逆に親権の停止とか様々な手だては打たなければいけません。
そういう中で、上川大臣、法制審議会に親子法制の在り方諮問なさいましたけれども、たとえ離婚に直面した場合でも、子供が育つ最善の利益のために、自然な親子交流、自然な親子交流が阻害されてしまうような方向に審議会の議論が進まないことを私自身は期待をしておりますが、これはもう外から言うべきことではないかもしれませんが、大臣の御見解をお願いいたします。
○国務大臣(上川陽子君) 一般論として申し上げるところでございますが、委員御指摘のように、離婚後の親子の関係、どうあるべきかということでございますが、面会交流等を通じまして父母の双方が適切な形で子供の養育に関わるということにつきましては、これは子供の利益の観点からも非常に大切であるというふうに思っております。
もっとも、面会交流が取決めがなされた場合でありましても、父母間の大変、間での葛藤が非常に高い状態、また具体的な日時の調整、また面会交流当日の子供の受渡しが難しい場合、また非監護親と子供との交流が長期間中断していたなどの理由で、その非監護親と子供だけでは円滑な交流が難しい場合など、様々な事案があり得るものと考えられるところでございます。
まさに、そうしたことも含めまして、この法制審議会の家族法制部会におきまして、民間の面会交流支援機関との必要な連携の在り方と、また面会交流の取決めの実効性の確保に関する論点につきましても検討をされていくべき課題であるというふうに考えているところでございます。
私はかねがね子供の目線に立ってということを申し上げてまいりました。子供の目線から見たときの親の関係性ということに着目をし、子供の目線で見たときにどのような在り方が適切なのか、こういった視点で今回審議をしていただくということでございまして、それに必要な調査結果につきましても新たに提供するなどして取り組んでまいりたいというふうに思っておりますので、まさに、委員御指摘の論点、こうした中で御議論いただけるものと期待をしているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
子供は、生まれる親も時代も、そして地域も国も選べません。ですから、一人ずつの子供のまさに根本的な人権というところで、ウィシュマさんのお母様もきっとそのことを望んでいると思います。是非とも人権派の大臣として、ここは御期待を申し上げます。
時間が来ましたので、私、ここで終わらせていただきます。ありがとうございました。
【反対討論】
○嘉田由紀子君 碧水会を代表いたしまして、少年法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論させていただきます。
まず、既に皆さん述べておられますけれども、立法府として最大の課題は立法事実の脆弱性でございます。
今回の少年法改正では、十八歳、十九歳、特定少年として犯罪行為への刑罰化、厳罰化が狙いとされておりますが、そもそも少年犯罪は平成十五年をピークとして減少しております。少年人口が減っている以上に犯罪数、犯罪割合も減少しております。社会的には少年犯罪が凶悪化しているようなイメージがありますが、これは実態と離れているという中で、ここはもっともっと社会的理解をいただきながら、そもそもこの立法事実の脆弱性というところを反対のまず第一の理由とさせていただきます。
二点目は、社会的課題でございます。
現在、日本が最大の課題と言っておりますのは少子化と私自身は思います。一人ずつの少年の育ちを支え、人生のやり直しを国家として支援をする、その使命に少年法はあるわけでございますけれども、今回の少年法改正がそれに反するということになりかねません。人生の立ち直り機会を支えるためには、少年法の教育支援から外すことの意味が脆弱でございます。
参考人質疑で川村参考人もおっしゃっておられました、犯罪を犯した少年自身が生育環境の不備、あるいは家庭環境の不備により加害者というよりは逆に被害者である、その犯した罪を強く追及して、社会的秩序の維持をすること以上に、今の日本社会の全体的なあるべき方向としては、一人ずつを大事に丁寧に支えながら更生を促すことであろうと思います。日本社会の大きな方向からしても、この少年法の改正には反対でございます。
そして三点目ですけれども、推知報道解禁の問題です。
一旦罪を犯してしまった少年が社会的に復帰するためには、就職などの社会の受入れが必須です。参考人質疑で大山参考人がこの問題を切実に訴えておられました。特に、SNSの普及により個人名が即座に広がる中で、推知報道の一部解除は少年の更生、人生のやり直しが不当に妨げられる懸念があります。脳科学者の研究成果によりますと、人の脳は二十五歳までは成長過程にあると言われ、十八歳、十九歳での行動が社会化され、そして広く名前が出るようなところでは、本来更生できる人間の将来を破壊してしまうことになります。
以上三点から、私は今回の少年法等の一部を改正する法律案には反対をいたします。
以上です。