Facebook 2021年2月26日 びわ湖源流部の長浜市北部のトチノキ巨木群162本を含む広葉樹の森が、ようやく滋賀県による「自然環境保全地域」として指定される見通しとなりました

びわ湖源流部の長浜市北部のトチノキ巨木群162本を含む広葉樹の森が、ようやく滋賀県による「自然環境保全地域」として指定される見通しとなりました(京都新聞2021年2月18日)。3年後を目標に基礎調査を充実し、滋賀県初の自然環境保全地域に指定される予定です。土倉鉱山の跡地もふくめて「土倉の森」と名付けられ、エコツーリズムによる地域活性化も期待されます。2014年に民間業者によるトチノキ伐採計画が発覚してからまる7年、ひやひやしながらの、長いながい月日でした。これまで影から日向からご支援いただいた皆さまに深くふかく感謝申し上げます。2月26日。(1800文字、また長いです、スミマセン)。
2014年4月初旬、まだ滋賀県知事現職だった時、長浜市杉野川流域のトチノキ巨木40本を伐採業者が地元所有者から購入し、伐採計画中という情報がはいる。2008年から2009年にかけて高島市朽木地区のトチノキ巨木が知らぬまに数十本伐採され、跡地の破壊がひどく、山地崩壊の危険性も高まった。トチノキ巨木を中心とした生き物生態系や、琵琶湖水源としての価値も破壊され、トチノミを大事な食料としてきた生活文化も維持できなくなる。
そこで2010年に滋賀県として、巨樹巨木を守る制度をつくり、所有者に保全協力金を払い、同時に民間の保全団体が巡視をして維持管理をしながら、トチノキ巨木活用の生活文化の維持・発信もはかることになった。高島市では地元住民と民間団体とでうまく協力して、154本の巨木が今に継承、保全されている。最終的には地元の住民の皆さんの納得がなければ守りきれないという意思のもと、多くの皆さんが各方面から協力してくれています。
さて2014年、また同じ伐採問題がでてきてしまった。ただ、自然保護という、どちらかというと都会的な価値観を持ち込むと、地元では反発がとても強くなる。「都会で便利に暮らしていて休みの時だけきて『自然を守れ』というのは勝手すぎる。スギやヒノキが売れない今、トチノキが売れるなら売ろう」という意見もありました。当然の意見です。そのことを知りながら、ひやひやと、「トチノキも切ったら一回限り、これを残してエコツーリズムなどで外からの人に喜んでもらえば、それは地域活性化の手立てになる」と説明をしてきました。
ただその間にも伐採業者は所有権を主張し大津地裁に訴えた。2016年のこと。そこで住民と研究者が中心となり「びわ湖源流の森林文化を守る会」を結成し、伐採業者により被告となった元所有者を支援しながら、大津地裁、大阪高裁での裁判へと運んできた。2018年1月には大阪高裁から和解勧告がだされ、1000万円をこえる巨木代金の業者支払いが課せられた。巨額な保全費用確保のための「巨木トラスト」を結成し、250名をこえる篤志家の皆さんのご協力をいただきながら、2018年の12月には目標額を達成し、業者への支払いも終えて、巨木伐採は免れました。
その間、滋賀県では「山を活かす、山を守る、山に暮らす」政策を予算化し、長浜市とも協力をして、「ながはま森林マッチングセンター」をつくり、トチノキ巨木だけでなく、土倉鉱山の跡地もふくめたエコツアーなどを、地元金居原の皆さんと協働ですすめてきた。地元でもエコツアーの意味と意義が理解されはじめ、その関係もあり、つい最近には「金居原」という写真集も地元の皆さんの手でつくられています。これからが楽しみです。
さてこの間、本当に多くの方にお世話になりました。「巨木トラスト」を立ち上げ時にお支えいただいたのは、アウトドア総合メーカー「モンベル」の辰野勇会長、奥山の自然を守る日本熊森協会の森山まり子前会長、室谷悠子現会長はじめ熊森会員の皆さま、また裁判では石田達也弁護士、室谷悠子弁護士、研究者では、野間直彦滋賀県立大学教授、岡田直紀京都大学教授が中心になってくださいました。事務局としては小松明美さん、日本熊森協会滋賀県支部村上美和子さん、また長浜市の地元で真っ先に相談にのってくださったのは松本長治さんです。今城克啓高島市議は滋賀県担当者時代、基礎データ作りに尽力下さいました。自然保護地域指定にむけては前滋賀県自然環境保全課長の安田將人さんのご活躍に感謝です。
まだ滋賀県北部には、丹生ダム建設予定地だった(ダム計画は中止)高時川源流部の旧余呉町には241本のトチノキなどの巨木が残されています。またこの地域は、ブナ帯樹林帯の最南端ともなり、ユキツバキ群落など貴重は生態系ものこされています。滋賀県としてはこの地域の巨木伐採が外部から狙われる前に、公的な保全を考えていただきたいです。国としても研究をしていきたいです。
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