Facebook 2019年2月5日

「淡海の川づくりフォーラム」(2月3日開催)12回目で大きく進化・成長しました。15組のチーム発表にご参加いただいた活動母体の皆さん、選考にかかわってくれた先輩の皆さん、そして準備に邁進してくれた実行委員会の皆さんに感謝です。全体像を報告するにはあまりに深いフォーラムでした。私なりに歴史をふりかえりながら報告させていただきます。2月5日。また長いです(スミマセン)。

フォーラムの目的は「川や水辺と共生する暮らし」「川や水辺と私たちのいい関係」を、活動実践している皆さんと、「公開選考方式」のワークショップを通じて、交流するなかで、お互いに学びあい、高めあうことです。初回からすべての会に参加をしてきましたが、今年は参加者層の広がりと深まり、蓄積の成果、交流手法など、進化・成熟が見えました。

そもそも始まったのは2009年(2003年度に予備的に第1回開始)。提案母体は、滋賀県として新しい流域管理の方式を探るなかの「流域治水検討委員会(住民会議)」で、「水害から命を守る地域づくり」のためには住民自身が自覚し実践することと宣言をしました。委員長の北井香さんがこの住民会議メンバーの中から自ら委員長として手をあげてくれました。12回目の今回はお母さんになっても引き受けてくれました。(子どもさんもこっそり顔をだしてくれました(微笑))。

その時のねらいは「住民が活動を続けていくのに元気がでるような場をつくりたい」ということで「公開選考方式」を採用。これはもともと全国で活動している「川の日ワークショップ」いい川づくり(通算21回目)での方法をまねたものです。活動評価をするのに、審査員が密室で決めるのではなく、まさに公開で、会場と一体となって「なぜその活動が評価できるのか」「よいところをさがしあって」「ほめあって」「元気になろう!」というプロセスをへて、グランプリや準グランプリを決めていきます。

選考もまる一日かけます。まず午前中、小グループ毎に「テーブル選考」ではじっくり活動報告をし、選考員で推薦グループを決めます。そして午後には全体選考にはいりますが、その間、昼食時には「復活選考」のチャンスが残されます。今回は15グループの中で全体選考に残ったのは7グループ。

選考員は投票用紙を複数枚もちますが、会場に並べられたグループ別のミニパネルに付箋をはっていく、その背中には当事者グループもふくめ会場からの熱い視線が注がれます。「なぜここに1票をいれるのか」というコメントを求められます。選考員としてはこのコメントが「逆評価」されます。塾考して、言葉を選び、「自己納得だけでなく他者説得」の論理を導きます。つまり選考員になると一層、緊張を迫られます(微笑)。

その中からグランプリと準グランプリが選ばれます。今回は、いろいろひっくり返りの応援演説などがあり、最終的にグランプリは「地球研・栄養循環プロジェクト、小佐治環境保全」グループに決まりました。準グランプリは「近江八幡市立馬淵小学校」です。このふたつのグループいずれも10年以上の活動実績があります。

小佐治グループは、甲賀市の昔の琵琶湖の底だった強い粘土層の上に育まれてきた集落で、「世代をつなぐ農村まるごと保全プロジェクト」という滋賀県が県内800集落ほどを対照に環境保全型農業を進めてきた2008年以来の政策で、生き物への関心が高まりました。今回も「田んぼのプランクトンをもっと調べたい」との発言など共感を呼んでいました。また小佐治では、「米粉スパゲッティ」「米粉うどん」などを商品化し、農水産物のブランド化「おいしが・うれしが」(2008年開始)キャンペーンの売れっ子でもあります。

そこに京都にある国立総合地球環境研究所(大学共同利用機関)の奥田貢さんをリーダとする研究者達が、「水源の森から里の水田、そして河川、湖へと流域圏で循環する栄養分」研究をはじめて下さり、小佐治をモデル地域として、生き物探し・同定・水田の生態系の解明を進めてくれました。まさに「生活と科学が出会う」、住民参加型研究を深め、来年の5年目でまとめとなります。

準グランプリの馬淵小学校も10年の活動実績があります。流域治水条例でいう「そなえる」仕組みづくりのために、子ども時代から学校近くの白鳥川にはいり川の生き物などを調べ、通学路の危険個所調べでは、特に大雨が降ったら川と道路が区別つかなくなる、など県の流域政策局職員のアドバイスを受け地図化してきました。そして今回の発表は、昭和28年9月25日の台風13号の襲来で日野川が決壊し、旅芸人の一座7人が亡くなった歴史を掘り起こし、それを紙芝居にして発表してくれました。

15グループそれぞれに活動の歴史をみると、この何十倍もスペースが必要です。ここでやめますが、今回から導入された「ファシグラ」という手法は見事です。個別の発表や議論を聴きながらそれを即興で絵「グラフィックス」にして、会場に示すというワークショップの理解を深めるための「ファシリテーション」です。有賀優さんがご活躍。今回はそこに文字化した板書も辻光浩さんが記録をして下さいました。文字と絵、両方の効果が見えました。

またこのフォーラムは、2050年頃の琵琶湖のあるべき姿を求めて、1999年から制定してきた、「マザーレイク21計画」の「暮らしと湖のかかわりの再生」の目標を具体化する住民フォーラム、マザーレイクフォーラムとの連携事業にもなっています。マザーレイクフォーラム賞や砂防協会長章もきまりました。

全体のまとめをしていただいた同志社大学の新川達郎さん、三重大学の朴恵淑さん、また委員長代理の瀧健太郎さん、それぞれ、時間制限の中、見事な総括とまとめ、ありがとうございました。

このフォーラムは滋賀県流域治水条例第34条の「県民相互の連携の支援事業」にも位置付けられています。このような行政的な位置付けがあることで、行政職員も表になり陰になって住民の皆さんとの協働仕事がすすめられます。

流域政策局のある職員さんのひとこと。「フォーラムの準備は細部まで本当に大変だったけれどとっても楽しかった。川の外にこそ住民がいる。川の仕事が広がってうれしい」と。部局の名前を「河川」から「流域」と変えた効果がじわじわと広がっているでしょうか?(微笑)。「名は体をあらわす!」。(2300文字です。長くてごめんなさい)。​

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