令和元年十二月三日(火曜日)法務委員会
○嘉田由紀子君 碧水会の嘉田由紀子でございます。
まず、企業の経営環境、厳しさ増す中で、今までも言及ありますけれども、国連では、二〇一一年に国連ビジネスと人権に関する指導原則が採択されております。また、二〇一五年には、我々の世界を変革する、持続可能な開発のための二〇三〇年アジェンダ、いわゆるSDGsが採択されております。企業には、自社の利益の追求だけでなく、環境や社会の課題に配慮した責任あるビジネスが求められるようになってきております。
午前中の矢倉委員、また、今ほどの高良委員の言及もございました。私も、SDGs、実はこのバッジは滋賀県内の木材で県内の福祉作業所の方が手作りで作っていただいたものを日々付けさせていただいております。
そういう中で、今回の会社法に関わり、まず一点目の御質問でございますけれども、法務省の民事局長様にお願いいたします。
社外取締役が積極的な投資やリスクテーキングを促す効果、利益率や生産性を高める効果など、企業価値の向上に及ぼす効果についてはどう認識しておられるでしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
社外取締役の選任が企業価値に与える効果につきましては、幾つかの実証研究の結果が公表されております。このような実証研究のうちには、社外取締役の選任は企業価値や企業業績、株主還元の向上に一定の効果があるという結果を示すものがある一方で、社外取締役を置かない場合にはその理由を説明しなければいけないという規律が平成二十七年に設けられましたが、その後における社外取締役の導入の効果については一貫した傾向は見られないか、あるいは一部の小規模な上場会社に関しては株式市場における評価が低下した可能性があるという結果を示すものもございます。
このように、企業価値に与える効果につきましては、幾つかの研究の結果が公表されてはおりますが、まだ一貫した結論が得られていない状況にございます。
もっとも、社外取締役は、少数株主を含む全ての株主に共通する株主の共同の利益を代弁する立場にある者として、業務執行者から独立した立場から会社経営の監督を行い、また、経営者あるいは支配株主と少数株主との利益相反の監督を行うという役割を果たすことが期待されているわけでございまして、このような役割の内容に照らしますと、社外取締役が選任されたことによって我が国の資本市場の信頼性が高まるという一般的な効果を超えて、委員が御指摘の積極的な投資やリスクテーキングを促す効果、あるいは利益率、生産性を高める効果が数字上直ちに表れるとは限りませんので、これを定量的に示すということはちょっと性質上困難な面があると考えているところでございます。
○嘉田由紀子君 今回、会社法で社外取締役、義務化されるわけですけれども、そのときに、今のような社外取締役の効果も含めて共に社会に出していただきたいと思います。
そういうところで、今日、日本企業の国際競争力と女性参画というところで少し話題を広げていきたいと思います。今ほど高良委員も言及しておられましたけれども、私自身は、平成に入って日本企業が国際競争力を失っている、様々な要因があると思いますけれども、その一つは女性参画の少なさがあるのではないのかと思っております。ただ、こういうことはなかなか因果関係、相関関係も出しにくいんですけれども、少しその辺を議論を深めていきたいと思います。
まず、今日、資料一でお出ししておりますけれども、生産年齢人口、日本はこの少子高齢化の中でどんどん下がっておりまして、今後三十五年で三割減少いたします。女性がきちんと経済活動に責任ある地位を求めて参画をしないと経済そのものが成り立たなくなる、これはもう数十年前、三十年、四十年前から分かっていたんですけど、そこに手を打てなかった日本社会の立ち遅れだと思っております。
少し個人的な経験ですが、私自身、一九七〇年代、日本だけでなくアメリカで学び、その後、アメリカ、ヨーロッパで比較社会研究を進めてきました。そのときに女性の仲間がたくさんおりました。皆さん大体企業のトップ、そして例えば国際機関のトップで働きながら子育てを両立できている人が圧倒的に多かったんです。それで、仕事か家庭かという二者択一を迫られない。あっ、これは違うな、何で日本では逆に二者択一を迫られるんだろうと。
例えば、七〇年代、私、大学を卒業するときに、大変優秀な同級生、三十名おりました。その三十名、今、人生いろいろたどってみますと、二者択一を迫られた人ばかりで、両立しているのはたった二人です。そういう意味から見ても、この七〇年代、そして八〇年代に社会に出た女性たちが大変厳しい状況にあると。
今日お示ししました資料の中で三を見ていただきたいんですけれども、結果として、これは女性の有業率と出生率の相関を取ったグラフでございます。
