Facebook 2018年8月25日

8月23日、東京の日本外国特派員協会で、西日本豪雨の中で、主に倉敷市真備地区の被害構造の分析と、今後の日本の治水政策について、新潟大学名誉教授の大熊孝さんと、嘉田由紀子とで記者会見を行いました。質疑応答も活発で、全体として1時間11分の会見になりました。動画が公開されています。下記にアドレスをいれています。会見の全体準備は草島進一さん、通訳は青山己織さんが見事にこなして下さいました。皆さんのご協力、ありがとうございました。8月24日。また長いです(ごめんなさい)。

大熊孝さんは、河川工学の立場から、今回の真備町の51人もの死者が出てしまったのは、小田川本川の堤防が大規模に破堤してしまったことが大きな要因であると分析し、「溢れても破壊しない」「しぶとい粘り強い堤防」をつくることが大切だと訴えました。かつては堤防強化の技術は不十分であったが、最近は堤防に矢板を埋め込んだり、ソイルセメントで補強したり、堤防技術は大変発展しているのに、政府(国土交通省)は、今だにダム依存思想が強く、堤防強化を無視していることを各地の事例で紹介しました。

あわせて、大熊孝さんの持論である「個人技術」「共同体技術」「大規模近代技術」というみっつの技術分類の中で、近代化に伴い大規模技術ばかりに重点がおかれ、河川の土砂の自然の流れや生き物の生態を重視する思想が忘れられており、川とともに生かされてきた日本の文化への危機感も語ってくださいました。特に「ダムの問題」を「子孫への負の遺産」「川の生態系破壊」「魚との共存文化の喪失」「そもそも治水機能も限界」「場合によっては危険性を高める」「ダム建設で住民の間に安心をばらまき、逆にリスクが高まる」など、丁寧に説明下さいました。

嘉田は、今回の真備地区の死者の中で39名もの人が自宅で家の中で溺死をした背景を環境社会学の立場から「被害構造」として説明しました。地域的にみると、何よりも歴史的にみて水害常襲地であった真備の水田地帯に、1970年代以降、水島工業地帯の発展にあわせて急速に新興住宅ができたこと、しかしその時に危険地域での土地利用規制や建物配慮がなされていなかったこと、水害予防組織などもこの時期に解散していること、これらは行政の側の責任です。一方、住民の側からみると、潜在リスクを自覚できず、近隣の相互扶助組織などが十分機能せず自宅内での溺死者が増えたことを申し上げました。

水害リスクを公開する上での意識構造についても触れました。滋賀県での流域治水条例をつくる時に、「地価が下がる」と水害リスクの公表に大きく抵抗する人びとがいたこと、具体的には県議会の旧住民系の保守系議員や市長会の人たちで、この人たちは土地所有者の立場からリスクを知らせずに土地を売りぬこうとする意識が強かったのではないか、と。逆に新住民は一生に一度家が購入できたらそれで幸せ、その時にリスクを知らずに、知らされずに危険な土地を求め、そして今回の真備での溺死者のように、ようやく手にいれた自宅の中で働きぬいてきて退職した高齢者が死亡する、というようなことは大変心が痛み、行政としても許してはいけない、と強く申し上げました。そのために流域治水条例をつくったことを訴えました。

今回の真備の皆さんの犠牲を無にしないためにも、滋賀県ですすめてきた流域治水条例のような法令を国としてもつくっていただき、その母体に、施設建設を目的としてしまいがちな省庁ではなく、ハードとソフトの施策を総合的につかさどり「国民の命を災害から守る使命感を柱に効果的な政策を駆使して横串がさせる」「防災省」というよう母体が必要である、と訴えました。

またこの日曜日、26日の午前11時55分から1時間、テレビ朝日の「たけしのTVタックル」の録画撮りも行い、「防衛費よりも防災費を!」という議論に参加しました。ここでも防災対策について、議論しました。この件については明日、お知らせします。

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