20200226参議院資源エネルギーに関する調査会 参考人質疑【確定稿】

令和二年二月二十六日(水曜日)

資源エネルギーに関する調査会

○会長(宮沢洋一君) 原子力等エネルギー・資源に関する調査を議題といたします。
本日は、「資源エネルギーの安定供給」のうち、「エネルギーの安定供給」に関し、「我が国のエネルギーの安定供給」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
御出席いただいております参考人は、秋田大学大学院国際資源学研究科教授荒戸裕之君、関西大学社会安全学部教授小澤守君及び認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長飯田哲也君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じておりますので、よろしくお願いをいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、荒戸参考人、小澤参考人、飯田参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力よろしくお願いいたします。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず荒戸参考人からお願いをいたします。荒戸参考人。

○参考人(荒戸裕之君) 御紹介いただきまして、ありがとうございます。秋田大学の荒戸裕之と申します。本日は、このような機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。
スライドを中心に説明をさせていただきます。(資料映写)
この際に、簡単に自己紹介をさせていただきます。
私の専門は地質学でございまして、大学では、石油地質学、すなわち、油田とかガス田がどのようにして成立しているか、それから、どうやってそれを探すかという辺りのことを指導しております。
本日のテーマに向けて、我が国のエネルギーの安定供給というお題の中で、特に私が専門としております石油、天然ガスの安定供給について、地質学の立場から意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず初めに、石油、天然ガス資源の基本的な事項の確認でございますけれど、石油、天然ガスとは、定義で申しますと、地質学の立場からは、天然に地下から産する炭化水素の混合物というふうに定義されております。ここで言う炭化水素とは、有機炭素と水素を主体とする化合物でございます。石油、天然ガスはその炭化水素化合物の混合物でございますので、天然に産するときには一定の決まった組成を持つものではございません。
成因は有機成因説というのが主流でございまして、そのもとになった根源物質は、地質時代の生物遺骸、プランクトンとか、植物プランクトンとかあと陸上の高等植物とか、そういったものの体をつくっている有機物であるというふうに考えられております。
生物遺骸が海底等の地層の中に濃集して保存される場合がございまして、そうした地層を根源岩というふうに申します。地層の中の生物遺骸は、地層が地下深部に埋没するに伴って熱に長くさらされますと、有機熟成作用というものを受けましてケロジェンという物質に変化します。そのケロジェンから炭化水素の分子が発生し、分離してくると。その分離してきた炭化水素の分子は、隙間の多い地層の中、岩石中にしみ出して拡散していきます。拡散するんですが、一定の条件が整う場所がございますと、そこにトラップされて、長い地質時代の間に石油鉱床、すなわち油田、ガス田が形成されるというふうに考えられております。
以上を概念に表現したものがこの図、ちょっとビジーな図で申し訳ないんですが、全体を石油システムというふうに総称いたします。厚い地層が堆積する場所、これ堆積盆地と申しますが、そのある場所に根源岩がたまり、熟成し、炭化水素が排出、移動してきて、トラップに石油、天然ガスがたまる、これが油田、ガス田になっていくわけです。
現在までの研究ではこのように考えられておるのですけれども、どこにどれだけ賦存しているのかということをピンポイントで言い当てることができるかと問われますと、それはかなり難しいというのが現状でございます。
というのは、私たちが足を踏み入れたことのない地下深部の自然現象を取り扱っておりますし、長い地質時代を経た地質現象を扱っておりますので未解明の点も多々あるというのが現状で、というわけで、石油探査は、確立した技術としての面があるだけでなくて、今後解明されるべき科学としての面も併せ持つというふうに御理解いただきたいというふうに思うわけです。
さて、次に、エネルギーの需要予測、これは一般的なデータでございますけれども、これを見ていきたいと思うんですが、石油、天然ガスの安定供給のために、エネルギー需要の種類別の依存度を現状と将来予測で見てまいります。
直近の二〇一六年のデータ、これは八割以上が再生不可能エネルギーに依存している、石炭、石油、天然ガスなどの再生不可能エネルギーに依存しておると。そのうちの半分以上が石油、天然ガスであるわけです。それが二〇四〇年になる頃には、再生可能エネルギーの需要全体の二〇%程度まで賄い得るようになると。その分、石油、石炭、天然ガス、いわゆる化石エネルギーへの依存度が減少すると予測されております。
もちろん将来予測の前提にはいろんな見解がございますので、これ以外の予想も成り立つということは御承知のとおりです。しかし、これだけ見ても、石油、天然ガスのエネルギーとしての重要性は当面は揺るがないというふうに理解できると思います。
これ、同じデータを需要量というふうに量で見てまいりますと、二〇四〇年までに需要自体が三〇%も増加するというふうに言われておりまして、ですから、割合として石油、天然ガスの需要の割合は減るんですが、量として見たときには、今までよりも更に多い量が必要になっていくというふうにみなすことができるわけです。ですから、現在と同じかそれ以上の量の石油、天然ガスを供給し続ける努力をしないといけないという意味であります。
このような見通しを理解した上で、国のエネルギー基本計画は、石油を今後とも活用していく、天然ガスを役割を拡大していく重要なエネルギー源として位置付けております。
さきに確認してまいりましたとおり、石油や天然ガス探査は科学としての側面も有するわけですから、今後活用を続けていくためには、これまでの知識や技術の上に黙ってあぐらをかいているわけにはいかないと。
しかしながら、残念なことなんですが、エネルギー基本計画には、これら在来型の石油、天然ガス探査についての今後の施策については余り多くは述べられておりません。新たな技術開発や最新技術によるデータ取得の努力が続けられてきたからこそ、可採埋蔵量が維持されてきたということをよく理解する必要がございます。
では、石油、天然ガス資源について抱く私たちの懸念、第一に枯渇問題ですね、第二に地球環境問題、本日はこの地球環境問題は余り触れませんが、それともう一つ、我が国としては輸入依存問題があると。私たちはこれに対してどのように対応していくべきなのか、次に見ていきたいと思います。
ここにお示ししたのは、世界の石油の可採年数の変遷でございます。縦軸が年数、横軸が一九二〇年から今までの時間の流れを示しております。
一九二〇年代から四〇年くらいまでは大体可採年数は二十年程度と言われてきたものが、年を経るに従ってだんだん延びてきて、今は直近のデータで五十年というふうに言われております。なお、これは使った分以上に毎年新たに見付かっているなどの理由によります。
一時期、ピークオイル論というのがございまして、悲観的な見方もございましたけれども、その後、御存じのとおりのシェール革命とかそういったものがございまして、事態は一変したというふうに理解されます。
可採年数というのはどういうものかというのを一応、御承知とは思いますが確認しますと、分子の方に確認可採埋蔵量、今現在見付かっていて、これを取ることができると分かっている油の量を置きます。分母の方に、昨年末、十二月三十一日までに使った年間の生産量、これを置くわけですね。ですから、昨年と同じペースで使い続ければ見付かっている量は何年もつかという数字になるわけなんですが、実は様々な要因でこれは変動して大きくなったり小さくなったりします。
分子側が増える要因は、一つには技術の進歩、向上で新たなものが見付かっていく、あるいは油価が上がることによって開発可能な油田が増えていくというようなこともあります。
技術のその進歩、向上というのは例えばどのようなものであるかというのを少し考えていきたいと思います。
ちょっとごちゃごちゃした図で申し訳ありませんが、まず図の左上の方から御覧いただくんですが、この図は石油探査の在り方を歴史的に見たものでございます。
昔は、地表にしみ出した油を使っていたわけです。黙ってすくって使っていたわけですね。それがやがて、油がしみ出している場所を掘るようになるわけです。最初は手で掘る、要するに人が掘るわけですね。だんだん深くなっていくと、それでは間に合わなくて機械で掘るようになると。だんだん深部まで見ていくようになるわけです。
次の段階としては、地表に兆候のないところにおいても、この場所の地下に油があるに違いないと考えてそこに掘るようになる。その確認のために、地質学それから地球物理学的な手法が用いられるようになります。そうした技術の発展で、地下のより深部へ、それから陸上から海域へ、海域でも浅い海から深い海へと探査の領域が広がってまいりました。
