○嘉田由紀子君
お願いします。
日本維新の会、嘉田由紀子でございます。
会派を代表しまして、災害対策基本法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
まず、坂井大臣にお伺いします。
今回の災害対策基本法を改正する社会的背景や全体の狙い、その意義について御説明いただけますか。
国際的に見ても災害が多い、まさに災害大国の日本にとって、政府が準備している防災庁は大事な組織と考えます。その実効性を高めるために、やや中長期的なマクロ政策の視野から、日本が直面している人口減少、高度経済成長期のインフラの老朽化、国家的な財政難という三つの悪条件を踏まえて、政府が進めている国土強靱化の具体的政策を含め、問題提起をしたいと思います。
この三月二十五日に参議院の災害対策特別委員会で既に議論いたしましたが、今計画している防災庁では、事前防災、発災時対応、復旧復興という一連の流れを系統的にたどれるよう、一気通貫の組織として、名称も防災復興庁にしたらと提案をいたしました。その中枢的役割を担うのが、今回法案で提案いただいている防災監と四十七都道府県の地域担当者です。
一気通貫の組織づくりについて、防災庁設置責任の赤澤大臣、どうお考えでしょうか。
これら三つの機能を具体的に担うシナリオを整理いたしますと、主体はどこが担うのか、行政は市区町村か都道府県か、個人なのか企業なのか事業主なのか、そして地域住民なのか。さらに、それぞれの主体はどのような役割を果たすのか。町の再生か、生業、経済の再生か、あるいはコミュニティーの再生。最後には、被災者の精神的な心のケアが必要と考えます。
その緻密なシナリオ作りが必要ですが、具体的な方向は地域によって異なります。阪神・淡路大震災ですと、周辺に仕事場があったので、雇用再生の優先度は低かったです。しかし、東日本大震災では、雇用、仕事自身が失われてしまったので、なりわいの再生が重要となりました。
地域条件の違いを反映して、事前に復興シナリオを埋め込んでおくことが重要と考えますが、赤澤大臣にお伺いします。
今回、能登半島地震での地震後の水道や下水道の復旧経過を見てみますと、例えば七尾市が特に遅れてしまいました。私も現場を見せていただきましたが、理由は、石川県営水道水源である手取川ダムがはるか八十キロも離れた遠い水、行政的、地理的、そして精神的に遠い水が広がっていました。もちろんこれは必要なんですけれども、一方で、また下水道を見ますと、し尿も下水道のシステムが破壊され、トイレも苦労いたしました。長い管渠に頼る上下水道は地震に本来的に弱いんです。
だからこそ、能登半島地震後の石川県からの要望、あるいは中央防災会議の報告書でも、上下水道の復旧、整備に当たっては、将来の人口動態、経済性、地域住民の意向など総合的に判断をして、浄化槽等の分散型システムの活用も含め、災害に強く持続可能な整備を行うべきと提言されています。小規模多機能化など、これまでの大規模広域上下水道システムに代わる対案、これを提示しております。昨年四月から上水道も厚労省から国土交通省に移管されました。上下水道を一体的に計画、整備できる素地がようやく整ってまいりました。
災害大国の日本としては、未然防災を埋め込むのが本来の国土強靱化です。五、六十年前の高度経済成長期に計画された遠い水に存在するダム、私はもったいないダムと言っておりますけれども、二つ具体的に紹介させてください。
一つは、長崎県石木ダムです。地元の治水効果がほとんどないだけでなく、四十キロ離れた佐世保市の水道水源として計画されております。水道の料金が上がるということも予想されます。
もう一つは、熊本県球磨川上流の川辺川ダムです。ここは、人の命を救う治水効果が少ないだけでなく、それこそアユの生態系を破壊するという問題もあります。
こういうところで、実は、国土交通大臣にお伺いしたいんですけれども、時代遅れの計画、全国に幾つあるでしょうか、具体的に計画名も含めて教えてください。それぞれの計画は、今後の人口減少、インフラの老朽化、財政難という三重苦の時代だからこそ、事業の必要性の再確認が今こそ必要だと思います。国土強靱化を担当する国土交通大臣に見解をお伺いします。
二〇二五年三月時点のデータでは、南海トラフの巨大地震では想定死者数最大二十九万人、被害額は二百七十兆円、首都直下地震では想定死者二・三万人、被害総額九十五兆円と試算されています。想像できない大変なことが起きるおそれがあります。
