20191112法務委員会【完成稿】

令和元年十一月十二日(火曜日)法務委員会

【配布資料】20191112参議院法務員会(朝日新聞記事:養育費)

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。碧水会の嘉田由紀子でございます。
私も、参議院議員として初めての質問でございます。
改めまして、森大臣には、御就任おめでとうございます。滋賀県の知事時代に子育て政策や男女共同参画のところでいろいろ御支援をいただきました。改めて感謝申し上げます。
さて、私自身は、森大臣も言っておられましたように、家族の問題、特に子供に焦点を当てまして、両親が離婚した後、子供の養育の在り方や子供の生活、経済、その辺りのことを親権問題と絡めて質問をさせていただきたいと思います。本日、外務省、また厚労の皆様にもお世話になりますけど、よろしくお願いいたします。
実は、この問題意識を持ちましたのは、知事二期八年、そして大学の学長を三年やっておりました、その間に、本当に子供たちの貧困、また母子家庭の貧困の困難に直面いたしました。また、大学の学長で、毎月学生さんが言わば退学届を出してくるんですけれども、その理由の中に、授業料が払い切れない、母子家庭というのが本当に多かったんです。
そういうところを見て、改めて、日本では今、片親、単独親権制度の下で、両親が離婚した後、片親を失ってしまう二十歳未満の子供たち、毎年二十万人も増え続けているんですね。このことを何としても私は改善をしたいと思いまして、以下三点から、離婚後の親権に関わる問題について質問させていただきます。
まず一点目は、両親が別居あるいは離婚した後、社会的に不利な状況に陥ることがないような、そういう子供たちの利益を最優先にしていきたい。それから二点目は、これ午前中も議論ありましたけれども、児童虐待を防ぎ、子供が必要な教育受けられて、そして子供ファーストの社会、これもう日本中が課題になっていますけれども、それを追求をしていきたい。そして三点目は、子供の権利を主体として位置付けて、公的な機関、私的な機関も子供の最善の利益が得られるようにということで質問を組み立てさせていただきました。
まず、大きな一点目に、国際社会の流れとの対応で七点質問させていただきます。
これは、午前中も櫻井議員が、言わば事後対応ではなくて根本的なところを事前予防でやらなければいけない。また、先ほど山添議員が、実は日本の民法は明治民法のいろんな名残が今も引きずっているという問題。そして、高良議員がおっしゃっていました、来年はそれこそ国際的な日本でのコングレスがあるわけですから、そういうところで、国際的な比較の中で日本のこの子供の在り方、考えるチャンスにしていただけたらと思っております。
まず一点目ですけれども、児童の権利に関する条約第三条一項では、児童に関する全ての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとされております。現在、多文化共生、日本、特に国際結婚も増えております。そういう中で、数多くの外国人が暮らす今の日本、また海外で結婚もし、子供を授かる日本人も増えている中で、国際社会の状況を踏まえて、日本の家族制度、どのような方向を目指すべきでしょうか。森法務大臣の御認識をお伺いいたします。

○国務大臣(森まさこ君) 嘉田委員には、私が少子化問題担当大臣を務めている折に、滋賀県知事として様々な御貢献を賜りましたこと、御礼を申し上げます。また、一番最初の質問ということで光栄でございます。
御指摘の問題でございますが、我が国においても、在留外国人等の増加等に合わせて多文化共生が推進され、価値観の多様化が進んでいるものと考えております。また、これに伴い、我が国の家族の在り方、あるいはこれに対する国民意識にも変化が見られるものと認識しています。
その上で、我が国の家族に関わる法制度をどのようなものにすべきであるかについては、このような諸事情に加えて、我が国の伝統や文化を始め、様々な事情、また国民的な意識を総合的に考慮した上で判断する必要があるものと思っております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。総論的な方向をお示しいただきました。
二点目ですけど、今年の八月九日に、フランスのジムレー・フィネル法律事務所が国連人権理事会に対して、日本政府が児童の権利条約第九条第一項及び第三項に違反すると申立てがございましたが、これは承知していただいているでしょうか。外務省、いかがでしょうか。

○大臣政務官(尾身朝子君) お答えいたします。
本年八月、フランスの法律事務所が国連人権理事会に御指摘の内容を含む通報を行ったという旨の報道発表をしたということは承知しております。
国連人権理事会は、こうした通報に関する手続を定める決議において、様々な手続の段階を非公開としていることから、このような通報についてはこれ以上のお答えは差し控えさせていただきます。