例えば、約三十年前くらいの海域の探査というのは大体水深二百メートルくらいまでの大陸棚の上で行われていた、それが中心でしたけれども、現在でははるかにそれを超えて、水深三千メーターくらいのところまで探査が行われるようになっております。こういった状況は、在来型の油田、ガス田の探査技術の話でございます。
では、在来型だけでなくて、非在来型も含めた新たな技術とは具体的にどのような姿をしているものかということをこの図で、シェールオイル、シェールガスの例を地下の断面イメージで考えてみたいと思います。
この図の一番下側に黒い層がございますけれども、これが石油根源岩層、すなわち生物がつくり出した有機物が濃集している地層でございます。これが熟成帯、要するに、ある程度の深さまで埋没すると油が出てきて、更に深くまで埋没すると天然ガスが発生するということでございます。
油や天然ガスは、先ほども申しましたが、隙間のある地層の中にしみ出して、油、天然ガスというのは水より軽いですので、浮力で浅い方へ移動していきます。どこまでもそういう地層がつながっていればどんどん拡散するんですが、行き止まりの場所があるとそこに後ろから来たものが次々とたまっていく、これが在来型の油田、ガス田のでき方なわけです。
これに対して、この最初に説明しました黒い層の、この根源岩層の中に取り残される炭化水素というのも実はたくさんあるわけです、ということが以前から実は分かっています。この熟成根源岩からしみ出さなかった炭化水素、これを最新の技術で取り出したものがシェールオイルとかシェールガスと言われるものなわけです。
その最新の技術とは何かといいますと、地表から井戸を掘るわけなんですが、その井戸を自由自在に曲げて水平にも掘るという技術があると。これは、水平坑井とか大偏距掘削とか申します。それがまず一つ。もう一つは、坑井の中に大きな水圧を掛けて地下で地層にひびを入れる技術、これは水圧破砕、フラクチャリングというふうに言っております。この二つの技術があってシェールオイル、シェールガスが取り出されるようになったと。
ですから、全体の資源としての流れを見る限り、シェールプレイといいますけれども、シェールオイル、シェールガスは、在来型の油田、ガス田が形成される途中の段階の資源を利用するようになったものだというふうにみなすこともできると思います。
それをもう少し炭素のサイクルという観点から見てまいりますと、この図のようになっております。これは横軸が、右が発散、左が集積というふうに御覧いただきたいと思います。縦軸はサイクルの進行を示しております。サイクルというのは、石油、天然ガスを作っている主成分である有機炭素が無機炭素からできる、そしてまた無機炭素に戻っていく、そのサイクルのことを言っています。
在来型のプレイでは、この図の右上からスタートして、有機炭素が植物によって固定されて濃集し、一旦、根源岩層というところに、この左上の方の箱の部分に濃集されるわけです。そこでできた炭化水素は発散していく、ところが途中でトラップがあるとまた濃集すると、こういう段階を踏みます。ですから、最初の濃集を一次濃集というふうに考えますと、二番目の濃集が二次濃集でありまして、二次集積とも言っていいかと思いますが、ですから、在来型は二次集積の産物であると。それに対して、シェールオイル、シェールガスは一次集積の産物と。このサイクルで見ていくと、ある意味とても違うものを取り扱っているんだということになります。
こういったものが日本でどのくらいの余地で見ることができるのかというのを次のマップで御覧いただきたいと思うのですが、日本全体の産油ガス地を示しております。
日本海の東縁に当たる例えば秋田、新潟、山形、それに北海道の中軸部から東北日本の太平洋岸にかけて、そのほかに、関東、それに東海、九州と各地に広がっているわけです。これは何を示しているかというと、日本には石油や天然ガスが生成される地質学的な条件はそろっているんだということを示しているとも見られるわけです。
時間もありませんので、私の今の職場があります秋田の話とかはちょっとスキップさせていただいて。
日本に実際に幾つかある油田、ガス田で稼働しているものも当然あるわけですが、それが賄う、自給率ですね、はどのくらいかということなんですが、石油でいうと約〇・三%、天然ガスで三%というふうに言われております。少ないというふうに言えば少ないのですが、日本にも油田、ガス田、石油、天然ガスが賦存している、それが実際に稼働しているんだということを御理解いただければと思います。
それの探査というのは実際に続けられておりまして、資源エネルギー庁が実はある海域での調査をきっかけに導入した三次元物理探査船「資源」というものがございました。これ、日本周辺海域で基礎的なデータを収録してきているわけです。
どのくらいかというと、このマップの左と右、比較しながら御覧いただきたいんですが、資源エネルギー庁のワーキンググループによると、探査対象となり得る日本周辺の海域というのは大体どのくらいかというと、水深が二千メートル未満、そのほかに、海底面から厚さが二千メートル以上の堆積物があるエリアですね、そういう石油や天然ガスが生成していても不思議ではない海域というのがどれくらいあるかというのを調査して、これが約八十万平方キロを超えるとかなりの面積あるんだということが言われているわけです。
これに対して、先ほどの「資源」がどれだけ十年間で調査を行ったかというと、その海域は大体五万四千平方キロと言われていまして、可能性のある海域の六%程度にすぎないと。すなわち、探査対象の海域の大部分は十分な詳細な探査がなされないまま余地として残されているんだと。それらのデータを取る必要があるというふうに考えるわけです。
もう一つ、よく言われるのがメタンハイドレートのことなんですが、メタンハイドレート、日本近海にこのように分布しているということが一応言われております。分かっているわけです。
メタンハイドレートも、先ほどの炭素サイクルの話で見ると、一次集積の産物というふうにみなすことができます。メタンハイドレートは今すぐに国産のエネルギー資源として役割を任せるという段階にはないわけですけれども、数十年先あるいはその先の将来のために地道な研究をやはり続けていく必要があるというふうに考えます。
そういったことも含めて、「資源」の後継機として導入された「たんさ」という船が引き続きデータをどんどんと収録するものというふうに期待されるわけですが、そのデータというのは何かというと、三次元地震探査というデータになります。これは、収録しただけでは石油、天然ガスの胚胎が特定できるわけではなくて、それに対して地質情報を加えて、石油地質学的に分析してやる必要があります。総合的な判断によってその海域の有望性を評価していくということが可能になるわけです。
そのためにはある程度の規模の技術者の集団が必要になります。日本の石油探査技術者、地質技術者及び物探技術者といいますが、正確に把握できていないんですけれども、大体規模として五百人くらいのスケールというふうに考えられています。この数が、例えばエクソンモービルとかBPとかロイヤル・ダッチ・シェル、それからシェブロンなどというスーパーメジャーがそれぞれ数万人規模の探査技術者を抱えていることと比べますと、余りにも少ないというふうに言わざるを得ないところです。
若い石油探査技術者を積極的に養成して、例えば、JOGMECなどの公的な組織を充実させるとか、産総研とか大学の研究組織をフル活動させて探査を引き続きやる必要があるというふうに考えております。
これ、最後の、まとめの前のスライドですが、自給率を今後大幅に上げるということはなかなか簡単ではないのですが、海外の産油ガス地において日本企業が開発に参画するいわゆる自主開発原油の比率、これを比較的早く向上させることは可能であろうというふうに考えております。ただ、これを担う民間企業に目を向けますと、技術者不足というのはやはり顕著でありまして、十分な検討体制を取れない場合もあるということで、これを補っていく必要があります。
また、民間企業が保有する開発技術といいますのは、自主開発原油の確保だけではなくて、資源外交のカードとしても重要だと。すなわち、産油国の油田開発への技術協力、それから産油国の技術者を育成すること、こういったものは自国が技術を持っていないとかなわないというふうに言えます。
まとめ、三つ書いてございます。今後とも活用していく、あるいは役割を拡大していく重要なエネルギー源、これを維持していく、そして確保していくためには、在来型資源の探査を引き続き日本国内、周り、あるいは世界で継続していき、増強していく必要がございます。我が国周辺の海域にはその余地はまだまだあるというふうに考えて構わないというふうに思います。これを長期的かつ粘り強い緻密な計画で立案して実施していく必要があると。
また、非在来型プレイの創出、これは新たなプレイタイプというものを創出し得るわけだと考えていますが、そのためには創造力あふれる有能な人材の育成が必要であると。そのことが、石油外交、技術者育成、技術協力を前提として日本の技術を高めるということにつながっていくというふうに考えております。
以上、雑駁でございましたが、私の意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。

