Facebook 2021年7月6日 「九州球磨川大水害からまる一年(その2)」

「九州球磨川大水害からまる一年(その2)」、河川工学を専門としながら市民といっしょに「新潟水辺の会」を主宰し、市民工学者といわれる大熊孝さん。「庶民の自然観」による河川政策を提唱し、「国家の自然観」の代表政策であるダム事業などを批判し続ける。ガンによる大きな手術を経てもなお水害現場調査への思いは強く、7月2日には新潟県から八代市を訪問。地元のつる詳子さんのご案内で、私も一緒に球磨川最下流部の八代から球磨村、人吉市へ。そこで今本博健さんと合流し、翌日には上流川辺川ダム計画地訪問。3日午後の「実態解明シンポ」については昨日報告した通りです。大熊さん、今本さんの現地視察感想について、写真を中心に紹介します。7月5日。(2000文字、長いです、スミマセン)
球磨川が八代市にはいる、その場所にあるのが遥拝堰(ようはいぜき)という、農業用水を八代市内の水田に配分する堰です。もともとは加藤清正が江戸時代初期に築いた石積み八の字型でアユなどの様々な生物が生息する豊かな自然環境を創出していたという。ただ洪水などで流出したため新しい近代的な遥拝堰が建設され八の字堰は姿を消しました。2019年になって現在の遥拝堰の下流に八の字堰が復元され、河川改修で瀬が減少した球磨川下流域の自然再生と親水空間づくりに貢献しているという。
大熊さんは遥拝堰の写真を最近井堰の研究に興味をもっているお孫さんに送ると盛んにシャッターを切っていました。実は八代海に下って春先に球磨川を上るアユにとってはこの遥拝堰が邪魔になり、魚道も十分機能していないので、球磨川漁師さんは春先から毎日、遥拝堰の下から稚アユを人手ですくって上流河川に放流しているということ。ただ、今年は上流部でもアユはほとんど漁獲されていません。
坂本地区では、昨年の7月4日に溺死をなさった坂中さんのご自宅を訪問してもらい、時計が7時10分で止まっていることを確認していただく。大熊さんが言う「球磨川流域は支川が肋骨状になっているので、豪雨の時は支川からの流入で本流が一気に流域全体で同時に水位が上がる」という主張通りだ。坂本駅前で亡くなった塩崎つぼみさんのご自宅でも「平屋で水がついたら天井を破っても逃げられなかった」ことを確認いただく。
「道の駅」坂本では所長の道野真人さんから、ご自宅が浸水してしまった当日のこと、またようやく再開した道の駅のこと、さらに本田商店がオープンを翌日に控え、本田進さんの元気なお姿に安堵をする。球磨川Rebornリバーガイドの溝口隼平さんは大熊さんと昔からの友人で、再会を心から喜んでおられた。水害で水につかってしまった写真を再生するRebornプロジェクトの写真集は感動的です。
坂本の上では「荒瀬ダム」の撤去跡地を確認。日本で最初に撤去された大型ダムです。この撤去に本田進さんやつるさんたちが大活躍をしました。その上にある瀬戸石ダムも訪問。ダムの上と下の被害の違いもつるさんから説明。
球磨川に並行して走る肥薩線は明治42年に開通しているのですが、その線路が今回どれほど破壊されているのか、地図をたどりながらずっと記録しておられた。大熊さんは「昔の国鉄の線路は当時の技術者の知恵によりギリギリ水につかないところに設置してあるはず。今回、JRの浸水被害がこれほど大きいということは明治時代以降、最悪の被害だったということがわかる。また瀬戸石ダムの影響は現在のものだ」と総括しておられました。
球磨村の渡地区で14名もの溺死者がでてしまった千寿園も、隣を流れる小川との関係など見ていただきました。ここで今本さんたちが合流。特に千寿園を早朝7時すぎに襲った小川の濁流は球磨川本流からのバックウオーターといえるのかなど現場をみていただきました。球磨川本線に小川が流れこむところに数年前に完成した「導流堤」があるが、その形状と下の砂の溜り具合をみられて、今本さんと大熊さんの見解はかなり近いものでした。つまり人為的につくった導流堤が、小川の水が本流に流れ込む邪魔をして千寿園あたりの水位を押し上げてしまったのではないか、ということです。
3日午前中は、川辺川ダム建設計画地の上と下に損傷されずに残ったふたつのつり橋を、アユ漁師の田副雄一さんと、緒方紀夫さんにご案内いただく。7月4日のダム建設地予定地の水量が最大何トンだったのかという点について国土交通省は3000トンといい、ダムが完成していたら2600トンカットできたという。地元漁師の田副雄一さんは、川辺川ダム建設予定地の上と下に、かなり老朽化した小さなつり橋がある。その釣り橋が今回壊れていないということは、釣り橋の下で水を流すことができその水量を計算してほしい、ということでした。
大熊さん、今本さんとも現場をみられて、川の断面積に流速をいくらと仮定するかで流量が大きく変わるということを解説。秒速が5-6メートルだったら1500-2000トンという。秒速が10メートルとなると3000トンという主張は妥当性を増す。今、この点を精査してもらっていますが、川辺川ダム建設予定地には、横穴トンネルがたくさんつくられ、小さな土石流がたくさんみられました。地形、地質が不安定では、と心配になりました。
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