○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
先ほど、高良議員が夫婦別氏制度のことを、これまさに明治以来の民法を背負っている今の日本の問題だと思います。
最新のニュースですけど、昨日、三月二十三日、滋賀県議会では、夫婦別氏制度、進めてほしいという意見書が賛成多数で採決されました。そのこと、四十七都道府県の中で六件目と聞いております。また、市町の議会では五十六件ということで、だんだんに、まさに地方からもこの夫婦別氏制度、選択させてほしいという切実な願いがあるということをまずお知らせさせていただきます。
それから二点目の、まさにこの民法で家制度が大変大きな影響をいまだに引きずっている。先ほどの山添議員のお話を伺っていますと、刑法でも、まさに家父長制の家制度で、性行為に同意を求めないというようなことが刑法にまだ残っていると。これも現代社会においてあり得ないことではないかと思っておりまして、明治以降の明治民法あるいは家父長制度がいかに私たちの家族生活あるいは日常生活に深く入り込んでいるかということを思い知らされております。
それから、大変悲しいニュースが今朝方ございました。東京の武蔵野市で十代の兄妹がお母さんから殺されるという、中学校一年生の長男十三歳、長女小学校四年生。お母さんはタイの方で国際結婚だったということで、これも離婚協議の中で子供を自分の手元に置けない、まあ次の詳しいニュースをもっと調べないといけないんですけれども、どうもタイの方に帰れと言われて、子供は家の子だから旦那さんの方で取るんだというところで、かなり追い詰められたんだと思います。
大変痛ましい、あってはならないことだと思いますけれども、このお母さんの思いを少し敷衍しますと、この法務委員会でも言わせていただきました金子みすゞ、詩人でしたけれども、昭和五年に、夫の方に子供を取られて、それで親権が取れないということで服毒自殺をしてしまった。金子みすゞさんのことを思い起こして、本当にこうやって家族の問題というのはまだまだ根が深いんだということを感じております。
先ほど、今日も朝から小野田議員が養育費のことを極めて分かりやすく書いていただいて、本当に養育費を確保するのは大変なんだなということで、フローチャートで示していただきました。
私も相変わらずですが、この子供の親権問題について質問させていただきます。
毎回申し上げているんですけど、二十一万人を超える子供たちが、父か母かどちらかということで片親ロスになってしまう、離婚後。こういう中で、まずは、今日は、日本の家事事件で大きな役割を占めております日本弁護士連合会のここ十年の変化を少し勉強させていただきました。
例えば、二〇〇九年に日本弁護士連合会六十周年記念誌には、両親の離婚が子供の精神面や心理面への影響が大きく、子供の権利が脅かされる場面が多いとして、人権問題として提起されております。そして、離婚後の親権については、共同親権の実現に向けた取組ということで、単独親権のみを定める民法が実情に照らしてもはや相当とは言い難く、日弁連では、二〇〇六年以降、三回にわたってシンポジウムを開催するなど、共同親権を実現するための法改正に向けて継続して調査研究を進めているという記述が二〇〇九年の日弁連の六十周年の記念誌にございます。
その後、十年たって二〇一九年の七十周年誌を見ますと、実はこの共同養育や共同親権、一言も触れられておりません。もちろん、民法七百六十六条、これ二〇一一年に改正されますけれども、養育費と面会交流については触れられておりますが、この共同養育、共同親権については一言も触れられておりません。
一方で、ハーグ条約については、これ二〇一四年から発効しておりますけれども、そこについてはかなり詳しく記述がございまして、二〇一八年五月に日弁連メンバーがフランスを訪れてシンポジウムをやったり、それから調査研究をしたというような記述がございます。その中に、例えばフランスは大陸法系の国として日本と類似の制度を持つという記述があるんですが、これは、家族法の専門家として、あらと思うんですが、日本とフランス、そういう意味では、家族法は類似とは言い難い大変大きな違いがあるとは思います。
そういう中で、法務実務を担っている、離婚問題に直面する父母や子供たちの頼みの綱が弁護士さんたちでございます。日弁連の議論の方向を見ますと、この共同養育、共同親権というのは大きく後退をしているように見えます。一方、今、家族法制の見直しを進めている法務省の方向性がございますけれども、少しずれがあるのではないのかと見えるわけでございます。
もちろん日弁連さんは独立した民間機関ですから法務大臣が意見を言うようなお立場ではないかもしれませんが、やはり社会的な合意形成ということで見ていくと、御自身も弁護士であり、法曹界御出身の法務大臣の御意見を伺えたら幸いでございます。
○国務大臣(森まさこ君) 離婚後共同親権制度の導入の是非をめぐっては、法曹界、日弁連の中にも様々な意見がございまして、また、法律専門家だけでなく、実際に離婚を経験された方を始めとして、社会の中にも多様な意見があると承知をしております。
