20191128法務委員会(午前)【完成稿】

令和元年十一月二十八日(木曜日)午前 法務委員会

○嘉田由紀子君 会社法についてまず質問させていただきます。
私が今回取り上げたいのは、四百三十条の二と四百三十条の三、会社補償に関する改正案、特に役員等賠償責任保険契約に関する改正案でございます。
私、知事を経験をしているときに一番周囲が心配をしていたのは、様々な事業をやめるときのその補償、それが最終的に例えば知事個人に損害賠償という形で来るというのが、かつての例がございます。例えば、京都市長がゴルフ場を止めたときに数十億円、それから国立市の市長さんが景観条例で、いろいろ行ったり来たりあったんですけれども、数千万円の個人補償と。
これについて今、行政の方では保険を掛けておりまして、そしてその保険料は個人的に支払っております。行政でもそうであるのに、今回のこの会社法の言わば改正によりますと、この保険料の負担を取締役等の役員が免れると、改正によって言わば個人的負担が軽減されるということなんですけれども、これをどう認識しているのか。
特に、役員と会社、利益相反の関係にあります。そして、その理由が役員等にインセンティブを付与し職務の執行の適正さを確保するためとされておりますけれども、果たして、今もずっと議論になっておりましたこの改正によって国際的な人材あるいは優秀な人材を引き付けることができるのかというようなところを含めて、これは局長さんの方で結構ですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
まず、利益相反の観点でございます。
株式会社が取締役等との間で補償契約を締結することや、株式会社が保険会社との間で取締役等を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結することについて、取締役等と株式会社との利益が相反する側面があるというのは、これは御指摘のとおりでございます。
こういった利益相反性に鑑みますと、この補償契約やこの役員等賠償責任保険契約の内容の決定手続につきましては、会社法の利益相反取引の手続に準じたものとすることが相当であると考えております。そこで、改正法案におきましては、利益相反取引の承認と同様に、これらの契約の内容を決定するには取締役会の決議を要することとしております。
また、改正法案が成立した場合には、これに合わせて法務省令を改正いたしまして、これらの契約に関する一定の事項を株主に開示させることで、また利益相反等の懸念される弊害に対処することとしております。
また、役員等にインセンティブを付与するというようなことができるのかということでございます。会社補償や役員等賠償責任保険は、役員等がその職務の執行に関しまして第三者から損害賠償請求を受けることとなるなどによって、役員等に生ずる費用等を一定の場合に株式会社や保険会社が負担するものであります。
そういったことによりまして、役員等がその職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うことを過度に恐れることによって職務の執行が萎縮するとか、果断な経営判断を行うことができるということで役員等に対して適切なインセンティブを付与するという意義が認められることだと考えております。
また、外国、特に米国等におきましてはこういった会社補償が一般的に認められているところなどを踏まえますと、こういった制度が適正に運用されていることは、国際的な人材や優秀な人材を我が国に招聘するために必要な要素の一つになるものと考えているところでございます。