○会長(宮沢洋一君) ありがとうございました。
次に、小澤参考人にお願いいたします。小澤参考人。

○参考人(小澤守君) 関西大学の小澤でございます。
私は、元々が機械工学、学部の名前は社会安全学部という安全問題を扱うところにおりますが、出身は機械工学でありまして、ボイラーとか原子炉とか、そういうところの技術に関係するような仕事、研究をやっておりました。(資料映写)
まず、一ページ目を開けていただきますと、これは経産省の資料でありまして、我が国の国際競争力の図面があります。
丸の大きさが日本が稼いでいるお金の金額に相当するもので、一番大きいのは自動車でありまして、その左側に医薬品とか等々あります。右の方にハイブリッドのグループがありますが、結局、日本の競争力を維持しようとすると、自動車も含めて鉄鋼とか重工、重電の分野が非常に強力でないと日本全体の経済規模を維持することはできないと。将来にわたって省エネとかそういうようなことを図ろうとするときに、日本は何で飯を食っていくのかということをよく考えた上で産業構造をつくっていく必要があるだろうというふうに思います。
だから、将来にわたって、例えば、CO2を削減するとかゼロにするとか原発をゼロにするとかいろいろな問題があると思いますが、そのときに、そこへの道筋をどう立てるかというのは非常に重要な問題であるというふうに思います。
半導体分野なんかではかつては日本は世界のトップクラスであったんですが、ほとんどが中国とか韓国、あちこちの国々に渡ってしまって、最近では、パソコンとかそういう分野も含めて、携帯なんか典型ですが、ほとんど海外にやられてしまっていると。例えば、デジカメなんかを見ますと、世界の中でのシェアは一〇〇%ですが、金額の額を見たりしていますとせいぜい一千億とか二千億ぐらいなものでありまして、非常に小さいものになる。
少なくとも、そういうことを維持しようとすると結局は、一番上に書いていますように、大型技術、基盤技術をしっかりしたものを持っていかないといけないと。私は、感覚的にはいわゆるエネルギー問題というのは、ある意味、日本の外交問題であり、同時に日本の国防問題であるというふうに思っております。
次のページを開けていただきますと、最近の、最近というか平成の十一年ぐらいからのエネルギー原単位、重化学工業の省エネがどういうふうになっているかというふうなことを表したグラフでありまして、一番下にありますのが、緑の業務部門全体、それから産業部門全体では青ですね、濃紺のグラフがありますが、要するに、数%ずつではありますけれども、全体としては省エネが行われているというのは間違いもございません。
さて、その次のページ見ていただきますと、日本におけるエネルギーの消費の割合で、縦軸がトータルのエネルギーでエクサジュール、十の十八乗ジュールというオーダーが書いてありますが、横軸に年度、一九六五年から二〇一七年までのデータでありますが、下の方の大部分が化石エネルギーで、非化石エネルギーが上の方にごく僅かございます。
原子力が一九七〇年頃から実用化されて日本国内で発電を開始しましたが、三・一一以降その分が非常に少なくなっていると。最近、その後、特に自然エネルギー、太陽光とか風力なんかが導入されてきておりますが、依然として、先ほど荒戸先生のお話にありますように、石油、天然ガス、それから石炭の重要度はかなり高いと言わざるを得ないというふうに思います。将来的にこの辺を、CO2の発生をゼロにするという方針を置くとするならば、それらをどういうふうに日本の経済の中で、あるいは日本のエネルギー問題の中で軟着陸させるかというのは非常に大きな問題だというふうに思います。
さて、次のページ見ていただきましたら、どの分野でエネルギーを使っているかというのが一覧表になっています。産業分野、業務分野、家庭分野、運輸分野と。
運輸に関しましては、結局、ガソリンであったり軽油であったりするのが、まあ船の場合は重油使いますが、オイルを主として使うと。要するに、体積当たりの保有エネルギーが大きいものを持っておかないと長距離の輸送ができないということがあります。そういうことがあって、程々の大きさがありますが、大体、全体としては横ばい状態。
それに対して、赤の線が日本のGDPの推移でありまして、GDPそのものはこれからどんどん上昇するかどうかは別として、ある程度のところに維持しようとするとエネルギーの量を確保せざるを得ないと。エネルギーとGDPの関係というのは非常に密接に関係しているというふうに言わざるを得ないというふうに思います。
先ほど、私のタイトルの中に、オイルと天然ガスを看板に挙げて、石炭の名前を入れておりませんが、その中で石炭の重要性というのは非常に高いというふうに私は思っております。先頃、CO2の発生とか環境問題等々で石炭に対する風当たりが余りよろしくないと。COPとかあちこちで日本は、何というんですか、石炭をまだ使用しているのでとんでもない国だというような評価をしている海外のところもありますが、それは広報の問題であって、石炭を捨てるということは僕は選択肢にはないというふうに思っております。
次のページを見ていただきますと、中東依存性が非常に高いというのが現状であります。
先ほどの荒戸先生のお話にありますように、日本近海にいろんな資源があるとは思いますが、それはまだまだこれからの問題であって、当面、これから二十年、三十年の間に中東依存性が軽くできるかどうかというのは非常に難しい問題がある。特に最近ですと、ホルムズ海峡はどうするかとか防衛省から護衛艦が行っているとかいろんな話がございますが、外交上の問題というのが非常に大きく作用すると。
そういう意味では、石油等に対するいわゆる政治上のリスクあるいは外交上のリスクが非常に高くて、これからも継続されるだろうと。そのときに、エネルギー、いわゆる化石エネルギーとして石炭そのものをどうするのかということを国としてしっかりと位置決めをしないといけないというふうに思っております。
次の絵は、太陽光発電で、大分資料は古いですが、二〇一二年のエネルギー・環境会議で出てきた資料でありまして、太陽光発電は例えば、皆さん御承知のように、本日ですと非常に発電量は少ないし、晴天で天気がいいとそこそこ発電はしてくれると。そもそも、太陽光から降ってくるエネルギーは一平方メーター辺り一キロワットぐらいあるわけです。ところが、雲があったり水蒸気があったりして、結局、地上に降り注ぐのはそれの三割ぐらい、せいぜい三割ぐらいしか入ってこないと。そうすると、しかも夜になると使えないというので、太陽光発電そのものに本当に将来性があるのかどうか、余り大きくすると大変なことになりかねない。というのは、要するに不安定な電源ですから、バックアップを持たないといけないと。
それは風力に関しても基本的には一緒でありまして、ヨーロッパの諸国のように偏西風がある一定の速度で大体ほぼ平準化されたような状態で吹いている国と、台風だとかいろんなことで大きな変動がある日本の状況で風力発電が主力になるというのは、かなりの蓄電池、いわゆるバッテリーであったり、平準化をする道具が必要だろうと。
最近ではスマートグリッド等いろいろな方法があって、それで言わばエネルギーをデジタル化する、それによって全体の平準化を図りというような方法もありますが、それが、いざという、いわゆる自然災害なんかが多様な、いっぱい出てくるような時代になってきますと、本当に機能するのかどうか。大きな災害がありますと、ネットワークシステムそのものが簡単に壊れてしまいますから、そういう電線で結ばれたような、あるいは無線で結ばれたようなエネルギーシステムというのはちょっと危ないところもないわけではないというふうに思います。
さて、次の絵を見ていただきますと、この辺は先ほど言うたものをまとめているもので、原子力が非常に少なくなっていますよということを表しているだけであります。
その次、太陽光の実質上の系統への接続がどのくらいかというのを表したのがこのグラフでありまして、これは二〇一五年のデータですから若干これから変動しているかもしれませんが、それぞれの電力会社はバックアップを取らないといけないということから、接続可能量には現状では限界があるよということを表しているだけであります。
次、開けていただきますと、そもそもエネルギー、いわゆる熱を使った発電というのはどういうものかというのを漫画的に表したものがこの図でありまして、ポンプで水をボイラー、若しくは原子炉の場合ですと炉心に供給をして、そこで蒸気を発生させる。加圧水型原子炉ですと蒸気発生器というのがありますが、基本的には同じであります。それで蒸気の温度を上げて蒸気タービンに導入して、それで発電機を駆動する、蒸気タービンから出た蒸気を、日本の場合ですとほとんどが海水で冷却して元の水に戻すと。
こういう熱サイクルを使うわけですが、原発で大体せいぜい三三%ぐらいな熱効率ですし、通常の火力で四〇から四二%ぐらい。最近ですと、ほとんど天然ガスを使ったガスタービン、蒸気タービンのコンバインド発電で、基準をどこに置くかにもよりますが、五五%から六〇%ぐらいというようなところが限界でありまして、全ての熱エネルギーあるいは核の発生するエネルギーを発電できるわけではないということが、これは熱力学の基本から出てくるものでありますのでどうしようもないところもありますが、少しでも効率を上げるという努力はこれからもされるべきだとは思いますが、そういう限界があるということを御承知おきいただきたいというふうに思います。