家族法研究会は、法律の専門家や法律家、法律学の研究者を中心に構成をされておりますが、多くの方が納得することができる議論となるように、先日も私から法務省の担当者に対して、実際に離婚を経験した父母の方々や心理学等の研究者から十分に意見を聞くようにと、そして検討を進めるように指示を出しました。
多様な意見がある中での合意形成でございますので、意見の調和を図ることは容易な作業ではございませんけれども、様々な意見にしっかり耳を傾けて、家族法研究会において、この問題も含め、充実した議論がされることを期待しております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。前向きに研究そして合意形成に向けて動いていただいていると理解をしております。
そういう中で、日本国内で横行しております子供の連れ去り問題、まあ実子誘拐と言われておりますけれども、海外からかなり様々な意見がございます。日本政府、ハーグ条約に対しても動きが鈍いのではないのかというような懸念も表明されておりますけれども、昨年の秋、日仏議連でフランスのピック駐日大使にお会いをしました。ピック大使は、日本の単独親権がハーグ条約で問題になっている子供の連れ去りを許していると、また、国連の児童の人権条約にも違反していると言っておられました。
ちょうどこの三月三日に、森法務大臣、フランスのピック駐日大使と会われたということでございます。フランス大使館のツイッターでは、日仏間の司法協力と、子供の権利条約で計画されているように、離婚した場合に子供は両方の親に面会できるという原則の実現を再確認するために森法務大臣に会ったと記載がございます。
このとき、片親親権問題などについて具体的にどのような議論がなされたのでしょうか。公表できる範囲で結構ですけど、お願いいたします。
○国務大臣(森まさこ君) 本月の三日に、法務省にローラン・ピック駐日フランス大使がおいでくださいまして、様々な意見交換をいたしました。京都コングレスを始めとして、本当にもう様々な、数え切れないぐらい、今ちょっと思い出してみてもですね、多くの話をした中で、その一つとして共同親権制度についても意見交換を行ったものでございますが、個別のやり取りの詳細については、相手方との関係もありまして、この場でお答えすることは差し控えたいと思います。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
ピック大使御自身の方はこの離婚後の親権問題を議論したと言っていらっしゃるんですが、それはそのとおりだという御答弁はいただけますか。いかがですか。
○国務大臣(森まさこ君) はい、今ほど御答弁したとおりでございますが、共同親権制度についても意見交換を行いました。
○嘉田由紀子君 確認させていただきました。
同じくフランスですが、一昨年、二〇一八年の五月十五日に、在フランス日本大使館と日弁連が共催で、ハーグ条約についてのセミナーをフランスに在住する日本人の母親に対してパリで開催をしております。
日弁連と共催で当該セミナーを開催することに至った経緯はどのようなものか、どちらから働きかけたのか、またそのセミナーの狙いは何か、またこのセミナーは狙いを達したと判断できるかどうか、外務省さんにお願いをいたします。
○政府参考人(山中修君) お答え申し上げます。
外務省では、ハーグ条約の原則や手続、これに基づき、子供の連れ去り問題に関して受けられる援助などについてより多くの方々の正しい理解を促進し、子供の連れ去りを未然に防止することを目的といたしまして、幅広い広報活動を実施しております。こういった広報活動を含め、ハーグ条約の知見を有する弁護士等の関係者の方々とは日頃から連携をしております。
御指摘の二〇一八年五月にパリにおいて外務省及び日本弁護士連合会が共催したセミナーも、このような目的の下、広報活動の一環として実施したものでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
今、質問の中に、このセミナーの狙いはお話しくださいましたけど、狙いは達したと判断できるでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(山中修君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げたようなその目的の下でこのセミナーを広報活動の一環として実施したものでございまして、主催者の我々としては、こうした目的が達成されたものと期待しております。
○嘉田由紀子君 目的が達成されたという御評価をしかとここで確認をさせていただきました。
さあ、このセミナーの中の話を直接私、テープでしっかり聞かせていただきました。特に、日弁連から派遣されたハーグ条約担当の弁護士さんが三十分講演をしておられます。日本人の母親約七十人が参加していたようですけれども、そのテープの音声記録と文字起こし記録を入手して見てみますと、逆に、ハーグ条約は連れ去りを未然に防ぐ、そして面会交流を進めるようにと、言わば両親がフレンドリーに共同養育に入れるようにということを狙いとしているわけですけれども、実はこのテープ起こしをもう一字一句、三度ほど読ませていただきましたけれども、ここでは逆に、ハーグ条約の適用を受けずに希望どおりに日本に子供の連れ去りをするにはどうしたらいいのかというようなことが行間ににじんでおりまして、私自身は大変驚きました。