○嘉田由紀子君 非公開ということで、残念ですが。
こちらがいただいている情報によりますと、日本人の親による子の連れ去りなどの犠牲者が毎年十五万件に達すると、大規模かつ信頼できる証拠のある一貫した形態の人権侵害に該当するという主張を行っておりますけれども、これに対して日本政府としてはどのような主張あるいは反論を行っているでしょうか。外務省さん、法務省さん、両方の御意見をお願いいたします。

○大臣政務官(尾身朝子君) 通報に関する手続は、先ほども申しましたが制度上非公開とされているため、関係国の主張も含め、お答えは差し控えさせていただきます。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
御指摘の申立てにつきましては、現在、法務省においてその内容を検討する段階にありません。今後、我が国の政府あるいは法務省としてどのような反論を行うかにつきましてお答えすることは困難でございます。

○嘉田由紀子君 それでは、行っていないということなんですけど、今後確認を行う予定はあるのでしょうか。特に、国際的に名誉ある地位を目指す日本としては、国連人権理事会からの通告を待たずに早急に確認するべきと思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(尾身朝子君) 日本は、対話と協力の姿勢に立って、国連等の国際フォーラムや二国間対話などにおいて、国際社会が関心を有する人権問題の解決や人権状況の改善を慫慂するとともに、必要かつ可能な協力を実施しているところでございます。また、日本は主要な人権諸条約を締結しており、その誠実かつ適切な履行に努めてまいりました。
このように、日本は国連を始めとする国際社会と連携し、引き続き世界の人権の保護促進に積極的に貢献していく決意であるものの、御質問の通報に関する手続につきましては非公開とされており、事務局からの通告の有無を含めてお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
なお、一般論として申し上げましたら、人権理事会の事務局は情報秘匿を非常に重視しておりまして、関係国からの問合せに対する回答は行っていないということも承知しております。

○嘉田由紀子君 残念ですけれども、国民の前にそのことが明らかになるように御努力いただけたらと思います。
六点目に、今年の二月一日の国連児童の権利委員会で、児童の最善の利益である場合、外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正し、また、非同居親との人的な関係、直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保するという意見が出されておりますけれども、これに対して、今、法務大臣の御認識はどうなっているでしょうか。

○国務大臣(森まさこ君) 御指摘の児童の権利委員会からの勧告については、真摯に受け止めております。
父母が離婚した後であっても、子供にとっては父母のいずれもが親であることは変わりはありません。したがって、一般論としては、父母の離婚後も父母の双方が適切な形で子の養育に関わることは、子供の利益の観点からも非常に重要であると思います。また、子供の幸せが一番大事でございますので、それを念頭に、子供の利益が不当に侵害されることがないように、様々な意見、多様な意見にしっかりと耳を傾けていくことが重要であると思っております。
また、父母の離婚後の子供の養育の在り方に関しては、公益社団法人商事法務研究会において、民事法研究者、裁判実務家などを中心とした研究会が近く立ち上がる予定と承知しておりまして、法務省としても、この研究会に担当者を派遣し、積極的に議論に参加する予定でありますので、この研究会において、児童の権利委員会の勧告や委員の御指摘も踏まえて丁寧な検討がされることを期待しております。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
研究会のことも先取りして御答弁いただきましたが、またそれはちょっと後から追加させていただきますけれども。
昨年の平成三十年三月六日に駐日EU各国大使から上川法務大臣に対して提出された書簡では、裁判所によって監護権又は面会交流権、ペアレンティングタイムが認められたにもかかわらず裁判所の判断どおりに執行されていないとの懸念が表明されておりますけれども、この書簡で述べられた懸念に対する法務省の対応、あるいは森大臣の御認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(森まさこ君) それでは、重要な御指摘でございますので、まず法務省の対応について事務方から説明させます。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
御指摘のとおり、昨年四月にEU加盟国の大使らが法務省を来訪されて、当時の上川法務大臣に書信を手渡されたことは承知しております。また、その書信は、離婚した父母と子供の面会交流及び監護権を有する親への子供の引渡しに関する問題につきまして、関係当局間での対話と意見交換を求めるものであったと承知しております。
書信で指摘されている問題につきましては、子供の心身に与える影響等に配慮する必要があることから、我が国だけではなく、EU加盟国を含む各国においても様々な課題に直面しているものと認識しております。
我が国におきましては、御指摘の書信をいただいた後、民事執行法等を一部改正して、国内の子の引渡し及び国際的な子の返還の強制執行をより実効的なものとするための見直しがされたほか、現在も親子に関する諸課題について必要な検討をしているところでございます。
いずれにいたしましても、法務省としては、今後もEUを含めた諸外国等との間で外交ルートを通じた情報交換等を行いながら、相互理解を深めることが重要であると考えているところでございます。