一般に、女性が仕事するから子供が産まれにくいんだと、日本の少子化は女性が外へ出たからだと思われるとしたら、それは全く逆です。女性が両立できている国、これは右上のところです。スウェーデン、アイスランド、デンマーク、ノルウェー、スイス、そしてフランス、アメリカ合衆国、こちらは出生率が高いんです。逆に、左下、日本、韓国、イタリア、ギリシャ、スペイン、ここは出生率が低いんです。つまり、二者択一を迫られると、有業率も低くなるし、出生率も低くなる。当然ですよね、個人的選択肢として。それが社会として現れているのが図三でございます。
この図を全国知事会の男女共同参画委員会の委員長として出したときに、皆さんが大変不思議がっていました。何でこうなるんだ。これを都道府県別に出しても、やはり同じ傾向でございます。
実は、職住が一致していた農業社会あるいは自営業の時代から、最初に近代化された、つまり職住不一致の雇用者の社会になり始めた七〇年代、八〇年代では、全国の、また全世界の傾向は逆でした。仕事の有業率高い国が出生率が低くなってしまう。それが、後期近代化の中ではこういうふうになっているということ。
日本はここで出遅れてしまっているわけです。海外で仕事をしてきて、日本に帰ってきた経営者の中にも、日本の会社の女性取締役の少なさ、異様に感じております。具体的に、ある家電メーカーの社長さん、Nさんですけど、イギリスやアメリカで仕事してきて、日本に社長として戻ってきたときに、余りに、家電メーカーでありながら一人も女性取締役がいないことにびっくりして、そして、彼は女性かがやき本部をつくり、女性たちが求める製品要求が幾つか出てまいりました。斜めドラム洗濯機、掃除が不要のエアコン、これは技術者からは、つまりプロダクト・アウトの側からは不可能だと言われながら、社長命令で結果的には開発をして、そして、かなり経営が厳しかったところ、起死回生の企業の経営改善に役立っております。
言うまでもなく、製品開発、サービス開発の中で大切なのは、消費者が何を求めているかというマーケット・インの発想です。しかし、日本の企業体質はプロダクト・アウト。これは別に男性女性差別するわけではないんですけれども、プロダクト・アウト、男性得意です。家を造るのもそうです。あるいは、プラモデルを組み立てるのもそうです。じゃ、その家をどう使うか、あるいはそのでき上がった製品をどう使うかというのは、どちらかというと女性が得意です。傾向の問題ですけど。今や、食料品、衣服、住宅などだけでなく、例えば車でも製品選択時には女性意思が強く反映される比率が高いというデータもあります。
そういう中で、先ほど来、女性参画の問題、これは企業側にもインセンティブがないといけません。企業も女性を参画させる方が企業成績良くなるんだというようなことで、内閣府の男女共同参画官にお尋ねしますけれども、企業の女性活用に取り組む程度と経営指標の相関関係を示すデータ、日本社会であるでしょうか。お願いいたします。
○政府参考人(伊藤信君) お答えいたします。
女性活躍に取り組む程度と経営指標の相関関係を示すデータといたしましては、例えば民間の調査等におきまして、女性管理職の比率が高いほど増収率や自己資本利益率、ROEが高いなどのデータが示されているところでございます。
また、必ずしも統計的に日本企業の女性活躍に取り組む程度と経営指標の相関関係を示すものではございませんが、女性活躍に優れた上場企業を魅力ある銘柄として選定する取組として経済産業省が東京証券取引所と共同で実施しているなでしこ銘柄におきましては、選定企業四十二社について試算した株価指数がTOPIXの推移と比較して高い傾向が見られているものというふうに承知をしてございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
そのなでしこ銘柄選定企業の指標とTOPIXの比較、図二で今日お出ししておりますけれども、平成二十二年頃はほとんど差がないんですが、その後だんだんに差が開いてきて、なでしこ銘柄がTOPIXでの評価も高い、株式市場での評価が高いということ。ですから、企業の経営者自身もこういうインセンティブを持っていただくことが女性参画にとって大切だろうと思っております。
この中で、このなでしこ銘柄で、女性取締役の比率、これ、加点するということにはなっているんでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(伊藤信君) お答えいたします。
