2020416法務委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
新型コロナウイルス問題、子供たちが家庭で過ごす時間が増えております。特に百二十万戸を超える離婚後の片親、一人親家庭では、民法上、片親親権制度というところで構造的に孤立を余儀なくされております。仕事と子育ての両立にも困難が生まれ、経済的困窮に追い打ちが掛けられていると私の知り合いの母子家庭のお母さんたちからも訴えがございます。
そういう中で、例えば明石市は児童扶養手当を受けている約二千百世帯に対して月三万円、特に五月ですね、三万円上乗せ支給をするということでこの支援をするということでございます。
この片親家庭の経済的困窮に関しましては、養育費支払問題が常に取り上げられております。四月十日の日経新聞ですが、本日もおられます小野田紀美議員の発言の紹介がございます。養育費不払、是非急ぐと。「ひとり親、コロナ追い打ち」という見出しの山内菜穂子記者による記事が掲載されております。資料一として配付させていただきます。
この記事では、国民民主党が提出予定という養育費支払義務付けの法案の紹介もされております。与野党の垣根を越え支援をという山内記者の意見もございます。子供の可能性が家庭環境で壊されないという方向、国家としての大事な共通目標でもあります。また、ここでは、「欧米、政府が積極介入」として、米国、英国、オーストラリア、スウェーデン、ドイツ、フランスでは、養育費支払について国家として支援しているという事例が紹介されております。
また、偶然にも同じ四月十日には、法務省民事局が父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果、公表されました。待ちに待った報告書です。この調査に御尽力いただきました関係者の皆様に感謝申し上げます。その概要は本日、資料二として提示させていただいております。
この海外調査では、二十四か国を対象としております。EUと日本を除いた全てのOECD諸国十八か国、日本と関わりの深いオランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、タイ、フィリピンの六か国を加えた二十四か国です。これだけの多様な国を同じ項目で比較対象とした調査は前例がなく、関係者の御尽力に感謝いたします。
ここでの調査項目は五点です。まず一点目ですが、離婚後の親権行使の態様と、父母が共同で親権を行使することを許容する制度が採用されている場合の親権の内容、父母の意見が対立したときの調整方法。二点目ですが、裁判所が関与しない協議離婚制度の有無。三点目は、離婚時の取決め内容、特に面会交流や養育費支払方法。四点目は、公的機関による面会交流支援の有無とその内容。そして五点目が、離婚後の監視親の転居制限の有無、内容でございます。
そこで、まず、法務大臣にお伺いいたします。
日経新聞が養育費支払に政府が積極介入をしていると紹介している六か国は、今回の二十四か国調査に幸い含まれております。その調査結果に基づき、この日経新聞の取り上げている六か国では、日本の民法八百十九条で言うように、離婚後は父か母のどちらか一方を親権者と定めなければならないというような単独親権の法的規定がある国はございますか。
もちろん、親権という概念には国による内容の違いは大前提としまして、これら六か国は、今回の調査では父も母も同時に監護者や親権者になれるいわゆる共同養育あるいは共同親権の国と考えてよいかと思いますが、いかがでしょうか。御答弁、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(森まさこ君) 御指摘の海外法制調査の結果によれば、御指摘の六か国については、いずれも父母の離婚後にもその双方が親権を行使することも可能とする制度が採用されていると認識をしております。
もっとも、制度の詳細を見ますと、イギリスでは、父母の離婚後は父母の双方が親権を持つが、原則としてそれぞれが単独で親権を行使することとされているなど、必ずしも父母が共同して親権を行使することとされているわけではないものと理解しております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
いずれにしろ、これら六か国は、家族法的には共同養育、共同親権が可能となると、選択肢として、あるいは義務としてということでございます。当然、離婚後も父母共に共同養育の義務があるという国であるならば、日常的に監護していない親が養育費を支払うことへの抵抗感は少ないのではないかと思います。
では、これら六か国で養育費の支払を法的に義務化している国は何か国ございますか。事務方の答弁、お願いいたします。

○政府参考人(小出邦夫君) お答え申し上げます。
海外法制調査の結果によりますと、御指摘の六か国のうち、オーストラリアでは、両親は離婚時に養育費を含め、子の養育、福利及び成長について合意しなければならないとされておりまして、養育費の取決めが法的義務になっているものと承知しております。他方で、それ以外の五か国につきましては、離婚時に夫婦間で養育費の取決めをすることが法的義務とはされていないものと承知しております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
法的義務はオーストラリアだけで、ほかの五か国は法的義務はないということでございますけれども、養育費の支払を進める工夫というのはあると思いますが、その具体的工夫も含めて教えていただけますか。

○政府参考人(小出邦夫君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたとおり、オーストラリア以外の五か国では離婚時に養育費の取決めをすることが法的義務とはされておりませんが、今回の調査結果によりますと、それらの国々でも各国の事情に応じ養育費の支払を促進する方策が講じられていると承知しております。
まず、離婚時における養育費の取決めに関しましては、例えば、イギリスでは養育費算定のための計算式が広く提供されておりまして、ドイツでは行政機関が関係者間の合意形成等を支援する仕組みが設けられております。また、取り決められた養育費の履行確保として、例えばスウェーデンでは、義務者が養育費を支払わない場合には、国がまず権利者に対して保護費を支払って、その後に義務者から保護費に相当する金額を求償する制度が採用されております。また、アメリカのワシントンDCでは行政機関が権利者に代理して養育費債権の回収を行うといった制度が採用されていると承知しております。

