ダム建設真っ盛りの「昭和の時代に戻ったような」「勉強会」でした。滋賀県主催の「今後の大戸川治水に関する勉強会(第1回)」。傍聴させていただきました。また長いです(微笑)。5月30日。
人口減少社会を迎えて、都市部でさえ空き家や空き地が増えて、人間の居住空間が縮小している。そんな平成最後の時代には孫子世代を見据えた、次世代に金銭的負担や環境破壊のツケ回しをしない治水政策が求められているはずですが、そのような意見は大変弱かったです。最初から「治水にはダム」という選択肢しか示していない。今後、事務局から議事録が出てくるでしょうが、私のメモに従ってまとめてみます。
三日月知事の挨拶。最近雨の降り方がかわり、滋賀県内での水害被害が増えている。河川改修や流域治水をすすめているが、大戸川については、2009年のダム凍結後、状況がかわっている。琵琶湖出口の瀬田川洗堰の全閉も2回おきた。国の方針も大戸川ダムの事業継続が決まった。(嘉田が凍結したダムの見直しを含め)ここで滋賀県の立場を表明したい。
まず中川博次顧問(京大名誉教授)については、30分近く話をして下さいましたが、声が小さく十分聞き取れませんでした。中川さんの主張は3点あったと思います。
一点目は、大戸川ダムの計画はあくまでも淀川水系下流部に与える効果から始まっている(それゆえダム建設の負担金は京都府と大阪府が大きい)。2008年の京都府の検討会議では、桂川の改修など中下流部の河川改修が優先、「大戸川ダムは優先度が低い」ということで、滋賀・京都・大阪・三重の4府県知事合意で大戸川ダムの凍結が主張された。
二点目は、淀川水系の治水の焦点地点は、宇治川(琵琶湖下流部)、桂川、木津川の三川合流部。3川それぞれの治水安全度には大きな差がある。バランスをもって安全度を高めていく必要がある。淀川本流は200年確率、宇治川は平成21年には10年確率、これを平成35年に150年確率にしたい。桂川は平成21年には3年確率、これを25年確率にしたい。木津川は20年確率を25年確率にあげたい。(安全度は年数多い方が高い)。
三点目は、宇治川・淀川では天ケ瀬ダムの操作が決め手。大戸川ダム建設もここにかかわってくる。自分は60年前、昭和28年水害の宇治川決壊の後、20代の時に、自ら天ケ瀬ダムを計画した。自分の子どものように愛着があるダムだ。今の焦点はこのダムの効果を上げること。それで再開発をしている。あまりお金をかけずに放流能力をあげたい。今、自治体も国も財政難の時代だからこそ、できるだけ既存の施設を活用して効果をあげる政策が優先されるべきだ。(関西電力の)喜撰山ダムなどの活用も考えられる。いつかは大戸川ダムの判断も必要だろう。
京大の角教授は4点指摘。1点目、琵琶湖は自然の恵みとして大変大きな存在であり、利水だけでなく治水、環境等に活用可能。ヨーロッパでは湖を活用するために河川水をいったん湖にバイパスをして治水ダムとして使うような場所もある。二点目はダムのスケール感からすると大戸川ダムは十分大きな有効なスケールだ(穴あきダムであることはご存じない?)。三点目は九州北部豪雨のような雨があると、水・砂・木材が出てくる。それを止めるダムは有効で大戸川ダムも効果的なはず。4点目は琵琶湖総合開発計画に位置づけられた大戸川ダムは重要。
宝座長(京大教授)はこれということなく、ともかくダムは有効、必要といろいろ主張しておられました。最近、雨の降り方が変わった。栃木県鬼怒川洪水のような線状降水帯豪雨などが多発している(実はあの上流部には4つのダムが建設されていたがあの水害は防げなかった!)。大戸川流域でもいつこのような豪雨がおきるかわからない。だからダムは必要だ、という論法でした。
全体をまとめると、ダム建設を前提にするような流れが埋め込まれていました。たとえば滋賀県で洪水被害が増えているというのを昨年の姉川の堤防から溢れた資料などだしていました。あれは普段の生活道路のため地元の求めで堤防に切れ込みをいれていた。そこに堰板をはめるのが遅れて溢れたので、ある意味人為的なミスです。それ以上に、あの姉川上流部には姉川ダムができている。それでも河川の増水、ふせげなかった。ダムができると皆安心しきってしまい、地元での水防活動が手薄になってしまう。それを「雨の降り方がかわった。洪水が増えた」という理由の資料にしている。
三日月知事には、幅ひろく、税金をあずかる為政者として、「最小の費用で最大の効果をあげる」行政としての当然の基本的姿勢をもっていただきたいです。1000億円もの巨額をいれてダムをつくれば一定程度の効果があるのは当然です。でも、建設のための財政負担や川の環境破壊や将来的なダム維持管理費用負担、そして最後にはダム撤去の費用負担、などのマイナス影響もある。次世代にこれ以上借金を残していいのか。ダム建設費は60年国債。今生まれた子どもが60歳になるまで借金を払い続けることになります。
時代状況が変わっています。もちろん、50年前にはじまったダム計画で集落移転を迫られた大鳥居の地元の皆さんのご協力には深く感謝します。申し訳なく思います。ダム建設凍結を主導した責任者として政策変更についてお詫びをしてきました。その上で、次世代への負担を付け回ししない政策は現世代全体で考えるべき課題と思います。
総体としての、「どんな洪水にも命を守る治水政策を検討をする」、その基本が流域治水です。ひろく県民の皆さんの意見をきく、という姿勢をもってほしいです。今日は傍聴席からの意見聴取は最初から拒否でした。しかも「傍聴席から不穏当は発言があったら退席してもらいます」という釘までさしていました。
県民の意見を真摯にきく、という姿勢は残念ながら、今の流域政策局事務局からはみられませんでした。事務局の姿勢を決めるのは知事のリーダシップです。日大アメフトの監督・コーチと選手の関係のように、現場はトップの意識をいつも「忖度」をして、反映していきます。二回目以降の開催では県民意見をひろく聞く、という姿勢にかえていただきたいと思います。