まず、なでしこ銘柄の選定におきまして、女性の取締役が一名以上いることが選定のスクリーニング要件として設定されているというふうに承知してございます。また、加えて、今年度からは、女性取締役の登用の更なる促進を図る観点から、女性の取締役が複数名おり、かつ女性取締役比率が一〇%以上の企業につきましてはより高いスコアを付与されるということになるものと承知してございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
実は私も知事時代に、女性の係長、課長、そして部長を言わば増やそうとしたんですけど、実はなかなか、内部の職員は三十年、四十年の蓄積ですので、また尻込みしたりとか、あるいは、行政の中ではいろんな議会があります、議会の委員会対応などで、国の方は余りないようですけれども、女性の係長や課長などにはかなり厳しい質問が出るというようなところで、途中で挫折する女性の方も多かったので、私自身は本当にじくじたる思いがございました。
そんなところで、今後、日本で企業が女性活躍を積極的に進めていく、先ほどから高良委員とそれから森大臣のやり取りございましたけれども、その方策、どのような政策が可能でしょうか。お願いいたします。
○政府参考人(伊藤信君) お答えいたします。
まず、安倍内閣におきましては、女性活躍の旗を高く掲げまして強力に取組を進めてまいりました結果、平成二十四年以降、上場企業の女性役員数は三・四倍になっておりますほか、民間企業の女性管理職の比率も着実に上昇してございます。
この安倍内閣で推進してまいりました女性活躍の流れを更に力強く推進してまいりますために、さきの通常国会で成立した女性活躍推進法の一部改正法におきましては、一般事業主行動計画の策定義務や情報公表義務が現行の常用雇用者三百一人以上の企業から百一人以上の企業に拡大されることになりまして、これは現行の約三倍の企業において女性の継続就業や登用などの取組が計画的に進められるということになります。
また、この改正女性活躍推進法の着実な実施のほかに、企業における女性役員登用状況の見える化の推進、あるいは女性役員候補育成のための研修、企業と人材のマッチングの土台となる女性人材のリスト化、機関投資家等が企業の女性活躍に関する情報をESG投資においてどのように活用しているかについて調査しましたその調査結果の企業等への情報提供などによりまして、女性役員の登用を加速してまいりたいというふうに考えてございます。
さらに、女性活躍推進に積極的に取り組んでおります男性経営者等によって策定、公表された輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会の行動宣言というのがございます。これの賛同者ミーティングの開催や先進企業表彰などによりまして、好事例の発信を行い、企業における女性活躍の機運を更に高めてまいりたいというふうに考えてございます。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
改めて図四を見ていただきますと、本当に暗たんたる思いがいたします。女性の役員割合、日本は五・三、韓国はまだ二・一です。一方のフランスは四三。これをどうやって上り詰めていくのか。それは結果として日本企業の国際競争力を高めることと並行できると思いますので、国家を挙げてよろしくお願いいたします。
次に、今回の法務委員会で一貫してお伺いをしております離婚後の子供の最善の利益を実現するための方策でございますけれども、法務大臣に質問させていただきます。
午前中、櫻井委員も、子どもの権利条約が法的拘束力がないから実現できていないじゃないかということを、かなり現場に即して見事な御質問をなさっておられました。私もそれは本当に現場から感じております。
それで、今日のテーマとしては、協議離婚制度そのものをもういよいよ見直さなきゃいけないんだろうと思います。日本では、協議離婚、平成二十年度のデータですけれども、今、離婚のうち八七・八%、九〇%近い、つまり十組が離婚すると九組近くが協議離婚。もう少し分かりやすく言うと、判こ一つで離婚できてしまうんです。家庭裁判所も弁護士も介在できずということでございます。
そして、これも午前中櫻井委員が、なぜ養育費が払われないのか、要因をちゃんと追求しないと対策立てられないだろう。そのなぜの中に二つ、一つは経済の問題ですけど、もう一つは相手と関わりたくないと。そりゃそうです、離婚の状態まで行くんですから、お互いに関わりたくないので、子供のための養育費などを言わば議論するというその場ができていないわけです。そこで放置されるのは子供です。
ですから、ここで、例えば、私、テネシーのペアレンティングの例も申し上げました。また、アメリカ辺りでは、離婚のときに、養育費の支払、それからペアレンティング、単なる面会交流ではなくて、親として一年間三百六十五日どういうふうに過ごすのか、そして、いざ教育の中身は、あるいは医療の中身はということ、全ての領域で計画をする。つまり、養育計画がないと法的に離婚を認めないというような州がアメリカでも多いわけです。ヨーロッパでもそうです。