○嘉田由紀子君 そのような方向に行くことを望んでおりますけれども、今回ずっと議論がありましたように、会社というのは本当に社会的存在でございます。そういう中で、先ほど来の女性参画、女性の言わば国際的な地位、日本の場合には健康、教育はかなり地位が高いんですけど、政治と経済は本当に取り残されております。今、高良議員が質問してくださったとおりです。
私もいろいろかつてデータを集めたことがあるんですけど、女性参画度の高い企業の方が収益、あるいは社会的なビヘイビアが収益とともに大変いいという評価は幾つか出ております。そういうものも活用いただいて、それから環境への配慮ですね。今、電力会社の問題も含めて、また午後の議論にもなると思いますけれども、この地球環境というのはまさに人類の共有財産ですから、そこに対して公的な企業が責任を持つということは大変大事なことだと思っております。これはコメントとして言わせていただきます。
私の方は、一貫して今回は、離婚後の子供の言わば暮らしと、そして生活水準を維持するためということで共同親権のお話をさせていただいておりますけれども、両親が離婚後に子供が別居している親と交流を持つ、面会交流あるいはペアレンティングと言っていますけれども、この結果を心理学なり、あるいは様々な社会学的なところで調査をするというのはかなり難しいんです。
海外ではかなりあるんですけれども、日本の例では余りないんですけれども、実は有り難いことに、小田切紀子さんたちが、大学生六百三十四名を対象にして平成二十八年に論文を出しております。ここでは、離婚後の親子関係及び面会交流がスムーズで満足度が高い学生さんは親への信頼度が高く、そして自己肯定感も強く、また周囲の環境への適応度も高いと、さらに積極的な他者関係ができているというような結果もございますけれども、ここについて、面会交流の心理学的な、社会的な重要性などお伺いできたらと思います。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
父母の離婚後の子の養育の在り方につきましては、今委員御指摘の面会交流に関する研究も含めまして、国の内外において様々な観点からの研究がされているということは承知しております。
法務省といたしましても、一般論として、父母が離婚後も、父母の双方が子供の養育に関わることが子供の利益の観点から重要であると考えていることは、これまでも何度も申し上げさせていただいてきたとおりでございます。
父母の離婚後の養育の在り方につきましては、現在、法務省の担当者も参加しております家族法研究会において議論されている状況でございますが、委員御指摘のこの面会交流の重要性、こういった点も踏まえまして、どのような法制度が子供の利益にかなうのかを多角的に検討する必要があります。そのための様々な分野の実証的な研究についての情報集積、こういったことを引き続き行ってまいりたいというふうに考えております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。研究会への期待というのはもうかなり、十回近く伺ったと思いますけれども、その中に、大変重要な分野ですので、明示的に入れていただきたいと思います。
さて、この面会交流と、あるいは養育費ですけれども、二〇一一年、平成二十三年、民法七百六十六条、ちょうど民主党政権さんの江田法務大臣がかなり前向きに民法改正してくださいまして、七百六十六条に面会交流と養育費の支払の重要性を入れていただきました。
そして、この後、この七百六十六条改正で、家裁、つまり家庭裁判所が具体的に変わったのかということで、家裁通信簿というのを関係する家裁を活用した方たちが出しております。その家裁通信簿によりますと、裁判所はほとんど変わっていないという意見が八〇%。つまり、面会交流、特に面会交流について前向きに受け止めてくれていないということでございます。
三点申し上げます。裁判所関係者が親子交流の断絶期間の影響度に関して無理解で他人事だと。二点目は、監護者の主張する対応に終始するばかりで、面会開始まで非常に時間を要する。さらに三点目ですけど、裁判所が勝手につくり上げた相場観で月一回の最小面会に落とし込まれるという、この三つの理由で裁判所が変わっていないということを訴えておられます。
そしてさらに、家庭裁判所の調査官は、親子再統合、仕事してくれていると感じているかどうかという質問には、たった九%しか感じていると答えておりません。つまり、二〇一一年のあの民法改正は何だったのかということが大変関係者の間に疑問が持たれているわけでございます。
これについて、家庭裁判所、どのように、特に裁判の関係、お考えでしょうか。見解をお願いいたします。

○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
委員御指摘のような御意見があることについては承知をしております。家庭裁判所におきましては、民法七百六十六条一項の趣旨を踏まえ、子の利益を最も優先して適切な面会交流の取決めを行うことが重要であるとの認識の下で、個々の事案の実情を踏まえまして、手続の早期の段階から同居親の理解を促すとともに、自主的な取決めがされるよう働きかけを行っているものと承知しております。
今後とも、子の利益にかなう面会交流の取決めが実現されるよう、最高裁判所としましても、裁判官、家庭裁判所調査官等が参加する各種協議会、研究会等の場におきまして面会交流事件の審理の在り方などについて更に議論を深めるなど、必要な支援を行ってまいります。

