20200415東日本大震災復興特別委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
前回、少し時間をオーバーしてしまいまして、申し訳ございませんでした。
私は、福島の放射性物質が拡散をし、そしてそれが大気から水、そして生き物にと広がり蓄積をする、その中で生活環境にどのような影響があるかということを科学的データを踏まえた上でリスクコミュニケーションの一端として質問をさせていただきたいと思います。
先ほど来、汚染水の海洋放出のことで若松議員、また紙議員も言及しておられましたけれども、この放射性物質、実は、こんなに広く、そして深く入り込んだものは、チェルノブイリ以来、地球上で二か所目、それが福島でございます。ですから、私たちはこの放射性物質の影響ということを人類として基礎知識がございません。
そういう中で、人々への影響というのはもっともっと疫学的にもデータがない。その中でのリスクコミュニケーションということでございますので、前回も、滋賀県での放射性物質の拡散、暴露経路の図をお示ししながら、大気でどういうふうに流れ、それが水、表流水、地下水、どういうふうに流れ、それが行く行く生き物にどう影響してくるかということをまずは科学的に正しく測ることが大事だと申し上げました。
そしてもう一本は、その測ったデータをどうやって当事者にお伝えするか。そのときには、大変大事なことは、納得をいただけるデータ、それも個人だけではなくて集団として納得をいただけるデータ、それをどうお示しするかということで、まさに今、海洋水の放出というのはこの部分に懸かっているんだろうと思います。
そして、前回余り強調しなかったんですけど、実は人々は、私たちも含めて、誰がそのデータをどういう目的で出すのかというところで、根本には信頼関係がないとデータ納得できません。その信頼というところは、まさに政府の、復興庁なら復興庁が出す、環境省なら環境省が出されるデータの基にある隠れた部分でございます。果たしてその信頼関係が今政府と国民の間にできているのかということも踏まえた形で、これから三点について質問をさせていただきます。
まず一点目は、私はずっと琵琶湖、あるいは内水面の生活環境の研究してまいりましたので、大変気になっているのが福島の内陸部での淡水魚を活用する内水面漁業についてでございます。事故後、内水面漁業にどのような影響があるのかということを水産庁の関係の参考人の方にお伺いしたいと思います。

○政府参考人(藤田仁司君) お答えいたします。
内水面におきます漁獲対象種でございますけれども、放射性物質基準値、百ベクレル・パー・キログラムを超える割合は、震災直後ですね、全検体の三割を超えていたものが、直近では〇・三%と大幅に減少している状況にございます。
安定的に基準値を下回る魚種につきましては出荷制限が順次解除されておりまして、現在、利根川水系のウナギを始めとする八水系、八魚種の出荷制限が行われているという状況になっております。
農林水産省といたしましては、引き続き、地方自治体が行います放射性物質検査への支援を行いますとともに、検査結果や出荷制限の解除の情報等をホームページ等で発信しているところでございます。今後とも、関係省庁と連携をいたしまして、内水面漁業の復興に努めてまいる所存でございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
食物の基準が百ベクレルですから、今お答えいただきましたように、事故直後は三割ほどが百ベクレルを超えていたのが今は〇・三%に下がっていると。
そういう中で、特に魚種が問題ですね。前回、水質のこともお伝えいただいたんですけれども、表流水は比較的もう検出されずというのが多いんですけれども、底質にたまっているというデータが今でもあります。
例えばため池辺りですと、浜通りのため池は一万ベクレル以上の底質データというのが十か所ほどありますので、今お伝えいただいた利根川水系、特にウナギというのは底質、底にすんでいるというところで、どちらかというと濃度がいまだに下がり切っていないという、そのような理解でよろしいでしょうか。
ウナギ以外にどのような魚種が今出荷停止になっているでしょうか。

