9月9日 九州ダムものがたり(その4)

九州ダムものがたり(その4:長崎県の石木ダム計画地域「こうばる」の住民60人が強制収用でふるさとを失う?!)9月9日。(長いです、2400文字)

8月末1年半ぶりに長崎県の石木ダム地域「こうばる(川原)」を訪問。50年以上前に計画された石木ダム建設に一貫して「水の底より今の故郷」と抵抗運動をつらぬいてきた「こうばる」の13世帯60人の住民。「私たちの運動は反対運動ではない。この場所に住み続けたいという賛成運動なのです。私たちは世間で思われているような怖い運動家ではない。単に、ここに住み続けたい、ごく普通の暮らしをごく普通にしたい。どこにでもいる住民です」と強調しています。

「こうばる」の人たちは「必要性の高いダムなら、それがなければ人の命が守れないような重要なダムだったら自分たちは犠牲になってもいい。でも利水も治水も必要性がわからない」という。昨年以来、日本各地で「ほたるの川のまもりびと」の映画をみた人たちを中心に、5万筆以上の署名を集め、長崎県に提出されました。

しかし、長崎県収用委員会が、今年5月21日、「こうばる」13世帯の地権者に、住宅と屋敷、農地を石木ダム建設用に土地を明け渡すよう、裁決を出しました。地権者がこれに応じなければ、全ての用地を「行政代執行」によって強制的に収用することが可能になります。明け渡し期限は、家屋などの物件がない土地が9月19日、物件がある土地が11月18日。もう日がありません。

住民の反対の中、行政代執行を行えば、立憲主義を前提としたわが国の民主主義政治の根幹を揺るがす挑戦でもあり、社会活動の基本である憲法で認められている財産権を否定し基本的人権を踏みにじる暴挙となります。 現地では、今も毎朝住民たちが建設予定地に座り込みをし、県や国に抗議をしています。

そもそも論ですが、今の日本の政治では、国家運営の基本である税金の無駄遣いをただし、財政状況をこれ以上悪化させず、可能な限り財政を改善しながら、未来世代に責任ある政策判断が求められる分野はたくさんあります。その中でも、水や自然にかかわる環境整備では、水を使う「利水」も水害被害を最小化する「治水」も地方自治だけでなく国政でも重要な政策分野です。

研究者の時代から、私自身「最小の費用(財政負担や環境影響)で最大の効果をあげる」治水政策をめざして必要性の低いダム建設の凍結・中止や、近代技術の上水道に頼りながらも同時に川や湖や湧水や井戸水など、自然の水を活かした水文化の保全・再生に取り組んできました。滋賀県知事としては、この方針で県内6つのダム建設を見直し、命を守る流域治水推進条例を設置し、水文化再生も地域ブランド化や観光政策につなぎながら進めてきました。

そのような経験を活かすべく、今、私自身国会議員となり力をいれる分野のひとつが、災害対策のための国土強靭化と言いながら、実は必要性の低い大型公共事業の精査です。果たしてどこまで効果があるのか、税金の無駄遣いにならないか、環境破壊につながらないか、次世代への過剰な財政負担にならないか、チェックが必要です。その典型が長崎県川棚町ですすむ石木ダムです。

石木ダム構想が持ち上がったのが1962年のまさに高度経済成長前夜です。当時は日本中に多目的ダムが計画され、建設されてきました。それから57年が経過した現在も、長崎県と佐世保市は、佐世保市への水の供給のため(利水)と、川棚川での洪水防止のため(治水)、石木ダムが必要だとして、ダム建設事業を推進し続けています。

実は、佐世保市の水の需要は近年減る一方です。しかし、佐世保市は、漏水などで水需要が増えると、非常識な将来予測を出して、利水事業を推進しようとしています。この利水事業には253億円が計画され、長期的に佐世保市民の水道負担金となります。一部市民はこの財政負担を問題にして反対をしていますが、大きな声にはなっておりません。

また、川棚川に対して石木ダム流域はたった11%しかなく、川棚町の洪水防止への効果は大変限定的です。それ以上に、川棚町の洪水履歴をみると川が溢れるのではなく周辺の山から流れ込む「内水氾濫」が主で、内水氾濫はダム建設では防げません。また過去最大の洪水が発生しても河川改修を完了すれば、溢れさせずに流すことができると、長崎県知事も表明しています(2014 年7月11日、川原公民館にて)。治水用の費用負担は285億円で、国と長崎県がほぼ折半の負担です。長崎県民 134万人ですので、ひとりあたりの県民負担は1万円を超えます。

逆にダムを造れば、川の水がダムによってせき止められることで様々な悪影響が発生します。ダム湖ではヘドロや異臭、アオコの発生も予想されます。ダム湖の水が下流に流れて、石木川、川棚川だけでなく、宝の海と呼ばれている大村湾の水質悪化も懸念されます。このようなダム建設事業に対しては、今一度原点に立ち戻り、その必要性について再考すべきとの声も多くあります。

このあと国会議員としては、9月17日には、党派を超えた衆参両院の議員による「公共事業チェックの会」が、石木ダム問題を中心に国会内で「総会」をひらきます。また9月19日には、「こうばる」の住民全員、4歳から80歳までの住民全員が、長崎県知事に直接に面会にいく予定です。市町県議会議員、国会議員も応援にかけつけますが、主役はあくまでもこうばるの住民の方たちです。(つづく)

 

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