20200528参議院法務委員会【確定稿】

○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
まず、黒川元検事長問題ですけれども、法務省及び検察総長で、懲戒処分ではなく、それより甘い言わば訓告処分相当という意見が強く、それで官邸に提案されて、了承されたということです。多くの国民は納得していません。主権者である国民が納得しておりません。それだけではなく、与党の中からも今回の訓告処分、甘過ぎるという意見が出ております。
私はもうこれ以上質問しませんけれども、私自身、県職員として二十年、また知事として二期八年、特に知事の時代は大変重たい判断を迫られました。いろいろな違法に当たる行為などを職員がしたときにどういう、処分という言葉も余り好きじゃないんですけれども、どういう取扱いにするかというのは、その人の人生、家族、全てに関わってきます。ですから、できるだけ配慮したいと。
しかし一方で、公務員、県職員、県の公務員です、それを任命する知事としては説明責任が必要です。どうやったらこの行為に対して県民の皆さんが納得してくれるかという説明責任。そのときには、大事なのは法令とそれから前例ですね。ですから、必ずこの関係のどういう前例があるのということを人事課長が調べてきて、そして最終は私自身が県民の皆さんに説明が付くような、そういう判断をしてまいりました。
人事というのは、一〇〇%納得はありません。どこかでいろいろな問題がある。今回のこの黒川元検事長の人事については、国民のかなりの多くが、例えばヤフーの調査では九〇%が納得しないと言っております。そういうところを含めて、この訓告という甘い処分を決めたのはもう内閣、官邸、政治判断だと国民の多くが理解をしておりますので、何としても安倍総理自身が出席をして、予算委員会の集中審議を進めていただきたいと要望をまずさせていただきます。法務大臣からも、そういうことを言う機会がありましたら安倍総理にお伝えいただけたらと思います。(発言する者あり)はい、国会の議運が決めるということですけれども、議運から求められたときに拒否をなさらないようにということでお願いしたいと思います。
前回、ずっと連綿と離婚制度の話を質問しておりますが、前回の五月二十六日、日本では離婚の九割近くが協議離婚で、そして子供の養育条件など義務化せずに離婚を認めているのは、今回調査をした世界二十四か国の中で日本だけだということが分かってまいりました。
この離婚が容易であるのは、ある意味で日本の歴史的背景がございます。元々、明治民法の下では、結婚は家の跡取りを確保するための手段であり、跡取りが生まれない場合には素早く離婚をして女性を解放し、また女性も再婚しやすいという背景があったと。ですから、女の腹は借り物という言い方もされますけれども、子供は家に帰属する、夫側に帰属するということで、家族法の研究者たちもこの日本の離婚制度の背景を説明をしてくれるわけでございます。
キリスト教国では、特にカトリック系の国では、夫と妻の夫婦関係、永遠のものとして離婚への社会的歯止めが強かった歴史がございます。これがここ二、三十年、ヨーロッパでも大きく変わっているわけですけれども、そのときにヨーロッパ諸国でも子供のことは大変重視しているというのが今回の二十四か国調査でございます。
そして、戦後は男女同権になって大きく民法を変えられたんですが、この単独親権は残りました。その上、近年は女性団体の一部が、DVから逃れるためにということで単独親権制度を共同養育や共同親権に変えることに強く反対をしておられます。確かに、DV被害、壮絶です。いろいろ私も、具体的に知り合いもおりますし、それからいろいろなケースを読ませていただいております。
内閣府の調査、平成二十六年の調査がございますけれども、夫婦の中のDVで男性側から女性側が二四%、逆に女性側から男性側が一七%。これ意外と社会的に知られていないんですが、男女双方が加害者になり得るということで、そのためにDV防止法があるわけです。これをできるだけ実効化することがまず法務行政として必要だろうと思います。
一方で、DV防止法が有効に機能していないからといって、子供にとって最善の利益を実現するための共同養育や共同親権に反対するということは社会的に説明が付かないと思っております。特に今や、子供はかつて家の所有物と思われていた、今は母親の所有物になっているんじゃないのかという懸念さえあります。子供の最善の利益を、どこに行ったんでしょうか。
言うまでもなく、先ほど高良議員も言ってくださいましたけれども、日本の子供たちが置かれている状況、面会交流も含めて大変大事な局面に達していると思っております。協議離婚であっても、離婚要件として未成年の子供がいる場合には共同養育計画を義務化する提案させていただきました。前回答弁いただいております。
また、日本では、これ今まで余り議論されていないんですけど、民法八百七十七条には、直系血族には扶養の義務があると。これ、離婚をした後も父子、母子の関係は変わらないわけですから、直系血族には扶養の義務がある、それは生きているわけでございます。
そういう中で、先回、明石市の事例詳しく御紹介させていただきましたけれども、森法務大臣が紹介をしてくださったホームページ、法務省のホームページ、じっくり見せていただきました。大変分かりやすい呼びかけで、離婚を考えている方へ、離婚をするときに考えておくべきこと、あなたは今、不安、怒り、恐怖、悲しみ等のいろいろな感情のために将来のことを考えることが難しいかもしれません、また、まだ自立していない子供がいる場合には、その子の将来のために考えていきましょうということで、一人で悩まないで専門家に相談してくださいと呼びかけていただいて、大変丁寧なホームページを作っていただいております。
そして、五月二十六日、私は、そのときに大事なのは裁判外紛争解決手続、ADRですね、これがこれからの時代大事ではないかと申し上げました。というのは、弁護士の場合には、ある意味でクライアントの利益を重んじて、勝つか負けるか、あるいは結論出さなければいけないんですけれども、このADRですと、養育費の額、支払方法などを含めて共同養育計画合意書作ることができます。この合意書を作るのに当たって、公証役場に出して公正証書として法的な効力を持たせることもできます。
今日皆さんにお配りしたのは、この「かいけつサポート」というものですけれども、こちらもこの三月に法務省が作っていただきました。見ていただきますと、裁判によらずに話合いによって円満な解決を目指すパンフレット、大変分かりやすいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、法務大臣にお聞きしたいんですが、長々と済みません、前振りが長くて、共同養育計画の作成に向けたADRの活用について法務省の取組状況をお尋ねいたします。また、今後の課題について法務大臣の御認識をお聞かせください。