○嘉田由紀子君 裁判所の現場の実情、しっかりと調べていただいて、そして当事者が満足できるような、そういう方向に持っていっていただきたいと思います。
そのためにも共同親権という大きな枠組みの変更が必要だと思いますけれども、この面会交流に関する取決めをどうその実効性を確保していくのかというところで、より具体的な方向、法務省さんの方でお願いできますか。

○政府参考人(小出邦夫君) お答え申し上げます。
面会交流の取決めの実効性という御質問でございますが、面会交流に関する取決めが公正証書によってされ、又は調停でされている場合に、子を監護している者が面会交流に協力せず、取決めの内容を実現することができないときは、子を監護していない者は、面会交流について強制執行の申立てをすることができるわけでございます。
もっとも、この面会交流を求めて強制執行の申立てをしたにもかかわらず、強制執行が奏功しなかったなどの理由で実際に子供と会うことができない方がいらっしゃることも承知しております。
また、子供を実際に監護している親のうちに、面会交流について協力的になれない方の中には、面会交流そのものを拒むわけではないものの、第三者の支援を得て面会交流を実施したいと考えている方がいるという指摘もございます。これまでも申し上げてきたとおり、家族法研究会では父母の離婚後の子供の養育の在り方について議論がされておりますが、その中では面会交流の促進も論点として取り上げられるものと承知しておりまして、その中でも、今申し上げました面会交流を支援する団体との連携の在り方等についても議論の対象になり得るものと考えております。
法務省としても、この家族法研究会における議論にしっかり参画してまいりたいと考えております。

○嘉田由紀子君 今日、お手紙をいただいたんですけれども、この間、十一月の二十六日に、共同親権運動をしていらっしゃる方たちが訴訟を起こしたということをここで取り上げさせていただきましたけれども、千葉県の七十歳、七十八歳のあるおばあちゃん、祖母ですけれども、息子の子供、別居して、そして家裁で六回審判したけれども、結局、面会交流、月一というその相場観、そして母親の方に監護権ということで、ほとんど実態を聞いてもらえずに、もう決まったルートで審判をもらったということで、大変不安に思っておられます。というのは、母と子の関係が余り良くないというようなことを心配をしておられるんですけれども、例えばこういうふうに、今、国民の皆さんの間でも本当に当事者がたくさんおられるということで、是非裁判所の方も次の一歩を踏み出していただけたらと思います。
そして、四点目の質問ですけれども、具体的にこの共同養育支援を進めていくには、離婚届を取りに来るのは市町村の役場ですね。ですから、市町村の役場がそのときにどれだけ言わば共同養育なりあるいは面会交流のことを広げていけるのかということで、この辺り、自治体との協力関係、どうなっているでしょうか。よろしく御見解をお願いします。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
委員御指摘のとおり、未成年者の父母が離婚する際に、面会交流や養育費の分担等、子供の監護について取決めをすることの重要性、これを父母に周知するためには、離婚届に関する業務を担当しており実際に当事者の方と接する地方自治体との連携、これが重要であると考えております。
法務省では、平成二十八年十月から、養育費、面会交流の重要性及び基本的な法的知識の解説や、実際に取決めをする際に参考となる合意書のひな形及び記入例などを掲載したパンフレットを作成いたしまして、全国の市区町村において離婚届の用紙と同時に配付してもらっております。法務省から平成三十年度に全国の市区町村に配付したパンフレットの部数は四十五万部になっております。
法務省としては、引き続き、関係省庁や地方自治体とも連携して、父母が離婚をする際に子供の養育について取決めをすることの重要性について周知を進めてまいりたいと考えております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
離婚が毎年、今二十一万組とかいう数字でございますので、四十五万部、毎年広げていただいているということは、かなり必要な人たちに届きつつあると思います。
私、そのパンフレット見せていただきましたけれども、今の段階で言えることをきちんとまとめていただいていると思います。ただ、まだまだ単独親権の中でのパンフレットでございますので、この後、より共同養育を前向きに進められるような形で法的な改善をするところで、より一層自治体、そして何よりも一番の当事者の親御さんたちに届くように、今後、法律改正を持っていっていただけたらと思っております。
私の方、これで終わらせていただきます。

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