次のページは、エネルギーのどういうサイクルを通るかによって効率がどの程度のものかというのをざっと表したものです。
先ほど言いましたように、化学エネルギー、あるいは化石エネルギーとも言いますが、核エネルギーから熱エネルギーを介して動力エネルギー、そして電気エネルギーに回している、それで先ほどの効率になるわけですが、光から直接、いわゆるソーラーセルの場合は直接電気エネルギーを起こすことになりますが、まあいろいろ技術開発が行われて新しいものが出ていますが、せいぜい一〇%オーダーのものであります。
あちこちにソーラー発電のサイトがありますが、いろいろな蓄熱とか平準化というようなことを考えると、光エネルギーから、つまり、太陽光から太陽熱を使って熱エネルギーに換えてそれで平準化をして、最終的には電気エネルギーに換えるというルートがないわけではないと。多分、恐らくその方が効率は高いと思いますが。
例えば、ジーメンスなんかが開発した、溶融塩を使って、溶融塩を温めて、それを移動させて蒸気を発生させて発電をするというシステムを開発していますが、スペインなんかでたしか実用化していたと思いますが、値段が非常に高いもの、いわゆる設備費が非常に高いものになっていると。今後の技術開発に依存するとは思いますが、この辺が非常に大きな問題だというふうに思っております。
さて、次のページには現在の原発の許認可の状況を表しています。
現状動いているのは、伊方の仮処分申請で止まっているというのは別にしまして、関電と九州電力の加圧水型原子炉が主として動いているだけでありまして、規制庁の審査になかなか通らないとか、通っても、地元の同意を得るのに時間が掛かるとか等々で、原発がエネルギーの基本計画では二〇%という話になっていますが、今の状況ではなかなかそれが前には進まない。規制の在り方そのものももう一度見直す必要があるだろうというふうに私は思っております。
エネルギー基本計画が全てではありませんが、原子力も一つの選択肢としてきちっとやっていかないといけないと。つまり、技術というのは、過去五十年、あるいは五十年以上原子力に関しては技術を積み重ねてきたわけですが、そのことを重要視する。つまり、技術開発というのは簡単にはいかない、あるいは技術者の養成はそう簡単ではないということも踏まえて考えると、この辺の問題はどうするのか、国としてきっちりとした方針を出すべきだというふうにも思っております。
次のページ見ていただきましたら、これは震災直後、つまり三・一一直後の状況でありまして、要するに、原発が止まることによって非常にたくさんの燃料代、つまり、主として火力発電用の燃料代が海外に出ていっているという状況であります。これは、まあそれだけの話でありますので。
それと、もう一つは、現在の石油の値段あるいは天然ガスの値段、石炭の値段がどんなふうに変動しているかと。これだけではございませんが、少なくとも、特に天然ガス、石油に関しては非常に値段の変動が多いということは皆さん御承知のとおりであります。
次のページに日本の現在の発電の系統が書いてあります。九州電力、沖縄電力からずっと東の方へ行きまして、青のところが六十ヘルツ、右側の緑のところが五十ヘルツの領域でありまして、先頃、二年前ですか、北海道のブラックアウトの問題がございましたが、基本的には、日本のこういう系統、あるいは中部電力と東京電力の間の周波数の変換所等々に関しましても平時を、つまり災害がない状態を想定して造られていると。
直流送電なんか特にそうでありまして、北海道のブラックアウトの中で、もし交流で北海道と東北電力が結ばれておれば直ちにその六十万キロワットを使えたわけですが、直流であったために、しかも他励式という、交流電力がないと交流に変換できないシステムであったために、結局は北海道電力の全域においてブラックアウトが起こってしまった。現在では青函トンネルを通じて三十万キロワットの自励式の直流が結ばれていて運用されていますが、北海道そのものの状況を考えるともっと全体的に増やさないといけない。しかも、できれば、緊急対応を考えると、私は、交流電力で、ロスは多いかもしれませんけど、交流で結ぶべきだというふうに思っております。
次のページ見ていただきますと、この辺から本当は私が言いたいことでありまして、これは、いわゆるクリーンコールテクノロジーという石炭の技術開発の全体像を何年か前に作ったものであります。
例えば、今、石炭技術で一番先端を走っているのが石炭ガス化複合発電、IGCCと言われるものですが、スタートは一九七四年頃であります。そこから、最初は空気吹きとか酸素吹きとか等々をやって、現在、千三百度の勿来のプラントのものが今建設中、あるいはおおよそ終わりつつあるという状況ですので、見ていただきましたら、七四年から二〇二〇年、四十年以上関わると。現場で働く技術屋さんからすると二世代ぐらい、場合によっては三世代ぐらいの技術屋さんがこれに関わっているということになります。
だから、技術開発というのは容易ではないと。つまり、人を養成するというのは物すごく大きな問題で、紙に書いたものがあるからそれで技術が維持できるというものでは決してないということを皆さん方に特に御承知いただきたい。そういう意味では、大学の教育であったり企業における教育、あるいは産業の育成、国の政策そのものが非常に重要な役割を果たすだろうというふうに思います。
次のページ開けていただきますと、先頃、オーストラリアで褐炭から水素を作って日本へ、特に私が住んでおります神戸に陸揚げするというプロジェクトが進行しつつあります。水素というのは、液化させようとするとかなりの低温にしないといけないと。天然ガスでマイナス百六十度でありますから、それよりもかなり低い温度まで下げて液体にして運ばないといけないと。何で水素なのだろうと。水素社会というのはいろいろ考えられていて、燃料電池車とか等々いろんなものが開発されていますし、実際に燃料電池車をトヨタなんかは販売もしております。
ところが、私からすると水素にして運ぶから面倒くさいのであって、例えば、石炭火力の発電所でCCSによってCO2を取って、そこで発生させた水素と合わせてジメチルエーテルにしてやれば、これはプロパンと同じようなものでありまして非常に運びやすいと。ジメチルエーテルは普通の火力燃料にも使えますし、最近ですと、ボンベの、いわゆるスプレーの噴射剤としても使っております。
しかも、もう随分になりますが、かつて経産省の石炭課あるいは石油流通課でジメチルエーテルのプロジェクトが進んで、新潟にプラントを造ったり、それよりも前に釧路にジメチルエーテルのプラントを造ったりして、ある程度の技術開発ができ上がっていると。それが一向に進まない。ジメチルエーテルと、これは国プロを進めながら、少しだけやってできたらもう終わりだというようなことをやっていては、エネルギー政策は成り立たないというふうに思います。
さて、最後に私の結論ですが、電力、LNG、オイルの安定供給の諸問題としまして、高度産業社会維持には信頼性の高い安定電源が必要であると。燃料価格の変動、それから国際的な政治リスクに対応する必要があると。それから、太陽光、風力などの自然エネルギーの利用による発電の出力変動の不確実性対応、これ、バックアップの問題ですね。それから、電力システムの複雑化対応、つまり、脱炭素とか分散化、それからエネルギーの多様化、それから組織そのものが配電会社と発電会社が別になったりしておると。あるいは、さらにはスマート化というかデジタル化と。そういうようなときに、大災害が起こるような時代に、災害多発時代に対応して、ちゃんといわゆるタフなシステムになり得るかどうかというのが大きな問題だというふうに思います。
最後のスライドですが、原発規制の見直しが必要であるだろうというふうに私は思っております。安定電源維持のみならず、高レベルの廃棄物処理、廃炉を含む原子力技術、技術者養成のために重要である。これは何も、いわゆる大学における原子核工学科あるいは原子力工学科を維持するということを意味するわけではありません。機械工学であるとか化学工学の関連分野の人間が原子力技術に関わればいいので、少なくともそれがちゃんと技術力として維持されないといけない。
それから、石炭利用技術の維持、発展、これも必須のものであるというふうに思います。
それから、電力システム、いわゆる電気のシステムからエネルギーシステムへの変換が必要である。つまり、本来、熱として来るものを熱と、そのまま使えばいいと、何も全てが電気に変える必要はないだろうというのが発想であります。
最後に、赤字で書いていますが、事実と技術に立脚したエネルギーに関する議論の展開が必要で、感覚的に、言わばポストトゥルース的な議論は極力避けるべきだろうというふうに思います。長期を展望して短期、中期の戦略を立てると。技術はすぐには育たない。せっかく国プロで育てた技術がそのまま放置されて消えてしまうというようなことがあっては、僕はそれこそ国富の損失であるというふうに思っております。
以上です。雑駁な話になりました。どうもありがとうございました。