○国務大臣(森まさこ君) 子供の利益の観点から、未成年の子がいる父母が離婚する場合に、子供の養育に関する事項について必要な取決めを行うことは重要であります。その取決めを行うには、父母間の協議や裁判手続のほか、委員が今お触れになりましたADR手続を活用することが考えられます。
法務省では、これまでも法務大臣の認証を取得した民間ADR機関を紹介するパンフレットを配布するなど、ADRの活用に向けた周知、広報に取り組んできたところです。
法務省の担当者も参加する家族法研究会においても、未成年の子がいる父母が協議離婚する場合に、養育費や面会交流の取決めを含む養育計画の作成を促進することや、その際にADRを活用することが検討されていると承知しています。
今後とも、離婚問題を取り扱う民間ADR機関の更なる周知等について検討するとともに、父母の離婚後の子供の養育の在り方についての様々な課題についてしっかりと検討を進めてまいります。

○嘉田由紀子君 御丁寧にありがとうございます。
このADRの中は余り直接家族や離婚というところがないんですけれども、全国で民間事業者の一覧がございます、法務省の認証を受けた。この中で、東京都の小泉道子さん、個人名でやっていただいていますけれども、家族のためのADRセンター、直接お話をお伺いしました。
小泉さんの基本的な考えは、離婚を考えている、あるいは離婚に直面している夫婦というのは、どっちにしろ大変葛藤が高くてなかなか両方一緒に話合いもしにくいけれども、その両方の意見を聞きながらできるだけまとめる方向でいく、共同養育ができるようにということを、子供のためにということで大変緻密に丁寧に仲裁をしていただいております。
どこの国でも、もちろん夫婦、離婚するということは高葛藤です。日本だけが高葛藤なのではない。それも今回二十四か国の調査で分かったと思いますけれども、夫と妻が対立しているのに、子供のために対立を超えて、戦いを超えてフレンドリーに子供のための養育計画を作り、実践しようという試みが世界的にも見えますけれども、それを各国で法制化しているわけです。
共同養育を取っている今回の二十二か国の中で、父母が対立する場合の対応にはどのようなタイプがあるでしょうか。そのタイプ別の国名などお教えいただけますでしょうか。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
今回の海外法制調査の結果によりますと、離婚後の子供の養育について父母の意見が対立する場合の対応といたしまして、例えば、イギリス、イタリア、オーストラリア、韓国、スウェーデン等、多くの国では裁判所が判断するという回答でございました。また、これらの国につきましては、イギリス、イタリア、オーストラリア、スウェーデン等では、裁判所が判断するに当たりまして、外部の専門家や関係機関の関与が認められていると。また、韓国では、当事者があらかじめ裁判以外の紛争解決方法を決めておくことができるといった付加的な情報も得られているところでございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
今回の二十四か国の調査の中に、離婚後に子を監護する親が転居する場合の制限の有無とその内容についてという質問項目があります。実は、離婚をした後、子がどこに住むかというのはかなり海外では重要な問題になっているんですが、日本ではまだ余りここのところの重要性が知られていないと思うんですけれども、この制限がある場合、その内容について二十四か国調査からお教えいただけますか。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
今回の海外法制調査の結果によりますと、離婚後に子供を監護する親が転居する場合の制限の有無につきまして、例えば、アメリカ、イタリア、オランダ、韓国、スペイン、ドイツなど、転居に裁判所の許可又は他方の親の同意などを要すると回答した国が多かったところでございます。
そのほか、例えばイギリスでは、原則として他方の親権者の同意は必要ありませんが、一か月以内の旅行を除いて子供を外国に連れていく場合には他方の親権者の同意を得る必要があるとか、アルゼンチンでは、子供と同居している親は、同居していない親が子供と円滑にコミュニケーションを取る権利を害さないように配慮することが求められております。また、ブラジルでは、転居先が子供の利益の観点から制限され得ると、そういった回答がございました。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
お答えのように、子供の居住地、移動することは共同養育の中で大変大事な事柄なので、相手の了解を得ずに監護親が勝手に居住地を移動することは禁止あるいは制限されている国が多いことが分かります。特に海外への移動などは大変大きな制限されている。これが実はハーグ条約の問題につながってくるわけでございます。
今日はもう時間切れですのでここで終わらせていただきますけれども、この片親親権制度、ハーグ条約、そして何よりも子供の最善の利益を目指すような民法改正について、また今後も続けていきたいと思います。
ありがとうございました。

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