○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
これら六か国では、それでは、面会交流はどのように表現されているでしょうか。日本語の語感でいう面会交流という表現、いささか限定的でして、常々私申し上げておりますけれども、何か言わば犯罪容疑者に窓口で面会するというイメージに狭められていることが残念でございます。
共同養育、共同親権を理念とする国では、たとえ夫と妻が離婚しても、父子、母子の関係、さらにはその背景にある祖父母との関係は切れるものではない、共につなげていこうという前向きの意欲と意思が離婚後の親子交流に込められていると思われます。
面会交流をめぐる表現について、この調査で分かったところ、言葉の表現も含めて、法務大臣、お願いできますか。

○国務大臣(森まさこ君) 今回の調査では、面会交流に対する、面会交流という言葉の用語の調査というのは特に行ってはいないんですけれども、調査により判明した国もあるので御紹介をいたしますと、オーストラリアでは、子と共に時間を過ごす、スペンド・タイム・ウイズという概念により離婚後の親と子の交流が規定されております。フランスでは訪問権との用語で表現されております。イギリスではコンタクトと表現されます。など、国によって様々な表現が用いられております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
この国の、今法務大臣お答えいただきましたけど、それにプラスして、私はカナダのPAS、ペアレンティング・アフター・セパレーションという表現、これも大変分かりやすいと思います。また、アメリカではペアレンティングタイム、常々申し上げておりますけれども、単に、ある時、時間を限っての面会ではなくて、ペアレンティング、言わば日常生活も含めて、親であること、その下で親子が交流するという、イングが大変大事だろうと思っております。もちろん、虐待やあるいはDVの問題などございますから、ここにはそれなりの制限があると思いますが、この表現も大変大事であろうと思います。
今回の二十四か国の運用状況、大変よく分かり、調査に感謝を申し上げます。
また、この六か国の中で面会交流が義務化されている国はありますか。法的義務とはされていないが、公的機関が面会交流の支援をしている国はありますか。具体的にお教えいただけるでしょうか。法務大臣、お願いいたします。

○国務大臣(森まさこ君) 今回の調査結果によれば、御指摘の六か国のうち離婚時に面会交流の取決めをすることが法的義務とされているのはオーストラリアのみであり、それ以外の五か国では面会交流の取決めが法的義務とはされていないものであると承知をしております。もっとも、これら五か国でも、面会交流が適切に行われるよう、公的機関による様々な支援策が講じられております。
例えば、アメリカのワシントンDCでは、子の監護に関する裁判所の手続において全ての親が子育てに関するクラスを受講しなければならないこととされておりまして、ドイツやスウェーデンでは、行政機関による面会交流の取決め支援が行われております。イギリスでは、面会交流を実施する際の専門家による調整や監督といった支援が行われております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
それぞれ、事情に応じての支援、面会交流が大事だという基本的な理念に基づいた運用がなされているんだろうと解釈できます。
六点目の質問ですけれども、今回の調査、二十四か国の中で、日本のように単独親権、それが義務化されていると、法的に、そういう国は何か国あったでしょうか。逆に、共同養育、共同親権取っている国、何か国でしょうか。法務大臣にお願いします。

○国務大臣(森まさこ君) 法務省が実施した今回の調査結果によれば、調査対象国二十四か国中インド及びトルコでは、父母の離婚後には父母のいずれかによる単独での親権行使のみが認められておりました。また、英国及び南アフリカ共和国では、父母の離婚後は父母の双方が親権を持つが、原則としてそれぞれが単独で行使するという制度が採用されておりました。他方で、これらを除く二十か国では、父母の離婚後に父母が共同して親権を行使することを可能とする制度が採用されていたものと認識をしております。
もっとも、例えばメキシコでは、父母の離婚後に父母の双方が共同で行使することとされているのは財産管理権のみであり、監護権については父母の一方が行使することとされているなど、離婚後共同親権制度が採用されている国においてもその具体的な内容は必ずしも一様ではなかったものと理解しております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
新聞の、日経新聞四月十一日は、共同親権導入二十二か国、そして単独親権のみはインドとトルコだけという記事になっておりますけれども、今の法務大臣の表現ですと、二十か国がということですね。その二か国のずれというのはイギリスとそれから南アフリカなんですけれども、私、知り合いもいながら調べておりますと、イギリスや南アフリカ、これは日本のような単独親権ではございません。日本は単独親権が義務化されているということで、共同親権導入しているのは二十二か国という方がこの調査結果の表現としては正しいと私は思っております。もし異論があったらお願いをしたいと思います。
さあ、このように、はい、時間ですね、今回、トルコとインドがある意味で日本と同じ単独親権のみということで、これは今、本当に社会状況が変わっている中で……

○委員長(竹谷とし子君) 嘉田由紀子君、お時間が過ぎておりますので、質疑をおまとめください。

○嘉田由紀子君 はい。
日本は大変出遅れているということを今回申し上げ、そして次回以降は、この調査結果に基づきまして、協議離婚なりあるいは共同養育計画をどう作るかというところに絞らせていただきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。

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