○会長(宮沢洋一君) ありがとうございました。
次に、飯田参考人にお願いいたします。飯田参考人。

○参考人(飯田哲也君) 環境エネルギー政策研究所の所長の飯田哲也と申します。本日は、お招きいただきまして、ありがとうございます。(資料映写)
私の方からは、一枚めくっていただいた要旨に沿ってお話をさせていただきたいんですが、特に冒頭の、エネルギーの急速な大転換が今進んでいる、これまでの十年、二十年がそうですし、これからもなお加速度的に進んでいると。実はこれに、政治家の皆さん、政策担当者、そして専門家の皆さん、むしろ専門家であるがゆえに付いていけていないという、その認識のずれが、非常にその対応が今後、日本としても問われていると、そういう領域にあるんじゃないかというふうに思います。
一年前に、日本国政府も重要なメンバーで入っておりますIRENA、国際再生可能エネルギー機関ですが、「ア・ニュー・ワールド」と、これ、アイスランドの元首相を代表とする国際的な研究チームで出版されたんですが、今、日本語版も出ております。
もうエネルギー地政学は、これまでは言ってしまえば石油をめぐる国際政治であったと。でも、これが再生可能エネルギーの技術と市場をめぐる政治に大きく変わるというのが、一言で言うと、それが今大転換しつつあると。むしろ、下の赤い、下のグラフの、それこそ中東とかあるいはロシアのようなこれまでの石油、ガスの輸出国は、今後市場が崩壊するので政治的な大混乱に見舞われると。まあ、むしろそれはそれで非常に大きな地政学的なリスクなんですが。
一方で、日本、ヨーロッパ、アメリカ、中国、これは上のグラフですが、再生可能エネルギーの特許の数イコール技術のある国というふうに解釈をすると、これらは非常に優位な立場にあると。ましてや日本は、化石燃料の輸入で年間おおよそ、年によって違いますが、GDPの五%を言わば失っている、それを言わば取り返せるという意味では非常に有利なポジションだということが指摘してあります。
これは昨年の九月にカーボントラッカーが出したレポートですが、これから十年単位で世界の二百兆円規模の化石燃料市場が大崩壊を起こす可能性があるという指摘をしています。
このグラフ、若干解説しますと、青色で下がっている上のグラフがいわゆる太陽光発電の発電コスト、これは後で見ていきますが、これは初期費用プラス運転費用ですが、もう運転費用は実質ゼロです。その下の緑色のグラフは、今度、太陽光プラスバッテリーの発電コスト、これも初期費用プラス運転費用ですが、実質、運転費用ゼロです。ああ、逆ですね、上がプラスバッテリーで、下が太陽光です。
もう既に太陽光の新設及びいわゆる発電コストにならしたコストは、新たに石炭火力を造るよりは安くなっている。これはもう世界中のほとんどでそうなっている、日本は若干まだ違うんですが。これからしばらくすると、既にある石炭火力を動かすよりも太陽光を新たに造った方が安くなるというのがもう数年で来ると。その次に来るのは、太陽光プラスバッテリーのコストが新たに石炭火力を造るよりも安くなる。そして、二〇三〇年代の前半には、既にある石炭火力を動かすよりも太陽光プラスバッテリーの方が安くなると。もうこういう変化がこれから十年で起きるわけです。たった十年ですよ。そうすると、世界の、まあこれ、石油はもうそもそも発電には使えませんけれども、ガスそして石炭といった発電市場というのはもう大崩壊を起こすと。
次のグラフ、これはリアル、実データですが、最後の、去年の末の太陽光と風力はまだ国際的な正式なレポートは出ていないので私どもの研究所の推計ですけれども、これを見ていただくと、原子力はほとんど、むしろこれから減っていくんですが、太陽光と風力がこの勢いで増えているわけです。
グラフをちょっと見ていただきますと、下に、二〇〇〇年という年は、これは、日本に今導入されている固定価格買取り制度を、最初に私が草案を作って、参議院法制局で審議していただいたのが二〇〇〇年です。その頃は太陽光と風力がこんなに大きくなるって誰も思っていなかったです。それが、三・一一の起きた二〇一一年、グラフちょっと当てていただくと、それでもまだ大したことなかったんです。
それがもう今や、二〇一五年に風力は原子力の設備容量を抜き、二〇一七年には太陽光が設備容量を抜き、もう今やどちらも倍以上の設備容量に、倍にはなっていないですね、一・五倍ぐらいの設備容量になり、しかもこの勢いで増えていくわけです。毎年毎年、風力は大体毎年五十五ギガワットぐらい、およそ五千五百万キロワット世界全体で増えるのでほぼ安定化しつつあるんですが、太陽光はおととしが百二ギガワットで、去年が百二十、今年は百四十という勢いで増え方が増えていっているわけです。これを何と言うかというと、皆さんが学生の頃に習われた指数関数的と、いわゆる倍々ゲームで増えるような勢いが増えていっています。
こちらも、IRENA、国際再生可能エネルギー機関の展望では、二〇五〇年に風力と太陽光を、これは左側のグラフですが、これは電力だけの話、電力の八六%が再生可能エネルギーで、そのほとんどを風力と太陽光だろうというのが、これは国際機関である再生可能エネルギー機関、しかも日本政府も入っているところが言っているんですが。
ドイツのエネルギー・ウオッチ・グループとフィンランドのLUT大学の、これは去年四月に出たレポートの予測では、こちらは一次エネルギーです。つまり、エネルギー全体の、二〇五〇年には全てを再エネで賄うことができて、その七割は太陽光だと、二割は風力だと、あとはその他の再エネがちょぼちょぼと。二〇三〇年、あと十年でも世界の一次エネルギーの三二%を太陽光だけでも供給できるだろうと、この勢いで伸びるとですねという、まあこれは予測であり、ある意味研究機関なので、そういう期待もあると思うんですが。
それを裏付けているのは、これはアメリカのラザードという金融機関、投資機関の非常に有名な、毎年毎年、各種エネルギーのいわゆるコスト、コストといっても、専門用語ではLCOEと言って、初期投資プラス運転コストをいわゆる発電コストに置き直したそういう指標なんですが、この十年間でなぜこんなに増えたかというと、風力はコストが七割落ちているんです。つまり、十分の三になっていると。太陽光に至っては九割落ちているんです。十分の一のコストになっている。それで終わりじゃなくて、まだまだこの先もコストが下がるわけです。
それを同じラザードのほかのエネルギーも入れたグラフが八ページ目ですが、原子力は逆にどんどん上がっています。しかも、このグラフというのは、太陽光と風力だけは補助金のない裸のコストです。ところが、原子力や化石燃料は補助金の入ったコストなので、実は本当はもっと高いということです。
原子力はもうはっきり言って、私も実は元々、京都大学の原子核工学を修士で出ておりまして、神戸製鋼で原子力、廃棄物の事業経験もやり、電力中央研究所で原子力規制と電気事業連合会の仕事もやりましたが、私もそういう意味では原子力、いろんな分野を経験しましたが、もうはっきり技術として未来はないと。というのは、このコストです。
これは九ページ目ですね。これは、アメリカとフランスで初期投資が、これは横軸ですが、造れば造るほどどんどんどんどん、縦軸は初期建設コストが、それぞれ対数グラフでうなぎ登り、コイの滝登りのように上がっていって、およそ市場の中でもう使い物にならないと。