○嘉田由紀子君 御丁寧な御回答ありがとうございます。
今、面会交流という言葉を使ったんですけど、これ、英語で元々ビジテーション、訪問する、あるいはコンタクト、最近はペアレンティングタイム、つまりペアレントをイングを入れて、親として養育をする時間という形になっておりますので、私自身は、ちょっと今、法的には日本で面会交流という翻訳にされているんですけれども、少し括弧書きでペアレンティングタイム、つまり養育を両方の親がやれる時間というような理解でいけたらと思っております。
次に、大きな二点目ですけれども、先ほど、既に森大臣から御答弁いただきました。河井前大臣が共同養育等研究会を発足ということでございましたけれども、その研究会ではどのような内容をいつまでに出されるのか。
実は、既に二〇一四年、平成二十六年に各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書というので、これだけの大変大部な報告書を出していただいております。私もしっかり勉強させていただいておりまして、ただ、私自身もアメリカで子供を授かり、そして各海外の皆さんとやり取りもしながら、本当に日本の状況、百人家族あるいは百人子供さんがおられると百人の当事者で意見が違うというようなところでございます。森大臣もまた自見様も、皆さん御経験と思いますけれども、そういう中で、この報告書にプラスアルファして、今回の共同養育研究会ではどういう内容をいつまでに期待をしておられるでしょうか。法務大臣からお答えいただけると幸いです。

○国務大臣(森まさこ君) 共同養育等研究会についての御質問をいただきました。
平成二十三年の民法等改正の際にも、衆参の法務委員会の附帯決議において、制度全般にわたる検討をすべきであるとの御指摘をいただいたところでございますので、法務省においてはこの附帯決議等を踏まえて外国法の調査等を進めてきたところでございますが、この度、父母の離婚後の子供の養育の在り方を含む家族制度の見直しの研究、検討のため、御指摘の研究会が立ち上がることになりました。
いつまでに何を検討するかということについては、事務方から回答させます。

○政府参考人(小出邦夫君) お答えを申し上げます。
御指摘のこの研究会における検討テーマの選定は研究会のメンバーに委ねられておりますため、現時点で検討に要する期間あるいは具体的なスケジュールをお答えすることは困難でございます。
また、研究会におきましては、父母が離婚した後の子供の共同養育の問題だけではなく、例えば普通養子制度や財産分与制度など、子供の養育を中心とした家族構成についてどういった制度が子供の利益に最もかなうかという観点から、多角的に検討を進めて広く議論されることになるものと考えております。
研究会の検討テーマは、このようにいずれも家族の在り方に関わる重要な論点でございまして、議論には相応の期間を要するものと考えております。研究会におきましては、まずは検討の方向性を定めずに、課題の選定と論点の整理が行われることになるものと考えているところでございます。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。時期は確定できないという御回答と理解をさせていただきますが、日々、子供たちは生まれ育っておりますので、できるだけ早く方向を示していただきたいと思います。
次に、子供の貧困の背景に養育費をめぐる状況がございます。本日、資料を皆様のところにお出しをしておりますけれども、厚労省さんが平成二十八年度全国ひとり親世帯等調査結果報告、出していただいております。細部のデータは、ここ見ていただきたいんですけれども、養育費を現在受けている母子世帯は全体の二四・三%、つまり四人に一人しかありません。
これ、滋賀県のデータでも類似のものが出ております。そして、滋賀県内のデータですけど、母子家庭の平均勤労収入二百三十四万円、父子家庭は四百八万円、五七%にとどまっております、母子家庭が。
母子家庭の一番の困難は生活費不足と教育費不足と、皆さんが口々に訴えておられます。こうした状況につきまして、法務大臣あるいは厚生労働政務官、どうお考えでしょうか。お願いいたします。

○国務大臣(森まさこ君) 嘉田委員が知事時代から母子家庭の問題に非常に取り組まれてきたことに敬意を表したいと思います。
離婚後に子供を扶養するために支払われる養育費は、子供が貧困に陥ることなく、心身共に健全に成長していくために極めて重要な意義を有するものであると認識をしております。
法務省では、養育費の取決めが適切に行われるようにするために、平成二十八年十月から、養育費等に関する合意書のひな形及び記入例などを掲載したパンフレットを作成し、全国の市町村で離婚届書と同時に配布をしたり、法務省のホームページに掲載したりするなどの周知活動に取り組んでいます。
また、法務省では、離婚届書の様式改正を行い、届書に養育費の分担に関する取決めの有無をチェックする欄を加え、平成二十四年四月からその使用を開始しております。
さらに、さきの通常国会で成立した民事執行法等改正法は養育費の支払確保にも資するものとなっておりまして、養育費の支払を取り決めたにもかかわらず支払われないという家庭を少しでも減らすため、施行準備や周知を適切に行ってまいりたいと思います。
法務省としては、養育費の不払により子供の健全な成長の機会が奪われることのないよう、関係省庁と連携して引き続きこの問題に取り組んでまいるとともに、さきに述べた父母の離婚後の子供の養育の在り方に関する研究会においても、養育費の支払確保の問題についてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

