Facebook 2020年7月31日 球磨川水害被害地から(その3) ラフティング会社社長たちが住民17名、千寿園の高齢者2名を救助

球磨川水害被害地から(その3)、球磨村渡地区、ラフティング会社社長たちが、屋根上の住民17名、千寿園の高齢者2名を救助。7月31日。(また長いです、1600文字)
今回の熊本県内の死者65名のうち、水死が53名でく、球磨村渡地区の高齢者施設千寿園で、14人が亡くなってしまいました。29日のこのFB上で紹介した通りです。実はこの渡地区では、「ランドアース」という球磨川ラフティング(渓流下り)会社の迫田重光社長たちが、泥水で行く手を阻まれ、屋根の上に取り残された人たち17名を、命がけで救出していました。直接迫田さんのお話が聞けましたのでご紹介します(写真1 NHKTV)。
渡駅すぐ横に球磨川ラフティング会社「ランドアース」を経営する迫田さんは、人吉市内の自宅で真夜中2時頃雨音のひどさに眠れず、「これは危ない」とすぐに川沿いの事務所に直行。眼の前の球磨川は溢れそうだったが、まだ車を動かすことができ、8台の車をスタッフとともに高台に逃がして、終わったのが6時頃。その時には車輪が半分ほど水につく程度だったが、事務所の床にも水がはいりはじめた。その後の水位の増加ははやく8時頃には一階が水につき自分たちは高台のUさんの家ににげた。
その家から見ると、水がついた家いえの屋根上から「はよー助けて!」という悲鳴が響いて来た。「ボートさえあれば」と思っていたところ、自分の会社の倉庫から流出した修理中のボートを近くの男性が運よく拾い上げていた。ただ水をかくパドルがない。代用品のシャベルとホウキで、会社スタッフとともに泥沼に漕ぎ出した。あちこちで濁流が渦巻いていて制御が難しい(動画 迫田さんが提供下さいました)。
無理もない。球磨川本流はこれまでに見たことないほどの濁流と水位、そこに小川という決して小さくない、幅20メートル近くもありそうな支流からの濁流が流れこむ。巨木や壊れた屋根なども流れている(写真3、4)。球磨川の急流を下るラフティングのプロの目と技をもっていたからこそ、無事に17名もの人たちを泥海から救い出すことができたのだ。見事な救出劇だ。先回紹介したYさんもこのランドアースのボートで救い出されたと言っていた。
村の中の人たちを救いだして後、千寿園に人が取り残されているということを聞きつけて、ボートを千寿園に漕ぎ出した。そこでも部屋の中から2人を救出。すでに二階近くまで水がきていて、屋根の上にも多くの人がにげていたので、その人たちもボートで救いだした。しかし残念ながら、千寿園では14名もの方が逃げ切れずに亡くなってしまった。後からの情報ですが、隣の渡小学校の一階の時計は「7時51分」で止まっていたという。
千寿園は鉄筋コンクリート、一部二階建てで、2000年6月に、元々あった渡小学校の山側に開設された。横には小川が流れている(写真5)。当時は洪水ハザードマップもまだできていなかっただろうが、先回お知らせしたように、渡地区は洪水常襲地で、昭和48年の「洪水痕跡」が電信柱につけられていたところでもある。しかし今回の豪雨は、その洪水よりも2メートルほども高いところまで水がきてしまった。つる詳子さんが、昭和22年の航空写真を探してくれました(写真6)。千寿園はもとより、小学校以外の家はほとんどありません。写真7の今の土地利用と比較してください。写真8は広域での浸水地図です。
昔から「本家の水害」「分家の水害」と言いますが、長い間住んできた家(本家)は比較的安全なところにある。しかし分家や新興住宅は、水害や土砂災害のリスクなどを知らずに、危ないところに住まうことになりがちだ。それゆえ、ハザードマップの作成とその周知がますます重要になります。滋賀県では「流域治水推進条例」で2014年に、宅地建物取引時のハザードマップの周知を努力義務としました。
国もようやく動きはじめ、この7月17日に政令改定を公表し、8月28日から、宅地建物取引時にハザードマップを「重要事項」として説明することが義務化されます。ハザードマップの義務化にむけては、マップの精度をあげる(下水道など内水氾濫も含むよう)とともに、これを活用した土地利用規制や避難体制づくりが必要です。
今日も暑い中、球磨川では片づけに追われていると思います。迫田社長さんは GO TOキャンペーンの費用を観光再生に回して欲しいと熱望していました。ランドアースはじめ人吉、球磨川周辺の一日もはやい復興をお祈りしています。
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