Facebook 2021年3月16日 「こどもたちをよろしく」

「こどもたちをよろしく」、衝撃的な映画です。タイトルはやわらかいけれど、その内容はショウゲキ!。北関東の地方都市に住む中学2年生4人と、デリヘルの10代の姉が織りなす日常。いじめ、性的虐待、貧困、そして最後には自殺・・・・。登場する子どもたちはいずれも親の離婚に直面させられ、アルコールやギャンブルにのめりこむ親の元で、必死に生きようとする・・・。目をそむけたくなるような場面ばかりで、見るのがつらい。でもこれが現実、目をそむけてはいけない!特に政治や行政、公共性を担うべき当事者は逃げてはいけない!自らに言い聞かせる時間でした。3月15日。(また長いです、1800文字)。
子どもは親を選べない、生まれる時代も地域も選べない。だからこそ子どもの幸せを決めるのは大人たちです。今、日本の子どもの幸せ度は、ユニセフデータによると先進国の中でも最下位に近い。経済や健康などは上位ですが、自己肯定感のような精神的状態、そして人とのつながりという社会的関係で苦しんでいます。国際的にも何が問題なのか、考えさせられるフォーラムが3月13日に大津市内で開催され、参加しました。報告させていただきます。
日本の教育の今、について大きな問題提起をしている寺脇研さんと前川喜平さんが企画をした映画ですが、目にみえないところですすんでいる、衝撃的現実です。映画をつくられた寺脇研さんの講演も説得的でした。この映画での出来事は、すべてご自分が文部科学省職員として全国各地で勤務していた時に経験したことだと。そして今、子ども一人に7人から8人の大人がいる。その大人たちが、身のまわりの子どもたちに少しでも目をかけてあげれば、多くの子どもたちの暮らしと命が救われる、と切実に訴えておられました。
寺脇さんを交えて、「大津の子ども・若者と一緒にいるために」フォーラムも同時開催していただきました。ご準備いただいた大津市市民活動センターの浅野智子さんはじめ担当の皆さん、ありがとうございました。フォーラムには大津市内で子ども支援をすすめておらえる5名の方の活動報告がありました。「あめんど」の小川裕司さんは、「親が安心ならば子どもも安心」をモットーに社会的包摂の達成にまい進。CASNの谷口久美子さんは20年もの実績をもつ「子ども専用電話チャンネル」を運営。この間に何万人の子どもたちが救われたことでしょう。持続する志に深く感謝です。
「寺子屋教育轍―わだち」の蔵田翔さんは、自らの農業やお寺体験を活かしての居場所づくりが力強い。滋賀県らしい、昔の地域社会の共助を彷彿とさせる活動です。「子どもソーシャルワークセンター」の九鬼康多さんは、子どもたちがほっとできる場での遊びや食事で楽しい時間づくり。日常生活こそ、安心の礎。「やんちゃ寺」の川崎すみれさんは、生きづらさをかかえる「やんちゃ」の中高生の個性を尊重し、ありのままの自分でいられる居場所提供。
知事時代に、真っ先に「子ども青少年局」をつくり、切れ目のない子育て・教育支援をすすめてきた、と少しの自負をもっていた私自身、今回登壇くださった皆さんの活動の一部しか知らなかった、と自らの不勉強をはじる中身の濃いフォーラムでした。子どもの問題、家族の問題は、奥が深いです。いずれも責任は、寺脇さんが言われるように、大人社会の制度不足や仕組みの不備にあります。
今回の映画でも、やはり離婚による家族破壊、家族分断、直面する貧困が大きな構造的問題であることを学びました。親が離婚後の子どもたちは、「父か母か」と両親のどちらかを選ばされる「片親監護・片親親権」は民法819条で規定され、今や先進国では日本だけです。明治30年に規定された昔ながらの民法がいまだに墨守されている日本。社会の変化についていけていません。法務行政や裁判所の価値観が問題です。
DVなどで、親子を離さないといけない家族もあるでしょうが、父母が離婚しても、父子、母子の精神的つながり、経済的支援、社会的アイデンティティは、重要な社会的基盤です。このことに数十年前に気づいたヨーロッパやアメリカの国ぐにでは、離婚による父母の不仲が、子どもの人生に大きな影響をおよぼさないように、「子ども目線の」「子ども中心」の離婚後の民法制度をつくってきました。韓国、中国、台湾など、アジア諸国も子ども目線の民法改正をしてきました。
日本は結婚も離婚も社会的支援が十分にされずに、そこで生まれてくる子どもの福祉がいかに軽視されているか。経済的貧困、精神的欠落、そして社会関係の分断。離婚時に、子どもの養育・監護計画もなしに、形式的なハンコひとつで離婚の9割が成立する社会は先進国では日本しかありません。親の離婚に直面した子ども支援が空白である日本は国際的にも異例ということが社会的に知られていないことがそもそも問題です。今、80万人弱しか生まれていない日本社会で、毎年20万人をこえる子どもが親の離婚に直面しています。4人に1人です。
明日、3月16日、参議院の法務委員会でも、「離婚後に片親ロスを強いられ、法的にも社会的にも支援されない子どもの代弁」を趣旨とする、質問を上川法務大臣にさせていただきます。
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