○大臣政務官(自見はなこ君) 一人親家庭の実態については、平成二十八年度全国ひとり親世帯等調査結果によりますと、母子世帯の母の平均年間収入は約二百四十三万円、平均年間就労収入は約二百万円となっているほか、一人親本人が困っていることとして、母子世帯のうち、全体の約五〇%が家計、約一四%が仕事と回答をしております。また、母子世帯のうち、全体の約二四%が支払を現在も受けているというふうに回答をしております。
こうした厳しい状況、現状を踏まえ、一人親家庭に対しては、就業支援、子育て・生活支援、養育費確保支援、経済的支援などの総合的な支援を実施する必要があると考えております。厚生労働省としては、引き続き、養育費の確保を含め、関係省庁と十分に連携を図りながら、一人親家庭に対する必要な支援を実施してまいりたいと存じます。

○嘉田由紀子君 政務官、ありがとうございます。問題意識は共通でございます。
さあ、そういうところで、海外の事例、よく聞かれることで、またこの報告書の中でも具体のデータはあるんですけれども、例えば米国の商務省の統計局では、監護権を有する親全体に対し、養育費の取決めをした者の割合は六〇%近く、また、カリフォルニア州の例ですけれども、法的共同監護であれば九六%に養育費の支払命令が出て、そして実施されているということでございます。
これは実は、先ほどペアレンティングタイム、面会交流と仮に申し上げましたけれども、この面会交流が十分に行われていることが養育費支払につながっている。例えば、支払う側でも、それこそ毎週とか毎月子供の成長する姿が見られたら支払うインセンティブも湧いてくるわけですけれども、この両者が強く連携しているというようなこと、法務大臣、いかがお考えでしょうか。

○国務大臣(森まさこ君) 我が国とアメリカとでは様々な点で法制度が異なりますので、単純な比較をすることはできないと思いますけれども、いずれにしても、我が国において養育費の取決め率や現実の支払率が低いことは極めて深刻な問題であると受け止めております。

○嘉田由紀子君 支払の低いことが深刻だという共通理解をいただきまして、ありがとうございます。
そういうところで、自治体がかなり突出して努力をしているところがあります。例えば兵庫県の明石市は、市長さんが弁護士で、子育てに大変力を入れておりまして、養育費立替パイロット事業を始めようとしておりますし、これ条例化するということです。それから、滋賀県の湖南市、また大阪市も、手続費用に対する補助事業を行っている自治体がございますけれども、このような自治体の動きを見て、国としてはどうお考えでしょうか。

○国務大臣(森まさこ君) 御指摘のとおり、兵庫県明石市において、養育費が支払われていない場合に民間の保証会社がこれを支払うこととし、自治体において保証料を支払うというパイロット事業が試行をされておりまして、私も市長にお電話をして伺ったことがございますが、類似の事業が大阪市や滋賀県湖南市においても実施されていることは承知しております。
法務省としては、養育費の支払に公的機関が関与する措置を講ずることについては、民事執行法改正の際の附帯決議の趣旨も踏まえて、関係省庁とともに検討をしてまいりたいと思います。
先ほども述べましたけど、養育費の支払が確保されることは子供の心身の健全な成長のために大変重要であると考えておりまして、地方自治体における個々の取組については個々の自治体の判断に委ねられておりますけれども、様々その参考にしてまいりたいと思います。

○委員長(竹谷とし子君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。

○嘉田由紀子君 はい、最後に一言だけ。
森法務大臣、そして自見政務官、尾身政務官、ある意味で、たまたまここで女性として、子育て経験の中で、大変問題意識が近いということが今日確認させていただけたと思います。次回以降は、なぜ、では日本ではずっと単独親権で明治民法の言わば影を引きずっているのか、そしてここにどうやったら子供にとって最善の利益になるような親権制度が生み出せるのか、次回、その点について展開させていただきたいと思います。
本日、どうもありがとうございました。感謝申し上げます。ありがとうございました。

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