「流域治水関連法案」が参議院本会議で、全会一致で可決・成立。2001年に淀川水系流域委員会から始まった新しい時代の治水政策が20年かけてようやく国政の柱となりました。参議院本会議での起立で「総員起立」と議長が声をかけた時は、歴史的なこの瞬間に当事者の1人としてかかわれたことをありがたく思いました。4月28日。
ただし、ニュースなどでの扱いは少なく、歴史的転換点であることは社会的にはあまり伝わっていないようです。滋賀県では2014年に、全国に先駆けて「流域治水推進条例」を制定しましたが、国での法制度も基本的には滋賀県の流れに沿っています。ただ、不徹底なところもあり、滋賀県方式は全国のモデルになるものでもあります。これまでの治水政策との大きな違いは3点です。
1 何よりも「命を守ることが最優先」の方策をとる。洪水をダムや高い堤防で河川に閉じ込め「どんな大雨でも枕を高くして眠れる」という行政依存度の高い明治時代以来の治水哲学を、河川から溢れることも住民や事業者に受忍してもらい、予防的な「とどめる」対策を埋め込むこと。「危ないところには住宅等を建てない」という土地利用規制や、「建てるならかさ上げなどをして予防措置をとる」という建物規制など、住民や事業者にとっての自由度が制限されるが、堤防破壊やダム緊急放流での水害による溺死者をなくすためです。
2 洪水をあつめてくる森林部や水田など、集水域といわれる領域までふくめて「ためる」対策を進めことで、下流部の河川に流れこむ水量そのものを減らす努力をすること。そのためには森林政策や農業政策などで、縦割りの弊害を打破して、横串をさし、水源涵養度の高い森林づくりや田んぼで水をためる「田んぼダム」など、上流と下流で協力をしながら、流域全体での面的配慮をひろげること。
3 「そなえる」対策を徹底すること。リスクを予め知って、避難などに備えるための「ハザードマップ」は、大河川が溢れる想定だけでなく、中小河川や農業用水路や町中の小溝や下水道が溢れることなど、すべての洪水水源をあらかじめ想定し、リスク情報の空白地域を解消すること。このモデルが滋賀県で2012年につくった「地先の安全度マップ」です。
また今日は、「災害対策基本法」の改正法案も成立し、これまで「避難指示」「避難勧告」の違いなどがわかりにくかったところを、避難指示に一本化し、住民の逃げ遅れを減らすための改正法案も同時に成立しました。