こういうことが、在外公館で、しかも元の居住国へ返還することを義務付けているのに、その義務を逃れるための様々なノウハウを伝授しているように思えてなりません。中には、夫のDVの証拠を警察から取って、そして自分の医療診断書を取り、DVシェルターに逃げ込んだ記録も取って日本に持ち帰るように、子供と一緒にということの指南もしております。
これはある意味で、日本国内でも連れ去り指南をなさる弁護士さんもいるということも伺っておりますけれども、そういうやり方と大変似通っているのではないのかということで、外務省さんがこの内容を評価すると、あるいは広報活動として成果が上がったとお考えになるとしたら、外務省さん、それでよろしいんでしょうかと再度の御質問でございます。
○政府参考人(山中修君) お答え申し上げます。
ハーグ条約は、国境を越えた不法な子の連れ去り等が発生した場合には、原則として子を元の居住国へ返還することを義務付けております。同時に、同条約は、一定の要件の下、限定的に子を返還する義務を負わないことも定めております。
御指摘いただきましたセミナーにおきましては、このような点を含め、外務省及び日本弁護士連合会からハーグ条約の原則や手続等について説明を行ったものであります。そのときの議事録は持ち合わせておりませんけれども、今御指摘いただきました講師の弁護士の方の見解として、我が国の裁判所において考慮されることがある例外的な返還拒否事由を説明したものと承知しております。その上で、講師の弁護士の方は、累次、我が国の裁判所は簡単には返還拒否事由を認めていないとして、子供を連れた安易な帰国は避けるべきとの趣旨の説明をしたと理解しております。
これらを踏まえまして、この講師の方の御説明は御指摘のような指南をしたものではないというふうに理解をしております。
外務省といたしましては、ハーグ条約についての正しい理解を促進し、子の連れ去りを未然に防止することを目的といたしまして、今後もしっかりと広報活動に努めていく考えでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
そもそも、離婚の後も父と母はフレンドリーに、争わずにできるだけ子供の最善の利益をということが共同養育、共同親権の背景にある哲学であり、理念でございますので、ハーグ条約のバックもそれがあって、二〇一一年から二〇一四年、本当に三年も四年も議論いただいたと伺っておりますけれども、その中央当局として、外務省さんが今後とも子供の真の利益のために国際的な活動の中心を担っていただけたら幸いでございます。
できましたら、次回は、このハーグ条約によってどういうふうに救われた子供がいるのかというようなこともお教えいただけたら幸いでございます。
類似のことで、実は欧州議会でも、今年の二月十九日に請願委員会、コミッティー・オン・ペティションでは、ドイツ、イタリア、フランスの請願者によって日本人による実子誘拐が議題となり、委員からは日本に対して具体的な行動を求める意見が出ております。
具体的措置としましては、請願者からは、日本対EU戦略的パートナーシップ協定、これ四十三条ございますけれども、それを停止するということや、あるいは日本人のEU域内への渡航におけるビザ免除の取消しなどが提案されたと伺っておりますが、政府はこうした事実を把握していますでしょうか、外務省さん、お願いします。
○政府参考人(河津邦彦君) お答え申し上げます。
今御指摘いただきました二月十九日の欧州議会請願委員会において御指摘の議論がございました。請願者が、SPA、日EU戦略的パートナーシップ協定の停止とか、日本人への査証免除取消しに言及したというふうに承知をしております。
これを受けまして、請願委員会におきましては、同日、日本でのEU市民の子供の連れ去り等に関する本会議決議案を作成する等の方針を了承し、その件が三月九日から十二日までの本会議で審議予定であったというふうに承知をしておりますけれども、これまでのところ、欧州議会本会議において本件は取り上げられていないと、このように承知をしております。
○嘉田由紀子君 お詳しく対応いただき、ありがとうございます。
欧州議会も、実はこのコロナの問題で日程が短縮されてということを私も伺っております。
また、同じ日の請願委員会では採択提案されておりますけれども、今後、それこそ欧州議会議員や請願者の国に対して、外務省さんとしてはどのような対応をしていかれるおつもりでしょうか。
○政府参考人(河津邦彦君) お答え申し上げます。