そういう中で、言わば協議離婚制度そのものを認めないというような法的な方向が可能かどうか。そして、その場合には、私も自治体の仕事を見てまいりましたので、今、離婚の窓口は市町村の事務です、市町村の事務の強化と、そこと家庭裁判所をつなぐとか、あるいは弁護士をつなぐとかいうような形で、かなり法的には大きな立て付けが必要と思われます。家族法を変えながら、関係自治体、また関係者の中での議論が必要と思いますので、この辺りを法務大臣の御意見を伺いたいと思います。もちろん、DVあるいは薬物の問題などがあるときには、それはまずは防がないといけません。
もう一つ質問がありますので、できましたら、法務大臣、短めに回答いただけたら有り難いです。勝手申し上げます。よろしくお願いいたします。
○国務大臣(森まさこ君) 嘉田委員にお答えいたします。
平成二十八年度の全国ひとり親世帯等調査の結果によれば、協議離婚の場合には、調停離婚、審判離婚及び裁判離婚の場合と比べて面会交流や養育費の取決めをしている場合が低くなっており、協議離婚については委員御指摘のような問題があるものと認識しております。
このため、法務省としても、未成年者の父母が協議離婚をする場合に、父母に対して面会交流や養育費の重要性等の情報を提供することが重要であると考えております。
このような観点から、法務省では、平成二十八年十月から養育費、面会交流に関するパンフレットを作成し、全国の市町村等において離婚届の用紙と同時に配付するという取組を行っております。
また、家族法研究会では、協議離婚の際に、養育費や面会交流の取組が確実にされるように、例えば未成年者の父母については、協議離婚の要件を見直して、養育費や面会交流についてのガイダンスを受講し、又は養育計画を策定しなければ離婚することができないとすることの当否等についても議論される予定であると承知しております。
もちろん、委員御指摘のように、DVや薬物依存等についても、併せて考慮しなければならない要素の一つであるというふうに考えております。
法務省としては、引き続き、研究会における議論に積極的に参加をしてまいりたいと考えております。
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
養育計画がなければ離婚を認めない、例えばこれくらいの法的な介入が必要だろうということを是非とも家族法の研究会で前向きに議論いただけたらと思います。
最後の質問ですけれども、二〇一五年の桜を見る会、ジャパンライフ山口元会長が招待されていた問題でございます。
この悪徳マルチ商法で、被害者は七千人、総額二千億円。本当にもう人生、ためてためて無理をして、そのお金を取られてしまってこの後どうしたらいいか分からないという被害者の切実な声、私どもは聞いております。
さて、十一月二十九日なんですが、参議院の地方創生及び消費者問題特別委員会における共産党の大門議員の質疑では、消費者庁は、二〇一三年頃からジャパンライフの悪質性を把握し、調査を進め、二〇一三年十月には被害拡大を懸念する予備調査報告書が出され、そして二〇一四年五月には当時の対策課長が早く対処するべきと立入検査などの準備をしていた。しかし、その指示があった直後の七月四日に課長が交代させられ、あるいはさせたのか、立入検査の方針が変更になったということです。実は、この二〇一四年七月三十一日の対処方針を決めた会議での配付文書には、本件の特異性、政治的背景による余波を懸念などの文字があったとされております。
森まさこ法務大臣は、二〇一二年十二月二十六日から二〇一四年九月三日まで消費者及び食品安全担当の内閣府特命大臣に赴任しておられます。
この言わばジャパンライフの問題が特異的で、政治的背景を配慮されるような問題だった。ちょっとモリカケ問題を思い起こさせるんですけれども、森法務大臣にお尋ねいたします。
二〇一三年十月、予備的調査報告書の存在、あるいは二〇一四年七月三十一日の会議で要回収の文書が配られたということ、ここには政務三役に報告するべしという記述があったということですけれども、この文書について御存じでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) お尋ねについては、法務大臣としては、法務省の所管外の事柄でありますので、法務大臣としてのお答えは差し控えざるを得ないんですけれども、私自身が消費者担当大臣であったということで私自身のこととして申し上げますと、お尋ねの予備調査報告書の存在及び配付文書については、今そのお示しもされていない段階でございますが、今聞いた限りでは承知をしてございません。