このグラフって実は古くて、東芝がウエスチングハウスを買う前に公表されているので、本来、企業の経営者であればこんなことは見ておくべきなんですが、何を間違ったか、ウエスチングハウスを買収して、東芝はもうほぼ倒産のようなところまで行ってしまったと。
最近の例でいうと、下のところに書いていますが、フィンランドのオルキルオト三号機。二〇〇五年、これはもう国会を二分して、ほとんど数票差で造ることになってしまって、五年間で三十七億ユーロでできる予定が、まだ今になってもできていないと。もう砂漠の蜃気楼のように、毎年毎年運転開始は、つい最近出て、来年になりましたという。で、多分来年になると、また来年になりましたということになると思うんですが。建設コストが一応八十億ユーロなんですが、一説には百数十億ユーロ、つまり一兆数千億になっていると。たった一基ですよ、原発。
同じアレバが造り始めたフランスのフラマビルも、二〇〇七年に造り始めて、二〇一〇年に三十億ユーロでできると言っていたのが今になってもできておらず、つい最近これもニュースが出て、二〇二二年、コストは何と四倍以上、百三十億ユーロ。
イギリスのヒンクリーポイントCも、これも大もめにもめて一昨年着工しましたが、着工した時点で、完成時二〇二五年、二百二十億ユーロの発電コストが、今現在イギリスの沖合で造られている洋上風力より既に高いんですね。洋上風力、まだこの先も安くなりますが、原発のこれが、実際にヒンクリーポイントができる頃には、多分、二〇二五年と言っているので、実際できるのは二〇三〇年か、永遠にできないかもしれませんが、実際の発電コストは更に恐らく高くなるだろうということで、これはもうイギリス史上最大の愚かな投資だというふうにBBCが批判をしておりました。
これはアメリカのデータなんですが、既に原子力は、じゃ、せめて、ある原子力は動かした方がいいんじゃないかという議論があります。ところがもう、アメリカの事故を起こしていない、日本のような追加投資をしていない原子力の運転コストが既に、新しく造る太陽光よりも高くなっているんです。ということは、原子力の再稼働に日本のようにお金を掛けるのであれば、そのお金と時間を新たな再エネ、特に風力と太陽光に費やした方がはるかに時間とお金と人の資源を節約できるということを意味します。
それに加えて、蓄電池の話が先ほど小澤先生からも出ましたが、私も蓄電池は、蓄電池はちょっと前まで、二、三年前まで消極的だったんですが、やはり世界的な電気自動車の投資の勢いで、これ実は太陽光と風力と全く一緒で、蓄電池も非常に速いスピードで、先ほど、風力は十年で十分の三、太陽光は十分の一、蓄電池は大体十分の二・五というか、四分の一のコストというスピードで下がってきています。
この三つは、原子力と全く違うのは、原子力は造れば造るほど高くなっていましたが、何が違うかというと、コストが安くなるメカニズムが違うわけです。つまり、皆さんが今お手元に持っているスマホであるとか、あるいはコンピューターであるとか、つまり小規模分散型の技術というのは、作れば作るほど技術の言わば学習効果が進んで結果として安くなる、安くなるからますます普及し、普及するからまた技術がどんどんどんどん洗練されていくという。十年前のスーパーコンピューターのチップに入っていた、それこそ、かつて二番じゃ駄目なのかという話がありましたが、その頃のチップは今の皆さんのスマホに入っているというぐらいの勢いで進化しているわけです。
これもアメリカの投資機関のグラフですが、大本のグラフはこういう感じで、下は化石燃料です。つまり、天然ガスとか褐炭とか原油が、皆さんも御記憶の方もいらっしゃると思いますが、第一次石油ショック、第二次石油ショック、そして最近ではリーマン・ショックと、そういうイベントごとに化石燃料、特に石油価格とそれと連動する天然ガス価格は変動するわけですが、そこに空から隕石が降るように落ちてきている、これが何かというと、太陽光なんです。この勢いで下がってきているわけです、コストがですね。
この変化が何をもたらすかということをやっぱり、特に政治家の皆さんというのは正確にやっぱり考えられた方がいいと。これに私が書き足したのが、風力と蓄電池を書き足すとですよ、この三つはまさに、地下から掘り出す資源とか、まさにウランもそうなんですが、とは違って、人間の知恵と技術と経験によってどんどん洗練されていく、しかも、ほぼ無限にある太陽エネルギーを基本的に活用するエネルギーなんですね。もう完全にエネルギーのパラダイムが変わろうとしていると。
一昨年、国のエネルギー基本計画でも再生可能エネルギーの主力電源化という、これは、このキーワードは非常に私は高く評価しているんですが、主力電源化するのは何かというと、実は太陽光と風力なんです、今の勢いから見てもですね。しかも、太陽エネルギーというのは一日分で、一日じゃない、一時間分で、一時間に降り注ぐ太陽エネルギーで今世界全体が使っているエネルギーと同じ量が降り注いでおりますので、事実上、無尽蔵ですし、ほぼ無限。太陽がある限り無限ですし、何といっても放射能も出さない、二酸化炭素も出さないと、大気汚染もしないと。やはり、しかも純国産、原子力のような準優勝の準ではなく、純粋な純国産エネルギーですから、これを活用しない手はないと。ただ、ほかの、地熱が好きな方も多くて、あるいはバイオマスの好きな方、小水力の好きな方多いんですが、これは成長することないです。これはもうじわっと育てればいいと。大きく大別されたのはもうはっきりしています。
もう一つ、これはもう三年前に出たレポートですが、エネルギーに非常に密接なんですが、輸送が大胆に変わろうとしていると。つまり、電気自動車が今急速に普及していますが、もう既にアメリカのテスラがトヨタに次ぐ世界で二番目の株式時価総額に一気に成長してきましたが、これは電気自動車だけじゃないんだと。同じペースでというか、もっと速いスピードで進化しているのが自動運転車です、これは経産省も取り組んでいますが。そして、もう一つが、ライドシェアと言われる、まあスマホで呼べる白タクというか、私も海外へ行くとウーバーとかリフトとか活用させていただいていますが。この三つが重なると移動のコストが十分の一、つまり車を買う時代が終わろうとしているということですね。これも十年単位で一気に変わるんじゃないかと。
そうすると、石油市場は三割減で、まあ大変なことになるでしょうし、先ほど小澤先生のプレゼンの最初にあった日本の自動車、日本だけではないですが、実はドイツもそうですし、アメリカのビッグスリーもそうなんですが、自動車産業そのものも非常に今後大激変するかもしれない。あるいは、税収の在り方とか都市計画の在り方とか大幅に変わる可能性があるんですが、これ今日、本題じゃないので飛ばします。
日本は、たまたま三・一一、もうすぐ九周年を迎えますが、の日の当日に閣議決定が行われて、その日の午後に固定価格買取り制度が国会に送られることが決まり、その年の八月二十六日に参議院で可決をされて、固定価格買取り制度が成立をしたと。その結果として、大半、九五%は太陽光発電が普及し、ほかがじわじわと伸びていると。この太陽光発電、非常に伸びたことは良かったんですが、光と影があるということですね。