同時に、日本の財政の未来を考えますと、南海トラフ地震での二百七十兆円というのは日本の国家予算二年分にも相当します。私たちは今、一億円、二億円どう節約するかと議論しているときに二百七十兆円、気が遠くなる数字です。あわせて、国内総生産に対する政府総債務の比率は、国際的に見ても大変厳しい状態です、二五〇%です。こういう中で国債の格下げリスクも懸念されております。
南海トラフ地震、首都直下地震が起きたらいかに被害額を最小化するのか、国民一人一人に災害への備えを呼びかけていく必要があるのではないでしょうか。どのような手だてをしたら被害額はどれほど少なくできるのか。国民一人一人の呼びかけも含めて、具体的に坂井大臣のビジョンと覚悟をお願いいたします。
南海トラフ地震が起きますと、大阪湾岸にも津波が押し寄せてくることが想定されております。四月十三日に大阪・関西万博が開会しました。昨年十二月十六日の参議院予算委員会で、私自身、夢洲に防災対応の森林づくりを提案しました。そのとき赤澤大臣は、グリーンインフラを取り入れ、自然が有する機能を防災・減災に活用していく重要性とともに、防災庁の目指すべき方向性や必要な体制の在り方について、関西広域連合からの意見もいただき、令和八年度中の防災庁設置に向けて着実に準備を進めたいと答弁いただきました。
グリーンインフラの機能を盛り込んだ防災・減災は大変重要です。大阪・関西万博のベイエリアは、地理的に日本のど真ん中です。海上、陸上、そして航空基地の拠点でもあります。防災庁の片肺の役割を果たすことも十分可能です。夢洲を含むベイエリア全体の強靱化を図ることが、日本全体の広域的な災害対策の実効性を高め、未来志向の町づくりと両立する重要な方向と考えますが、赤澤大臣の御意見をお伺いいたします。
以下はコメントです。
一九七〇年の大阪万博では、跡地に多文化共生の拠点として民族学者の梅棹忠夫さんが中心となって国立民族学博物館が建設され、同時に、パビリオンの瓦れきを集めて土を入れ、水を流して、トンボやカエルが息づく緑の森づくりが構想され、五十五年後の今、皆さん、吹田の森を見てください。生物多様性を含めて見事な静けさの森が再現されております。
今、夢洲の今後のまちづくり構想では、世界最大の木造建築となった大屋根木造リングの一部を存置し、部材をリユースし、夢洲のアイコンとして静けさの森を夢洲の森づくりに進化をさせ、新しい魅力を付加する計画も提案されております。
大阪万博の人類の進歩と調和を経て、五十五年後の今、命輝く未来づくりのデザイン、大阪・関西万博の理念とレガシーを、私自身、琵琶湖辺に暮らしながら、環境文化、まさに仏教文化、草木国土悉皆成仏、草木も土も皆成仏できるという伝教大師最澄の教えが実現できるような環境共生の場をつくっていただけたらと思います。
地球環境問題への大変大事な一筋の道づくりを是非ここで実現していただけたらと、国土交通省さん、そして皆様にお願いしたいと思います。
ありがとうございました。以上です。失礼します。
○国務大臣(坂井学君)
今般の改正法案の背景、狙い、意義についてのお尋ねがありました。
昨年一月に発生した能登半島地震は、高齢化の進んだ半島地域という地理的、社会的な制約の下で発生したものであり、これまでの災害対応と比較しても困難な状況が見られたところです。こうした災害対応から得られた教訓を今後に生かし、次なる災害に備えていくことが重要であり、政府として幅広く検討を行ってきた中、法制上の措置が必要なものについて改正を行うものです。
第一に、国による災害対応の強化について定めることにより、災害対応に当たる被災自治体を国がしっかりと支援していきます。
第二に、福祉サービスの提供を災害救助法に位置付けることにより、福祉的支援の充実を図るとともに、被災者援護協力団体の制度を創設することにより、被災者支援の実績や知見を有するNPO等と連携したきめ細やかな被災者支援を実現していきます。
第三に、インフラ復旧復興の迅速化について定めることにより、能登半島地震で課題となった水道復旧や液状化被害等に万全な対応を期していきます。
これらの改正により、我が国の災害対応力を更に向上させてまいります。
南海トラフ地震等の被害軽減についてお尋ねがありました。
大規模地震による甚大な被害を軽減していくためには、国民、事業者、地域、行政が共に災害に立ち向かい、自助、共助、公助による防災対策を進めていく必要があります。
