Facebook 2014年9月16日

スイス便り(11)、スイス・ローザンヌとフランス・パリで東京オリパラ(オリンピック・パラリンピック)での世界のアール・ブリュット集合的発信にむけた連携協議を始める。(相変わらず長いです)。

日本のアール・ブリュットの海外発信に大きな力を下さったのがスイス・ローザンヌのアール・ブリュットコレクション(美術館)です。平成20年、滋賀県社会福祉事業団(glowの前身)などがスイス・ローザンヌで、日本人アール・ブリュット作家12人の「ジャポン展」を開催。来場した仏・パリのアル・サ ン・ピエール美術館のマルティーヌ・ルザルディ館長も感銘を受け、22年、同美術館で日本人作家63人の作品約1千点を展示する「アール・ブリュット・ジャポネ展」が開催されました。

半年あまりで各国から延べ12万人の来場者が訪れる盛況ぶりで、この後、平成23年度以降のヨーロッパ巡回展が決定・開催。平成25年度にはイタリア・ベネチアのビエンナーレ国際美術展では沢田真一さんの作品が出展されました。

こうした世界的な評価の高まりから日本国内でも新たな価値評価が始まり、平成23年から全国の美術館で巡回展が始まったほか、多くの財団、社会福祉法人が作品の発掘や普及に乗り出し、滋賀県としては、著作権や成年後見人制度など法的仕組みも提案をし、アイサという組織をつくり、平成26年度から、国が本格支援に向け動きだしました。

そのような日本の動きの中で、滋賀県の「社会福祉法人glow」や東京都の「愛成会」などが協力をして、東京オリンピック・パラリンピックの機会をとらえて、世界のアール・ブリュットの動きをまさにオリンピック聖火リレーのように集め、日本に運びこめないか、という企画を始めました。すでに滋賀県としては、この2月19日にはオリパラ関連事務局に提案もだしています。

オリンピックというと、スポーツだけを想いおこしがちですが、本来のオリンピック精神(オリンピズム)の目標は、「肉体と意志と知性の資質を高揚させ、均衡のとれた全人のなかにこれを結合させることを目ざす人生哲学である。オリンピズムが求めるのは、文化や教育とスポーツを一体にし、努力のうちに見出されるよろこび、よい手本となる教育的価値、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重などをもとにした生き方の創造である」とあります。

私自身が深く共感するのは、スポーツや文化や教育という既存のカテゴリーを超えた「生き方の創造」です。

そこで滋賀県としては、私の現職時代に、2020年の東京オリパラ、2024年の滋賀県国体、また2019年頃の新生美術館の開館を想定して「スポーツと文化の10年」の政策を提案してきました。

2020年の東京オリパラにむけては、2016年のリオ・オリンピックでの「東京オキュペーション」での提案が重要であり、時間がありません。そこで滋賀県としてすでに動きだしたわけです。

世界のアール・ブリュット企画については、今回は二か所で協議をはじめました。ひとつはローザンヌのアール・ブリュット美術館のサラ・ロンバルディ館長との面会と、ローザンヌ市の文化担当ファビアン局長との協議開始です。

8月29日、ローザンヌで北岡理事長ともどもお二人にお会いしました。サラさんはすでに日本にも何度か来ており、この話については背景から深く理解していただき、10月末に始まる「公募展」での審査員も受けていただきました。

ローザンヌ市の文化担当ファビアン局長は、優秀な事務職らしく最初はいろいろ懸案事項を出しておられ、「なぜローザンヌ市としてこの企画にかかわるのか?」という疑問をだされましたが、これは彼自身が市長に説明する論理がほしかったのだと思います。こちらからは、国際オリンピック本部があり、かつ世界のアール・ブリュットのコレクションをもつローザンヌとしては、オリンピックとアール・ブリュットの出会いの場としてローザンヌの存在感を高めるためにも是非協力してほしい、とかなり強調をし、最後には納得いただいたようです。

30日にはフランス、パリに移動をして、パリ市立アル・サン・ピエール美術館のマルティーヌ・ルザルディ館長と、ナント市の芸術監督、パトリック・ジェジェさんと面会をして、2020年東京オリパラに向けた事前の国際巡回展等の連携体制構築に向けた意見交換を行う。

ふたりとも趣旨に賛同いただき、9月にはジェジェさんが、10月にはルザルディ館長が日本を訪問くださり、事前準備にむけた公募展の審査員などとして参画いただくことをお約束しました。

「スポーツと文化の10年」にむけて、県民個人の創造的な内的満足度を高め、滋賀県の存在感を高める政策として、三日月新知事も力をいれはじめています。私としても、これまでの経験を活かして、県政の発展に協力していきたいと思います。

(写真 ①アール・ブリュット美術館前で記念写真、北岡glow理事長たちと、 ② サラ館長たちと連携の話会い、地元のワイン付きで、 ③ ローザンヌ市の文化担当ファビアン局長とサラ館長、北岡理事長と、 ④ パリ市立美術館のルサルディ館長と打ち合わせ会議、 ⑤ ナント市のジェジェ・パトリック芸術コーディネーターにも参加してもらう、)

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