○政府参考人(藤田仁司君) 確かにウナギにつきましては、生態上かなり、何といいますか、底にいるというか、そういう部分あるんでございますけれども、元々、内水面の魚種につきましては、体の浸透圧の調整の関係上、非常に放射性物質を海水魚に比べますと放出しにくいという、そういう性質がございます。その上に、どうしても、魚食性の魚というんでしょうか、ほかの生物を食べるような魚になりますと、どうしても、何といいますか、ほかの魚が取っている放射性物質をその体内に取り込む可能性があるということで、明確にこの魚種についてはこうだというのが明らかになっているわけではございませんけれども、傾向といたしましては、確かに、ほかの魚、高次の魚食者といいますけれども、ほかの魚を食べるような魚種についてどちらかというと傾向が高いということが明らかになっております。
それと、委員御指摘のほかの魚種でございますけれども、例えばイワナですとかヤマメ、あるいはコイ、ウグイといったものがいまだに出荷制限の指示を受けているという状況でございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
まさに食物連鎖ですね。高次のというのは、植物プランクトンから動物プランクトン、そして雑食性から魚食性というところで、食物連鎖の高次にあるところは蓄積をされる、生物濃縮ということになるんだろうと思います。
そういう意味で、実は先回も、三月十九日にお示ししたんですけど、万一、琵琶湖が例えば若狭湾岸の事故の影響を受けると、一番濃度が高くなってしまうのがビワマスやビワコオオナマズだということもお伝えさせていただきました。
そういう中で、今後とも是非しっかりモニタリングをして、そして、なぜ濃度が高くなってしまうのかという食物連鎖の仕組みも含めて、国民の皆さんに広げていっていただきたいと思います。特に地域で、遊びでつかんだり、ウナギがつかめたりしたら本当に大喜びですから、今もウナギはなかなか高価で食べられないので、そういうものを口にするとやはり影響がありますので、是非そのデータは地域の住民の方に食べ方まで含めた形で広げていただけたらと思います。
次にお伺いしたいのが林産物でございます。
先ほど紙さんが林業のことをお伝えくださいましたけれども、住民の方たちとお話をしていると、やはり福島で、飯舘村でもそうです、あるいは浪江でもそうです、春になったらワラビ、ゼンマイ、そして秋にはシイタケ、あるいはナメコと、うまくしたらマツタケというような形で、林産物に大変楽しみを持って、そしてそれが大事な食材でございました。
林産物への影響というのはどうでしょうか。農林水産省の政府参考人の方にお願いいたします。
○政府参考人(前島明成君) キノコ、山菜についての御質問でございます。お答え申し上げます。
キノコ、山菜につきましては、放射性物質濃度が基準値であります百ベクレル・パー・キログラムを超える割合は、震災直後が全検体の二割であったものが、直近では一・八%と、大幅に減少しております。
一方、出荷制限を解除するためには、森林、原野などに広く分布しております野生のキノコ、山菜などの検査結果が全て安定して低水準になる必要がございます。これには相当の期間が必要となるという状況にございます。このため、一部の品目、区域につきましては出荷制限解除が行われておりますものの、現時点で二十二品目、十三県百九十三市町村におきまして出荷制限が指示されておるという状況にございます。
このため、農林水産省といたしましては、地方自治体が行う放射性物質検査への支援を行うとともに、検査結果や出荷制限解除の情報などをホームページなどで迅速に発信しているところでございます。
引き続き、安心してキノコ、山菜が採取できる環境づくりに努めてまいる所存でございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
その出荷制限の品目なり、あるいは市町村の地図化はなされて公表されていますか、分かりやすく。地図ではどうでしょうか。
○政府参考人(前島明成君) 出荷制限の状況などにつきましては、もちろん品目、あと市町村というようなことを地図化も含めて公表させていただいているところでございます。

○嘉田由紀子君 というのは、私も二〇一一年以降、年何回か福島の支援に滋賀県知事として行かせていただいたんですけど、そのときに本当につらい話を、やはり季節季節に山に入って、楽しみで、しかも山の中で孫に、これはこういうふうに食べるんだよという、キノコなどは毒キノコも怖いですから、それを教えるのが何よりも楽しみだったお年寄りの方が、事故後、山に入っても食べれないと。
それは本当に、ある意味で文化を、山菜を食べる文化を破壊をし、そして次の世代につながらないということになりますので、その辺り、何としてもこういう文化的なところにも配慮していただき、そして内水面と、それから林産物と、余りふだん関心がないんですけれども、ここは是非、福島の皆さんの生活環境が改善されるように今後ともお願いいたします。
三点目に、復興大臣にお伺いしたいんですが、先ほど申し上げましたリスクコミュニケーションの強化、これは、科学的データとともに言わば納得をしていただく、そういう了解の部分と併せて大変大事なのが信頼関係です。自分が信頼している政府が言ってくれるのかどうか、そこのところが若松議員なり紙議員がこだわっておられたところだろうと思いますので、その辺りのところ、復興大臣として、あるいは、今の政府は福島の漁業者の皆さんからきちんと信頼されているのかどうか、リスクコミュニケーションの観点からお願いをいたします。

○国務大臣(田中和徳君) 嘉田委員にお答えを申し上げたいと思います。
風評払拭に向けては、風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略に基づいて、正確で効果的な情報発信だとか被災地産品の販路拡大など、我々、政府一体となって取り組んできているところでございます。復興庁でも、テレビ、インターネット、SNSやラジオなどあらゆる媒体を活用させていただいて、放射線に関する正しい知識だとか福島県産農林水産物の安全性等についての効果的な情報発信を実施してまいりました。また、福島県産農林水産物が市場で適正に評価されるには、流通業者などに御理解をいただくことが非常に重要であると認識も改めていたしておるところでございます。
このため、私自らも、安全でおいしい福島県産農林水産物が一人でも多くの消費者の方々にお届けができるように、直接、流通業者だとか消費者の方々に対して発信をいたしてまいりました。最近も経済団体のトップと面会をさせていただき、福島県産品の利用だとか販売等に関する支援をお願いをいたしたところでございます。
引き続き、関係省庁等と連携をして、福島県産農林水産物の安全性の発信及び福島県産の品々の利用、販売促進に力を入れてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。でも、それは信頼につながらない。今、このコロナの中で安倍政権から営業自粛を言われても、結局暮らしが成り立たなかったら、ですから、自粛とともに補償だと、営業補償だと。先ほど来、若松議員も言ってらっしゃいました。汚染水を流して万一漁業に大きな影響が出たら、それは生活保障してくれるのかどうかという問題ですね。ですから、皆さんが暮らしの中で、本当に福島で、あるいは日本に生まれてよかった、この国で生きていけるんだという、そういう安心を担保していただけるかどうかと、それが政府の、政治の大きな役割だろうと思います。
そういう意味で、単なる口先の手続的なリスクコミュニケーションではなく、本当に安心をきちんと国民の皆さんの前に示せるようなそういう復興対策にしていただけたらと思います。希望でございます。
ありがとうございました。以上です。

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