Facebook 2019年11月1日 大学入学共通テスト 英語民間試験導入延期

11月1日、2020年度の大学入学共通テストから導入が始まるはずだった英語の民間試験の実施が突然に延期されました。今日から「共通ID」の受付がはじまるというその日に延期とは!受験生や高等学校関係者の混乱と戸惑い、そして文部科学省に対する不信感はどれほどでしょう。なぜこんなに急展開だったのか?表のニュースではほとんど語られていない、ここ数日の国会での野党連携の協力の成果であることを紹介させていただき、国民や国会の意思を無視した現政権の「ごり押しのツケ」が回ってきた結果では、と私なりの解説をさせていただきます。11月1日。また長いです(2000文字)。

英語民間試験について、萩生田光一文部科学相が1日の閣議後記者会見で延期を発表した理由は「全体的に不備があると認めざるを得ない。抜本的に見直し、高校生が平等に試験を受けられる環境づくりに注力したい」という。そもそもなぜ民間試験の導入なのか、民間試験で入試に本来必要な公平性が担保できるのか、最初から疑問は出され全国高等学校長会などからも「経済格差・地域格差の解消や、公平性・公正性の確保に向けて、制度の基本的な見直しを文科省で取り組んでもらいたい」と意見が出されていました。

民間試験導入の始まりは2013年10月の安倍内閣の諮問機関「教育再生実行会議」が財界の意見を踏まえてまとめた「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」提言です。2014年12月には提言を受けた「中央教育審議会」が、2020年度からの新学力評価テストの実施と英語の民間検定試験の活用などを答申します。しかしこの時の審議会のメンバーは公表されていますが、審議内容は非公表です。

この審議会にすでに民間メンバーがはいっていたということから、最初から「民間試験導入ありき」という姿勢は明らかです。安倍政権になってから、それまでの日本の自然や風土に根ざして守られてきた資源や文化的価値が軽視され、それらの価値と市場が海外資本を含む民間に開放されてきました。米麦大豆の種子は「種子法廃止」で海外の種子会社へ、飲料水は「水道法改正」で海外の水道会社へ、漁業資源は「漁業法改正」で民間会社へと、ことごとく民間活力導入、という規制緩和の流れの中で市場開放がされ、民間大企業や海外に資源が流出してきました。今回の入試への民間会社導入も財界の要求による入試市場の開放なのでしょう。

実は私自身、2014年から2017年まで滋賀県内の私立スポーツ大学の学長をしており、英語入試への民間検定試験の導入を文部科学省が推奨という方針を聞き、「入試に民間検定試験、公平性をどう担保できるのか!」と我が耳を疑うと同時に、小さな単科大学では英語入試の問題作成や採点にかなりの教員のエネルギーがさかれており、民間検定試験の活用を歓迎する意見もありました。一方、やはり公平性の担保が難しく、大学の自主性を放棄するものである、という反対意見もありました。

2018年3月には東大が民間試験を合否判定に使わないことを表明し、総合大学などでの自主的な意見が出てきました。19年7月にはTOEICが「責任ある対応が困難」とし撤退を発表しました。大学入試センターが7団体8種類の民間試験を認定し、具体的に試験会場や試験日時などの公表が進むにつれて、受験費用の高さや受験地が都市部に偏り、経済的負担の大きさや、遠隔地の高校生の受験機会の問題が出てきました。

しかし、9月に就任した萩生田文科相はあくまでも導入を前提として、10月24日に民法テレビ番組で「身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と発言しました。しかしこの「身の丈」という表現が、経済的格差や地域格差を容認するとして受験生や高校関係者を中心に批判が高まっていきました。

一方、10月の臨時国会から、立憲民主党、国民民主党、社会保障を立て直す国民会議と社民党の野党4党会派が共同会派をつくり、国会運営にあたってきました。政治とカネの問題の追及で、菅原一秀経済産業大臣は10月25日に辞表を提出。そして6日後の10月31日には河井克行法務大臣も同じく政治とカネの問題で国会での説明前に辞表を提出。

(実は10月31日に計画されていた法務委員会で、私自身子どもと家族の問題を河井大臣に質問する予定でしたが突然流れてしまいました!)。1週間の間にふたりの重要閣僚が辞表を提出し、安倍総理大臣は記者さんのぶら下がりで「任命責任がある」と表明するだけで逃げようとしていました。そこに荻生田文部科学大臣の「身の丈」発言。

河井大臣が退任した10月31日には、衆議院の共同会派や共産党の理事たちが共闘をして、菅原大臣、河井大臣の辞任について、また荻生田大臣の責任追及のための予算委員会の開催をせまり、それが11月6日(衆議院)と8日(参議院)で決まりました。また荻生田大臣の民間検定利用の延期もこの野党の追及の中で出されてきた対応でしょう。その結果、11月1日には国会内ですべての国会議員を対象にした緊急の会合が開かれました。200名近くが参加され、私も参加してきました。

この中で立憲民主党の枝野代表は「2人の閣僚が辞任し、安倍政権はたがが外れている。英語試験は公平性が担保される制度を作らせ、今の政治状況を変えていく」と述べました。国民民主党の玉木代表は「多くの高校生らの声を受け止め、成果が出た。力を合わせれば民主主義は動くことを国民に示すことができた」と述べました。共産党の志位委員長は「萩生田文部科学大臣には辞任してもらわなければならない」と述べ、社民党の福島副党首は「安倍総理大臣は任命責任を果たさないといけない。今回の事態は内閣総辞職に値する」と述べました。

来週の11月6日と8日の予算委員会での議論は是非とも皆さん、注視をしてください。そして、「お友達内閣」「忖度内閣」の中で2013年以降、国民や国会を軽視してきた安倍政権の国家運営について、このあたりで見極めをしていただきたいと思います。今回の大学入試における英語の民間試験導入をめぐる「ごり押しとそのツケ」を子どもたちが人生を賭けた学びの場に持ち込んでしまった事案は、民間への市場開放の弊害のわかりやすい例です。格差社会を助長し、地方を軽視する安倍政権の政策がジワジワと日本の伝統と価値をむしばんでいること、ここでじっくりと見極めて、今の世代として、自信をもって子どもたちに渡すことができる政治を取り戻したいものです。

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