南海トラフ地震の被害想定については、津波による死者数は、早期避難率が一〇〇%になれば二十一・五万人から七割減、住家被害は、耐震化率が一〇〇%になれば全壊棟数が約百二十七・九万棟から七割減と見込まれています。
また、首都直下地震対策においては、建物の耐震化、感震ブレーカー等の設置、企業のBCP策定、サプライチェーンの強化などを推進することで、約九十五・三兆円の経済被害額をおおむね半減させる効果が見込まれています。
国としては、社会全体の意識啓発や津波避難施設の整備、インフラ、ライフラインの耐震化などの国土強靱化などの取組を関係省庁と連携し、一層加速してまいります。
国民の皆様には、被害想定を正しく理解し、自らの命は自らが守るという意識を持ちながら、住宅の耐震化や家具の固定、避難訓練や避難場所の確認等の津波への備え、一週間分程度の家庭備蓄の確保などの防災対策を呼びかけていくことが重要と考えております。
○国務大臣(赤澤亮正君)
嘉田由紀子議員から三問お尋ねをいただきました。
まず、防災庁における事前防災から復旧復興までの対応についてのお尋ねがありました。
委員御指摘のとおり、事前防災、発災時対処、復旧復興の一連の災害対応について、統一的な考え方の下で関係省庁が連携して対応をしていくことが重要と考えております。
このため、令和八年度中に設置する防災庁では、一連の災害対策の司令塔としての機能を担うため、専任の大臣を置き、十分な数のエキスパートをそろえる予定であり、現在開催している防災庁設置準備アドバイザー会議において、専門家の御意見をいただきながら、体制の在り方等について検討を深めてまいります。
また、防災庁設置までの間もできることから取り組む所存であり、今回の法案において防災監を設置するとともに、都道府県のカウンターパートである地域防災力強化担当が地域の自治体等との緊密な連携体制を構築することとしております。
地域条件に応じた復興シナリオの策定についてお尋ねがありました。
復旧復興に際しては、住宅やインフラの再建といったもののみならず、なりわいや地域コミュニティー、被災者の心のケアも含め、地域社会が再生するように取り組んでいく必要があると考えています。そのためには、議員御指摘のとおり、あらかじめ起こり得る被害を想定し、地域の特性を踏まえ、より良い復旧復興、ビルド・バック・ベターのための必要な対策を事前に講じておくことが重要と考えております。
防災庁では、平時、発災時の政府の災害対応の司令塔として、迅速な復旧復興に向けた事前復興計画の策定促進など、本気の事前防災に取り組むこととしており、現在開催している防災庁設置準備アドバイザー会議において、様々な御意見をいただきながら、必要な組織の在り方について検討をしてまいります。
グリーンインフラの機能を盛り込んだ防災・減災と、ベイエリアが防災に果たす役割についてのお尋ねがありました。
委員御指摘のとおり、森林の力を活用し、景観なども生かしたグリーンインフラという考え方を取り入れ、自然が有する機能を防災・減災等に活用していくことは重要であると考えております。
大阪・関西万博の跡地利用については、お答えする立場にはありませんが、大阪府及び大阪市において様々な検討がなされていると承知をしております。
防災庁の機能の一部について、その拠点をどこに置くべきか、また、防災庁本庁自体が被災した場合のバックアップや地域の防災力の強化をどのようにすべきか等については、各自治体から寄せられている様々な御要望をしっかりと受け止めつつ、様々な御意見、御提案を賜りながら、災害対策を最も効果的、効率的に実施できる体制はどのようなものかという観点から適切に検討を進めてまいります。
○国務大臣(中野洋昌君)
嘉田由紀子議員から、長期化しているダム事業についてお尋ねがありました。
事業着手後五十年以上経過し、現在も事業中である国土交通省所管の直轄・補助ダムの計画は、川辺川ダムなど五つでございます。
ダム事業の実施に当たっては、あらかじめ環境へ与える影響を予測、評価し、環境保全措置などを適切に実施をするとともに、事業実施中においては、社会情勢の変化等も踏まえ、有識者等から御意見を伺う事業再評価等を通じて、事業の必要性や効果を定期的、客観的に確認しております。
今後とも、国民の命と暮らしを守るため、コスト縮減に努めつつ、既存インフラの計画的な維持管理、更新などを図りながら、ダムを始め必要なインフラを整備をしてまいります。