我が国といたしましては、EUの関係者に対しまして、我が国の関連する法令でございますとかあるいは制度、こういったことについて説明をしてきているところでございまして、これを継続していく、このような形で適切に対応をしてまいりたいと、このように考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実は、フランス上院でも決議案がなされたということで、二〇二〇年の、今年の二月五日です、日本における子の連れ去り問題に関する決議案が採択され、そして次のような意見がフランス上院ではございました。日本は、特に、民主主義、法の支配、人権、基本的自由を促進することを目的とする日本対EU戦略的パートナーシップ協定を尊重していない。先ほど申し上げましたその四十三条の文です。それから、ヨーロッパの大使たちは、何度も何度も日本政府当局、安倍総理、そして法務大臣に要請したが、結果が出ていないと。このような決議がフランス上院でなされていることは、海外から我が国の家族法制に大きな問題があると思われている表れではないかと思います。
また、同じく今年の一月二十一日、オーストラリア大使が法務省を訪問して、離婚後の子の養育の在り方に関して議論をしたと伺っております。私がオーストラリア大使館から伺ったところ、オーストラリア大使館では、裁判所の命令に基づく面会は最大でも一月に一回が多い上、執行力を持たず、ほとんどの場合、面会が実現していないと。このような場合、オーストラリア人の親は、幾ら子供に接触したくても全くできないか、あるいは接触の機会が非常に限られるのが現状だと認識しております。
そのような中で、先ほどのフランスの上院、あるいはEU、オーストラリア大使館からいろいろ国際的に見られている中で、今、家族法研究会、進めております。どのようなスケジュールで検討していただけるでしょうか。森法務大臣にお願いをいたします。
○国務大臣(森まさこ君) 委員御指摘のように、我が国の家族制度については、海外にも様々な御意見があると承知をしております。様々な主張の中に、例えば、子を取り返すための法的手続がないなどといった誤解に基づく御主張等もございますので、それについては、我が国の法制度について正確な理解を得られるように、引き続き、適切な周知、説明等を行ってまいりたいと思います。
また、御質問の家族法研究会でございますけれども、海外の御意見、そして我が国の中でも様々な御意見がありますので、これらの意見を参考にしながら検討をされているものと承知をしております。こちらの主催は公益社団法人商事法務研究会でございますが、その家族法研究会に法務省としても担当者を派遣をしております。
現在、多岐にわたる論点の整理が行われており、今後のスケジュールは未定というふうに伺っておりますが、私としては、毎回申し上げておりますけれど、父母が離婚した場合の子供の養育の問題は子供の権利に関する問題でございますので子供の視点からしっかり議論する、そして、早期に充実した取りまとめができるように、法務省の担当者に積極的に議論に加わるように指示をしているところでございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。子供は本当にすぐに成長します。一日も早くお願いをしたいと思います。
時間がかなり迫っておりますけれども、最後に家庭裁判所について最高裁判所にお伺いしたいんですが、オーストラリア大使館から、日本の主権に配慮しながらも、家庭裁判所について四点要望がございます。
面会時間の下限を拡大する、裁判所が接触について執行権を持てるようにする、裁判所に子供の状態をチェックできる権限を与える、裁判所に手紙やスカイプなど親子間での接触を推進するよう促すということでございます。ここについて、最高裁判所さんの御意見をお伺いいたします。
○委員長(竹谷とし子君) 手嶋家庭局長、答弁御簡潔にお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
今、四点御要望について御指摘いただきましたけれども、一点目、二点目の点につきましては制度の在り方に関わる事項のように理解しておりまして、この点につきましては最高裁判所としてはお答えをする立場にはございませんが、最高裁判所としても家族法研究会における議論の推移を注視してまいりたいというふうに考えております。
また、要望の三点目で子供の状況等の把握という点についての御指摘があったかと思いますが、面会交流事件において子供の状況等を把握することが重要であることは御指摘のとおりでございまして、面会交流事件における現在の家庭裁判所の一般的な運用としても、家庭裁判所調査官が、心理学、教育学等の行動科学の専門的知見及び技法を用いて事実の調査を行うなどの方法を活用いたしまして、子供の状況や意思、意向、心情を把握するよう努めているものと承知しております。
また、次のスカイプ等の利用による交流についての御指摘でございますが、面会交流事件におきましては事案に応じて適切な交流方法が検討されておりまして、父母が遠隔地に居住している場合など、手紙やスカイプ等のインターネットテレビ電話を活用した交流が有効であるような事案につきましては、そのような交流を取り決める事案もあるものと承知しております。
今後も、より一層、子の利益にかなう面会交流の取決めが実現されるよう、各家庭裁判所における取組を引き続き支援してまいりたいと考えております。
○委員長(竹谷とし子君) 嘉田由紀子君、時間が過ぎております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございました。
時間が過ぎております。どうも皆さん、ありがとうございました。