Facebook 2023年5月29日「巨木と水源の郷をまもる会」(小松明美会長)主催のトチノキ観察会

5月28日、「巨木と水源の郷をまもる会」(小松明美会長)主催のトチノキ観察会に、息子修平と孫のさくらといっしょに参加をさせてもらいました。琵琶湖の西、安曇川源流部の高島市旧朽木村能家(のうげ)のスミガマ谷のトチノキは、急峻な傾斜地に胸高直径3メートルを超える巨木が5本、次々につながってはえている。周囲はスギ林、昭和30年代のスギの植林ブームの中で、地元の人たちが意図して残してくれた「奇跡の巨木」でもあります。先週の「全国トチノキ学ネットワーク」の講演会でも、トチノキは水が多いところに生えている、という森林生態学者の中静透さん報告通りの生息環境です。トチノキの足元からは琵琶湖源流の水が湧いています。5月28日。また長いです(2000文字)。
今回訪問した5本の巨木はいずれも、私の知事時代、2011年に始めた「滋賀県巨樹・巨木の森整備事業」で保存木に指定したもので、今、滋賀県全体で550本ほどにひろがった巨樹・巨木事業を始めた記念すべき地域です。2008年―2009年に海外からのトチノキ巨木需要に応じて民間業者が40本以上の巨木を伐採してしまったという報告が林業関係の県職員(Iさん、Mさん)を通じて、知事室に届きました。2010年の夏です。職員が知事に「直訴」で現場問題をあげるのは勇気が必要です。組織的にはやってはいけないことです。この職員の勇気に感謝です。というのは、当時、スギ・ヒノキを重視する林業職の間ではトチノキの価値はほとんど評価されていませんでした。正規の組織ルートでは報告されなかった現場の問題でした。
その最初の発見者は朽木桑原の栗本林業の栗本慶一さんでした。実は今日小松明美さん運転の車で帰る途中、栗本慶一さんがお宅におられたので立ち寄ったら、まさに今とれたばかりの新鮮な「とちはちみつ」が瓶詰されていました。それを分けていただき、琵琶湖畔の自宅に帰って「はちみつ紅茶」!至福の瞬間でした!栗本慶一さんがトチノキ巨木の価値に気づいていたのは、はちみつのような多面的価値を知っておられたからでしょう。今日、歩きながらトチノキ花の房も発見、写真に納めました。自然は暮らしにつながっています!
トチノキ巨木保全の出発点は、もともと個人所有の土地にある個人所有のトチノキの所有権が出発点です。所有者の方たちに、その価値を理解してもらわないと、いくら「水源林として大切」「生態的に大切」「文化的に大切」と言っても守りきれません。そこで2010年の夏、報告をあげてきた職員さんに、「地元のトチノキ所有者の方が、今後は伐採用に販売せず、保全をして次世代につなぎたい」という意思を表明してもらわないと県行政としての保全政策はできないと伝えました。地元の居住者の意識に根ざした「生活環境主義」の言い出しっぺの私の学者精神からは当然の要望でした。そして現場職員はそれに応えてくれました。
2010年10月15日、トチノキ保全要望を知事室にもってきてくれた時には、京大の河野昭一教授、植物研究者の青木繁さんといっしょに地元能家の伴正男さんが同席してくださり、「昔トチノミからトチモチをつくって食してきたその伝統を維持していきたい」と言ってくださいました。
「滋賀県巨樹・巨木の森整備事業」は、県民の皆さんが払ってくださった「琵琶湖森林づくり県民税」を財源に、「トチノキ所有者」と「保全団体」と「県・市という行政」の3者が協力・連携できる仕組みとしました。胸高直径3メートル以上の巨木の所有者に「保存金」を支払い「保存木」として指定し、民間団体が、巨木の巡視や管理、道づくりなどを行い、外部の人たちへのエコツアーを行います。今回は民間団体である「巨木と水源の郷をまもる会」が主催をして数名のスタッフが20名を超えるツアー客をお世話いただきました。谷川を渡り、急峻な崖をよじ登るための道づくり、ロープ設置など、事前準備をしていただきました。感謝します。
今回のツアーのひとつの隠れたねらいは「実生(みしょう)のトチノキ幼木の柵囲い」です。もともとたくさん落ちた実から自然に幼木がはえて世代をつなぐのですが、シカ害の中で、実生幼木が食べられてしまい、なかなか育ちません。このスミガマ谷には驚くほど多くの実生の幼木があります。ここに柵を囲って、様子をみようということです。人も、トチノキも次世代を育てることが生物としての宿命でもあり、また希望でもあります。今回のツアーは孫のさくらが中学生、また小学生の参加者もおられました。大学生は藤村太郎さんです。楽しみです。
またツアー最後は、焼き立てのトチモチのご馳走になりました。まもる会の河村良子さん、ありがとうございました。巨大なトチノミも集めておいてもらいました。藤村太郎さんにもってもらって記念写真。また針畑の地域づくりに精魂をそそぐ西川明夫さんが「山帰来」に来てくださり、ご自分で制作したトチノキ葉などをパウチにしたしおりや絵ハガキをいただきました。地元を愛する皆さんがおられるからこそ、トチノキ巨木林も次世代につながります。
最後に、私が2006年の滋賀県知事選挙で、6つのダムの凍結・中止方針をマニフェストにいれました。トチノキ巨木が生きる能家地域は、中止方針をだした「北川第二ダム」の水没予定地になる可能性もありました。今さら言うな!とダム推進の皆さんからは叱られそうですが、ダム中止を判断した政治家として、水源の森の保全は責任があります。水源林の保全こそ、「流域治水政策」の柱のひとつでもあります。本日、お世話をいただきました皆さんに感謝です。ありがとうございました。長い報告におつきあいいただき恐縮です。
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