Facebook 2020年7月22日 参議院議員会館で「流域治水の最前線 シンポジウム 温暖化時代の水害政策を求めて」開催

7月22日、参議院議員会館で行われた「流域治水の最前線 シンポジウム 温暖化時代の水害政策を求めて」。無事おわりました。200名の会場に100名と密度も低く、しかし討議は熱く!ご協力いただきました講師の皆さま、実行委員の皆さまありがとうございました。当日の写真と京都新聞記事、読売新聞社説も添付いたします。また全体の動画は近日、農文協プロダクションのご協力でYoutubeで公開予定です。(2000文字 長いです、スミマセン)
当日のエッセンスを一部ご紹介いたします。まず第一部は、篠原修さんと大熊孝さんによる対談。タイトルは「高橋裕著『国土の変貌と水害』(岩波書店)から50年~治水政策子弟三代から見る日本の河川政策の歴史と思想」。対談企画の源は、流域治水の考え方を50年前に提示した高橋さんの著作。50年前に「都市化とともに水の出足が早くなる」「土地利用の歴史や地域住民の経験とつなぐ」「人間不在の技術を振り回さない」と警鐘をならしてきました。93歳で今もご健在ですが、今回の対談にはご体調もあり参加していただけず残念でしたが、フォローしてくださっています。
篠原修さんは『安藝皎一、髙橋裕、大熊孝、河川工学者三代は川をどう見てきたのか』(農文協)の大作の著者です。もともと景観論がご専門で、河川に対する考え方は新鮮です。今回は、土木の根本思想である「フェイル・セイフ」(失敗しても安全、大丈夫)の思想は水害防備林など、伝統的河川工法に活かされていたこと、また日本の城下町、近世都市は水の都市で、河川計画と都市計画が一体であり、河川技術者の役割は今も大きいと指摘。大変重要な発見です。
大熊孝さんの最新の集大成ともいえる『洪水と水害をとらえなおすー自然観の転換と川との共生』(農文協)では、日本伝統の「民衆の自然観」に根ざした洪水との付き合い方が、近代化の中で「国家の自然観」とも言える大型技術と施設で川の中に水を閉じ込める制御型になり、柔軟な伝統的自然観が失われていることを懸念。これからの治水は川の中と外をつなぎ、200-300年後にも生き続ける自然との共生技術の重要性を論じています。
今回、大熊さんは「2020・7・4球磨川水害覚書―川辺川ダムがあったとして水害を防げたか?」をご準備下さいました。当日の人吉市の最高水位は午前7時頃ですが、そこに流れ込む川辺川からの水量はダム地域の午前3時頃の水量(約4時間かかるので)で総水量の2割位で、ダムがあったとしても洪水被害は防げなかったのでは?という推測です。今後の河川整備方針は、国交省が一方的に決めるのでなく、 地形条件が類似した地域ごとに、女性や老人、子供も含めた住民間で話し合い、それを2~3年かけて流域の意見に昇華させ、行政と交渉して決めるべきというアドバイスでした。
講演①は、土木学会の知花武佳さん(東京大学)が「土木学会台風第19号災害総合調査団の提言にみる流域治水」として、手描きの平面図などを駆使して、流域治水の定義とともに、集水域と氾濫域をふくめた流域全体を俯瞰して、「自助・共助・公助」を機能させながら土地利用や避難体制に活かす仕組みを提案下さいました。子どもたちには日常的な川との触れ合いが大切という意見もいただきました。
講演②は、国土交通省水管理・国土保全局の森本輝河川計画調整室長で「気候変動を踏まえた水災害対策について」。河川、下水道、防災、海岸など管理者主体のハード事業から、国、都道府県、市町村、企業、住民などあらゆる関係者の協議による流域全体での対策が流域治水と定義。氾濫を防ぐ対策に加えて、氾濫した後でも被害を減少させる町づくりや住まい方の工夫を提案。不動産取引時に水害リスク情報の提示が8月28日から義務化されることも公表。
講演③は、滋賀県の吉田秀範 土木交通部長と速水茂喜流域治水政策室長が「滋賀県での流域治水条例制定と今後の課題」として遠隔参加。嘉田が知事に就任してからまる8年かけて条例化した流域治水条例の「流す」「ためる」「とどめる」「そなえる」の骨子を解説し、同時に県議会で2回「継続審議」になった時点での苦労や、リスクがわかってもそれを地域で受けいれてもらう「警戒区域指定」の苦労など語っていただきました。課題はまだまだ多いということ。
講演④は、福知山市造成地水害弁護団の上田敦弁護士と浅井勇希 弁護士による「福知山市造成地水害訴訟の意義と課題」。京都地裁の判決は住民勝訴だったが、今後の控訴審を控え内容的な紹介は省かせていただきますが、原告としては、保障や保護が欲しいのではなく、安全に暮らせる街づくりのためにあえて裁判に訴えたのだ、ということ理解いただきたいということです。大事な配慮です。
最後の質疑応答では、あらかじめ質問票にご記入いただいた11件を取り上げさせていただきました。大熊孝さんにはコンクリート河川を「積極的に壊すことは可能か?」「水害防備林の活用方法」、滋賀県には「上下流で市と県と管轄が分かれる河川の管理は?」「森林でためる対策とは?」、国土交通省には6件「耐越水堤防の施行地区は?」「なぜ水害防備林を伐採してしまうのか?」「災害後の“原型復旧”から“適応復興”転換は?」など、それぞれに重要な質問を出していただきました。今日は長くなりすぎますので、上の課題、またYoutubeで公開の機会にフォローさせていただきます。
実は明日、25日から球磨川災害被害地調査に伺う予定ですが…雨が心配です。また球磨川現地から報告させていただきます。
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