「つぎはぎの仕事着」から「美の滋賀」へ?!北川陽子さんのFB紹介をみて、小松明美さんと行ってきました愛荘町立歴史文化博物館。小松さんが、手作業で、つぎはぎをしてくれた、沖島おばぁちゃんゆずりのハンテンを着て、まさに自ら「展示コスプレ」!!圧倒される手仕事の技、布の上に布、針の上に針を通して、重ねつないでいく。山や田んぼや漁場など、くりかえす作業から身を守り、もったいないと布一切れを使いつくす精神。「豆一粒を包めるほどの大きさであれば取っておく」と布を大切に伝えてきた。年月を経る中で藍染の色合いがあせてビンテージとなる。よくぞ博物館展示にしてくださいました!2月28日。(また長い!1500文字)
博物館の担当学芸員の西連寺匠さんに出会えたのでまず聞きました。「この企画展示は館内から反対はありませんでしたか?」。課長補佐の三井義勝さんは、「おもしろいからやろうとすぐに乗りました!」 アール・ブリュット作品を美術館にもちこみたいと挑戦した2008年、「芸術ではない」とかなり学芸員に叱られました。この「つぎはぎの仕事着」を、重厚な建物の歴史文化博物館で展示する、その学芸員の挑戦心にまずは驚嘆。やわらかい発想!
よくぞ、これらの「作品」を集めてくれました。多賀町や愛荘町の民家を整理した時に行李につめられた仕事着がたくさん出てきた。「はずかしいぼろ」と思われているのか、なかなか博物館まで運びこまれなかったと。たしかに。琵琶湖博物館の冨江家展示を担当した時、おばぁちゃんがつぎはぎしたハンテンやモンペがタンスいっぱい! とってもいとおしく思えて、今も琵琶湖博物館の冨江家の床の間のタンスを引き出したら見てもらえます。
そこで、西連寺さんと話がすすみました。きっと、滋賀県中に、このようなつぎはぎ仕事着はたくさんあるにちがいない。でも建物や農具などとちがい、簡単にほかされてしまうのではないか。それなら、今から仲間の学芸員によびかけて、地域から集めてもらえないだろうか。というか、SNSの時代、直接それぞれの家や知り合いのところから集められないだろうか。そして、新しくオープンする滋賀県美術館で企画展示ができないだろうか、と妄想のようなことを話をしていました。
実は、滋賀県では2011年から「美の滋賀」という静かな住民運動がうごいています。琵琶湖や里山に見られる自然や環境の美、大地からの湧き水をたたえるカバタ、労働の中から生まれた生活の美、など暮らしに根付いた日常の美がこの地にはたくさん隠れています。滋賀の福祉の歴史から生まれ育まれ、世界的な注目を集めているアール・ブリュットのような新しく発見された美もあります。
いわゆる定型化された芸術から忘れられた領域の美を地域から発見し、美術館の発展的再生につなげられないだろうかと考えました。それから10年近く、「美の滋賀」プロジェクトは、地域毎にこだわりをもった住民の皆さんと担当との協働作業で、県内各地に根付いてきました。「美の滋賀」の中心的委員だった保坂健二朗さんが、今年6月に新生オープンする「滋賀県立美術館」の館長として就任いただきます。哲学者の鷲田清一さんも、「美の滋賀」の理論的うしろだてをつくってくれました。
「つぎはぎの美」は、今日本国内以上に海外から評価されています。パッチワークやビンテージのように、「BORO」として服飾デザイナーが注目しはじめています。学芸員の西連寺さん、課長補佐の三井さんともりあがりました。新生美術館で「美の滋賀、つぎはぎBOROプロジェクト」が実現することを夢見て!北川さん、皆さん、提案していってください!