Facebook 2019年1月29日

「コンクリート大好きな政治家の70年前の思考となぜサヨナラできないのか?」『八ツ場あしたの会』会報36号に嘉田が投稿した原稿です。1700文字ありますが、よろしければご笑覧いただき、コメントください。1月29日。

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最近ネット上で出回っているコンクリート壁が立ちはだかる「八ツ場ダム映像」。建設中のダム建設はまたとないチャンスとばかり「コンシェルジェ」をつけて観光客を呼び込んでいるらしい。「ダムカレー」が人気だという。

この国はいつまで「戦後」から抜け出られないのか?今から72年前の1947年のキャサリーン台風で利根川水系はズタズタに切り裂かれ、死屍累々とした被災者の姿は、確かに私たちの脳裏に深く残っている。悲惨な水害を防ぐために上流にダムが必要という発想は、当時は意味があっただろう。そして八ツ場ダムは計画された。

ただ、人口も減少し水道用水も余っている。温暖化が進み、東日本大震災も経て、コンクリートダムの計画規模をこえる「超過洪水」が増えている今、利根川の水位をたった8㎝下げるためだけに、なぜ数千億円にものぼる血税がつぎ込まれる理不尽なダム建設が止められないのか?民主党政権はなぜあそこでつまづいたのか。政治の責任としかいいようがない。

70年前といえば、1946年の戦後初の衆議院選挙の結果、日本初の女性議員39名が誕生した。しかし女性議員の数は増えず、2005年に43人が当選するまで39人を超える事はできなかった。最新の2017年衆議院選挙では47人が当選し女性比率はようやく10%を超えたが、過去70年間の世界各国の女性議員の伸びと比較すると先進国では最下位だ。政治分野の女性参画は144ケ国中123位。何とも心もとない。

私自身琵琶湖研究の学者から滋賀県知事に挑戦した2006年、まさに「三途の川を渡る」状況だった。永年連れ添った学者の夫(の家族)からは離縁された。学者仲間からは表むきは見放された。裏ではハガキや電話支援はあったが選挙事務所に来てくれた学者仲間はただ一人だった。「政治はきたない。嘉田さんはあっちの世界に行ってしまった」と批判された。

政治の世界にはいってますます学者の役割、女性の役割が重要だと思った。理由は二点。ひとつは日本の国政も地方自治も圧倒的に「現象後追い型」で、政策が後手ごてにまわっている。少子高齢化、財政難しかり。欧米では「なぜ子どもが生まれにくいのか」と家族社会学の知識を元に30年以上前から家族省などをつくり「予防的政策」をいれこんでいる。財政難も同じだ。学問の成果が活かされにくい。税収の二倍もの歳出予算をくんで首相が「予算編成は完ぺき」という国家はおかしい。

もう一点は、「政策供給側論理」が主で、「政策需要側論理」が軽視されてきたことだ。水害対策でも、コンクリート施設をつくったら確かに一定程度の水位低下効果はある。でも治水政策の需要側というのは、水害から命と暮らしを守りたいという生活者的な「被災者目線」だ。水量計算ばかりしている学者と国土交通省の治水担当者が、古代から水害常襲だった日本各地の水害被害地の生活現場での調査をした、ということをついぞきかない。「何名の死者」「何戸の浸水」という数値しか関心がない。「遠い水」政策のなせるわざだ。

昨年の12月16日「八ツ場(やんば)あしたの会」が主催する東京でのシンポ「荒れる気候の時代に命を守る水害対策を考える」で講演をさせていただいた趣旨は、まさに「被災者目線」で「治水政策需要側」の生活者の論理から、温暖化時代の洪水多発社会でいかに命と暮らしを守るのかという「予防的政策」を広げたかったからだ。その代表として滋賀県の流域治水条例の話をさせてもらいました。ダムが守ると言っている流域に暮らす一人ひとりの住民の立場から、自分の、自分たちの命を守る覚悟と方法を編み出すことが重要と、「近い水」を取り戻す「流域自治」「住民自治」を結論とさせていただきました。

今日本中に税金ムダ遣い、環境破壊、ふるさと崩壊のダムが長崎県の「石木ダム」、熊本県の「立野ダム」などで進行しています。これらを阻止するには、政治を変えるしかありません。生活者目線「政策需要側論理」で、学問研究に根差した、未来にむけた「予防的政策」がつくれる政治家を増やすしかありません。特に地方自治では首長が大事です。学者の皆さんも住民の方も、ひとりでも多く新しい政治家を生み出すための政治変革にエネルギーを注いでいただけたら、日本のコンクリート漬の国土改悪も阻止できるのではと期待しています。
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なお、この会報には熊本県から「川辺川ダムの計画白紙撤回からの10年」の報告や、「写真で見る、八ツ場ダムの今、などの記事も掲載されています。ダム問題にご関心をもたれる方、是非、「年会費1000円」のメンバーになってください。連絡先も写真でいれておきます。

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