一つは、日本の中で、先ほどありましたが、特に九州に太陽光が一番集中をしていると。実は先ほど、変化のスピードが速いので頭の中の考え方を変えなきゃいけないということに、もう一つは、自然エネルギーが不安定とか予測不可能だと、これはもうはっきり言って、そんなことが言われているのは日本だけなんです。それは後でちょっと御紹介しますが。
九州はその中でも非常に多いと。それは、第一段階、第二段階、第三段階、第四段階と。つまり、太陽光と風力というのは、不安定なのではなく、自然変動するんだと。自然変動する太陽光と風力を送電系統の中にどれだけ高い比率で入れるのかというのが世界の今競争になっているわけですが、日本は非常にまだ遅れている、第二段階。九州は、ヨーロッパの大半の国と同じ黄色の第三段階にようやく入ったところ。そして、後で御紹介しますが、デンマークと南オーストラリア、これはもう五〇%を実は超えています。このグラフはちょっとデータが二年前ので古いんですが、既に五〇%を超えて、第四段階。その二つの国が何をやっているのかと。
九州は原発が特に四基再稼働していることもあって、太陽光の抑制をおととしの十月から始めました。確かに九州電力は頑張っています。まずは、昔は原発のために造った揚水発電で頑張って昼間の太陽光のピークを吸収して夕方放出していますし、関門連系線を使って送り出しているんですが、それでも、まだ石炭火力いっぱい残っているのに太陽光を抑制しています。
下のグラフを見ていただくと、太陽光の抑制、去年の三、四、五とかなり頻発をしまして、玄海三号機が再稼働された瞬間に抑制がなくなって、また原発が再稼働されると抑制が始まるという非常に悲しい関係にあるわけですが、これドイツもそうですしフランスもそうなんですが、原子力よりも先に抑制して太陽光と風力を最後まで残す、これは経済合理性からなんです。メリットオーダーという市場用語があって、つまりランニングコストです。運転コストは、太陽光、風力、水力はただなんです。原子力はちょっと掛かるんです。だから、一番安い太陽光と風力を残すのが一番経済合理的なんです。しかも、放射能を出さない。最もメリットがあるんですが、日本はなぜか逆にしていると。
そのパラダイムの変化を表したグラフがこの十九ページ目で、左上がいわゆる古い、ベースロードと、これはもう完全に古い考えというふうに指摘されています。ベースロードというのはもう今や通用しないんだと。下のグラフが九州ですね。ベースロードの考えのまま、電力需要を太陽光が上回ったから止めちゃえと、これが日本の、まだ今やっている。でも、発想の転換して、それ上下ひっくり返したらいいじゃないかと。今までベースロードとして頑張っていたものが、逆にもうちょっと柔軟に変動を吸収してくれればいいじゃないかというような考え方が最後の右下のいわゆる柔軟性という考え方で、こういうふうにちょうどパラダイムが変わったわけですね。
その柔軟性の一つとして、オーストラリア、これは、北海道、先ほどブラックアウトの話が出ましたが、その二年前、二〇一六年の九月に、同じ九月にブラックアウトが起きました。これは、暴風雨によって送電線がなぎ倒されてブラックアウトが起きたんですが、その対応として、これだけじゃないんですが、幾つかやったうちの、世界最大のビッグバッテリーというのを造りました。百メガワット、百二十九メガワットのビッグバッテリーをテスラが半年で造って、実はこれによって、一つはおととしの、これが建設した後、二〇一八年八月に、あわや停電というときにこの蓄電池が一瞬にして周波数変動を吸収したので、やっぱり停電防止に効果があったということが立証されたのと、何といっても、七十五億円投資して年三十億円節約できたので、二年半で投資回収ができるということを立証したので、今、オーストラリアはこのビッグバッテリー、投資ブームになっていて、しかもここは五一%の既に風力と太陽光を入れて、来年中には七〇%、そして二〇二五年には風力と太陽光で一〇〇%にするとこの南オーストラリア州は言っています。
もう一つは、先ほど熱の話も出たので、デンマークです。
デンマークは、実は風力と。実はデンマークも別に偏西風で一番なだらかではあるんですが、下のグラフを見ていただくと灰色なんですが、これ、横軸一か月で、一目盛り一日です。
やっぱり風力は、まさに風任せと言われるとおり、変動します。需要の倍ぐらい出るときもあれば、ゼロの日もあると。でも、それを、デンマーク全土に広がる地域熱供給の熱源であるコージェネレーションがそれに相殺する形で運転されて、しかも、それでもなお余る風力発電は、上のグラフの緑ですが、お湯に変えて地域熱供給熱源として、つまりCO2フリーの風力で作られた熱として供給されると。これなんかまさに、北海道なんかはどんぴしゃのインフラですね。
今、デンマークが何をやろうとしているかというと、もう北海からのガスは、化石燃料由来のガスはやめて、バイオガスを十倍増させて、しかもそのバイオガスに含まれる二酸化炭素を再エネ、風力から作る水素でメタンにして、つまりバイオガスと風力ガスにして、今の化石ガスを全てCO2フリーのメタンにするという構想が今デンマークでは始まっていると。それをセクターカップリングというふうに言います。
つまり、風力と太陽光はもう主力電源は決まっているわけですが、安く、限りなく安くなる風力と太陽光の恩恵を、給湯と暖房それから輸送は、電力はそうですし、メタンにすればディーゼルとかも動かせますし、さらに今、グリーンガスを使った製鉄なんかもスウェーデンとかドイツで実証が始まっていますし、それからアンモニアを作って農業に活用するとかという形で、この風力と太陽光をいかにますます安くしながら拡大していくのかというのが非常に重要で、そういう意味でグリーン水素と、これは去年、東京で開かれたグリーン水素の国際会議で、先生方も出られた方もいらっしゃるかもしれませんが、その方向に今、方向性としては動いていると。
そして、あと、何といっても重要なのは、地域にとって再エネが非常に大きなメリットがあると。これ、環境省のレポートになりますが、日本、国全体もエネルギーの使用によってGDPを五%失っていますが、地域でいうと五%から最大二〇%ぐらい、エネルギーを使うことで地域のGDP、グロス・リージョナル・プロダクトというふうな、GRPといいますが、を失っているわけですね。これを地産地消していくと、まさに地域の経済にとっても雇用にとっても非常に大きなメリットがあるので、これを活性化するというのが非常に重要で。
パリ協定、日本も調印していますが、先進国に求められているのは、この急角度で今後二酸化炭素を減らせということで、もう先進国は石炭火力を造るどころか早期閉鎖に、あの中国ですら、ですらと言うと失礼ですが、もう閉鎖の方向に走っていると。
やはりそれをしっかりやらなきゃいけないんですが、日本は再エネ普及、非常に遅れている上に目標値が非常に少ない。かつ、しかも、日本は、一九九〇年時点では石炭火力少なかったんですね。先進国では唯一石炭火力を増やした国、今やドイツに次いで二番目に大きい。なおかつ、まだ増やそうとしていると。結果として、二酸化炭素削減に先進国の中ではアメリカと並んで失敗した国ということで非常に大きな批判を、先日もあのCOPで化石賞を何度も受賞して……
○会長(宮沢洋一君) 飯田参考人、相当時間が延びておりまして、そろそろおまとめいただけますか。

