Facebook 2014年9月13日

スイス便り(9)、連邦スポーツ大学 マックリンゲン大学訪問、副学長のウルス・メーダー氏と意見交換、国防目的の兵士教育から、今は家族重視の生涯学習強調へ。

スイスの首都ベルンから西に20キロほど行ったところにビール湖がありますが、この西岸の丘陵地に立地するのが、スイス連邦で唯一のスポーツ大学である、マックリンゲンスポーツ大学です。

副学長のウルス・メーダー氏から大学の設置の経緯やスイスでのスポーツの歴史、スポーツと社会のかかわりについて伺いました。

まずスイスでは26の州(カントン)が自律的な教育やスポーツ政策を行っており、連邦としてはこのマックリンゲンが唯一の連邦政府が運営する大学となっています。

そもそもこの大学の設置は1944年、第二次大戦末期であり、設置目的は「兵士の身体機能の向上だった」という。そして、今もこのスポーツ大学は、「国防省」の管轄です。

実はスイスには、今も徴兵制度があり、何度もその廃止が国民投票にかけられており、つい最近の2012年にも平和主義グループが徴兵制度廃止の発議をしたが、国民投票で否決されている。しかし、近年は冷戦時と比べ兵役負担は減っているようだ。

そのような社会の流れの中で、マックリンゲン大学の重点も、兵士の身体的機能の向上というよりは、国民の健康の増強に置かれている。

スイスでは、19世紀末頃から、調和のとれた身体の発達を目指して、体操が国民的スポーツとして重要視され、学校教育に欠かせない重要な教科になっていたという。アスリートとして試合で結果を出すよりも、またオリンピックなどでメダルをとること以上に、生活の中でのスポーツが重要視されてきたという。

そして、1960年代後半から1970年代は、スポーツに学問的広がりが求められ、1967年には、同じくマックリンゲン市にスポーツ科学研究所が設立され、スポーツは学問的な広がりを得た。

副学長のウルス・メーダー氏の専門も、生物学からはじめ、今はスポーツ生理学を講義しているという。

1970年には、スイスの連邦憲法にスポーツにかんする事項が明記された。その2年後には、体操 とスポーツを奨励する法律が採択された。この法律は「青少年 + スポーツ」運動の基礎を成し、女性のスポーツ参加を奨励する土台にもなっている。

副学長のウルス・メーダー氏の話の中でも、子ども時代からのスポーツ活動の重要性が何度も強調されていた。学校にはいる5-12歳が活動増強の焦点となっているが、実は0-5歳が大変重要ということが最近わかってきて、それには親の意識と役割が重要で「母子スポーツ」「父子スポーツ」の活動にも展開しているという。

日本ではどちらかというと、親が子どもにスポーツ活動を勧めることは多いが、自分は見る側にとどまっていることが多い。ここをスイスでは「親子いっしょに」ということが強調されており、一般むけパンフレットでも、家族全員でランニングをしたり、父親が子どもを背負って山歩きをしたり、という家族全体の活動が強調されている。

メーダー氏にこのあと、大学施設を見学させていただいたが、連邦政府の予算がはいっているだけあって、19世紀の建物をホテルに改造したり、古い建物を活かしながら新しい建物が配置され、図書館やスポーツ施設も大変充実している。

日本の大学との交流の可能性などについても今後具体的にやりとりをさせていただけるよう、顔つなぎをさせていただいた訪問でした。

(写真 ①ベルンから20キロに立地するマッグリンゲン大学(地図)、②大学からビール湖をのぞむ、③宿舎の朝食光景、④副学長のウルスさんと、⑤ウルスさんはスポーツ生理学の専門家、⑥大学内の建物配置、1877年建設の最古の建物はホテルとして活用、⑦図書館は一般の人も利用可能、⑦スポーツ施設の耐熱建材も展示、⑧ 「Keep Moving-Fit for life」など一般家庭向きの広報、普及用冊子、⑨サッカー場では練習中)

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