○参考人(飯田哲也君) 済みません、はい。あと一、二分で。
そういう意味では、環境と経済というのは、実は、デカップリングといってほとんどの国は、添付資料に大量に付けていますが、日本だけが、GDPの成長を十分にこなせないのに、二酸化炭素を増やしエネルギーを増やしているという非常に残念な国になっていますので、あと原子力もちょっと、これは後でまた補足があればあれですが、三・一一前に先祖返りしつつある状況で、やはり国会事故調の精神に立ち返る必要がありますし、太陽光発電は今、日本の国の見直しではどちらかというと規制する方向になっていますが、改めて飛躍的な普及のための政策見直しが必要で、最後のまとめはちょっと時間がないので省略しておりますが、お目通しいただければと思います。
どうもありがとうございました。

○会長(宮沢洋一君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。

○嘉田由紀子君 碧水の嘉田由紀子でございます。
お三方の皆様、ありがとうございます。
私が準備していた質問、既にもう皆さんが済んでいるので、十分しかありませんので、荒戸参考人には、まさに山添議員が質問なさったような、言わば脱炭素社会にどういう立場でいくのかということで既にお答えをいただきました。サイエンスとしてIPCCの、まあこの温度の、地球環境に問題があるんじゃないのかという御意見でした。それから、小澤参考人にも災害時のエネルギーの継続性というところで質問を準備していたんですが、ここも梅村議員が既に御質問なさっておられましたので、私はちょっと、十分しか時間がありませんので、この再生可能エネルギーをどういうふうに広めていくかということを、自治体の知事経験者の言わば経験を踏まえて質問を飯田参考人に集中させていただきたいと思います。
実は、二〇〇六年に私、滋賀県知事にならせていただいたときに、自分は環境とかあるいは地域の問題いろいろやっていたんですけど、とても認識不足だったなというのは、エネルギー政策はほとんど自治体は関われなかったんですね。当時のエネルギー基本計画、六十五ページほどあるんですけど、自治体のことを書いているのはたった半ページでした。その自治体の役割は、環境部局に太陽光を増やしなさいということで、滋賀県三千人ほど職員いるんですけれども、たった二人です、担当者は。それくらい言わばエネルギー政策に自治体が関わる余地がなかった。

そこで二〇一一年を迎えるわけですが、そのときに、私は改めて、今日、飯田参考人が、地域経済を見たときに、県の総生産の中で何割エネルギーが、そしてそれがどれだけ外へ出ているのか。滋賀県の場合には大体年間五兆円です。それの一割、五千億円が石油とそれから電気で外へ出ている。これを定着させるため、つまり地域経済を元気にさせるためには、ある意味ではドイツ方式の問題が必要であろうと。自治体を経営する側からいきますと、エネルギーは三つの原則がある。コストが安い、それから安定供給、それと環境保全、環境適応ですね、そういうことを考えると、もう原発の時代ではないだろうと。
石油はもちろん石油としていろいろかなりの分お願いをしていたんですけれども、ちょうど若狭の原発が、滋賀県、一番近いところ、十五キロです。もう福島の地元のようなところなので、福島並みの事故が起きたらもう琵琶湖が大変なことになるということで、県民の皆さんと話合いをしながら、新たな県としてのエネルギー方針を立てました。そのためには、先ほど言いましたように、県庁の中に専門家がいないんです。そして、知事として若いやる気のある職員を、一週間一緒にドイツに行きまして、そして二〇一二年にかなり現場を見てきて、で、作ってきたのが滋賀県のエネルギー基本計画ですけれども、そこでは、方針は、まず災害に強い、それから経済をきちんと回すことができる、地域経済、キロワットアワー・イズ・マネーなんだと。それから、人材育成というようなところで、二〇三〇年を目標に三割、再エネあるいは地産地消型のエネルギーに変えるということで方針を立て、今地道にやっております。
ただ、そこで課題が三つありますので、飯田参考人にお願いしたいんですが、まず一つは、再生可能エネルギー、供給する体制の中で、先ほどの土地利用計画とかあるいは環境保全との対応、ここ意外と難しいんですね。そして、森林を伐採して太陽光、地元の反対もあります。それから、風力の場合にはバードストライキングなどある。この土地利用計画との適合の問題。
それから二点目は、やはり農村が確かに経済豊かになる、エネルギーも農産物ですと。ただ、そのための具体的な地域での経済的なインセンティブを入れ込む仕組み。
それから三点目は、やはり人材です。本当に行政、県庁にも人材がなかなか育っていない、国だけがエネルギー政策をやってきたというところで、人材育成。
その三点について、ちょっと教えていただけたら有り難いです。

○参考人(飯田哲也君) まず、三点の御質問をいただいた中でまず共通する、最後の人材育成というか、その進展の中でちょっと御紹介したいのは、私、東京都とか福島県、それから横浜市とかいろんなところの自治体の政令指定都市、県庁レベルの、滋賀県にも何度かお邪魔しましたけれども、アドバイザーをした中で、今現時点で一番参考になるのは長野県ではないかというふうに思います。
長野県、二〇一〇年に今の現行の阿部知事が就任されたときに私もアドバイザーで入って、そのときは滋賀県よりもっと少ないたった一人の温暖化対策係しかいなくて、その後、現状は多分、環境エネルギー部になって、多分数十人の人がいらっしゃいますね。
地域経済がまさに文字どおりよく回る事例として当初私が提案して制度化されたのが、新しく住宅を建築若しくは改築、今日ちょっと省エネの方の話はできなかったのであれなんですが、するときに、その住宅に導入できる再エネ、太陽光とか太陽熱とかの選択肢を設計者とか工務店は必ず説明しなきゃいけないという説明義務。これ、実はドイツは導入義務なんですが、日本は導入義務にはできないので一応説明義務にしたことと、それから、どれだけのエネルギーを使うかを計算して表示しなきゃいけないんです、光熱費が一年間この住宅だと幾ら掛かると。そうすると、ちょっと安い住宅でも光熱費がむちゃくちゃ高いのに対して、ちょっと高い住宅でも光熱費がほとんどただ同然だと、もう数年で元が取れるというのが分かると。
それで、実は長野は今、断熱住宅の工務店が一番多い。建設も一番多くて、その工務店さんがもっと規制を厳しくしてくれというふうに今言われていますし、先ほどデカップリングという、経済の成長とエネルギーを切り離すのが先進国の特徴で、日本はそれができていないんですが、長野は県レベルで統計を取って、ちゃんとエネルギーを減らしながら経済が県レベルで進んでいるんです。その省エネ、住宅政策が非常に成功しているというふうに県の人も自慢をしています。
そういう意味で、政策をやって、それをフィードバックするという、まず県庁レベルの人材育成をちゃんとやられるのがまず一番良くて、もう一つの事例は、小水力発電って規制の塊なんですけれども、そうすると、県庁に行くと、あそこに行け次にここ行けということで、事業者はなかなか進まないと。長野県が取ったのは、その現場に関係部局の担当者全部集めてその場で規制の問題を解決させるという、縦割りを解決させるような政策もされていたというような形で、もちろん制度的に、政策的に全部縦割りを解消できるルールができたらいいんですが、まずは、できない間はそういう関係部局を全部集めるということをさせたとかですね。
それは、今の人材、農村、御質問いただいた三点全部私が回答できるかどうか分かりませんが、多分、そういった形でまずは政策担当者の人たちのレベルアップをすることによって解決できるんじゃないかというふうに思います。
土地利用は、本当にいろんな、日本とデンマークは一様には比較できないけれども、今日、三十六ページで、先ほど御質問に答えさせていただいたように、まずは社会環境と自然環境を優先したゾーニングを、これもやはり県庁の、実際には土地利用計画の権限は市町村に下りていることが多いんですが、まず県庁レベルでそういう自然環境と社会環境を全部網掛けしたマップを作って、その残ったところで太陽光や風力つくるんだよということを、例えば滋賀県なり長野県なりでそういう先行例をつくっていただくことによって、逆に残ったところで優遇するのは、例えば地域の参加型のものを優先してやりますよとか、何かそういうルールをやっぱりローカルルールとして作ることが、日本の場合はあとはそれを横に広げていくことに役立っていくんじゃないかというふうに思います。
ちょっと全てお答えできませんけれども。

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
時間が過ぎておりますので。お三方、どうもありがとうございました。

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